OEMとは、自社ブランド名で売り出す商品を他社メーカーに製造してもらうこと、あるいは自社で製造した製品を他社ブランド名で販売してもらうことです。
本記事ではOEMとは何か、OEMとよく似た「PB」や「ライセンス契約」とも比較しながら解説します。OEMでは販売と製造を異なる会社が行うことになります。両社が気をつけるべきことも紹介します。
- OMEの種類と、PBやライセンス契約との違い
- OMEのメリット・デメリット
- OEMを進める流れを5ステップで解説
OEMとは?
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、自社ブランド名で売り出す商品を他社メーカーに製造してもらうこと、あるいは自社で製造した製品を他社ブランド名で販売してもらうこと、またそれらを行う企業のことを指します。簡単にいえば、自社ブランドで発売する商品を、他社に作ってもらうことだといえます。
例えばコンビニや大手スーパーで売られている「PB(プライベートブランド)製品」、Apple以外の会社が製造した「iPhone」などもOEMにあたります。
OEMの種類
OEMには販売するブランド名を貸す会社(販売元)から製造を行う会社(製造元)に依頼をする場合と、製造元が販売元に頼み、ブランド名を貸してもらう場合があります。
それぞれのケースの詳細を解説します。
完成している製品を、他社のブランド名で製造する
製造元で企画・開発した「完成している製品」を、販売元のブランド名で販売してもらう形式のOEM。下請製造の一種といえますが、そもそもの商品企画・開発を製造元で行っていることが、下請製造と異なります。
このタイプでは、製造元に「販売力」や「ブランド力」がないケースが多いでしょう。「せっかくいい製品ができたのに、自社ではうまく販売できない」というケースで用いられます。
販売元にとっては、自社で商品の企画・開発をする手間がかからないメリットがあります。
メーカーに自社ブランドの製造を委託する
販売元で企画した製品を製造元が作り、販売元のブランド名で販売する形式のOEM。製品を管理・所有する権利は販売元がもちます。これは下請や分業に近いタイプで、販売元から製造に必要なリソースの提供や、技術指導が行われることもあります。
OEMとPBの違い
OEMと似た製造・販売方法に、「PB(プライベートブランド)」があります。例えばコンビニやスーパーでよく見る、そのお店独自のブランド名で売られている商品がPBにあたります。
OEMとの違いは、「製造依頼の流れ」と「販売元の業種」です。OEMは主にメーカーが販売元ですが、PBはコンビニやスーパーなどの小売業です。
また、OEMでは製造元が販売元へ「この製品を、貴社のブランド名で売らせてください」と依頼することもありますが、PBでは販売元から製造元に依頼します。
OEMとライセンス契約との違い
OEMやPBと似たものに、「ライセンス契約」があります。その商品の権利をもつ企業(ライセンサー)が、ほかの企業(ライセンシー)に対し、特定のエリアにおいて製品の製造や商品の販売などを許諾します。
OEMとの違いは、ライセンシー側の目的が「ライセンサーのブランド力や技術を使うこと」である点です。OEMでは製造元に技術はあるものの、ブランド力や販売力がなく、製品を売るために販売元に契約をもちかけます。ライセンス契約ではライセンシー側に技術がないことも多いです。
OEMが「自社の製品を、貴社の名前で売ってください」という契約だとすれば、ライセンス契約は「貴社の製品を作り、売る権利を、自社にもください」という契約だといえます。
OEM生産を行っている業界
OEM生産は次のような業界・製品において普及しています。
アパレル
アパレルはOEMが広く浸透した業界で、海外メーカーで生産される商品が多いです。アパレルは海外OEMと相性が良く、海外メーカーへの受託により、生産コストを大きく抑えられるからです。
化粧品
アパレルと同じく、化粧品もOEMが盛んな業界です。例えばカネボウやポーラなどは、それぞれ異なる社名でOEMによる製造受託を展開しています。
自動車
日本の自動車業界にはOEMが浸透しており、国産メーカーの多くはOEMで車の製造・販売をしています。OEMは開発コストを抑えられるため、その分の費用で、商品の種類を増やせるからです。例えばマツダの軽自動車は、OEMによりスズキが製造しています。
携帯電話
代表的な例として、iPhoneはAppleではなく他社がOEMで製造し、Appleの名前で販売しています。
OEMで製造する3つのメリット
OEMで製造をすることには、販売元の企業にも製造元の企業にもメリットがあります。それぞれにどんなメリットがあるのか、3つ紹介します。
メリット1.少ないコストで商品を製造できる
OEMで製造する1つ目のメリットは、「少ないコストで商品を製造できる」ことです。これは、特に販売元におけるメリットです。
OEMで製造する場合、販売元は自社で製品をつくるための設備やリソースを用意せずに済みます。自社工場を持たない企業にとって、これは特に大きなメリットでしょう。製造元から「こんな製品を作ったので、貴社ブランドの名前で売らせてください」と持ちかけられた場合は、企画・開発の手間も省けます。
反対に、販売元から製造元に「この製品を作ってくれ」と持ちかけた場合、製造元は企画・開発と販売にかかるコストを削減できます。
メリット2.製造以外の業務に集中できる
OEMで製造する2つ目のメリットは、「製造以外の業務に集中できる」ことです。これも、販売元におけるメリットです。
OEMではなく自社で製造をする場合、設備投資はもちろん、製造に人的・金銭的なコストがかかり続けます。しかしOEMなら、設備にも製造にもコストをかけずに、販売だけに集中できるでしょう。自社で製品の企画・開発をするなら、これらに割くリソースも増えます。
メリット3.在庫リスクを軽減できる
OEMで製造する3つ目のメリットは、「在庫リスクを軽減できる」ことです。これは、製造元にも販売元にも関わるメリットです。
OEMで製造元となる企業の多くは、小ロット生産に対応できます。必要な分を少しずつ作ることで、在庫リスクを軽くできます。販売元が小ロット生産に対応できない場合、製造元に販売力がない場合などは、OEMが向いているでしょう。
OEMを行うときのデメリット・注意点
OEMは販売元にも製造元にもメリットのある方法ですが、受託先が競合になるリスクや、自社生産よりも得られる収益やノウハウが少なくなるデメリットもあります。
注意点1.受託先が競合になる可能性がある
OEMを行う1つ目のデメリットは、「受託先が競合になる可能性がある」ことです。製造を受託する企業には、その製品の作り方を教えなければなりません。自社のアイデアのほとんどを相手に渡すことになるため、将来的に、受託先が競合になるかもしれません。
OEMでノウハウを蓄積した受託先が自社開発や自社販売に乗り出したり、競合他社にOEMを持ちかけたりといったリスクがあることは、覚えておきましょう。
注意点2.製造技術・ノウハウが自社にストックされない
OEMを行う2つ目のデメリットは、「製造技術・ノウハウが自社にストックされない」ことです。自社で製造を行えば技術やノウハウが少しずつたまっていきますが、OEMにはそれがありません。自社に製造ノウハウが全くない状態のままだと、製造を委託できなくなったときや、受託先が競合になったときのダメージも大きいでしょう。
注意点3.生産における収益が得られない
OEMを行う3つ目のデメリットは、「生産における収益が得られない」ことです。製造を他社に委託すれば、その分コストがかかります。自社で製造するよりも、委託先の利益分、製造コストが高くなるでしょう。長期的には、設備投資をしてでも自社生産していた方が、利益の総量は大きくなるかもしれません。
OEMを進める流れ
OEMは次の流れで進めます。
- 依頼要件をまとめる
- 打ち合わせをしてすり合わせ
- サンプル・試作品を確認
- 製造
- 品質チェック後、納品完了
STEP1.依頼要件をまとめる
OEMで製造を受託する前に、まずは依頼要件をまとめましょう。製造してもらう量や期間、金額などをまとめ、受託先の候補を絞り込みます。製造してもらう製品の仕様もまとめておかなければなりません。
STEP2.打ち合わせをしてすり合わせ
依頼要件をまとめたら、受託先と打ち合わせをし、要件のすり合わせをしましょう。受託先には蓄積された製造ノウハウがあるため、より良い条件で製造ができないか、相手方に提案をしてもらうことも大切です。
STEP3.サンプル・試作品を確認
OEMではいきなり大量に製造してもらうのではなく、まずは小ロットでサンプルを試作してもらいます。受託先から提出されたサンプルをチェックし、修正点があれば伝えます。最終的な仕様が決まるまで、試作と改善を繰り返しましょう。
STEP4.製造
改善すべき点がなくなり、仕様が確定したら、いよいよ製造に入ります。この段階では品質や納期をしっかり管理し、期限までに、最小限のロスで製造が完了するように気をつけましょう。
STEP5.品質チェック後、納品完了
製造された製品が納品されたら、品質チェックをします。品質に問題がなければ納品完了となります。今後の依頼のことも考え、販売元も製造元も、ここまでの過程で気になったことを伝え合い、ナレッジをストックしておきます。
OEMを活用して自社製品を製造しよう
- OEMとは、製造を販売元以外で行う形式のこと
- 販売力が低いメーカーは、自社製品をOEMで販売する選択肢も
- OEMでは販売元と製造元、双方のコミュニケーションも重要
OEMを行うことで、販売元の企業には生産コストの削減や、企画・開発、販売に集中しやすくなるといったメリットがあり、製造元の企業には自社で販売するよりも高い売上を上げやすくなるメリットがあります。
ただ、「生産による収益が得られない」「受託先が競合になるかもしれない」といったデメリットもあります。メリット・デメリットと自社の状況を天秤にかけ、OEMを行うのか、またどのような契約をするのかなど、最適な方法を模索しましょう。
OEMが決まったら、販売元と製造元のそれぞれの強みを活かすことも大切です。打ち合わせではコミュニケーションをしっかり取り、両社の利益が最大化されるよう、提案やフィードバックを行いましょう。
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