プレイヤーとマネージャーの役割・仕事を兼任するプレイングマネージャー。一人二役を行う優秀な人材は、組織の生産性を高めます。
本記事ではプレイングマネージャーとマネージャーの違いや、求められる背景、組織にとってのメリットや注意点を紹介します。
さらに、プレイングマネージャーとして働くうえで重要な資質と、2つの役割をバランスよくこなすコツについても解説するので、これからプレイングマネージャーとして活躍したい人は、ぜひ最後までご覧ください。
- プレイングマネージャーの役割と、マネージャーとの違い
- プレイングマネージャーを置くメリットと注意点
- プレイングマネージャーに求められる資質と、働き方のポイント
プレイングマネージャーとは?
プレイングマネージャーとは、プレイヤーとマネージャーの役割・業務を兼任する人のことです。営業チームで例えると、一人の営業担当者として高い成績を残しつつ、マネージャー・リーダーとしてチームを引っ張っていくのがプレイングマネージャーです。
マネージャーの違い
プレイングマネージャーとマネージャーの違いについて気になる人も多いでしょう。
マネージャーはプレイヤーとしての業務はせず、進捗やメンバーのモチベーションなどの「マネジメント」に集中します。マネジメントに集中しやすいため、大きなチームを任せたり、メンバーの行動分析や育成に力を入れたりする場合に適しているでしょう。
ただ、現場のことを理解したり自分の成功体験を言語化してメンバーに共有したりは、プレイングマネージャーの方が適しているケースもあります。
プレイングマネージャーが求められる背景
プレイングマネージャーは、1990年代のバブル崩壊とともに増え始めたといわれています。バブル崩壊後の不景気や混乱に対応するために、企業はリストラや採用縮小といった人件費削減に取り組むことになりました。
プレイヤーとマネージャーの人数を削減する取り組みとして、プレイングマネージャーの導入は効果的です。チームに必要な役割を残しつつ、人件費(人員数)の削減を実現できるからです。
プレイングマネージャーの役割と仕事内容
プレイングマネージャーの役割と仕事内容には、次のものがあります。
- プレイヤーとして、個人の目標を達成する
- メンバーを導き、チームの目標を達成する
- チームメンバーの育成・マネジメント
- チームと組織のパイプとなる
それぞれの詳細を確認していきましょう。
プレイヤーとして、個人の目標を達成する
プレイングマネージャーには、プレイヤーとしての個人目標があります。例えば営業職なら、契約数や契約金額が目標となるでしょう。プレイングマネージャーに抜擢される人は、優秀なプレイヤーであることがほとんどです。
チーム全体の目標達成のためにも、メンバーの士気を高めるためにも、プレイングマネージャーが成果(数字)を上げることは重要です。
メンバーを導き、チームの目標を達成する
プレイングマネージャーだけが目標を達成しても、他メンバーの成績が悪くては、チーム全体の目標は達成できません。メンバーを導き、チームの目標を達成させることが重要です。
普通のマネージャーよりも現場に近いポジションであることを活かし、最新の成功事例を共有したり、同じプレイヤーとしてチームの一体感を高めたりといった取り組みを行うことが求められます。
チームメンバーの育成・マネジメント
プレイングマネージャーは時として、個人目標の倍以上の成果を上げ、チームの目標達成に足りない分の数字を埋めなければならないときもあります。
しかし、個人の力だけでチームの目標を達成しているのはマネージャーとしては失格です。チーム全員の成長を促し、チームでの目標を達成できるように、メンバーをマネジメントしながら、育てていくことが求められます。
チームと組織のパイプとなる
プレイングマネージャーは、一般的なマネージャーよりも現場に近い位置にいます。普通のプレイヤーと異なり、組織の上層部と接する機会も多いです。この立場を活かして、チームと組織をつなぐ「パイプ役」になるのも、プレイングマネージャーの大切な仕事です。
チームメンバーには組織としてのビジョンを、組織の上層部には現場にいるからこそ見えてくる課題を、それぞれ伝えていきましょう。
プレイングマネージャーを組織に置くメリット
プレイングマネージャーを組織に置くメリットには、次のようなものがあります。
- 生産性が高まる
- コミュニケーションスピードの向上
- 従業員エンゲージメントの向上
それぞれのメリットの詳細を紹介します。
生産性が高まる
プレイヤーとマネージャーの役割を1人で行うプレイングマネージャーは、プレイヤーだけ、マネージャーだけをこなす人材よりも生産性が高いといえます。優秀なプレイングマネージャーが増えれば、少ない人員で、より高い成果を出せる組織が育っていきます。
コミュニケーションスピードの向上
現場と組織のパイプ役であるプレイングマネージャーを置くことで、組織全体のコミュニケーションスピードの向上が見込めます。プレイングマネージャーには現場と組織の両方の意見を聞き、集まった意見を整理して、それぞれに伝えていくことが求められます。
従業員エンゲージメントの向上
プレイングマネージャーが組織のビジョンを現場のメンバーに伝えていくことで、従業員エンゲージメントは向上しやすくなります。
メンバー一人ひとりが組織のビジョンを理解できるように、チーム一丸となってビジョン実現を目指せるように、メンバーとのコミュニケーションを取ることもプレイングマネージャーの役割です。
プレイングマネージャーを置くときの注意点
プレイングマネージャーを置くときの注意点として、「評価基準を明確にする」ことと、「業務量過多に注意する」ことが挙げられます。プレイングマネージャーがモチベーションを高く保ち、より優秀な人材へと成長していけるよう、制度を整えることが大切です。
評価基準を明確にする
2つの役割を兼任するプレイングマネージャーは、評価基準が曖昧になりやすいです。「プレイヤーとしての個人目標は達成したが、チーム全体の目標は未達」「チーム目標は達成できたが、プレイングマネージャー個人の目標は未達」という事態も起こるでしょう。
プレイヤーとマネージャー、役割ごとの明確な評価基準を設けることで、プレイングマネージャーのモチベーションを高く保つことが求められます。
業務量過多に注意する
2つの役割を兼任することから、プレイングマネージャーは業務量過多になりやすいです。マネージャーとしてチームを見ながら、個人目標を達成するだけでも、多くの業務量とプレッシャーがあることが想像できます。
チームの成績が芳しくなく、プレイングマネージャーが足りない分を穴埋めしなければならないときもあります。業務過多になっていることに気付ける仕組みを整えることが重要です。
プレイングマネージャーに求められる資質
プレイングマネージャーには、プレイヤーとマネージャーのスキルはもちろん、次のようなさまざまな資質が求められます。
- 高い当事者意識
- 自己管理能力
- コミュニケーション力
- 成長意欲
- バランス感覚
- スケジュール管理力
- マネジメント力コーチングのスキル
それぞれの詳細を紹介します。
高い当事者意識
マネージャーであると同時にプレイヤーであるプレイングマネージャーには、チームリーダーとしての高い当事者意識が求められます。
チームメンバーとのコミュニケーションが希薄になったり、個人としての成績が芳しくない状態が続いたりすると、メンバーの「この人についていこう」という気持ちも薄れてしまうでしょう。
組織のために、チームのために、主体的に考え、行動することが求められます。
自己管理能力
2つの役割をこなし、業務量過多にもなりやすいプレイングマネージャーには、高い自己管理能力が求められます。
プレイヤーとしてのポテンシャルを維持するためにも、マネージャーとして冷静な判断を下すためにも適度な休息は欠かせません。自分の心身の状態を見つめ、活動と休息のバランスを取る力が必要です。
コミュニケーション力
現場と組織のパイプ役でもあり、メンバーの育成係でもあるプレイングマネージャーは、コミュニケーション力がなくては勤まりません。相手から意見を引き出す力、相手を納得させる力が必要です。
成長意欲
リーダーとしてチームを引っ張っていくプレイングマネージャーは、成長意欲を高く維持しなければなりません。メンバーを育てるためには知識をインプットし続け、プレイヤーとしてだけではなく、マネージャーとしての成長も求められます。
バランス感覚
2つの役割を持つプレイングマネージャーはバランス感覚が必要です。特にプレイヤー上がりのプレイングマネージャーには、自分個人の成績ばかりに目が向き、チームの管理が疎かになる人もいます。
どの業務にどのくらいの時間と労力をかけるのか、仕事をしながら少しずつ覚えていきましょう。
スケジュール管理力
プレイングマネージャーはチーム全体のスケジュール管理を任されることも多いです。予定の共有や登録が漏れていないかチェックしたり、スケジュールを見ながら人員を配置したりする能力が求められます。
マネジメント力
全体の進捗、メンバーの予定やモチベーションなど、プレイングマネージャーはさまざまなことを管理しなければなりません。チーム全体を俯瞰しながら、メンバー一人ひとりがどんな状態なのか、どんな課題を抱えているのか把握する力が必要です。
コーチングのスキル
チームメンバーの育成も担うプレイングマネージャーにとって、コーチングのスキルは役立ちます。コーチングの考え方がチームに浸透すると、メンバー一人ひとりが自走するようになるでしょう。業務量の多いプレイングマネージャーにとって、メンバーの自走する力を育むことは重要です。
コーチングは人に教えるのではなく、一人ひとりに自発的行動を促し、行動したことや対話の中から「気づき」を与える育成手法です。メンバー一人ひとりの特性や課題を知り、次のアクションに自分で気づけるよう、ヒントを与えていきましょう。
プレイングマネージャーとして働くときの3つのポイント
プレイングマネージャーは役割や仕事内容が多く、膨大な業務量や大きすぎるプレッシャーに押しつぶされそうになることもしばしばです。次のポイントを意識し、バランスの取れた働き方をしていきましょう。
- マネージャーとプレイヤーの役割のバランスを取る
- スケジュールは6割程度に押させえて組む
- 自分のプレイスタイルを押し付けない
次に、それぞれの詳細を紹介します。
マネージャーとプレイヤーの役割のバランスを取る
プレイングマネージャーになったばかりの場合は、マネージャーとプレイヤーの役割のバランスを取ることに苦労するでしょう。バランスが崩れると、徐々にチームとしての結果を出すことが難しくなってしまいます。
もちろん、業務量をきれいに半分ずつにする必要はありません。個人目標を達成したらマネジメントに集中してもいいですし、メンバーの能力が低いうちは、優秀なプレイヤーとして足りない数字を埋めていくのもいいでしょう。
自分が得意な業務のみを行うのではなく、両方のバランスを意識的に取ることが重要です。
スケジュールは6割程度に押させえて組む
プレイングマネージャーは、スケジュールを6割程度に抑えて組むことがおすすめです。スケジュールがパンパンに埋まっていると、いざチームのサポートが必要な場合に対応することができません。
特に、これまでプレイヤーとして活躍していた場合は、マネジメントに必要な時間を低く見積もりがちになっていまいます。自分のマネジメントスタイルを見つけられるまでは、最初はスケジュールを5割程度にしておくこともよいでしょう。
自分のプレイスタイルを押し付けない
優秀なプレイヤーでもあるプレイングマネージャーの中には、自分のやり方に高い自信を持っている人も多いでしょう。しかし、自分のプレイスタイルをメンバーに押し付けてはいけません。
人には向き不向きがあります。自分と同じプレイスタイルでやらせたからといって、その人も同じような成果を出せるとは限りません。
相手の性格やスキルを考え、それに合った方法を一緒に探していく姿勢が大切です。よく「優秀な人は、できない人の気持ちがわからない」といいますが、そうならないようメンバーと対話を重ねて相手を理解することが必要です。
プレイングマネージャーを活用し、バランスの取れた組織運営を
- プレイングマネージャーは、現場と組織のパイプ役でもある
- 現場に近い立場を活かして、メンバーの意識とスキルを高める
- プレイヤーとしてだけではなくマネジメントとのバランスを取る
プレイヤーとマネージャーの役割を兼ね備えるプレイングマネージャーは、現場と組織、両方に近い立ち位置にいます。組織のビジョンを理解して現場に落とし込むこと、現場の課題を肌で感じ取り改善策を提案することは、プレイングマネージャーだからこそできることだといえるでしょう。
ただ、プレイングマネージャーは業務過多になりやすく、中間管理職としてのプレッシャーも大きいです。特に初めてマネジメントを行う場合は、チームで結果を出すことを重要視し、十分に余裕を持ったスケジュールを組み、その時々の状況に柔軟に対応することを心がけましょう。
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