欧米では一般的な解雇の方法である「レイオフ」。解雇規制緩和の可能性が出てきている日本でも、今後レイオフが行われるかもしれません。
今回はそんな「レイオフ」について解説。リストラとの違いや、欧米で活用されている目的・メリットもあわせてご紹介します。
- レイオフは一時解雇、リストラは永久解雇の違いがある
- 日本の解雇の種類とその内容を解説
- レイオフの主な目的は人件費の削減
レイオフとは
海外のニュースなどでよく耳にする「レイオフ」。アメリカやヨーロッパでは、レイオフは一般的に行われていますが、日本では浸透していません。なぜ海外でのみレイオフが行われていて、日本ではできないのか。レイオフの概念と共に各国の事情を解説します。
アメリカやヨーロッパでは一般的
「レイオフ」は、アメリカやヨーロッパでは一般的。朝、会社に出社すると全社に対してレイオフが実行されることが発表され、レイオフ対象者には個別の連絡がいきます。
一時的な解雇という意味で浸透していますが、現在では「レイオフ=永久解雇」を意味するケースも少なくありません。勤めている企業ごとに異なる意味合いで使われていることもあるので、都度確認しましょう。
レイオフされた従業員は通常、その日が最終出社日となります。なかには、業務引き継ぎのために数日〜数週間会社に残る場合もあり、各人によって異なります。
なお、レイオフされた方に対しては解雇手当が支給されることがほとんど。今までの業績や勤続年数に応じて、数ヶ月分の給与が支払われます。レイオフ対象者は、その期間に就職活動をし、再就職先を決定します。
日本でレイオフは浸透していない
一方、日本ではアメリカやヨーロッパのようにレイオフは浸透していません。日本は海外に比べて労働契約の終了に関するさまざまな法律が定められているうえ、厳しい解雇規制も設けられているからです。
例えば、「労働契約法」によれば企業が従業員を解雇するには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなくてはなりません。企業側から従業員を一方的に解雇することはできないのです。
ほかにも、「労働基準法」「労働組合法」「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」などの法律により、労働者の雇用は守られています。このような理由から、日本ではレイオフという考え方が浸透していません。
参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
レイオフとリストラの違い
「レイオフ」と同様、解雇の意味を持つのが「リストラ」です。レイオフが一時解雇の意味を持ち、再契約を前提とした解雇であるのに対して、リストラは永久解雇を意味します。
レイオフはビジネス上の理由によりコストカットが必要になった場合に行われます。再雇用を前提としており、経営が安定してきたらレイオフされた元従業員を再雇用します。これにより、知見のある人材の流出を防げるのがメリットです。
一方、リストラは事業の立て直しや企業の再構築のために行われます。リストラにより解雇された元従業員は、経営が安定したとしても再雇用されることはありません。
レイオフと一時帰休の違い
レイオフが浸透していない日本では、レイオフではなく「一時帰休」という制度が利用されています。
レイオフが一度雇用を打ち切るのに対して、一時帰休は雇用契約は継続したまま従業員を自宅待機させたり、休業させたりするのが大きな違いです。
また、レイオフ対象者にはパフォーマンスや勤続年数を考慮した数ヶ月分の給与が支給されますが、一時帰休の場合は「労働基準法」の第26条に基づいて、休業期間中は休業手当が支払われます。
雇用契約が終了したレイオフと、雇用契約が継続されている一時帰休では、もらえる金額面にも大きな違いがあります。
参考:宮城県社会保険労務士会「休業手当(労働基準法第26条)について」
レイオフと解雇の違い
日本では法律や厳しい解雇規制により、レイオフはほとんど行われていません。その代わりに、解雇の種類が複数存在します。よく耳にするのが「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」3つです。レイオフとこれらの解雇の違いを解説します。
解雇の種類
解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇(リストラ)」の3種類があります。それぞれどのような条件下で行われるのか、違いを把握しておきましょう。
普通解雇
「普通解雇」とは、従業員の能力不足や余剰人員の整理の必要性などを理由に、従業員の同意なく会社からの通知により雇用契約を解除することを指します。
普通解雇は、客観的に合理的な理由が認められることや、従業員が怪我や出産などで休業している期間の解雇ではないことなど、いくつかの要件が満たされて初めて実施できます。
ただし、正当な解雇理由は認めてもらうハードルが高く、法律を満たしていない場合は無効となるので注意しましょう。
なお、普通解雇による解雇の方法は「予告解雇」と「即日解雇」の2種類があります。予告解雇は、従業員に対して30日以上前に通知をしなくてはなりません。一方、即日解雇は30日分の解雇予告手当てを支払い、通知当日を持って雇用契約を終了させる方法です。
どちらの方法が良いのかは、解雇を決定した段階で決める必要があります。
懲戒解雇
「懲戒解雇」とは、業務上横領や無断欠席、パワハラ・セクハラなど、就業規則違反や規律違反行為などを理由として、雇用契約を終了させることを指します。公務員の場合は懲戒免職と呼びます。
普通解雇と違い、懲戒解雇は予告なしに即日解雇するのが特徴。退職金は支払われませんが、解雇通告手当ては支払われるのが一般的です。
整理解雇(リストラ)
「整理解雇(リストラ)」とは、経営不振やコストカットなどを理由に人員削減を行うことを指します。「普通解雇」も「整理解雇」の一種です。
整理解雇は、経営側の事情による解雇なので、実施する際にはその有効性が問われます。本当に人員を削減する必要があるか、人選の合理性はあるか、解雇を回避するための努力は行われたかなど、整理解雇が客観的に見て合理性があるのかを確認しましょう。
整理解雇の場合、就業規則や退職金規定があれば、従業員には退職金が支払われます。会社都合であるため、退職金が上乗せされるケースも少なくありません。
企業が解雇を実施できる条件
企業が解雇を実施するには、条件を満たしている必要があります。例えば、整理解雇の場合、経営不振や人員削減に合理性があるのかが判断されます。普通解雇の場合であれば、従業員を解雇する正当な理由が求められます。
懲戒解雇の場合も同様です。普通解雇や整理解雇に比べて正当な理由があるケースは多いものの、懲戒解雇にあたるような従業員の振る舞いが本当にあったのかどうかは調査されます。
レイオフが活用されている目的・メリット
レイオフは企業側にとって複数のメリットがあります。例えば、業績悪化に伴う人件費の削減や、再雇用前提であることを利用した人材やノウハウの流出防止などがあげられます。それぞれ具体的にどのような目的・メリットがあるのかを解説します。
業績悪化に伴う人件費の削減
レイオフを活用することによる一番のメリットは、業績悪化に伴う人件費の削減です。一時的ではあるものの、人員を削減することによるコストカットを狙えるのが特徴。企業によって異なるものの、人件費を減らすことで経営が安定するまでの期間レイオフが実施されます。
再雇用を前提にして、人材やノウハウの流出防止
レイオフは一時的に雇用契約を終了するタイプの解雇であるため、業績が回復した後はレイオフされた従業員を再雇用するのが基本的な流れ。従業員が他社に流れることがないので、人員やノウハウの流出を防止できるメリットがあります。
新たに採用活動を行ったり、従業員を共育し直したりする必要がないため、採用・教育にかかるコストをカットできます。
レイオフの言葉の意味を理解しておこう
- レイオフとは再雇用を前提とした一時解雇のこと
- 日本ではレイオフではなく、一時帰休の形を取っていることが多い
- レイオフによるメリットは人件費の削減と人材・ノウハウの流出防止
日本ではあまり耳馴染みがないですが、アメリカやヨーロッパなどの諸外国では解雇のひとつの形として「レイオフ」が行われています。日本は従業員の解雇規制が厳しいため、レイオフは浸透していませんでしたが、最近この解雇規制を見直す動きが出てきています。日本でもレイオフが可能になるかもしれないので、この機会にレイオフの正しい意味を理解しておきましょう。
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