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航空管制官になるには?年収や仕事内容・航空管制官採用試験の難易度について解説

U-NOTE編集部

2022/07/07(最終更新日:2022/08/25)


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航空機の安全なフライトを陰で支える「航空管制官」。パイロットと密にやりとりをし、適切な高度や航空経路の指示を行う、国家公務員の職種のひとつです。

そんな航空管制官の仕事内容や採用試験の難易度について解説。また、年収の目安や向いている人の特徴、必要なスキルもご紹介します。

 

航空管制官とは?

航空管制官は、空港や航空交通管制部に所属し、安全かつ効率的な航空交通の維持・管理に努める職業です。航空管制官は国家公務員であり、採用試験に合格すればなることができます。

パイロットに離着陸の許可や指示を出したり、レーダーで飛行中の航空機の位置を確認して各航空機が安全な間隔を保てるよう誘導したりするのが主な業務です。常に航空機や航空交通の状況を把握し、安全な飛行を維持する役割を担っています。

 

航空管制官の仕事内容

航空管制官の業務は、主に4つ。航空機による事故を未然に防ぐため、管轄範囲内の航空機の安全な飛行をサポートするのが役割です。具体的にどんな業務を行うのか、各仕事内容を解説します。

 

1.飛行場管制業務

航空管制官の1つ目の仕事は、飛行場管制業務です。

飛行場管制業務では、空港にある管制塔から、離着陸する航空機や飛行場周辺を通過する航空機に対して指示を出します。管制塔で管轄する空域の範囲は、空港から半径9km、上空約900mの円柱空域が基準。この圏内を通過する航空機を管制するのが仕事です。

 

2.ターミナル・レーダー管制業務

航空管制官の2つ目の仕事は、ターミナル・レーダー管制業務です。

ターミナル・レーダー管制業務では、レーダーによって航空機を捉え、管轄する進入管制区内を飛行する航空機に対してさまざまな指示を行います。例えば、空港の周りを飛行している航空機に飛行経路や高度、スピードを指示するのもターミナル・レーダー管制業務のひとつです。

レーダーが整備中だったり故障中だったりするときには、目視で進入管制業務を行うことも。業務内容はレーダーを使用する際とほとんど同じですが、目視のため作業効率は劣ります。

 

3.着陸誘導管制業務

航空管制官の3つ目の仕事は、着陸誘導管制業務です。

着陸誘導管制業務では、着陸する航空機を滑走路へと誘導します。航空管制官はレーダーで飛行コースを確認し、航空機に対して適切な高度を指示。パイロットから滑走路が見えないような天候でも、無事に航空機を着陸させる役割を担っています。

 

4.航空路管制業務

航空管制官の4つ目の仕事は、航空路管制業務です。

航空路管制業務では、空港と空港の間を飛行する航空機に対し、飛行経路や高度などの指示を行います。札幌・東京・神戸・福岡の4箇所に設置された航空交通管制部の航空管制官に、航空機をリレーのように受け渡し、安全に目的地へ誘導します。

 

航空管制官の年収の目安

航空管制官は国家公務員であるため、俸給額は「専門行政職俸給表」に基づいて計算されます。

例えば、2019年12月1日時点で航空管制官として東京空港事務所に配属になった場合の給与月額は、額面で24万5000円程度。月給だけでも年収は約290万円となり、このほか期末手当・勤勉手当・航空管制手当・夜間特殊業務手当・夜勤手当・休日給がそれぞれ加算されます。

そのため、航空管制官は比較的、年収が高い職業といわれています。公務員であるため、勤続年数に応じて給料が上がるのも特徴です。

参考:国土交通省 航空保安大学校「2020年度 募集案内 航空管制官採用試験

 

航空管制官になるための方法

航空管制官になるには、航空管制官採用試験に合格しなければなりません。しかし、採用試験に合格しただけでは一人前の航空管制官として任命されず、さらなる研修を受け、内部試験での技能証明が必要。航空管制官になるための3つのSTEPについて解説します。

 

STEP1.航空管制官採用試験に合格する

航空管制官になるには、まず航空管制官採用試験に合格する必要があります。

航空管制官採用試験は、21歳以上、30歳未満の方であれば学歴不問で受験が可能。ただし、視力や聴力など、身体適性の条件をクリアしなければならない点には注意しましょう。

 

STEP2.航空保安大学校で8カ月の研修を受ける

航空管制官採用試験合格後、航空保安大学校で研修を受けます。研修期間は8カ月で、大阪府泉佐野市で実施されます。

8カ月間、研修生として学科と実技の研修を受けます。学科科目は多く、英語・航空法規・電波法規・航空気象学・航空機概論・航空管制概論・無線工学・航空無線施設概論・航空航法・飛行場管制論・進入管制論・ターミナル・レーダー管制論・航空路管制論・保健体育などです。

実技科目は、飛行場管制方式・進入管制方式・ターミナル・レーダー管制方式・航空路管制方式・情報処理システム操作など。短期間のため、朝から夕方までしっかりと研修を受けます。

なお、研修期間中も給与は支給されます。給与額は、4年制大学卒で職歴がない場合で19万3000円程度。加えて、期末手当なども支給されます。

参考:国土交通省 航空保安大学校「航空管制科

参考:国土交通省 航空保安大学校「2020年度 募集案内 航空管制官採用試験

 

STEP3.配属後、技能試験に合格する

8カ月の研修を終えた後は、全国各地の空港や航空交通管制部等の管制機関に配属。配属先で数ヵ月〜数年のOJTを経て、今度は技能試験を受けます。技能試験合格後、技能証明を取得してやっと航空管制官として任命されます

ちなみに、航空管制官の業務資格は勤務地ごとに異なります。数年ごとに全国規模で実施される転勤のタイミングで、すべての航空管制官は一定期間の訓練を受け、内部試験に合格しなければなりません。

参考:職業情報提供サイト jobtag「航空管制官

参考:国土交通省「航空管制官になるには

 

航空管制官採用試験とは

航空管制官になるには、航空管制官採用試験に合格しなければなりません。学歴不要で受けられるのが魅力ですが、年齢には制限があります。また、試験は1次〜3次まであるのも特徴。航空管制官を目指す場合に知っておきたい、航空管制官採用試験について解説します。

 

航空管制官採用試験の内容

航空管制官採用試験は、年に1回実施されています。試験は3次まであり、それぞれ試験種目が異なります。
第1次試験は、基礎能力試験・適性試験一部・外国語試験(聞き取り・多肢選択式)。

  • 基礎能力試験:公務員として必要な基礎能力の筆記試験
  • 適性試験一部:航空管制官として必要な記憶力、空間把握力についての筆記試験
  • 外国語試験(聞き取り):英語のヒアリング
  • 外国しけん(多肢選択式):英文解釈・和文英訳・英文法についての筆記試験

試験地は、北は北海道から南は沖縄まで全国で実施されます。

第2次試験は、面接の外国語試験と人物試験。

  • 外国語試験(面接):英会話
  • 人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接

試験地は絞られており、札幌市・東京都・泉佐野市・福岡市・那覇市となっています。

第3次試験は、適性試験二部と身体検査、身体測定の3つ。

  • 適性試験二部:航空管制官として必要な記憶力、空間把握力についての航空管制業務シミュレーションによる試験
  • 身体検査:主として胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査
  • 身体測定:視力、色覚、聴力についての検査

試験地は泉佐野市のみです。1次〜3次試験を順番に受験し、合格することで航空管制官として採用されます。

参考:人事院「航空管制官採用試験

 

航空管制官採用試験の難易度

航空管制官採用試験は、難易度の高い試験といわれています。2020年度・2021年度の試験実施状況は以下の通り。

  • 2020年度:最終合格者数41名
  • 2021年度:最終合格者数42名

例えば、2020年は申込者数767名に対して合格者数が41名なので、倍率は18.7%。2021年は839名の申込者数に対して合格者数が42名のため、倍率は19.9%となっています。いずれも高倍率であることがわかります。

参考:人事院「航空管制官採用試験実施状況 2020年度

参考:人事院「航空管制官採用試験実施状況 2021年度

 

航空管制官採用試験の要件

航空管制官採用試験を受けるには、いずれかの受験資格を満たしている必要があります。

  • 1992(平成4)年4月2日〜2001(平成13)年4月1日生まれの者
  • 2001(平成13)年4月以降生まれの者で次に掲げる者
  • (1) 大学を卒業した者及び2023(令和5)年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
  • (2) 短期大学又は高等専門学校を卒業した者及び2023(令和5)年3月までに短期大学または高等専門学校を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者

受験資格は主に年齢のみ。高卒・大卒・専門卒など、どんな学歴の方でも受験可能です。

参考:人事院「航空管制官採用試験

 

航空管制官に向いている人の特徴

航空管制官を目指すなら、元々の資質も重要なポイント。航空管制官に向いている人の3つの特徴をご紹介します。

 

1.向上心がある

航空管制官に向いている人の1つ目の特徴は、向上心があることです。

航空管制官は、数年に一度の頻度で異動があります。業務資格は勤務地ごとに異なるため、異動のたびに訓練と内部試験を受けなければなりません。勤務年数にかかわらず、常に学ぶ姿勢を忘れない向上心のある方は、航空管制官としての素質が備わっているといえます。

 

2.冷静な判断力と責任感がある

航空管制官に向いている人の2つ目の特徴は、冷静な判断力と責任感があることです。

航空管制官が指示する航空機は、大勢のお客様を乗せています。状況把握や指示をひとつでも間違えば、人命が失われる可能性と隣り合わせ。どんな状況であろうと冷静さを保ち、航空機の安全なフライトを誘導する責任感を持っている方は、航空管制官に向いています。

 

3.協調性がある

航空管制官に向いている人の3つ目の特徴は、協調性があることです。

航空管制官の仕事は、多くの方と連携して行います。例えば、航空路管制業務であれば空港間を飛ぶ航空機を航空管制官でリレーして、目的地へ誘導します。一緒に働く方たちとコミュニケーションを取り、良好な関係を築きながら自身の役割を全うできる方は、航空管制官に向いています。

 

航空管制官に必要なスキル

航空管制官は専門性が高く、かつ責任感の大きな職業です。そのため、必要なスキルも高いレベルで求められます。航空管制官としての技能に加え、英語力や短期記憶力が必須。各スキルが必要な理由を解説します。

 

1.航空管制官としての技能

航空管制官に必要な1つ目のスキルは、航空管制官としての技能です。

航空管制官として必要な知識は、航空保安大学校で学びます。航空機概論・航空管制概論などがあり、これらは航空管制官として活躍するための基本です。

知識だけでなく、実戦で使える技術も必須。航空機の位置を捉えるのに利用するターミナル・レーダーの扱い方や、情報処理システムの操作方法なども、航空管制官には必要な技能です。

 

2.英語力

航空管制官に必要な2つ目のスキルは、英語力です。

航空管制官がコミュニケーションを取るパイロットのなかには、自身とは別の国出身の方もいます。そのため、一定基準以上の英語力が必須。トラブルが起きた場合には、管制用語だけでなく一般的な英会話能力も必要となるため、英語力は常に磨き続けるのがおすすめです。

 

3.短期記憶力

航空管制官に必要な3つ目のスキルは、短期記憶力です。

航空管制官は、一度に複数の航空機の位置や航空状況を把握します。現在飛行している航空機の名前や、それぞれにどんな指示を出したかを覚えておく短期記憶力に優れていることが必須。一点に集中せず、複数の仕事をバランスよくこなせると、航空管制官として活躍できるでしょう。

 

航空管制官は国家公務員であり倍率が高い

本記事のまとめ
  • 航空管制官は学歴不要で誰でも目指せる職種
  • 高い英語力が求められる
  • 数年単位で全国規模の異動がある

国家公務員である航空管制官。採用試験は年齢制限があるものの、学歴不要で誰でも目指せる職種です。国家公務員のため倍率は非常に高いですが、その分収入は安定しており、勤続年数に応じて年収も上がっていきます。

航空機の安全な飛行を維持・管理するため、大きなやりがいも感じられます。航空機が好きな方や常に学び続けることが好きな方は、航空管制官を目指してみてはいかがでしょうか。

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