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独立して初めての壁は、広すぎる世界。「巻き込めば巻き込むほど上がるハードル」は"思考"と"実践"で乗り越える

白井恵里子

2022/06/02(最終更新日:2022/06/02)


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時吉巧さん/提供:ご本人

「既存の枠組みの中ではなく、もっと広い世界で活躍したい」「独自の価値観が生まれたので、会社から離れて独立したい」こんな風に考えて独立や起業を目指している人もいるでしょう。

枠にとらわれない世界は確かに魅力的ですが、一方で、その環境ならではの難しさもあるはずです。

Hinome合同会社のCDO(最高デジタル責任者)である時吉巧さん(25)は、SNSマーケティングに特化したベンチャー企業から独立し、2021年10月に同社を創業。

前職と比べ「できることが幅広い」からこそ、壁に直面することもあったといいます。具体的にどんな壁なのか?それをどう乗り越えているのか?時吉さんに詳しく話を聞きました。

提供:ご本人

ベンチャー企業から独立、Hinome合同会社を共同創業

時吉さんは、小学生の頃から続けていた野球を怪我で断念したことをきっかけに、柔道整復師の免許を取得。大学卒業後は整体院を開業しました。

当時集客で活用していたSNSの可能性を感じ、コロナ禍にSNSマーケティング支援のフリーランスへ転身。その後2021年4月に、SNSマーケティングに特化したベンチャー企業に入社しました。

そして同年10月に、独立。"世の中の良いモノに陽の目が当たる社会へ"という理念のもと、デジタルを活用した売上構築の支援・Eコマースサポートを行うHinome合同会社を立ち上げ、現在に至ります。

U-NOTEでは前職在籍中に時吉さんをインタビューしており、今回は当時からさらに一歩を踏み出した姿を改めて取材。この1年間弱に起きた出来事について、詳しく話を聞きました。

前回インタビュー記事はこちら▼

完全無料で使えるInstagram分析ツール『HINOME』β版をリリース

-----前職から独立した経緯についてお聞かせください。

時吉さん:前職時代に慕っていた中家と、共通の価値観で意気投合したことがきっかけです。

「あまり予算はかけられないけれどSNSの力でPRに取り組みたい」「予算の関係で大きなプロモーションがかけられない」といったお客様の力になるにはどうすればよいか…よく二人で語り合っていました。

ある日、諸事情により中家が退職を決めたことで、私も同じく退職して、「一緒に事業を立ち上げよう」ということになりました。

-----目指す道が一致していた仲間の存在が大きかったのですね。昨年10月に共同創業され、今年3月にはInstagram分析ツール『HINOME』β版をリリースされています。創業時から事業内容はすでに決まっていたのですか?

時吉さん:そうですね、中家とは退職前から「こんなことができたらいいよね」「こんなサービスがあったらいいよね」と話していたので、SNS分析ツールのリリースは自然な流れでした。

『HINOME』の一番の特徴は、完全無料で使っていただけること。「予算がないから使えない」「お金がないから続けられない」といった企業の悩みを解決したいと思っているので、「無料化」はゆずれないポイントでした。

-----そうすると、マネタイズに関してはまだ模索中なのでしょうか?

時吉さん:はい。ゆくゆくはSNSデータを活用した「社会インフラ」をつくりたいと思っています。

SNSの投稿内容を統合的にスコアリングして、個人と社会を繋げたい。例えば「あなたにはこんな仕事が向いていますよ」と提案することができるかもしれませんし、個人与信にも繋げることができるかもしれません。今はその前段階にありますので、無料でサービスを提供しています。

プレスリリースはこちら▼

7~8社と連携したプロジェクトでは、ディレクションの難しさに直面

-----独立後、一番大変だったことや難しいと感じたことは?

時吉さん:行政と民間が連携したプロモーションイベントのお仕事をいただいた時です。

神戸市と民間企業がタッグを組んで「アートで神戸にワクワクを」というイベントを3月に開催しました。その実現に向けた取り組みがかなり難航しましたね…。

準備期間は5カ月にもわたり、連携企業は最終的に7~8社にも及びました。関係者が多ければ多いほど、様々な意見が出るのは当然のこと。その中でいかにお互いの会社にとってwin-winな内容に落とし込めるかが、一番難しかったです。

-----7~8社はかなり多いですね…!

時吉さん:企画立ち上げ当初は3社だったんです。それが「もっといいものにするために、あの会社も巻き込もう!」と私が提案し動いた結果、どんどん増えてしまいました。

しかも、例えば前職のように「予算はこれくらい」「範囲はSNS」と枠が決まっているわけではないので、自由な反面、ハードルはどんどん上がってしまって。

-----そのような状況を、どのようにして乗り越えたのですか?

時吉さん:まず、要所要所で「これは何のためだったっけ?」と目標や目的に立ち返ることを意識しました。様々な意見がでると、一見「よさそう!」と思っても、当初の目的と少しズレているケースもあるからです。

関係者の皆さんは自分より年上ということもあって、なかなか「これは何のためでしたっけ?」と言いにくいと感じることもありましたが、何度も確認したからこそ、最終的に納得のいくものに仕上げられたと思っています。自分から企画内容を提案するときも、目的意識は忘れないようにしていました。

-----時吉さんの提案が通らないこともあったのですか?

時吉さん:もちろん、何度もありました。むしろ通らないことが多すぎて「なんで通らないんだろう…」とすごく考えました。

ただ、その結果「ご担当者の立場を理解しなければいけない」と気が付いたんですよね。

例えばこちらが「こういう企画をしてみたい」と提案しても、会社の目指す方向性や予算などからご担当者が「NG」にすることもあるわけです。ご担当者個人が「いいね」と思ってくださっても、やはり会社としての立場から判断しなければならないので。

このように、相手のおかれている立場を考えたうえで提案するようになってから、通りやすくなり、ディレクションもしやすくなりました。

提供:ご本人

自分なりに考え抜いたことで、打開策が生まれた

「できること」の幅が広がり、連携相手の数も増える中、"広すぎる世界"にとまどい力不足を痛感した時吉さん。しかし、自分なりに考え抜き、対策を打ったことで、神戸市から感謝の言葉を受け取っただけでなく、次の仕事にも繋げることができたといいます。

-----まさに独立したからこそ、学べたことですね。

時吉さん:そうですね。独立後の今は、クライアントの課題に対して、SNSマーケティングに限らずどんな提案も自由にできるんです。

その"自由さ"の中で手札を増やしていくのは難しいですし、手札を提案できたとしても、実際に実現させるのはもっと難しい。関係者が増えれば増えるほど、その難易度も上がります。

ただ「目的に立ち返る」「相手の立場を理解する」ことを意識すれば乗り越えられると神戸市のプロジェクトで学べたので、今後はもっとうまくやっていきたいですね。

-----これからの挑戦も楽しみですね。最後に、今後の展望についてお聞かせください。

時吉さん:HINOMEとしては、やはりSNSデータを活用した「社会インフラ」の実現に向けて、資金調達なども実施しながら具体的に動いていきたいです。

個人的には…大人数の同世代を集めて「その瞬間を思いっきり楽しむ!」というイベントを開催してみたいです。熱い志を持った同世代が集結すれば、きっと"熱狂"が生まれるはず。そういった体験を作り出してみたいですね。

-----楽しそうですね!ありがとうございました。

提供:ご本人

目指す世界観が一致した仲間と共に踏み出した、"起業"という一歩。その先には壁や困難もありましたが、自分なりに解決策を考え実践したことで乗り越えることができたと、時吉さんは振り返ります。

今後「自由な世界」「枠のない世界」で挑戦したいと思っている人は、今のうちに「自分で考え、自分で動く」力を養っておきたいですね。

出典元:Hinome合同会社
出典元:HINOME

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