服飾関係の仕事につきたいと思っている人は、洋服の設計図を作っている「パタンナー」という職業を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
本記事では、パタンナーという職業の仕事内容や、やりがい、年収、取得しておきたい資格などをご紹介します。洋服を作る人になりたいと思う方は、ぜひ参考にしてみてください。
パタンナーとは?
パタンナーがどのような仕事をしているか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
パタンナーとは、デザイナーが書いたデザイン画を見て、洋服を作るための設計図「型紙(パターン)」を作る人のことをいいます。
パターンを作るためには相当な技術が必要になり、パタンナー次第で服の良し悪しが変わるともいわれています。
パタンナーの主な3つの仕事内容
パタンナーの仕事内容は「パターン」を作るだけではありません。以下では、パタンナーの主な仕事内容を3つご紹介します。
パターンメイキング
パタンナーのメインの仕事は、「パターン」を作ることです。パターンメイキングともいわれます。
パターンメイキングには大きく分けて「フラットパターンメーキング」「ドレーピング」の2つの技法があります。
フラットパターンメーキングは、平面製図法とも呼ばれ、立体的に書かれたデザイン画を平面に起こす技法のことをいいます。デザイナーが考えたデザイン画の一部を変えたり、大量生産しやすいようなパターンを作ったりできるのがポイント。
また、ドレーピングは、立体裁断法とも呼ばれ、立体的に書かれたデザイン画をそのまま立体的に表現することをいいます。デザインのシルエットや改善点がわかりやすいところが特徴。デザイン画の原案の多くは、ドレーピングという技法で作られます。
服の作成
複数種類作られたパターンの中から、数個の有力候補を選びます。選ばれたパターンを立体的に作ってみて、どのパターンを使って製作をするのかを決めます。
まだデザインを決めている最中であるため、高い生地を使って作ることはせず「トワル」と呼ばれる仮の布で縫製(ほうせい)します。
トワルで作られた洋服を見て、シルエットや着やすさなどに改善点がないか考えます。微調整を行った上で、最終的にどのパターンを世に出すか決定します。
縫製仕様書作成
パターンを選んだら、縫製工場で大量生産するための「縫製仕様書」を作成します。
縫製仕様書とは、縫製工場が量産するために縫いやすいように手順などを書いたもののこと。縫製仕様書を元に、販売される服が作成されるため責任は重大です。
パタンナーが活躍している場
パタンナーは「アパレル業界」で活躍しており、就職先も様々。例えば以下のような場所でパタンナーが働いています。
- アパレルメーカー
- デザイン事務所
- ファッションショー
- ブライダル関連企業
それぞれの業種は異なりますが、パタンナーが担当する仕事は同じです。
最も高い年収を得られるのがブランドと契約している「アパレルメーカー」だと言われています。自分が「洋服」「ドレス」などの、どのようなファッションを作りたいのかによって、就職先を選ぶことをおすすめします。
パタンナーの主な3つのやりがい
服を作るのが好きな人にとってパタンナーは非常にやりがいのある仕事です。
以下では、パタンナーの主な3つのやりがいを紹介。これらのやりがいに共感できる人は、パタンナーに向いているでしょう。
1.自分の作ったパターンが形になる
パタンナーのやりがいの1つ目は、自分の作ったパターンが形になることです。
パタンナーは、ファッションデザイナーから任されたデザイン画をパターンとして作成し、立体の洋服を作ります。ファッションデザイナーと話し合いながら、改善点を考え、よりよい服を作るための試行錯誤を行います。
苦労して作り上げたパターンが商品として展示されたときにやりがいを感じられるでしょう。
2.ファッション業界に貢献できる
パタンナーのやりがいの2つ目は、ファッション業界に貢献できることです。
パタンナーはファッション業界に欠かせない存在です。パタンナーがいなければ、斬新なアイデアがあっても、形にすることができません。
パタンナーが縫製仕様書を作成する際にミスをすると、販売できない商品ができあがる可能性があります。それだけ責任が大きい仕事なので、仕事を完遂したあとにはやりがいを深く感じます。
3.パタンナーとして信頼される
パタンナーのやりがいの3つ目は、パタンナーとして信頼されることです。
難しいデザインを作るデザイナーの中には、パタンナーを指名する人もいます。パタンナーとしての技術が認められたと感じられ、やりがいを感じる瞬間だともいえるでしょう。
また、パタンナーとして有名になり自分のブランドを立ち上げた人もいます。新家倫子さん新家哲哉さんは、「誰かの一着になるところまで見届けたい」という熱い思いから株式会社「mutin」を設立しました。
デザインだけではなく、設計で自分の作った洋服を選んでもらえたときには、パタンナー冥利に尽きるといえるのではないでしょうか。
パタンナーの年収の目安
厚生労働省によると、パタンナーの年収は「463.2万円」と発表されています。
国税庁によると、日本人の平均年収は「461万円」なので、平均的な給与がもらえているといえます。
また、高いスキルがあればフリーランスのパタンナーとして働くことも可能です。フリーランスの場合、自分自身で報酬を設定できるため、年収の大幅なアップに期待できます。
参考:国税庁「II 1年を通じて勤務した給与所得者」
関連記事:スキルなし未経験からフリーランスになれる?6ステップと準備したい5つのこと
パタンナーになるための方法
パタンナーになるためには「アパレルメーカー」に就職するのが一般的です。
アパレルメーカーに就職するためには、服飾系の専門学校や大学を卒業し、専門的な知識を有している人が有利です。高卒でアパレルメーカーに就職するのは難易度が高いため、服飾系の学校に行くことをおすすめします。
日本のファッションデザイナーとして有名な「コシノヒロコ」「Yohji Yamamoto」などを輩出してきた「文化服装学院」。文化服装学院は、「2年制の服装科」や「3年制のファッション工科基礎科」「4年制のファッション高度専門士科」などがあります。
このように、服飾系の学校は「2〜4年」の勉強期間を選べます。どの大学や専門大学を選ぶかは、何を学びたいかによって決めることをおすすめします。
パタンナーに向いている人の5つの特徴
パタンナーになるためにはスキルも大切ですが、本人に備わっている「資質」も大事です。
例えば「8割程度完成させたら満足」のスピード主義な人はパタンナーには向いていません。以下では、どのような資質を持っている人がパタンナーに向いているかご紹介します。
1.細部までこだわれる人
パタンナーに向いている人の1つ目の特徴は、細部までこだわれる人です。
型紙(パターン)は、1ミリのずれで大きくデザインが変わってきます。数ミリのずれが致命的なミスに繋がる世界なため、慎重な製図を行う必要があります。
「細かいところにいつもこだわってしまう……」と細部が気になることを欠点だと思っている人は、パタンナーの仕事では羨ましがられる特徴に変わるでしょう。
2.手先が器用な人
パタンナーに向いている人の2つ目の特徴は、手先が器用な人です。
手先が器用でなければ、パターンを作ったり服の作成をしたりすることはできません。
「裁縫が得意」「細かい作業ができる」という人は、パタンナーに向いているといえるでしょう。
3.服作りが好きな人
パタンナーに向いている人の3つ目の特徴は、服作りが好きな人です。
パタンナーになると、毎日服に関することを考え、技術や知識を身につけなければなりません。服に興味がない人からすると、モチベーションが保てずつらい思いをするかもしれません。
「好きこそものの上手なれ」ともいわれるように、服作りが好きな人の場合、大好きな服に囲まれた生活ができるので満足感の高い生活を送れるでしょう。
4.柔軟性がある人
パタンナーに向いている人の4つ目の特徴は、柔軟性がある人です。
パタンナーは、デザイナーの要望を聞き微妙にパターンを変更する必要があります。自分が良かれと思って作ったパターンが無駄になることもあり「努力の意味がなかった」と悲しくなることも。
相手の助言に従い、悪いところは意見を受け止めて「そういう考え方もあるな」と納得し改善できる人はパタンナーとしての素質があります。
5.共同作業をすることが好きな人
パタンナーに向いている人の5つ目の特徴は、共同作業をすることが好きな人です。
パタンナーは、多くのデザイナーやパタンナーアシスタントと協力しながら仕事を行います。チームで協力して仕事を行うので、個人プレーのほうが好きな人はパタンナーには向いていないかもしれません。
チームの意見を尊重し、よりよいものを作ろうとできる人がパタンナーに向いているでしょう。
パタンナーに必要な3つのスキル
パタンナーの多くは、服飾大学や専門学校でスキルを学んでから就職します。
では、パタンナーはどのようなスキルを身につける必要があるのでしょうか。以下では、パタンナーに必要な3つのスキルについてご紹介します。
1.パターンメイキングの知識やスキル
パタンナーに必要なスキルの1つ目は、パターンメイキングの知識やスキルです。
パターンメイキングの知識だけではなく、実際にパターンを作るスキルも大切になります。
パターンメイキングの知識やスキルは独学でも身につけられます。例えば、『誌上・パターン塾』シリーズは、パターンメイキングの基本から実践編まで勉強することが可能です。
しかし、よりよいパターンメイキングを作るためには、専門の学校で学ぶことがおすすめです。専門学校に入ると改善点を教えてもらえ、さらに進化したパターンを作成できます。
2.CADの知識やスキル
パタンナーに必要なスキルの2つ目は、CAD(キャド)の知識やスキルです。
服飾業界でも、コンピュータが発展し「コンピュータ支援設計(CAD)」を使ってパターンメイキングを作成するようになりました。
サイズの変更が容易で、3次元CADの場合立体で洋服を表示することも可能です。こうした技術を使用できる能力もパタンナーには必要だといえるでしょう。
3.デザイン全般に関する知識
パタンナーに必要なスキルの3つ目は、デザイン全般に関する知識です。
パターンの知識だけ合っても、デザイン画からデザインを読み取れなければパタンナーとして働くことは難しいです。パタンナーになるためにも、デザインについて広く深く勉強し、知識を身につけましょう。
パタンナーが取得しておきたい3つの資格
パタンナーは資格を取得していなくてもスキルさえあれば、就職することは可能です。
しかし、自分のスキルを客観的に表明するためにパタンナーに役に立つ資格を取っている人もいます。以下では、パタンナーが取得しておきたい3つの資格について紹介。取りたい資格を考える参考にしてみてはいかがでしょうか。
1.パターンメーキング技術検定
パタンナーが取得しておきたい資格の1つ目は、パターンメーキング技術検定です。
パターンメーキング技術検定は、3級〜1級の試験があり、実技試験と筆記試験が行われます。
3級はブラウス、2級はジャケットのフラットパターンメーキングまたはドレーピングの試験が行われるため、自分のパタンナーとしての実力を知りたい人におすすめの試験です。
2.CAD利用技術者検定
パタンナーが取得しておきたい資格の2つ目は、CAD利用技術者検定です。
CAD利用技術者検定は、三次元CADと二次元CADの2つの試験があります。試験は筆記試験と実技試験が行われます。
例えば「2次元CAD利用技術者試験1級トレース」では、以下の内容が出題されます。
- 編集・レイヤ設定能力:図形の編集、コマンド機能、レイヤ設定
- トレース能力:図面のトレース
- 投影能力:投影関係と形状理解
- 製図の知識:図面の名称、線の種類と用途、寸法補助記号、図記号
実践的な知識が問われるため、CADについて詳しく勉強してから挑みましょう。
3.洋裁技術検定
パタンナーが取得しておきたい資格の3つ目は、洋裁技術検定です。
洋裁技術検定では、洋服用語や用具の知識や、服飾史などの知識が問われるため、服飾に関しての幅広い知識を証明できます。
初級から上級までの3つの試験があり、どの試験も実物制作があるため、自分の製作スキルを試したい人におすすめの資格です。
パタンナーになるためには専門知識が必須
- パタンナーは「パターンメイキング」「縫製仕様書」などの仕事を行う
- パタンナーは細部までこだわれる手先が器用な人が向いている
- CADやパターンメイキングの知識を身につける必要があり専門学校で学ぶのが一般的
本記事では、パタンナーになるための方法や、仕事内容、スキル、向いている人の特徴などを詳しくご紹介しました。技術職であるパタンナーは、専門学校で学んだ上で就職をすることが一般的です。
スキルが身についているのかどうかは、資格試験を通しても確認できます。
本記事を参考に、パタンナーになるための進路を検討し、知識を身につけ、パタンナーになる夢を叶えてみてはいかがでしょうか。
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