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嘱託社員とは?契約社員や業務委託との違い、待遇、メリット・デメリットを解説

U-NOTE編集部

2022/09/21(最終更新日:2022/09/21)


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非正規雇用のひとつである「嘱託社員」。耳にする機会はあるものの、どのような雇用内容になっているのか、どんな方が嘱託社員に該当するのかは、よく理解していない方が多いのではないでしょうか。

そんな「嘱託社員」について解説。契約社員や業務委託との違いと嘱託社員の一般的な待遇に加えて、雇用主・労働者から見たメリット・デメリットについてもご紹介します。嘱託社員として勤務することや、制度の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

本記事の内容をざっくり説明
  • 嘱託社員と他の雇用形態との違い
  • 嘱託社員が注目されている背景
  • 賃金・有給休暇・保険の加入など、嘱託社員の一般的な待遇

 

嘱託社員とは?

嘱託社員とは、非正規雇用の一種です。一定の雇用期間が定められており、雇用形態は契約社員と似ています。

「嘱託」はそもそも、人に何かを任せることや、正規雇用ではない状態で業務を頼むという意味があります。嘱託社員はその意味通り、有期雇用契約を結び、企業からの仕事を請け負います。

多くの企業では、定年退職後の雇用形態のひとつとして嘱託社員の枠を設けています。医者や看護師など、専門的な知識と経験、技術を有する方が嘱託社員になるケースも少なくありません。

 

嘱託社員と他の契約形態との違い

嘱託社員以外に、契約社員・業務委託・パートタイマーなど、日本にはいくつかの契約形態があります。企業側は、それぞれどのような特徴があるのかを知っておきましょう。嘱託社員と他の契約形態との違いを説明します。

 

契約社員との違い

嘱託社員と契約社員はどちらも有期雇用で、雇用形態の面での違いはありません。ただし、労働時間が異なるのは注意点。嘱託社員はフルタイムではなくパートタイムの働き方が多いのに対し、契約社員のほとんどはフルタイムでの契約です。

 

業務委託との違い

業務委託は名前の通り、企業から業務を依頼されて働く形態のことです。嘱託社員との違いは、期間ではなく業務ごとに契約を結んでいる点。業務委託は、委託されていた業務が終われば、業務委託契約は終了します。

 

パートタイマーとの違い

嘱託社員とパートタイマーの違いは、労働時間と給与形態です。企業によって、嘱託社員はフルタイムで働いたり、パートタイマーと同様に短時間働いたりしています。また、給与形態が時間給ではないのも大きな違い。正社員の賃金を基準に何割かを給付するのが一般的です。

一方、パートタイマーはフルタイムより短時間で働くことがほとんど。時間給の契約になっているため、働いた日数に応じて月の給与額が変動します。

 

嘱託社員への注目が集まっている理由

定年退職後の従業員を雇う際に使われる「嘱託社員」という言葉。近年、なぜ嘱託社員への注目が集まっているのか、その理由を解説します。

 

年金受給開始時期の繰り上げ

嘱託社員への注目が集まっている理由の1つは、年金受給開始時期の繰り上げです。

2000年の法律改正により、厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられることが決定しました。男性は2013〜2025年にかけて、女性は2018〜2030年にかけて段階的に引き上げが行われます。

2013年の「高年齢者雇用安定法」の改正により、希望者は原則65歳まで働けるものの、大多数の企業では60歳を定年としています。定年退職の年齢と年金受給開始年齢にズレが生じているため、定年退職後も雇用を継続する嘱託社員が注目されているのです。

参考元:厚生労働省「50~60代の皆さんへ | いっしょに検証! 公的年金」

参考元:公益財団法人 生命保険文化センター「定年の年齢は何歳が多い?」

 

シニア世代の労働人口の増加

シニア世代の労働人口の増加も、嘱託社員が注目されているひとつの要因です。

中小企業庁が公開する「2 女性・シニアの労働参加の実態」によれば、2007〜2017年の10年間で、60歳以上の雇用者数が約330万人ほど増加しています。

また、30%近くが働けるうちはずっと働きたいと回答しており、労働への参画意欲が高いことも伺えます。定年後も就職活動を行う方が多いため、企業側もそれに対応して嘱託社員を受け入れています。

参考元:中小企業庁「2 女性・シニアの労働参加の実態」

 

定年制度とは

日本にある「定年制度」とは、国が定めた「高年齢者雇用安定法」により従業員が高齢になっても働けるよう企業に雇用を求める制度のことを指します。多くの企業でこの「定年制度」が導入されています。

 

継続雇用制度とは

定年制度には、60〜65歳の間で従業員が定年を選べる「継続雇用制度」もあります。継続雇用は、「再雇用制度」と「勤務延長制度」の2種類の契約パターンがあり、それぞれ退職金が支払われるタイミングや労働条件の変更の有無などに違いがあります。

 

■再雇用制度

「再雇用制度」は名前の通り、60歳で一度退職してから新たに雇用契約を結ぶ制度です。定年退職をしたタイミングで退職金が支払われるのが一般的。企業によっては二度、退職金を支払うケースもあるようです。

再雇用制度では、嘱託社員は1年間の有期雇用が通常。その後、65歳まで1年ずつ契約を延長していくパターンがほとんどです。

 

■勤務延長制度

「勤務延長制度」とは、定年退職予定者の勤務を延長できる制度のことです。勤務延長期限は65歳までで、希望者の全員がこの制度を利用することができます。

退職金は、勤務延長制度を利用し、最終的に退職する際に支払われます。

参考元:厚生労働省「高年齢者の雇用」

 

嘱託社員の待遇や労働条件

嘱託社員を雇用する場合、正社員時との待遇や労働条件の違いをあらかじめ知っておく必要があります。契約するにあたって法律が大きく絡んでくるので、それらを把握したうえで自社で働く嘱託社員への対応を決めましょう。

 

給与・賞与

嘱託社員は通常、定年退職後の年収よりも金額が下がる傾向にあります。理由としては、職務内容や責任範囲に加えて、勤務日数や勤務時間など労働条件を変更するパターンが多くあるからです。

そのため給与に関しては、定年前の6〜7割程度の金額が一般的。賞与はないケースが多く、支給しても正社員よりも小額であることがほとんどです。

 

社会保険・労働保険

社会保険や労働保険は、それぞれ対応が異なります。

社会保険は、定年退職の翌日に一度資格を喪失させ、再取得の手続きを行います。この作業により、保険料は再雇用後の報酬に応じて変更がなされます。

一方、労働保険は再雇用前と適用関係に変化がなく、手続き不要なのがポイント。ただし、再雇用後、短時間労働への契約内容の変更がある場合は、短時間労働被保険者に種別を変える手続きが必要です。週の労働時間が20時間以上30時間未満の方はこれに該当します。

 

有給休暇

嘱託社員には、一般的な正社員同様、有給休暇を与えます。労働基準法第39条で「雇入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤」した者に付与されるとあるように、この要件を満たしていれば、嘱託社員は有給休暇を取得する権利があるのです。

再雇用前に付与された年次有給休暇については、退職日と再雇用日の間で相当期間が経過していない場合につき、繰り越しが認められます。その際は、定年前からの勤続年数に対応した年次有給休暇の日数を付与することも覚えておきましょう。

 

退職金

嘱託社員の退職金は企業にもよりますが、支払わないのが一般的です。

ただし、就業規則上、退職金支給規定を設けている場合は、それなりの対応が必要。就業規則において別規則への委任規定を設けたうえで、嘱託規定を新たに決めて退職金を不支給としたり、嘱託社員は適用除外としたりと、退職金不支給の規定を設けておくと後のトラブルを避けられるのでおすすめです。

参考元:弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所「嘱託社員の退職金」

 

嘱託社員を雇用する企業側のメリット

嘱託社員を雇用する際の大きなメリットは、ベテランの社員の知見や経験を後進の育成に活かせることです。

嘱託社員は自社で活躍するうえで必要な能力を有しています。定年退職と同時に第一線から外れることが多く、以前より責任範囲の少ない業務を担うため、その分の時間を後輩への指導に当ててもらうことが可能。

社員を教育するために新たな人材を雇う必要がないので、同時に採用コストも削減できます。

 

嘱託社員として働く労働者側のメリット

嘱託社員として働く労働者側のメリットとしては、今まで培ったスキルを慣れ親しんだ職場で活かせることがあげられます。

定年退職後も労働への意欲が高い日本ですが、それでも新たな職場を探し、その職場で活躍できるスキルを身に付けていくのは非常に困難です。嘱託社員であれば、自身が得意な分野で引き続き能力を発揮することができます。

 

嘱託社員を雇用するときに知っておきたい注意点

嘱託社員を雇用する際は、賃金・有給休暇・社会保険・雇用保険・退職金をどうするかを決めておきましょう。特に、賃金に関しては嘱託社員を理由にただ引き下げるというのは認められません。再雇用時になぜ賃金の変更があるのか、正当な理由をあらかじめ全従業員に説明する機会を設けておきましょう。

「継続雇用制度」の適用により、嘱託社員を希望する全員を65歳まで雇用しなければならないのも注意点。会社都合で途中で契約を終了できないことは留意しておいてください。

 

嘱託社員として働くときに知っておきたい注意点

嘱託社員として働く際は、モチベーションを維持するのが難しいことに留意しておきましょう。再雇用契約を結ぶ場合、定年退職前に担当していた業務から離れるケースは多くあります。責任の範囲が狭くなるため、以前のように大きなやりがいを感じながら働ける可能性は低くなると知っておきましょう。

 

嘱託制度を検討しよう

本記事のまとめ
  • 嘱託社員は、契約社員・業務委託とは少し違う雇用形態
  • 給与や保険の加入、退職金など、嘱託社員に適用する条件を考えておく必要がある
  • 企業側・労働者側の両方にメリットがある制度

多くの企業では、高齢者の安定した労働を確保するため嘱託制度を導入しています。60歳の定年退職後から年金を受給されるまでに期間があるので、高齢者にとってメリットのある仕組みです。

また、企業側も経験と知識が豊富なベテランから後輩社員にその知見を共有できる機会を作れるメリットがあります。労働条件など確認しておくことは多いものの、人生100年時代に備えて、嘱託社員として働くことや、制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。


 

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