コロナ禍によって働き方が大きく変わった昨今。オフィスを首都圏から地方へ移す企業も増え、住みたかった場所や地元など、自分がどう生活したいかで就職先を選ぶ人も増えてきました。
株式会社グリラスの池田未歩さん(22)もその一人。当初就職先として考えていた東京ではなく、同社本社のある徳島で働くことを決意し、これまでは抵抗感すらあったという食用コオロギを新たな食の選択肢として広める広報の仕事に就くことになります。
池田さんを変えたものは一体なんだったのか?詳しく話を聞きました。
食用コオロギを新たな食の選択肢に
グラリス株式会社は、徳島大学における30年におよぶコオロギ研究を基礎としたフードテックベンチャー。徳島県美馬市の2つの廃校をそれぞれ生産拠点・研究拠点として整備し、食用コオロギに関連する品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を一貫して行っています。
決め手は、求められたことと人の良さ
生まれ育った北海道で、大学時代から業務委託でグリラスのライターをしていた池田さん。大学卒業後は正社員として入社し、徳島に移住。現在はPRアソシエイトとして、広報の業務やSNS運用などを行っています。
-----入社の決め手はなんだったのでしょうか。
池田さん:就職活動は“御社にとって私は必要な人材です”と自分を売り込む機会だと思うのですが、私はやりたいことが定まっていなかったので、なかなか上手く行かなくて…。就職せずにアルバイトをしながらライターとして仕事をしようかなと考えていたのですが、当時業務委託で仕事をしていたグリラスのメンバーが私の記事をすごく褒めてくれて、一緒にお仕事しようとずっと誘ってくれていたんです。
自分を売り出さなきゃいけない就職活動が辛かったけれど、人として必要としてくれて、求めてもらったことが嬉しかったというのと、業務委託で関わる中でグリラスはすごく温かい人たちばっかりだと感じていたので、楽しく働けそうだなと思って入社を決めました。
-----徳島へ移住することへの不安はなかったですか?
池田さん:東京の会社に就職を考えていたので、一緒にお仕事をしようと誘ってもらっていた時も最初は断っていたんです。何より、もともと私は虫が得意ではないので、食用コオロギについても最初は抵抗感があって…。
業務委託で食用コオロギに対する熱い思いに触れていていくうちに、昆虫食への抵抗がなくなっていったのですが、就職するとまでは思っていませんでした。
ただ、実際に一度徳島を訪れた時に、食用コオロギを使っている徳島のラーメン屋さんやカフェを訪れて、コオロギラーメンやコオロギパスタを食べてみたらすごく美味しかったんですよね。
これを届ける仕事は面白そうだなと思いましたし、会社や徳島のことを見てまわるうちに両方すごく気に入ったので、移住を決めました。
失敗から学んだ、広報としてのやりがいと責任
-----入社後、最も印象に残っていることはありますか?
池田さん:はじめて書き上げたプレスリリースが、会社としてもかなり大きなニュースだったんです。
リリースを見た記者の方から連絡をいただいたり、プレスリリースをもとにしてメディアに記事化していただいたことも嬉しかったですね。広報としてのやりがいを感じました。
-----逆に入社してから力不足や経験不足で悩んだことはありますか?
池田さん:まだ入社して4~5カ月なので色々あります。まず業務内容が広がってきたので、タスク管理が上手くできなくて悩みました。周りも忙しそうにしているので、なかなか相談することや頼ったりすることが自分からはできなかったんです。
実際にイベントの準備が間に合わなかった時に「自分が頑張ればいいことだから」と考えて作業をしていたら、上司が気づいて手助けに来てくれて、「次からはもっと早く、業務状況についてコミュニケーションを取り合おうね」と言ってくださいました。
そこからはスケジュール立てて、自分の今の仕事量を意識して仕事していくことを心がけています。無理だと思った時には素直に頼ることも時には必要だと感じました。
-----仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
池田さん:正直でいることを一番大事にしています。
直近の仕事でプレスリリースについて取材があった際に、質問に対して曖昧な答え方をしてしまって、それがそのまま記事になってしまったことがあったんです。一番最初に確認したのが私だったので「これはまずいかもしれない」と、すぐに広報の上司に相談して結局何も問題はなかったのですが、自分たちの言葉がそのまま露出になるので、広報としての責任感はしっかり持って取材の受け答えはしなければいけないなと思いました。
きちんと正しい情報を伝えていくことはグリラスの信頼を守るためにやらなきゃいけないことだな、と。
-----失敗があったからこそ、より強く感じるようになったのですね。
池田さん:それから、広報チームとして、日常的に社内の色々な人とコミュニケーションをとるようにしています。生産・研究拠点であるもう一つのオフィスに足を運んだり、営業の会議に入って、営業が今どんなことをやっていて、どういう風に会社が進んでいるのかを把握する。そこで、広報で手伝えることがないか、広報の先輩と一緒に最善策を考えたりします。
食文化を作っていく仕事はすごく魅力的
-----キャリアにおける今後の目標はありますか?
池田さん:広報として1人前になることです。まずは自分で仕事を見つけて、最後まで進められるようになること。グリラスでは広報業務以外にも食用コオロギを使った商品のパッケージの相談など、色々なことを担当させてもらえているので、「これを相談するなら池田に」と言ってもらえるような人になりたいです。
あとは、食用コオロギをもっと世の中に広めたいです。食用コオロギという新しい食材を提案する仕事の中で、メンバーひとりひとりが本気で新しい食の選択肢を届けようとして妥協がないんです。新しい市場、食の価値観を創造して届けていくことにメンバー皆、本気です。
-----すごくやりがいがある仕事ですね。
池田さん:催事などに出店して、食用コオロギのクッキーの販売を行うことがあるのですが、最初は抵抗感があった方も、しっかりコミュニケーションを取ることで魅力が伝わって、最後は食べて「美味しい」って言ってくださるんです。意見が変わっていくのを真横で見られるのは面白いですね。
環境に優しいことはもちろんなのですが、食用コオロギは牛や豚に負けないくらい、タンパク質やミネラルやビタミンも豊富。食用コオロギに抵抗がある人も多いのですが、新しい食文化を作っていく仕事はすごく魅力的だと思っています。世界の食の選択肢を1つ増やしたいです。
-----ありがとうございました。
食用コオロギの魅力を広める仕事も、徳島で暮らすことも、全く予想外だったと言う池田さん。けれど、今はそのどちらもに魅力を感じ、楽しんで仕事をしていることがインタビューからも伝わりました。
地方で仕事することについても「どんな暮らしがしたいかで会社を選ぶのも、健やかで良いと思います」と答えてくれ、徳島に来てからはダイビングの免許を取得し、川も海も山も近い環境で休日をアクティブに過ごしていることを教えてくれました。
彼女のように、住む環境で会社を選んでみることや、これまで未知だった業界に足を踏み込んでみることも、新しい自分を発見することにつながるのではないでしょうか。
出典元:株式会社グリラス
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