若手でありながらマネジメントを任された時、最初に立ちはだかる壁は「自分一人で何とかしなきゃ!」と思ってしまい、周りをうまく頼れないことではないでしょうか。
株式会社Acompanyのエンジニアマネージャー・田中来樹さん(23)も、マネージャー着任後は何をどうすればよいかわからない状態が続き、しかし弱音を吐くこともできず、会議に出ることすら辛いと感じる時期があったといいます。
しかし、ある一言がきっかけでその状況を乗り越え、今では「自分ができないことは認めて、助けてもらっている」と笑顔で話せるまでに成長しました。マネージャーとしてさらに上を目指し走り続ける田中さんに、詳しく話を聞きました。
プライバシーテックサービス「AutoPrivacy」
株式会社Acompanyは、2018年6月に設立。プライバシーテックサービス「AutoPrivacy」の開発/提供、コンサルティングの事業を展開しています。
さまざまな属性のデータを暗号化したまま分析する次世代暗号技術である"秘密計算"テクノロジーを軸に、プライバシー保護とデータ活用が対立する問題を解決し、プライバシーテックの日常を当たり前にすることで、プライバシー保護とデータ活用の両立を目指しています。
学生時代に起業を経験「価値を届けられるプロダクトでないと意味がない」
田中さんは、2017年4月に大学へ入学し、情報学部に在籍。3年時には就活やインターンに臨みつつ、院試の勉強、起業など、さまざまなことにチャレンジしました。
2020年5月にAcompanyへエンジニアとしてインターン入社。「正社員になりませんか」と声をかけてもらったことを機に、大学院を休学して正式入社することを決めたのは2021年10月のことでした。
-----学生時代に起業のご経験があるのですね。
田中さん:はい。同じ学部の同期が2018年に「起業家甲子園」というイベントに出場し、東海地区で予選を通過し、本戦に進むことになったタイミングで、発案したプロダクトを実際に作ることができるメンバーを探していました。
私は当時、エンジニアとしての実務経験を積めるアルバイトやインターンに臨んでいるうちに「自分でもプロダクトをゼロから作ってみたい」と思っていた時期だったんです。そのため、同期に声をかけて、一緒にプロダクトを作ることになりました。
-----起業に興味があったというよりは、「プロダクトを作ってみたい」という好奇心が大きかったんですね。
田中さん:そうですね。作ってみたい気持ちはあったけれど、一人ではできないな…と思っていたので、ちょうどいいタイミングだったと思います。
ただ、自分の中では「1年以内でビジネスとして軌道に乗らなかったら辞める」と決めていました。"一つの経験として"挑戦しつつ、研究にもしっかりコミットしたかったからです。
-----その結果、どうなったのですか?
田中さん:実際にプロダクトを作って、本戦でも発表し、「この事業で会社を立ち上げよう!」という話になり起業に至ったのですが、その後は何度もピボットすることになり、結局1年間で私は退きました。
-----起業の経験で学んだことはありますか?
田中さん:個人的には「M&Aでエグジットできれば…」と考えていたこともあり、「本当に誰かのためになるプロダクトを作る」という意思が弱かったように思います。ピボットを繰り返してしまったのも、「なんとなく、あったらいいかも」と感じるものを作っていて、本当に誰かに使ってもらっている姿をイメージできていなかったからかな、と。
「やっぱり、価値を届けられるプロダクトでないと世の中からも必要としてもらえないんだ」と学べた良い機会でした。
ただ、一緒に起業した同期はその後も事業を発展させ続けていて、私も以前と形は変わったものの、関わりは続けています。
人と事業に魅力を感じ、インターンから正社員へ
田中さんはその後、過去に何度かビジネスやキャリアの相談にのってもらっていたというAcompanyの高橋代表に、「インターンとしてジョインしないか」と声をかけられ、大学4年生の時にインターン入社しました。
そして大学院に進学した翌年に「正社員にならないか」と再び声をかけてもらい、大学院を休学して正社員になる道を選んだといいます。
-----休学してまで正社員になろうと思った理由は?
田中さん:高橋はじめ、Acompanyのメンバーがとても尊敬できる人だというのが大きな理由ですね。
「このメンバーと、この事業なら、人生賭けてもいいな」と素直に思えたことが、正式入社の決め手です。
-----プライバシーテックにはもともと興味があったのですか?
田中さん:実はAcompanyで仕事を始めるまでは、どこか遠い場所の話というか、自分事としてとらえきれていない分野でした。
しかし、国レベルで法律ができているし、世の中の潮流を見ていると、「これは近い将来、自分たち個人にも重要な分野になっていくだろう」と思うようになったんです。
"本当に世の中に価値が届けられる事業"だと感じることができたので、迷わずコミットすることを決められました。
初めてのPMの仕事に困惑…メンバーの一言で救われる
-----実際に入社後、力不足や経験不足を感じることはありましたか?
田中さん:もちろん、ありましたね。特に今年の春、新しいプロジェクトでプロジェクトマネージャー(PM)を任せてもらえることになったのですが、初めてのマネジメントという仕事にかなり戸惑いました。
特に、解像度の低いところから始まったプロジェクトなので、「何をすればよいかわからない」「とりあえずやってみたけど、このやり方でいいのか…」と、ずっと自分にも自信が持てず…。かと言って、「PMなんだから、弱音は吐けない」と思い込み、周りを頼ることもできませんでした。
こうした状況が続いていた時は、会議に出ることすら「しんどい」と思っていましたね。
-----それは辛かったですね。どのようにしてその状況を乗り越えたのですか?
田中さん:ある時、耐えかねてメンバーに思い切って相談してみたんです。
すると「もっと任せてくれていいんですよ」と意外な言葉をもらいました。
それまで近くで経営陣を見ていることもあって、どこか「自分もスーパーマンにならなきゃ」と思っていたんですよね。でも、その一言ですごく救われて、「自分は自分。できないことは認めて、メンバーに助けてもらおう」と考えられるようになりました。
-----なるほど。その言葉がターニングポイントになったんですね。
田中さん:はい。まだ信頼関係が十分に構築できていなかったメンバーだったので、まずは関係構築のためにコミュニケーションを強化したり、進め方を相談したり、とにかく「一緒に」進めていくことを意識するようになりました。
私はエンジニアの中でも「バックエンド」を担当しているのですが、「フロントエンド」の2人のメンバーにうまく頼りながら進められるようになったのは、"一歩前進"だと思います。
自分にできないことがあったとしても、それができる人の力を借りれば、目標に近づける…そう前向きに考えられるようになりました。
「自分が持っていない能力を持っている人」と一緒に何かを成し遂げたい
-----田中さんが仕事をする上で大切にしていることは何ですか?
田中さん:これまで長い期間、プレイヤーとしてできることをどんどん見つけてタスクに取り組んできて、その姿勢を評価してもらっていました。
が、マネージャーになった今は、個人としてではなく、チームとして成果を出すことを一番大切に考えています。
得意なタスクであっても、自分が取り組むのではなく、「チームとしてどうすればインパクトや成果を大きく出せるか」を考えてメンバーの能力を育てていくことが必要です。
-----すでにマネジメントの本質を見極めているような気がします。最後に、今後の目標についてお聞かせください。
田中さん:根本には「自分が得意で、楽しいと思うことで、社会に役立つことをやっていきたい」という気持ちがあります。
得意なことは、技術を使って、非連続的なアイデアを生み出し、実践すること。Acompanyのプロダクトは未開拓の領域ということもあり、この「自分の得意」が活かせる場所だと信じています。
そして、これからはプレイヤーとしてのスキルも磨きつつ、マネジメントを主軸に、「自分が持っていない能力を持っている人」と一緒に大きなことを実現したいです。
-----ありがとうございます。応援しています。
「できないこと」を認めるには、強さも必要。しかし田中さんは、メンバーの優しい一言で、すんなりと"ありのままの自分"を受け入れることができました。
「自分ではできないことも、誰かと一緒なら実現できる」そう思考を転換できれば、一人で抱え込んでいる時間にいち早く終止符を打ちたくなってきませんか?
出典元:株式会社Acompany
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