フィードバックとは、相手の行動をベースに評価やアドバイスを行う、人材育成の手法です。1対1で振り返りをするフィードバックなら、一人ひとりに合ったやり方を探し、人材を効率良く育てられます。
本記事ではフィードバックの目的や種類、手法を紹介します。効果を最大化する7つのポイントや、フィードバックと似た言葉も紹介するので、人材育成全般に役立つでしょう。
- フィードバックの種類
- フィードバックを行う目的
- 効果的なフィードバックを行うポイント
フィードバックとは?
ビジネスにおけるフィードバックとは、従業員の行動や言動、業績に対して評価・アドバイスをすることです。1対1で行われることが多く、従業員それぞれに合った課題や改善点を指摘します。
フィードバックの目的は従業員の成長を促すことです。ミスを防いだりより良い行動を起こしたりするための「指摘」も必要ですが、相手のモチベーションを高めるために「褒めること」も欠かせません。この点が、単なるアドバイスや指摘とは異なります。
フィードバックと似た言葉との違い
フィードバックと似た言葉に、次のようなものがあります。それぞれどんな意味で、フィードバックとは何が違うのかを理解すれば、従業員の育成やマネジメントに活用しやすくなるでしょう。
【フィードバックと似た言葉】
- コーチング
- ティーチング
- マネジメント
- レビュー
- チェックバック
- フィードアップ
- フィードフォワード
コーチング
「コーチング」とは、相手の話に耳を傾けることを軸にした手法のこと。相手の話を聞きながら、相手自らが課題や改善策を見つけ出すためにサポートすることに注力します。
フィードバックとの違いは「対話の仕方」にあり、フィードバックでは具体的な答えを提示し、コーチングでは答えを導き出すための質問をするところに違いがあるといえるでしょう。
ティーチング
「ティーチング」とは、その分野に深い知見や豊富な経験を持つ人が、これらを持たない人にノウハウや知識を教えることです。英語の「Teach」に由来する言葉で、学校の授業のように「答えを教えること」を軸にします。
フィードバックとの違いは、講師から受講者への一方通行なコミュニケーションであること、1対多で行われることもあるなどが挙げられます。(※ただし、1対1でティーチングを行うこともあります)
マネジメント
「マネジメント」は、管理を軸にした人材育成の手法です。組織や経営に対して使われることも多い言葉で、人材育成に対して使うときは、「人材マネジメント」と呼ぶことが多いです。
フィードバックとの違いは、「範囲」にあります。フィードバックはその場その場で課題や改善策を提示するのに対し、マネジメントでは従業員の成長を促す環境をつくったり、評価や人事制度を整えたりもします。
より長期目線で、広い範囲にアプローチするのが人材マネジメントです。
レビュー
「レビュー」は、評価や批評のことです。フィードバックと異なり、シンプルに感想や批評を提供するだけに留まることが多く、そこから改善策を導き出すことはあまりありません。
チェックバック
「チェックバック」とは、さかのぼってチェックすることです。フィードバックと似た意味ですが、使うシーンが異なります。
チェックバックは映像業界の言葉で、制作物に対して使われます。フィードバックは人材育成をはじめ、ビジネスシーン全般で使われる言葉です。
フィードアップ
「フィードアップ」とは、目的や目標を設定したり確立したりすることです。フィードバックの前段階として行われるもので、「フィードアップ→フィードバック→フィードフォワード」の順に、評価や改善を進めていきます。
フィードフォワード
「フィードフォワード」とは、フィードバックを踏まえて次の打ち手を考えることです。フィードバックで行動や課題を振り返った後、それを改善するために何をするのかを決めます。
フィードバックを行う目的・効果
フィードバックには次のような効果があります。フィードバックを適切に取り入れ、効果を高めるために、どのような目的に合った手法なのかを把握しておきましょう。
【フィードバックを行う目的・効果】
- 人材育成のため
- 目標達成のため
- 生産性、パフォーマンスの向上のため
- モチベーションの向上のため
- 自己理解を促進させるため
目的1.人材育成のため
フィードバックの1つ目の目的は「人材育成」です。従業員の行動や言動をもとに行われるフィードバックは、一人ひとりに合った指導を行えるため、効率的・効果的な育成手法として注目されています。
目的2.目標達成のため
フィードバックの2つ目の目的は「目標達成」です。従業員が実際に行ったことにスポットライトを当てるフィードバックなら、短期間での効果が期待できます。目標に向けて施策や業務に取り組む中で、都度フィードバックをすれば、達成確率は高まるでしょう。
目的3.生産性・パフォーマンスの向上のため
フィードバックの3つ目の目的は「生産性・パフォーマンスの向上」です。フィードバックでは結果だけでなく、結果にいたるまでの過程も振り返ります。どうすればより短時間で、より高い成果を出せたのか、従業員それぞれに合った改善点が見えてくるでしょう。
目的4.モチベーションの向上のため
フィードバックの4つ目の目的は「モチベーションの向上」です。1対1でのコミュニケーションを基本とするフィードバックでは、従業員に自己効力感(自分の力で目標を達成したり、状況にいい影響を与えたりできるという感覚)や、「大切にされている」という感覚を与えられます。
一人ひとりに合った方法を模索することもできるため、「これならできる」「この施策は意味がある」と思ってもらいやすいです。
目的5.自己理解を促進させるため
フィードバックの5つ目の目的は「自己理解の促進」です。1対1でコミュニケーションを取り、一人ひとりの従業員に対して振り返りやアドバイスを行う過程で、従業員は自分のことを深く理解していきます。
自分の強みや弱み、組織内でのポジションを理解したメンバーが増えれば、チームとしてのより効率的で効果的な動き方も見えてくるでしょう。
フィードバックの種類
フィードバックには「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」の2種類があり、それぞれ、従業員(フィードバックの受け手)に対してどのような表現を用いるかが異なります。
「どちらが優れている」「この従業員には、こちらの手法で」というものではなく、両方を組み合わせながらフィードバックをすることが大切です。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、従業員に対してポジティブな表現を使う方法です。相手の承認欲求を満たしながら改善や成長を促すため、モチベーションや自己効力感の向上にもつながりやすいです。
基本的にはポジティブフィードバックを軸に、人材育成を進めていきます。従業員一人ひとりの「強み」を育てていく方法なため、効果が出るのも早いでしょう。
ただ、具体的な課題や改善点を示すのには向かず、ネガティブフィードバックを適宜織り交ぜることも必要です。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは、従業員に対してネガティブな表現を使う方法です。行動や言動のどこが間違っているのか、指摘され否定されなければ、問題に向き合うのは難しいでしょう。弱みや課題に具体的に触れられるため、短期間での改善が期待できます。
ただ、ネガティブフィードバックはモチベーションや自己効力感を下げることにもつながりかねません。使い方や行う対象の選び方には、慎重になるべきです。
高い主体性を持つ人材や、リーダークラスの人材を育てるのに適しています。
フィードバックの手法
フィードバックにはいくつかの手法、フレームワークがあります。それぞれ適した状況や使い方が異なるため、一人ひとりに合ったもの、状況に合ったものを選びましょう。
【フィードバックの手法】
- SBI型
- サンドイッチ型
- ペンドルトンルール
- FEED型
- KPT型
SBI型
SBI型は、ポジティブフィードバックにもネガティブフィードバックにも使える手法です。SBIとは次の頭文字を取ったもので、これらを軸に、具体的な指摘をしたいときに適しています。
- Situation(状況):その行動や言動をしたとき、どんな状況だったか?
- Behavior(行動):どんな行動や言動をしたのか?
- Impact(結果):その行動や言動によりどんな影響があったか?
「状況→行動→結果」と順序立ててフィードバックをするため、相手にとって納得しやすく、何が良くて何が悪かったのかも理解しやすいです。
サンドイッチ型
サンドイッチ型は、「褒める→指摘→褒める」の流れで行うフィードバックです。パンとパンで具を挟むサンドイッチのように、ポジティブなフィードバック(褒め)でネガティブなフィードバック(指摘)を挟むことから、サンドイッチ型と呼ばれます。
ポジティブなフィードバックで挟むことで、ネガティブな指摘も受け入れやすくなります。モチベーションダウンを抑えながら、具体的な指摘ができる手法です。
ペンドルトンルール
ペンドルトンルールは、次の流れに沿って、対話形式で進めるフィードバックです。
- 話す内容について確認する
- それについて、良かった点を伝え合う
- どうすればもっと良くなるか、改善点を出し合う
- 改善のために取るべき行動を決め、承認してもらう
- フィードバックの内容について振り返る
流れが決まっているため取り組みやすく、お互いにアイデアを出したり承認を受けたりしながら進めるため、納得感も得られます。
FEED型
FEED型は、相手の行動をベースにフィードバックを進める手法です。特定の行動に注目してフィードバックできるため、ピンポイントで改善したいことがあるときに適しています。
FEEDは次の単語の頭文字を取ったもので、上から順に確認や指摘をしていきます。
- Fact(行動):フィードバックの対象となる行動の確認
- Example(理由):なぜフィードバックするのかの理由
- Effect(影響):その行動によってどんな影響があるか
- Different(別の案):改善するために何ができるのか、代替案を提示
KPT型
KPT型は、続けるべきことと改善すべきことを同時にチェックできる手法です。KPTは次の頭文字を取ったもので、週単位のような、短期的な振り返りに適しています。
- Keep(継続):やって良かった、続けるべきこと
- Problem(問題):現状の問題点や課題
- Try(試み):問題解決のためにすべき試み
効果的なフィードバックを行う7つのポイント
効果的なフィードバックを行うには、相手にとってのわかりやすさ、納得感が大切です。そのために重要なのが、次の7つのポイントです。
- 未来や目標と関連付けて話す
- タイムリーに行う
- 実現可能で具体的な内容をフィードバックする
- 客観的な事実に基づいて行う
- 信頼関係を築く
- ネクストアクションを明確にする
- 継続的に行う
ポイント1.未来や目標と関連付けて話す
効果的なフィードバックを行う1つ目のポイントは、「未来や目標と関連付けて話す」ことです。何のためにフィードバックをしているのか、フィードバックで決めたことに取り組むと何が得られるのか、未来と紐付けることで、相手がイメージしやすくなります。
ポイント2.タイムリーに行う
効果的なフィードバックを行う2つ目のポイントは、「タイムリーに行う」ことです。相手の行動や言動について、なるべく早めにフィードバックしましょう。時間が経つと自分が何を、どんな意図だったのかを忘れてしまいます。
相手の意図を正しく把握できないと、ズレた内容のフィードバックになってしまうでしょう。
ポイント3.実現可能で具体的な内容をフィードバックする
効果的なフィードバックを行う3つ目のポイントは、「実現可能で具体的な内容をフィードバックする」ことです。
フィードバックで提示した改善策や代替案がとても実現できないようなものでは、取り組む意欲が起こらないでしょう。抽象的なフィードバックでは、次に何をしたらいいのかがわかりません。
ポイント4.客観的な事実に基づいて行う
効果的なフィードバックを行う4つ目のポイントは、「客観的な事実に基づいて行う」ことです。フィードバックは実際の行動や言動、成果などを振り返りながら行います。起こったことを客観的に捉えられないと、本質的な問題は見えてこないでしょう。
ポイント5.信頼関係を築く
効果的なフィードバックを行う5つ目のポイントは、「信頼関係を築く」ことです。相手との信頼関係がなければ、その行動にどんな意図があったのか、本音で話してもらえないかもしれません。本当の意図がわからなければ、正しい振り返りも改善策の提示もできないでしょう。
フィードバックで決めた「次にやること」を実行してもらうときにも、信頼関係は重要です。「期待に応えたい」「次のフィードバックを有意義にしたい」と思ってもらえるよう、普段のコミュニケーションも大切にしましょう。
ポイント6.ネクストアクションを明確にする
効果的なフィードバックを行う6つ目のポイントは、「ネクストアクションを明確にする」ことです。
「積極的に取り組む」「主体性を持って取り組む」などは重要なフィードバックのようにも思えますが、何を持って主体性を持って取り組めたのかを判断しにくくなります。
「アポイントを前週比120%行う」など、結果が事実として判断しやすいものをネクストアクションとして指定しましょう。
また、「AをしたらBをする」「Bの次はCをする」のように、何を、どんな順番で進めればいいのか具体的に示すことも重要です。何をするのか明確だと、一つひとつの取り組みの「間」が短くなります。
ポイント7.継続的に行う
効果的なフィードバックを行う7つ目のポイントは、「継続的に行う」ことです。フィードバックは1回で終わらせず、継続的に取り組みましょう。一度にたくさんのことを改善しようとするのではなく、ひとつずつ、確実に改善していく意識が大切です。
効果的なフィードバックを行うポイントを押さえよう
- フィードバックとは、相手の行動や言動、成果に対して評価や指摘をすること
- 信頼関係を築きながら、問題を一つひとつ解決できるよう、継続したフィードバックが必要
フィードバックは相手の行動や言動に基づき、一人ひとりに合った評価やアドバイスをする手法です。マニュアル化しづらい「一人ひとりに合ったやり方」を探すことで、人材を最大限に活用できます。
フィードバックで適切な振り返りをしたり、アドバイスしたことを実行したりするうえで、基盤となるのが信頼関係です。フィードバック(面談)中だけでなく、普段から密なコミュニケーションを取ることで、フィードバックの精度も上がるでしょう。
効果的なフィードバックをするためには、型やポイントを押させることが重要です。本記事を参考に、効果的なフィードバックを行えるよう、意識してみてはいかがでしょうか。
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