目の前の仕事には真剣に向き合っているけれど、「なんだか物足りない…」「もっと大きなことに挑戦したい」と感じてしまうことはありませんか?
もしかしたらそれは、当事者意識が不足しているからかもしれません。
株式会社エンペイの板垣光祐さん(26)は、大学院を修了した後、大手銀行へ入行。その後「人に直接価値を届けたい」と思うようになり、2021年12月にスタートアップである同社へ入社しました。
転職後は、初めての営業という仕事に戸惑いつつも、スタートアップならではの社風で当事者意識をぐんぐんと育てています。「前職の自分とは、考え方も仕事に向き合う姿勢も全く違う」と言う板垣さんに、その真意について詳しく聞きました。
集金業務のキャッシュレス化を実現する「enpay」
株式会社エンペイは、2018年11月に創業。集金業務のキャッシュレス化を実現するFintech×SaaSプラットフォーム「enpay(エンペイ)」を提供しています。
enpayは、パソコンとスマホを活用し、現金や紙を一切やり取りすることなく、請求〜支払いができる集金業務支援サービスです。
リアルタイムでの支払い状況の確認や消し込み作業など全て自動管理が可能。集金業務だけでなく会計データを自動作成し、会計業務管理までワンストップで行えます。
プロダクトや組織の在り方に魅力を感じ、転職
板垣さんは、2020年4月に大手銀行に入行。金融市場の動向リサーチなどの業務に携わった後、2021年12月に株式会社エンペイへ転職しました。現在はenpayのセールスメンバーとして、学校などの教育機関に向けた営業の仕事を担当しています。
-----新卒で大手銀行に入行した経緯について教えてください。理系の大学院ご出身だそうですね。
板垣さん:はい、大学院では半導体の研究を行っていたのですが、最終的に「一人で黙々と行う作業は自分には合っていない」「人とかかわりながら、大きなことがしたい!」と思うようになり、就活では理系枠ではなく一般枠で選考を受けていました。
特に金融・経済に興味を持っていたので、その業界に絞って就活していました。
-----なぜ、金融・経済の業界?
板垣さん:「何か事業を立ち上げる時も、融資など先立つものがないと、何もできないんだな」と感じたんです。ビジネスのツールとしてのお金の面白さを感じたことが一番の理由でしょうか。またお金の流れには、人の心が反映されているような気がして、その心理を見てみたいという気持ちもありました。
ただ、実際「これだけは譲れない」といった軸があったわけではなく、正直なところ「安定した大企業に入ろう」と思って大手銀行に決めました。
入行1年目は本店の企画局でリサーチの仕事をしていて、その後、鹿児島支店に転勤になり、鹿児島・宮崎における経済のリサーチを行っていました。
-----転職を考え始めたのはなぜですか?
板垣さん:「もっと人と関わって、人に直接価値を届けられる仕事がしたい」と徐々に思い始めたんです。具体的には営業の仕事をやってみたいな、と考えていました。
-----エンペイに転職を決めた理由についても教えてください。
板垣さん:金融・経済業界であることや、人に直接価値を届けられる仕事であること、フルリモートで働けることの3つを軸に転職先を探していたところ、エンペイに出会いました。
enpayというプロダクトの伸び率などを見て、「この数字は驚異的だ」と感動し、まず事業としての可能性を感じましたね。また、面接で「会社の事業を伸ばそうと思わなくていい。メンバーの成長が、ゆくゆくは会社の成長につながっていくので、やりたいことを存分にやってほしい」と言われたことも印象的でした。
会社の成長と同じぐらい、メンバーの成長にコミットしてくれる組織なんだという実感から、入社を決めました。
頭の使い方が全く違う仕事に困惑したことも
こうして、入社を決めた板垣さん。前職とは組織の規模も職種も全く異なるため、苦労したことも多かったそうです。
-----入社後、一番印象に残っていることは?
板垣さん:やっぱり、初受注ですね。入社2カ月後に、初めて受注することができました。
初めての営業だったので右も左もわからなかった中、「お客様がこうおっしゃっているので、自分としてはこう提案したい」と社内で伝え、納得が得られたこと、そして、その提案が受注につながったことは、少なからず自分の自信になりました。
受注後にそのお客様と会話する機会があったのですが「とても業務が楽になった」「enpayがない状況はもう考えられない」と言っていただけたのはとても嬉しかったですね。
-----入社2カ月で初受注はすごいですね。一番「難しいな」と感じることは何でしょうか。
板垣さん:前職の仕事と比べて、頭の使い方が全く違うところでしょうか。
前職ではリサーチャーという職種柄、数字などから「おそらくこういう流れなんだろう」という推測がベースとしてあり、そのうえで、数字の背景や動向の真意を考えて突き止める…という話の聞き方をしていました。誰かの発言内容から、「発言とは違うことを汲み取ること」も求められていたんですよね。
しかし、営業という仕事は全く異なり、お客様の言葉をそのまま受け止める必要があります。
前職の考え方を引きずってしまっていた頃は、よく上長からも「板垣くんの考えはわかったけど、お客様は何て言っていたの?」とよく聞かれていました。
-----なるほど。頭の使い方が原因で失敗してしまったこともありますか?
板垣さん:はい。お客様は「こういう業務をやっています」とおっしゃっていただけなのに、自分で「じゃあ、こういう課題があるに違いない!」と推測して社内で提案し、そのまま進めていったら、最終的にコスト面で失注してしまったことがあります。
あの時もし、推測ではなく、お客様から直接課題を引き出せていたら、違う結果になっていたかもしれません。
前職では持てていなかった"当事者意識"に気付く
-----他に、前職とはここが大きく違う!と感じることはありますか?
板垣さん:前職では持てていなかった"当事者意識"を、転職後は持てるようになってきた気がします。
もちろん前職でも持っておくべき意識だったのですが、退職前に鹿児島の支店長から「君は自分の仕事の範囲を決めつけてしまう傾向がある」と言われたことがあります。
振り返ってみると、確かにそれまでの自分は「これだけやればいい」と、仕事を制限してしまっていたように思います。これはまさに、当事者意識が持てていなかったからですが、今となっては「もったいなかったな」と感じます。
-----今は、具体的にどのような部分が変わったのでしょうか?
板垣さん:「会社の事業として必要だ」と思ったら、目の前の仕事以外にも取り組むようにしています。
例えば、「ある機能を追加しよう」という話があがった時、「本当にこの機能はお客様のためになるんだろうか?」と疑問に思ったことがありました。そして、その気持ちを素直に社内で伝えたんです。「この機能は、売れる自信がない」と。
もちろん、伝えただけでは意味がありませんので、「じゃあ、どうすればよいか」を考えるために、ミーティングの中で自分も色々と提案しました。その結果、追加のしかたを変えてリリースすることになりました。
こうした積極的な発言や提案は、前職では全くできていませんでしたので、過去の自分と比べたら別人のようかもしれません(笑)。
-----ご自身から見ても、大きく変化したんですね。
板垣さん:全社的に"当事者"として、若手であり入社して間もない自分に意見を求めてくれることが多く、そういった風土も影響しているのかもしれません。自分自身も入社後は、「誰でも意見を言える雰囲気づくり」にも注力しています。
前職で物足りなさを感じてしまっていたのは、当事者意識が持てていなかったからかも…と、今となっては思います。
自分で何か価値を生み出して多くの人に届けたい
当事者意識を持つことは大切ですが、簡単なことではないはず。それが持てるようになったのは板垣さんがビジネスパーソンとして成長している証なのかもしれません。
-----最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
板垣さん:長期的には、自分で何か価値を生み出して多くの人に届けたいです。それが社内で新しい事業を立ち上げることなのか、独立して起業することなのか、今はまだわかりませんが…。
事業の企画から営業まで、一貫してできるようになりたいですね。そのためにも、今は営業として実績を上げられるよう、尽力していきたいと考えています。
-----ありがとうございます。応援しています。
前職との違いを自分なりに理解しギャップを埋める努力をしていること、前職では持てていなかった当事者意識を持てるようになったこと。
その背景にある「自分の疑問を放置せず、やりたいと思った方向に進み続ける」という彼の潔い意志も、今回の取材で垣間見ることができました。
転職を機に、大きく飛躍を遂げている板垣さんの姿は、過去の彼のように「物足りなさ」を感じている若手ビジネスパーソンにも大切なヒントを届けてくれるのではないでしょうか。
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