自社の従業員に人材を紹介してもらう採用手法である「リファラル採用」の注目度が上がっており、詳細が気になっている人も多いのではないでしょうか。
本記事ではリファラル採用のメリットややり方、失敗しないためのポイントを解説します。リファラル採用にかかるコストについても紹介するので、ほかの採用手法との比較にお役立てください。
リファラル採用とは?
リファラル採用とは、従業員に人材を紹介してもらう採用手法です。「推薦」「紹介」を意味する、英語の「Referral」に由来します。
自社について深く理解した従業員に、自社とマッチしているであろう人材を紹介してもらうことで、ミスマッチを減らしたり、採用コストを抑えたりできます。
アメリカを中心に普及した方法で、日本ではスタートアップやベンチャー企業で取り入れられるケースが多いです。
リファラル採用と縁故採用との違い
リファラル採用と似た採用手法だと思われがちな採用方法のひとつに、縁故採用があります。どちらも従業員に人材を紹介してもらうのは同じですが、「どんな人材を紹介してもらい、どんな基準で採用するか」が異なります。
縁故採用で紹介されるのは、従業員の親族や、特別な関係にある人材です。いわゆる「コネ採用」のことで、紹介された人材のスキルや経験はあまり考慮されません。採用基準を満たしていない人材でも、採用せざるを得なくなることも多いです。
リファラル採用では「自社に合った人材」が紹介されます。自社の求める適性やスキルをもつ人材を紹介するのが前提で、採用基準を満たしていなければ、不採用になるのが普通です。
リファラル採用が注目されている背景
リファラル採用が注目されている背景には、労働人口の減少や働き方の多様化、ジェネラリスト(万能型の人材)よりもスペシャリスト(特化型の人材)を求める企業が増えたことなどが挙げられます。
1990年以降、日本の労働人口は減り続けています。減少は今後も続き、2050年には労働人口が全体の半数近くにまで減る予測です。フリーランスのような、企業に所属しない働き方をする個人も増えています。
参考:2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について │ 経済産業省
これらの背景から、求職者が応募してくるのを待つだけでは、十分な人材を確保できなくなりました。人材を待つのではなく、企業自らが探しにいく時代になりつつあります。
また、業種や職種が細分化され、スペシャリストな人材が求められるようになったのも大きな要因です。特定分野に強い人材は少なく、応募を待つだけではなかなか見つかりません。
そのため、自社とマッチする人材を人事担当者だけではなく、自社のメンバーたち全員で探していくことが求められているといえるでしょう。
リファラル採用のメリット
リファラル採用のメリットには、以下のようなものがあります。それぞれについて詳しく紹介します。
リファラル採用のメリット
- 自社とマッチする人材を採用しやすい
- 定着率が高い
- 転職潜在層の採用が可能
- 採用コストの削減
自社とマッチする人材を採用しやすい
リファラル採用の1つ目のメリットは、「自社とマッチする人材を採用しやすい」ことです。
リファラル採用では自社の業務や社風、求めている人材を深く理解した「自社従業員」に人材を紹介してもらいます。実際に自社で働いている人ほど、自社について理解している人はいないでしょう。
自社にマッチした人材を採用できることは、業績や業務効率、採用の費用対効果を高めることにもつながります。
定着率が高い
リファラル採用の2つ目のメリットは、「定着率が高い」ことです。紹介者から事前に企業のリアルな話を聞いていることで、企業文化や社風の理解率も高いといえます。そのため、入社してから「想像と違っていた……」となることが少なく、定着率が高くなりやすいです。
また、紹介した人とされた人が一緒に働けることも、定着率アップにつながります。もともとの知人・友人には、会社で知り合った相手よりも、仕事に関する相談がしやすいでしょう。不満を溜め込むことが少なくなれば、辞めたいという気持ちも起こりづらくなります。
転職潜在層の採用が可能
リファラル採用の3つ目のメリットは、「転職潜在層の採用が可能」なことです。通常の採用方法では、「転職を考えていない層」にはアプローチできません。
しかしリファラル採用なら、求人を探していない人や転職サービスに登録していない人にも、従業員を通してアプローチできます。より多くの優秀な人へアプローチできることは大きなメリットだといえるでしょう。
採用コストの削減
リファラル採用の4つ目のメリットは、「採用コストの削減」です。求人誌や求人サイトへの掲載、転職サービスの利用料、転職エージェントへの成果報酬などをかけずに採用活動が行えます。
もちろん、リファラル採用だからこそかかる費用もありますが、他の採用方法と比較すると低コストで実行しやすいといえるでしょう。
リファラル採用の合格率
株式会社MyReferの調査によると、リファラル採用の内定率は20%で、通常の採用手法の14倍だとされています。
もちろん、リファラル採用の合格率は企業により異なりますが、通常の採用手法に比べて合格率が高くなるのはたしかです。リファラル採用では自社の求める人材が見つかるケースが多く、応募時点でマッチ度が高いためです。
参考:イマドキの若者は先輩・知人の声で就職先を決めたい 新卒リファラル採用、応募からの内定率が通常の14倍に
リファラル採用のやり方
リファラル採用は従業員に人材を紹介してもらう点で通常の採用手法と異なりますが、採用プロセスはほかの手法とあまり変わりません。紹介を受けたら書類選考をしたうえで、数回面接をし、採用が決まります。
リファラル採用の報酬やインセンティブの相場・目安の金額
次に、リファラル採用の報酬やインセンティブの相場、かかる金額の目安を解説します。
リファラル採用では、人材を紹介してくれた従業員にインセンティブを支払いますが、それ以外の部分で採用コストを大きくカットできます。詳細を確認していきましょう。
紹介に関するインセンティブ
リファラル採用を活用する多くの企業では、人材を紹介してくれた従業員にインセンティブ(報奨金)を支払っています。自分にメリットがなければ、自社とマッチしそうな人材を探したり、知人や友人に声をかけたりするモチベーションは上がらないでしょう。
紹介に関するインセンティブは採用決定時に支払われることが多く、数万~数十万円が相場といわれています。
金銭的なインセンティブ以外では、「追加の有給休暇の付与」「人事的な評価」などが挙げられます。
会食や面談にかかる費用
リファラル採用でも、通常の採用手法と同じく、書類選考や面接が行われます。これらにかかるコストは、ほかの採用手法と大きな違いはありません。
ただ、従業員が知人・友人に詳しい話をするために、会食や面談をすることもあります。これらにかかる費用を支給することで、従業員の負担が減り、採用活動が活性化されるでしょう。
ツールを利用するコスト
リファラル採用にしても、ほかの採用手法にしても、採用活動を管理するツールは役立ちます。普段使っているツールを流用することもできますが、リファラル採用に特化したツールもあります。
これらのツールを使えば、採用活動を効率化できるでしょう。採用活動の規模にもよりますが、コストをかけてででも導入・利用する価値はあります。
リファラル採用で起こり得るトラブルやデメリット
リファラル採用には「採用するまでに時間がかかる」「従業員の同質化につながる可能性がある」といったデメリットもあります。トラブルを防ぐためにも、これらのデメリットについて理解しておきましょう。
採用するまでに時間がかかる
リファラル採用では、採用するまでに時間がかかることも多いです。転職を考えていない層にアプローチするため、「今は転職を考えていないから」と断られることも多いでしょう。
アプローチできる人数も、求人誌や求人サイト、転職エージェントに比べて少ないです。
突発的な人手不足のような、すぐに人材が必要なケースには向きません。急ぐ場合は、ほかの採用手法と組み合わせるのが前提となります。
従業員の同質化に繋がる可能性がある
リファラル採用は、従業員の同質化につながる可能性もあります。従業員の知人・友人に声をかける性質上、近い価値観や属性を持った人材が集まりやすいです。
年齢や性別、経歴など、多様性のある組織ではさまざまな視点からの意見が集まります。従業員の同質化は、組織としての視点や意見を狭めることにもつながりかねません。従業員の同質化を避けるためにも、リファラル採用はほかの採用手法と並行して進めましょう。
リファラル採用で失敗しないための3つのポイント
リファラル採用はほかの採用手法に比べて、難易度が高いです。次のようなポイントを意識しないと、人材が集まらないどころか、採用活動が失敗に終わってしまうかもしれません。
リファラル採用で失敗しないための3つのポイント
- ルールや規定を社内に広く告知する
- 合格後の人材配置に配慮する
- 「落ちたときに気まずい」などの人間関係への配慮を行う
ポイント1.ルールや規定を社内に広く告知する
リファラル採用で失敗しないための1つ目のポイントは、「ルールや規定を社内に広く告知する」ことです。リファラル採用では、人事に関わったことのない従業員が採用活動を行います。ルールや規定を広く告知し、誰でも取り組める環境をつくりましょう。
制度を広く告知し、従業員に浸透させないと、リファラル採用の制度が形骸化してしまいます。
ルールや規定をきちんと周知できないと、「紹介したのにインセンティブがもらえなかった」「聞いていた話と入社後の待遇が違うことが原因で、人間関係にヒビが入った」などの不満・トラブルにつながりかねません。
リファラル採用で求めている人物像や、採用の流れ、インセンティブなどの詳細を社内に明示するようにしてください。
ポイント2.合格後の人材配置に配慮する
リファラル採用で失敗しないための2つ目のポイントは、「合格後の人材配置に配慮する」ことです。採用後、紹介した人とされた人は、なるべく別の部署やチームに配置しましょう。同じ部署に配置しなくてはならないとしても、ある程度の距離は設けるべきです。
紹介した人とされた人は知人・友人関係にあることも多く、距離が近すぎると、仕事に対する「けじめ」がなくなってしまうかもしれません。
上司と部下の関係になったとき、両者が気まずい思いをしたり、ひいきにつながったりといったことも考えられます。
ポイント3.「落ちたときに気まずい」などの人間関係への配慮を行う
リファラル採用で失敗しないための3つ目のポイントは、「不採用時の人間関係への配慮を行う」ことです。「落ちたときに気まずい」「リファラル採用が原因で仲が悪くなった」といったことが起こらないよう、フォローできる仕組みをつくりましょう。
例えば、「リファラル採用で紹介された人も不採用になることはある」と周知徹底しておけば、気まずくなる可能性は低くなります。紹介する人と採用を決める人は別であり、口利きのようなことはできないことを、面接時に伝えるのも効果的です。
リファラル採用の実施は社内への共有が重要
- リファラル採用とは、自社のことを理解した従業員から人材を紹介してもらう手法
- リファラル採用では、ルールや規定の周知徹底、人材配置や不採用時の配慮が重要
自社の従業員に人材を紹介してもらうリファラル採用は、採用後のミスマッチを減らせる手法です。採用後の定着率アップ、採用コストの削減にもつながるうえ、通常できない「転職潜在層」へのアプローチもできます。
ただ、ルールや規定をきちんと決めて周知徹底できないと、制度の形骸化につながるでしょう。
「落ちたときに気まずくなったらどうしよう」「不採用になったら、紹介するためにかかった費用は負担してもらえないの?」といった不安を解消することが、積極的な紹介につながります。本記事を参考に、リファラル採用の導入準備を検討してみてはいかがでしょうか。
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