MECE(ミーシー)という言葉を聞いたことがあるけれど、意味がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、MECE(ミーシー)の意味や重要性、具体例などを解説。また、MECEに考える方法や、ポイントなどを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
- MECE(ミーシー)とは 意味や重要性を紹介
- MECEの具体例や、MECEに考える方法
- MECEに考えるためのフレームワーク11例
MECE(ミーシー)とは
MECE(ミーシー)とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」つまり「相互に重複せず、全体的に漏れがないこと」を意味します。
例えば、「年齢」を考えてみましょう。「10代」「20代」「30代」と年齢を分解した場合、「10代」「20代」「30代」は重複はしていません。しかし、「40代」「50代」などの年齢層が考えられていないので漏れがない状態だとはいえません。
逆に「年少人口(14歳以下)」「生産年齢人口(15〜64歳)」「老年人口(65歳以上)」という厚生労働省の年齢区分はMECE(もれなくだぶりがない状態)であるといえるでしょう。
参考:厚生労働省「図表1-2-7 年齢3区分別人口及び人口割合の推移と予測」
MECEとロジカルシンキングの関係性
MECEとロジカルシンキングは切っても切り離せない関係です。
ロジカルシンキングとは、日本語で「論理的思考」のこと。つまり、順序立てて矛盾がないように思考することをいいます。
矛盾がない思考をするためには、物事の全体像を捉える必要があります。俯瞰的に物事を見るときに「MECE」の概念が重要になってくるのです。
MECEを活用する重要性
MECEに物事を考えるのはなぜ重要だと言われているのでしょうか。
ビジネスにおける課題は複雑で、一見わかりにくいものが多いもの。思考における武器を持っていなければ、どこから手を出していいかわかりません。
MECEに物事を考えられていたら、複雑な事象でも要素ごとに切り分け理解できるようになります。また、漏れなくだぶりなく複雑なものを分類できると、今まで見れてこなかった視点で俯瞰して物事を考えられたり、効率化につながったりするでしょう。
MECEの具体例
MECEに物事を考えることは大切ですが、「MECEに考えよう」と意識してもすぐにできるようになるものではありません。
以下では、MECEになっている例とMECEになっていない例をご紹介します。MECEに考える練習をするためにも、具体例に何を追加または除去すればMECEになるか考えてみましょう。
MECEになっている例
まずは「日本」という大きな枠組みを要素に分けて分解してみましょう。
「北海道地方」「東北地方」「関東地方」「中部地方」「近畿地方」「中国地方」「四国地方」「九州地方」の8つの地方に分けられます。
参考:総務省統計局「地域区分」
これは、漏れなくかぶりもないため、MECEになっていると言えます。
MECEになっていない例
MECEに検討するのは「簡単だな」と思った人もいるのではないでしょうか。「年齢」や「地方区分」などは、すでに厚生労働省や総務省などによって、漏れなくだぶりもなく分割されています。また、日常的に触れているものなため、簡単に思えます。
以下の例では、「飲み物」をMECEに分けていきます。難易度が上がりますが、MECEに考える練習をしてみましょう。
漏れがなく、ダブりがある例
この世にある「飲み物」すべてをMECEに分類する場合は、どうすればいいでしょうか。
コカ・コーラ社では、8つのカテゴリーに分類しているといいます。8つのカテゴリーとは以下のとおりです。
- 炭酸飲料
- コーヒー飲料
- スポーツ飲料
- 茶系飲料
- 水
- 果汁飲料
- エネルギー飲料
- アクティブライフスタイル飲料
MECEに見えますが、漏れがなく、ダブりがあります。
コーヒー飲料と炭酸飲料を混ぜた、「炭酸コーヒー(コーヒーソーダ)」があります。
「BROOK'S」社の「モカ インスティンクト」がその例のひとつ。
もちろん、「コカ・コーラ社の商品で」という条件ではMECEに分類できていますが、この世にある飲み物すべてをMECEに分類できていないことがわかりますね。
漏れがあり、ダブりがない例
「サントリーホールディングス」「コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス」「伊藤園」「カゴメ」と、メーカーごとに考えるのはどうでしょうか。
これでは、「キリンホールディングス」「ダイドーグループホールディングス」などのように、他のメーカーが漏れてしまっています。
つまり、漏れがあり、ダブりがない例であり、MECEではないことがわかります。
漏れがあり、ダブりもある例
MECEについての知識がなければ、思いついた分類方法を連ねていくだけになってしまう人も多いでしょう。
例えば「甘い飲み物」「コーヒーなどの苦い飲み物」などの「主観」に沿ってしまった分類方法です。
これでは、「何を甘いと定義するのか」などによって漏れやダブリが出てきてしまいます。
この世にある「飲み物」すべてをMECEに分類する場合、「缶飲料」「ビン飲料」「ペットボトル飲料」などのパッケージ別に分けたり、「容量」で分けたりするといいでしょう。
MECEに考える方法
MECEに考えるコツや方法を知りたいという人も多いのではないでしょうか。
以下では、「トップダウンアプローチ」「ボトムアップアプローチ」の2つのアプローチ方法をご紹介します。考え方を学ぶための参考にしてください。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチとは、物事の全体像を捉えて、目的や課題に沿った切り口で全体を構成する要素を分類する方法です。
物事の全体像とは、「日本」や「飲み物」などのことをいいます。つまり、すでにご紹介した「日本を地域で分ける」「飲み物を分類していく」は「トップダウンアプローチ」です。
トップダウンアプローチは、物事を体系的に俯瞰して捉えられることや、最終的なゴールを意識できることなどのメリットがあります。
一方で、「全体像」が正しいことを仮定として切り分けていくため、全体像が異なるとMECEではなくなります。
ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチとは、思いつく要素を洗い出し、それをグルーピングする仮定で漏れているものを追加していく方法です。
思いつくアイデアを複数人で出していくのを「ブレーンストーミング」といいます。ボトムアップアプローチでは、ブレーンストーミングを行った後、最終的に全体像を掴みに行きます。全体像がわからないものや、新しいことを分析するのに向いているアプローチです。
しかし、全体像が不明確なため漏れが生じやすくなることに気をつけておきましょう。
MECEに物事を考える3つのポイント・やり方
MECEに物事を考えるやり方は具体的にどうすればいいか気になる人も多いでしょう。
以下では、MECEに物事を考える3つのポイントを紹介します。
ポイント1.全体像を捉え要素に分解する
MECEに物事を考えるための1つ目のポイントは、全体像を捉え要素に分解することです。
「流行りのものをまとめてきて」と指示された場合、「流行りのもの」という全体像から要素に分解していきましょう。
例えば「流行りのもの」の「もの」とは、「食べ物」「飲み物」「ファッション」「言葉」などと分解していきます。さらに「食べ物」という枠組みの中でも「飲むわらびもち」「マリトッツォ」「ズコットケーキ」と分解していきます。
ポイント2.時系列や段階に分けて考える
MECEに物事を考えるための2つ目のポイントは、時系列や段階に分けて考えることです。
次は「流行りのもの」を時系列に分けて考えてみましょう。
「流行は今流行しているものだから、古いものを見ても意味がないのではないか」と考える人もいるかも知れませんが、流行は繰り返すと言われています。
実際「タピオカ」は1992年・2008年・2018年と周期的に人気になっています。
つまり、直接的に関係がないものに見えても時系列で分析する意味はあるのです。
時系列は「1990年以降」「1990年から2000年以降」「2000年〜現在」と順番に考えていくと、MECEに考えられますね。
ポイント3.対照概念も考える
MECEに物事を考えるための3つ目のポイントは、対照概念も考えることです。
対照概念とは「メリットとデメリット」「新しいものと古いもの」「主観と客観」などがあります。
「流行りのもの」の傾向を掴みたいとき、逆に「流行らなかったもの」を見ることで、流行るために必要な要素が見つけ出せるかもしれません。
MECEに考えるためのフレームワーク9例
フレームワークを覚えておくと、MECEに考えやすくなります。
フレームワークとは、物事を分析する際に使える手段であり、「公式」や「定石」のようなもの。フレームワークを使えば、誰でも簡単に物事を分析しやすくなります。
以下では、MECEに考えるためのフレームワークを11例ご紹介します。
3C分析
「3C分析」は、自社(Company)・顧客(Customer)・競合(Competitor)の関係を分析するために使用されるフレームワークです。
3C分析は、「KSF(Key Success Factor)」つまり「重要成功要因」を見つけるのに役に立つと言われています。
4P分析
売り手の視点でビジネス活動を分析する「4P分析」は、「製品・サービス(Product)」「流通チャネル(Place)」「価格(Price)」「広告・販売促進(Promotion)」から成り立ちます。
現在では、「売り手の視点」からではなく「顧客視点」で考えることが主流になりました。そのため、4P分析ではなく、以下で紹介する「顧客視点」の4C分析が使われることが多いです。
4C分析
顧客視点の4C分析は、「顧客のコスト(Cost)」「顧客価値(Customer Value)」「顧客とのコミュニケーション(Communication)」「顧客の利便性(Convenience)」の要素からできています。
また、4C分析は、二種類存在することに注意しておきましょう。
すでにご紹介した3C分析に「協力者(Co-Operator)」を追加した「4C分析」は、企業間同盟のような協力者によりビジネスを強化するものをフレームに加えたものです。
このように、すでにあるフレームワークに何かを追加して新しいフレームワークが生まれることもあります。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、5つの脅威のこと、つまり「競争要因」のことを指します。
競合や業界全体の「競争要因」を分析することで、自社の収益性を把握することが可能です。
ファイブフォースとは、以下の5つの要素のことです。
- 既存企業同士の競争
- サプライヤーの交渉力
- 顧客の交渉力
- 代替品や代替サービスの脅威
- 新規参入者の脅威
7S分析
有名コンサル会社の「マッキンゼー・アンド・カンパニー」によって提唱された「7S分析」。
企業が必要とする経営資源は7つあり、企業改革をするためにはハードとソフトのどちらからもアプローチしなければならないと、マッキンゼーは主張します。
7Sには「ハードの3S」「ソフトの4S」から構成されています。
- 戦略(Strategy)
- 組織(Structure)
- 社内の仕組み(Systems)
ハードの3Sは、ソフトの4Sと比べ比較的変更しやすいものであるといわれています。
- 共通の価値観(Shared value)
- 人材(Staff)
- 経営スタイル(Style)
- スキルやノウハウ(Skill)
ソフトの4Sは、改革に長い時間が必要だといわれています。
組織改革を行いたいと思っている人は「7S分析」を活用してみましょう。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の事業の状況を整理するために使用されるフレームワーク。
SWOT分析の要素は以下のとおりです。
- Strengths(強み)
- Weaknesses(弱み)
- Opportunities(機会)
- Threats(脅威)
「プラス要因」「マイナス要因」「内部環境」「外部環境」の4つの側面から分析していきます。
PEST分析
PEST分析とは、自社に影響を与える「マクロ環境」を分析するフレームワークのことです。
PEST分析は、マーケティングの第一人者である「フィリップ・コトラー」によって提唱されました。
PEST分析の要素は以下のとおりです。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
PEST分析を行うことで、新しい業界に参入する際に未来の脅威に備えることができるようになります。
PDCA
「PDCAサイクルを回していこう」と言われたことがある社会人も多いのではないでしょうか。
実は、「PDCA」もフレームワークのひとつです。
PDCAとは「PLAN」「DO」「CHECK」「ACTION」の頭文字を取ったもの。PDCAサイクルを意識することで、行動を止めずに仕事をこなしていけます。
PDCAサイクルを効率よく回したいという人は「PDCAを効率よく回すための「セグメント分析」と「ブリコラージュ」」を参考にしてみてはいかがでしょうか。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、上記の画像のように、ある問題を様々な要素に分類していき、原因や解決方法を考えるものです。
特に、上記の画像は「KPIツリー」と呼ばれるツリーです。他にも、イシューツリー・マインドマップツリーなど様々なツリーがあり、汎用性が高いです。
原因や解決方法がわからない場合は、ロジックツリーを使うことをおすすめします。
MECEの3つの注意点
MECEに考えることに囚われてしまうと、思わぬ落とし穴に陥ってしまうかもしれません。
以下では、MECEの3つの注意点についてご紹介します。
1.明確に分類できないものもある
MECEの1つ目の注意点は、明確に分類できないものもあることです。
例えば「炭酸コーヒー飲料」の場合、「炭酸飲料」かつ「コーヒー飲料」です。このように、2つから3つのカテゴリーを持っているものは明確に分類できないこともあります。
また、人間の感情のように曖昧なものは区別できないことを覚えておきましょう。
2.MECEは手段であって目的ではない
MECEの2つ目の注意点は、MECEは手段であって目的ではないことです。
MECEにこだわりすぎると、「炭酸飲料であってコーヒー飲料ではないカテゴリー」「コーヒー飲料であって炭酸飲料ではないカテゴリー」「炭酸飲料であってコーヒー飲料でもあるカテゴリー」などと分類しなければいけません。
しかし、例外があるたびにこのように、事細かなカテゴリーを作ってしまうと、複雑になりすぎてしまう可能性があります。
物事を簡単に考えるために分類しているのに、複雑になってしまっては本末転倒です。
MECEはあくまで、ロジカルシンキングをするための手段であって目的ではないことを忘れないようにしましょう。
3.主観で分類しない
MECEの3つ目の注意点は、主観で分類しないことです。
「大きい」「小さい」「苦い」「甘い」などの形容詞を使って分類する際は要注意です。
主観で考えているかいないかは、「誰が聞いても納得できるか」です。「甘い」の定義がないと、何が甘いのか・苦いのか見分けられません。
例えば「果実飲料の日本農林規格」を見てみると、「濃縮果汁」という言葉だけでも以下のように定義されています。
「果実の搾汁を濃縮したもの若しくはこれに果実の搾汁、果実の搾汁を濃縮したもの若しくは還元果汁を混合したもの又はこれらに砂糖類、蜂蜜等を加えたものであって、糖用屈折計示度(加えられた砂糖類、蜂蜜等の糖用屈折計示度を除く。)が別表1の基準以上(レモン、ライム、うめ及びかぼすにあっては、酸度(加えられた酸の酸度を除く。)が別表2の基準以上)のものをいう。」
引用:果実飲料の日本農林規格
MECEに考えるためには、主観で考えるのではなく、一つひとつのものの定義を考えていく必要があることを覚えておきましょう。複数人で分類を行う際には、定義を明確にして行うようにしてください。
MECEに分析する方法を身につけよう
- MECE(ミーシー)とは、漏れなくダブリがない状態のこと
- 「トップダウンアプローチ」「ボトムアップアプローチ」の考え方を身につけよう
- MECEは手段であって目的でないことを覚えておこう
本記事では、MECE(ミーシー)の意味や、具体例、注意点などをご紹介しました。
MECEに考えることは、業務の効率化を図ることや、全体を俯瞰してみることに役立ちます。
MECEに考えることは、一朝一夕で身につくものではありません。フレームワークを使ったり、身の回りにあるもので思考練習をして身につけてみてはいかがでしょうか。
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