HOMECareer Runners 「やっと頑固な自分から卒業できた」頭打ちだった集客数を倍増、次に進めたのは"誰かに頼る勇気"を持てたから

「やっと頑固な自分から卒業できた」頭打ちだった集客数を倍増、次に進めたのは"誰かに頼る勇気"を持てたから

白井恵里子

2022/07/07(最終更新日:2022/07/08)


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杉本朋哉さん/提供:ご本人

これから起業を目指したいと思っている若手ビジネスパーソンのなかには「自分が立ち上げるビジネスなのだから、こだわりを捨てずに、自分の力だけで成功させたい」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、「自分の力だけで」成功している起業家がどれほどいるでしょうか?

2019年に株式会社Familyinnを創業した杉本朋哉さん(24)も、起業した当時はこだわりが強く、周囲のアドバイスも聞き入れないタイプだったと言いますが、ある時「このままではうまくいかない」と気付きました。今はメンバーの採用や業務の外注など、不得意分野を自分以外の誰かに任せることの大切さを実感しているのだそう。

頭打ちだった集客数の倍増にも成功し、次のステップに向けて進み始めている杉本さんに、詳しく話を聞きました。

田舎ホームステイサービス「Familyinn」

杉本さんは、20歳の時に株式会社Familyinnを創業。

多くの若者も直面しているであろう「孤独問題」に着目し、2020年8月に"観光以上、移住未満の暮らしを実現する"田舎ホームステイサービス「Familyinn」をリリースしました。現在では月に40人ほどが利用するサービスへと成長しています。

そして今年の春、「社会を良くするためには別の働きかけも必要ではないか」と考えるようになり、会社のミッションを刷新。活動内容を大幅にアップデートして、自立的経済圏(地域で経済が循環する仕組み)を確立する地域共同体の構築を目指すことを決めました。

U-NOTEでは2020年8月、創業当時の杉本さんにインタビューしており、今回は当時からさらに一歩を踏み出した姿を改めて取材。この2年間で起きた出来事について、詳しく話を聞きました。

前回インタビュー記事はこちら▼

周囲のアドバイスに耳を貸さなかった創業当時

----前回の取材は、創業されて間もない時期でした。その後、事業はどのように伸びていったのですか?

杉本さん:実はすぐに軌道に乗ったわけではなく、決して順調な滑り出しではありませんでした。

まず、もともとホームステイの期間を「1カ月」に設定していたのですが、大学を辞め、企業で働いているわけではない自分では、この期間が「長すぎる」ということに気が付けなかったんです。

大学に通っている人や仕事をしている人にとって「1カ月の休みを取得すること」は、けっこう高いハードルなんですよね。

しかし、ビジネス仲間から「もっと期間を短くしたほうがいいのではないか」とアドバイスをもらっていたにもかかわらず、自分の中のこだわりを捨てきれずに聞く耳を持てませんでした。

-----そうだったんですね。でも実際に期間を「1週間」に短縮されましたよね。

杉本さん:はい。「やっぱり、このままではうまくいかない」と気が付いて、ホームステイの期間だけでなく、ターゲットの絞り込みや、もっと使ってもらうためのプラン内容など、修正することに決めました。

ターゲットは、コロナ禍で海外留学を断念せざるを得なかった海外志向の学生に絞り、プランも、ただ滞在するだけではなく「農業が体験できる」などアクティビティをセットにした内容に変更しました。

体験者インタビューなども重ね、細かいリサーチも経て、約1年かけて練り直しましたね。2021年の夏ごろにやっと内容が固まりました。

プラン内容を練り直し、集客課題は「プロに任せる」で解決

「あの時の自分は頑固だった」と当時を振り返る杉本さんですが、サービスのターゲットやプラン内容を修正した後も、集客には特に苦戦したそうです。

-----集客が課題だったんですね。

杉本さん:はい。ターゲットを定めて、SNSマーケティングやコンテンツマーケティングなど色々試しましたが、なかなか思うような集客が叶わず、しんどい時期がありました。

繁忙期で常に月15人ぐらい、自然流入はあったんです。でも、受け身の状態が続き、この数が全く増えませんでした。

-----そこからどのようにして増えていったのですか?

杉本さん:創業当時の自分からは考えられませんが、思い切ってSEO対策を外注する決断をしたことが功を奏し、繁忙期では月40人ほどの自然流入が叶うようになりました。

以前は周りの仲間の意見にも耳を貸そうとしなかった私ですが、「不得意分野はプロに任せよう」「手が足りない部分は誰かに頼ろう」と徐々に思えるようになっていったことが、事業の成長にも大きく繋がっていったのではないかと思います。

今は業務委託メンバーやインターン生などと一緒に事業を進めており、特にインターン生には利用者とステイ先のマッチングなどをお任せしています。

-----前回取材時では杉本さんお一人でしたが、メンバーが増えたのですね。

杉本さん:はい。採用はとても難しくて、一時はメンバーを採用しすぎて失敗したこともありますが(笑)。

試行錯誤しながらではありましたが、「どういう人がFamilyinnに合っているのか」「何を基準に選べばよいのか」を自分なりに考えながら、メンバーを採用し、今に至ります。

インターン生とのオンラインミーティング/提供:ご本人

自立的経済圏を目指し、ミッションを刷新

杉本さんは今、会社としての「次のステップ」を踏み出そうとしており、今年4月にミッションも刷新しました。

-----どのような経緯で、ミッションを刷新したのですか?

杉本さん:安定的に集客が叶うようになったら、今度は「このまま数を増やしていくことだけに注力していてよいのだろうか?」と思うようになりました。

サービスを利用してくださった方は「とても良い経験だった」と感想を寄せてくださいますが、その場限りで終わってしまっていては、自分が目指す社会は実現できないのではないか、と。

-----杉本さんが目指しているのは「相互扶助の関係を築ける社会」でしたよね。

杉本さん:そうです。目的は変わっておらず、その手段を少し変えていきたいなと思っています。

これまではホームステイサービスということで「人」に焦点を当てていましたが、本気で世の中を変えたいのなら、人の優しさとか、温かみだけに頼るのではなく、その地域がインフラや食など様々な面で自立できる土台を作る必要があります。

そこで考えたのが、自立的経済圏を確立する地域共同体の構築です。

具体的には、①地域の支出入などのデータ分析を行い、②地元住民の声を伺い、③それらの情報をもとに、ローカルで事業立ち上げ/支援を行っていきたいです。新しい地域経済循環の流れを作り出したいと考えています。

要は、地域が"自分たちの財源"をつくることで、強い地域コミュニティを育んでいけるよう携わっていきたいのです。自分もいち参加者として取り組むことも楽しいかなと考えています。

5月には、山形県の事業のボードメンバーとして参画/提供:ご本人

お寺暮らしのプラットフォーム「寺あんご」リリース、次ステップへ

-----とても大きな構想ですね。

杉本さん:そうですよね。ただ、いきなり大きなプロジェクトを行うわけではありません。

まずは今のホームステイサービスに、農業やまちづくりなどといった+アルファの要素を追加していきたいと思っていて、その第一歩として今年3月、お寺暮らしのプラットフォームサービス「寺あんご」をリリースしました。

利用者はお寺に暮らすことで、宿坊のように修行体験を行い心と体を調えることができます。このサービスを通じて、全国のお寺の再復興も目指したいと考えています。

プレスリリースはこちら▼

-----これからが楽しみです。ありがとうございました。

今後は、全国の自治体と手を組んでローカルビジネスの立ち上げに注力していきたいと、杉本さんは今後の展望を語ってくれました。

「自分だけのこだわり」に固執していた時期があったとは思えないほど、今の彼は外の世界をしっかり見つめています。

杉本さんのストーリーからは、「自分以外の誰かを頼ったり、誰かと手を組むことは、決してマイナスなことではなく、むしろ可能性を広げてくれる機会だ」というメッセージを受け取ることができそうですね。

提供:ご本人

出典元:株式会社Familyinn

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