初めて広報・PRの担当になった時。ひとりで広報機能を立ち上げることになった時。起業して立ち上げた事業をこれから広報・PRしていこう!と思った時。「まずは自分の言葉で発信してみよう」と筆を執ったけれど、何を意識して何を書けばよいのかわからず一向に進まない…そんな人もいるのではないでしょうか。
株式会社キャタルの松本佳恋さん(26)は、「書くこと」が好きで、現在は広報・PRの仕事を楽しんでいるといいますが、過去には「広報・PRとして書くこと」に難しさを感じたこともあったのだそう。
彼女が直面していた壁とは?それをどのように乗り越えているのか?松本さんに詳しく話を聞きました。
書くことが好きで広報・PRに挑戦し、ブログとの大きな違いに直面
松本さんは、米国の大学を卒業後、日本へ帰国し、化学メーカーへ新卒入社。3年間務めた後、2020年3月に小中高生向けの英語塾を運営する株式会社キャタルへ転職しました。現在は同社にて、マーケティング/PR・ライターを担当しています。
-----キャタルでは、マーケティングの中に広報・PRの機能が含まれているのですね。
松本さん:はい。具体的には、キャタルに興味を持ってくださる人を増やすため、SNSやSEO対策のブログの運営を行っているほか、メディア対応、イベントの企画・運営なども担当しています。
個人的には「書くこと」が昔から好きなので、特にブログ運営などは楽しんでやっています。
-----いつ頃から「書くこと」が好きになったのですか?
松本さん:米国の大学に通っていた時、留学のリアルをブログで発信していた時期がありました。最初は友人に勧められて始めたものでしたが、書いているうちに段々と楽しくなって…。「自分が"好き"とか"楽しい"と思っていることを、自分の言葉で誰かにシェアするのって面白い」と思うようになりました。
広報・PRの仕事に興味を持った原点も、ここにあります。
-----単に文章を書くだけではなく、「"好き"をシェアする」ことに楽しみを見いだしていらっしゃるんですね。広報・PRの仕事を始めてから「書くこと」に対して難しさを感じたことはありますか?
松本さん:そうですね…。今でもたまにありますが、「自分が伝えたいこと」と、「読み手が知りたいであろう内容」に乖離があると、なかなか執筆が進まないことがあります。
広報・PRの仕事においては、単にこちらが発信したいことを発信するのではなく、「どんな切り口だったら読んでもらえるのか」「届けたい人に届けるにはどうしたらよいのか」を常に考えなくてはなりません。
広報・PRとは、伝えたいことを一方的に発信することではない。そこが、趣味のように続けていたブログとの大きな違いでもありました。
-----なるほど。そういった時は、どのように乗り越えてきたのですか?
松本さん:それまで私は、「書き出す」ことで自分の考えを整理してきましたが、それでは突破口が見出せなかったので、ある時から「人に話す」ことで、自分が伝えたいことと、読み手が知りたい内容との乖離を少なくしていくようにしました。
例えば、キャタルの生徒インタビュー記事の場合、「伝えたい」と思ったことが複数ありながらも、「キャタルのレッスン内容などと絡めて書かなければいけない」と意識するあまりメッセージ性が弱くなってしまうこともありました。
そんな時、チームメンバーに記事を読んでもらって「キャタルのレッスンとこう絡めたら自然なのでは?」「伝えるべきは生徒の成長なので、今回の記事はこういう方向性で出したら?」などのアドバイスをもらい、自分の中でも納得したうえで乖離を少なくできたかなと思っています。
「言葉で伝えたい」という強い気持ち
このように、広報・PRとして駆け出しの頃は、未経験ならではの葛藤も抱えていたという松本さん。最近では動画の発信も世の中には増えていますが、彼女には「言葉で伝えたい」という強い気持ちがあるといいます。
-----「言葉」にこだわる理由は?
松本さん:自分が「書くこと」「読むこと」が好きだからなのですが、最近では、広報・PR担当者向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」に参加して、第一部の成田悠輔さんの講演を聞いた時に背中を押してもらえる感覚がありました。
-----イェール大学助教授や起業家、テレビのコメンテーターなど数々の顔を持つ成田さんですね。具体的にどのように背中を押してもらえたのですか?
松本さん:写真や動画による情報が急増したこの時代に、あえて"言葉の持つ力"について改めて触れ、プレスリリースの持つ可能性を探っていくという内容の講演でしたので、「もっと言葉を大事にしよう」「これまで書くことが好きで"言葉"にこだわってきたけれど、それは間違いじゃなかったんだ」と再認識することができました。
私は"書く"だけではなく、自分が情報収集する時も動画などではなく文字で探すタイプ。速読で「自分に必要な部分」だけをサッと判断して、効率的に情報収集することが得意なんです。
もちろん周りの同世代には動画のSNSを活用している人が多いので、時には「私も動画をもっと発信したほうがいいのかな…」と心が揺らぐこともありました。
でも、動画には動画の良さがあり、インパクトもありますが、文字には「受け取り手の想像力を借りてこその力」がある。成田さんの講演でそう聞いた時、「自分の思う方向へ進んでいいんだ」と背中を押してもらえた感覚でした。
「言葉は受け取り手の存在があって初めて伝わる」という気付きは、一方通行の意識しか持っていなかった以前の自分にも教えてあげたいですね。
プレスリリースならではの難しさも
-----「書くこと」でいうと、松本さんは企業の公式情報を世の中に発信する「プレスリリース」の執筆もされているのでしょうか。
松本さん:はい。直近では、公式ブログ「バイリンガルへの道」で、英語を活かした中学受験シリーズの記事を公開しましたので、それに関するお知らせをプレスリリースで発信しました。
プレスリリースはこちら▼
-----初めてプレスリリースを書かれた時のことを振り返ってみて、「プレスリリース執筆ならではの難しさ」などはありましたか?
松本さん:それまで書くことにおいて、身近に感じてもらえるようなエピソードを入れるなど、自分の人柄や性格が滲み出るような文章を得意としていましたが、プレスリリースは"企業が発信する公式な情報"という性質上、書き方を少し変える必要がありました。
具体的には、「事実を正しく伝えること」「要点をしっかり伝えることにこだわりながらも、会社としての想いは必ず入れる」などでしょうか。これが意外と難しかったのを今でもよく覚えています。
ただ、プレスリリース執筆に慣れてくると、また別の悩みや難しさも出てくるのですが…。
常に「一方通行になっていないか」を見直す
-----具体的にどういった部分でしょうか?
松本さん:最近では「リリースとして出す切り口や内容」を探すことが難しいですね。「どんな切り口でリリースを出したら会社の想いが伝えられるか」「リリースとして出すにふさわしい情報はどれか」常にぐるぐる考えています。
ただ、この点についてもPR TIMESカレッジでひとつの気付きがありました。成田さんの講演に続く第二部として開催された分科会に参加した時です。
一人で広報を立ち上げたという株式会社クラス広報・小林美穂さんの分科会に参加したのですが、「私に足りていなかったのは、社内メンバーと積極的にかかわって、自ら情報を取りに行く姿勢だったのではないか」と振り返るきっかけとなりました。
社内での信頼関係を構築すること、社員がメディアの取材を受ける時には「安心して話せる場づくり」を意識すること、そして自分自身が社内のことを一番よく知っている状態を目指していること…広報の立ち上げから担っていらっしゃる小林さんのお話は、とても大きな学びになりました。
メディアの取材に対応してくれるメンバーとの信頼関係を築くために、日頃からメンバーの仕事の手伝いも積極的にされていると聞いて、「社内連携ってこういうことなんだ」と心から納得。
キャタルでは、東京5校と福岡2校で英語塾を運営しているので、メンバー全員がひとつの場所に集まるという機会がほぼありません。そのため、社内の情報はより一層こちらから積極的に取りに行く必要があるんだと、この分科会を通して気が付きましたね。
広報・PR担当として「私」が伝えたい内容を発信し続けることも、やはり「一方通行」につながってしまうリスクがあります。社内にはひとりひとりメンバーがいて、それぞれの行動が積み重なって"今"がある。そのため、メンバーが「伝えてほしい」と思っていることを汲み取って発信することもまた、広報・PRの仕事なのではないかと考えられるようになりました。
-----ありがとうございました。これからも好きな仕事をぜひ続けていってください。
広報・PRとは「伝えたいことを一方的に伝えること」ではないと、松本さんはある時に気付きました。現在も悩みながらではありますが、「言葉の持つ可能性」を信じ、一方通行ではない形で、会社としての想いが伝わる文章を書き続けています。
「何を発信すればよいのかわからない」と悩み立ち止まってしまっている人にとっても、彼女の気付きは大きなヒントになるのではないでしょうか。
- 広報・PR担当者に向けたコミュニティイベント。5月23日(月)に第6回が開催されました。
- 第一部には、イェール大学助教授や起業家、テレビのコメンテーターなど数々の顔を持つ成田悠輔さんが登壇し、「今、企業に必要な広報PRを考える」をテーマに語りました。「広報とは何か」「なぜ広報するのか」といった問いかけから始まり、企業の想いを伝えられるPRの在り方について、壮大な視点から紐解いていく内容でした。
- 第二部では、東京会場で6つの分科会、大阪会場で2つの分科会を開催。参加者は自身の課題や目標に合ったテーマについて"知りたいリアル"を学びました。
出典元:PR TIMESカレッジ
出典元:株式会社キャタル/PR TIMES
出典元:株式会社キャタル/PR TIMES STORY
※株式会社PR TIMESは、「U-NOTE」の運営会社です。
【関連記事】
憧れのキャリアアドバイザーへ転身!前職のマネジメント経験を最大限に活かした「介在価値の高め方」
セカンドキャリアを考え始めた時、「全く異なる業界や職種への転職は、現職の経験が活かせない」と思い込んでしまうことはありませんか? 未経験の業界へ職種に挑戦することは、本当に「ゼロから」のス...
独立して初めての壁は、広すぎる世界。「巻き込めば巻き込むほど上がるハードル」は"思考"と"実践"で乗り越える
「既存の枠組みの中ではなく、もっと広い世界で活躍したい」「独自の価値観が生まれたので、会社から離れて独立したい」こんな風に考えて独立や起業を目指している人もいるでしょう。 枠にとらわれない...
「勝ち筋が見えなかった」ピボットも頭をよぎったモヤモヤ期を経て、若手起業家が再び立ち上がったその理由とは
目標があり、そこに向けて懸命に進んでいたとしても、「うまくいかないこと」「自信がもてないこと」に直面し、足取りを止めてしまうことは誰にでもあるでしょう。 あなたはそんな時、どのような行動を...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう