動物のトリミングを行い、美と清潔を保つ「トリマー」。動物専門の美容師と呼ばれることもあります。日々、動物に触れ合って業務を行うため、動物好きの方なら一度はトリマーという職業に興味を持ったことがあるのではないでしょうか。
今回は、そんなトリマーの仕事について解説。資格の有無や、複数ある資格を取得する方法に加え、年収の目安もご紹介します。
トリマーとは?
トリマーとは、犬や猫などのペットの美と健康の専門家のことを指します。美容師と認識されていることは多いですが、トリミングは簡易的な健康診断を兼ねているため、健康の専門家と呼ばれることもあります。
トリミングをして全身を清潔に保つことで、病気の予防にも繋がるため、重要な役割を担っているといえるでしょう。
トリマーの仕事内容
トリマーといえば、グルーミングと呼ばれる美容師のような仕事がメインだと考えられています。しかし、勤務先の環境によってはそのほかの業務を行うことも。トリマーの仕事をご紹介します。
1.グルーミング
トリマーの1つ目の仕事は、グルーミングです。トリマーのメインの業務といえます。
グルーミングでは、ブラッシングやシャンプー、カットなどのお手入れから、爪切りや耳掃除なども行います。犬種によって道具を使い分け、動物が怖がらず快適にグルーミングを終えられるように配慮しながら作業を進めます。
グルーミングは、動物をただ綺麗にするのが目的ではありません。作業を行いながら健康のチェックも行います。そのため、美容面での知識に加え、動物の健康に関する知識も必要とされるのが特徴です。
2.健康面でのアドバイザー
トリマーの2つ目の仕事は、健康面でのアドバイザーです。
勤め先によっては、グルーミングの仕事以外に健康面でのアドバイザーとしての業務が発生する場合があります。動物の食事や散歩など、健康を保つためのアドバイスを行います。
動物だけでなく、飼い主と良好な関係を築くコミュニケーション能力が重要。動物と飼い主がよりよい生活を送れるようサポートするのが役目です。
3.店内の動物のお世話
トリマーの3つ目の仕事は、店内の動物のお世話です。
ペットショップや動物病院に加え、ペットホテルを設けている場所で働く際は、店内にいる動物のお世話もトリマーの仕事になります。食事を与えたり、トイレの様子を確認したりと、預かっている動物の健康状態に気を配ります。
トリマーが活躍している場
トリマーが活躍する場は多岐にわたります。動物の健康・美容の両方を気にする飼い主は少なくないため、ペットサロン以外に動物病院で活躍するトリマーもいるのです。そんなトリマーの活躍の場所についてご紹介します。
1.ペットサロン
トリマーが活躍している1つ目の場所は、ペットサロンです。
ペットサロンはトリマーの主な就職先のひとつ。名前の通り、サロンとしての役割を持っているため、業務内容もグルーミングがメインです。専門学校や留学などで身に付けた知識と技術を活用し、飼い主の要望を汲み取って動物をケアします。
2.ペットショップ
トリマーが活躍している2つ目の場所は、ペットショップです。
比較的大きな店舗ではトリマーが所属しており、グルーミングをはじめとした動物のケアを行います。ペットショップでは動物の販売以外にペット用品も取り扱っているので、トリマーとしてだけでなく販売員として接客業務があるのが特徴です。
3.動物病院
トリマーが活躍している3つ目の場所は、動物病院です。
トリマーは動物の美容面だけでなく、健康面に関する知識も学んでいます。トリマーとしての業務を通して動物の異変に気付くことができるため、重宝されます。飼い主にとっても一度の外出で健康診断と美容のケアが行えるため、トリマーも所属している動物病院は需要があります。
トリマーのやりがい
トリマーを目指すうえで気になるのが、仕事のやりがいです。グルーミング業務を通して実感できる、トリマーのやりがいを3点ご紹介します。
1.飼い主から感謝の気持ちを伝えられたとき
トリマーの1つ目のやりがいは、飼い主から感謝の気持ちを伝えられたときです。
トリマーは飼い主の要望を汲み取って、動物をケアします。毛の長さを希望通りに整えたり、かわいさをより引き出すようなお手入れをしたりと、動物と向き合いながらグルーミングを行います。
そのため、飼い主が動物を迎えにきた際、感謝の気持ちを伝えられたり、喜んでもらえたりするとやりがいを感じられます。なかには暴れてしまう動物もいるなか、ありがとうの一言をもらえるだけでも、頑張ってよかったと心から思えるのがトリマーの仕事なのです。
2.動物の健康状態の異変に気付けたとき
トリマーの2つ目のやりがいは、動物の健康状態の異変に気付けたときです。
トリマーはグルーミングをしながら、爪や肛門線、皮膚などの健康状態をチェックします。少しでも違和感があった場合にはそれを飼い主に伝え、改めて動物病院で検診することを促します。
飼い主でも見過ごしていたような異変に気付き、それが病気の早期発見や進行を遅らせることに繋がった際には、やりがいを感じられるでしょう。
3.飼い主から指名があったとき
トリマーの3つ目のやりがいは、飼い主から指名があったときです。
トリマーの仕事は、動物との相性だけでなく飼い主との相性も大切です。グルーミングがスムーズに行え、飼い主の希望も反映した仕上がりになっていれば、固定客となってくれる可能性が高まります。
一期一会の出会いも多いですが、動物・飼い主ともに相性がよく、通い続けてくれる方が増えることは、トリマーとしてのやりがいに繋がります。
トリマーの年収の目安
トリマーの年収は、一般的な会社員に比べてやや低めの傾向があります。求人情報を掲載している「求人ボックス」によれば、2022年4月時点の正社員での平均年収は約313万円。ボリュームゾーンは約266〜295万円となっています。
地域別の給与額の差はあまり大きくなく、もっとも高い県の平均年収は約476万円。全体の給与幅は200〜400万円台となっているため、勤務先・経歴・スキルなどによる大幅な収入アップは難しいことがわかります。
参考:求人ボックス 給料ナビ「トリマーの仕事の年収・時給・給料」
トリマーになるための方法
トリマーになるには、大きく3つの方法があります。それぞれの環境や予算に合った方法でトリマーを目指すのがおすすめです。専門学校・通信講座・トリマー留学と、3つの方法の詳細やメリットを解説します。
1.専門学校で知識と技術を身に付ける
トリマーになるための1つ目の方法は、専門学校で知識と技術を身に付けることです。
現在トリマーとして働く方の多くがこのルートでスキルを習得しています。トリマーを目指せる専門学校は全国に複数あるため、自分に合った学び場を選びやすいのが特徴です。また、専門学校は昼間部と夜間部があり、夜間部なら働きながらトリマーとして必要な技術を身に付けられます。
専門学校に通う期間は、一般的に昼間部で2年間。費用は240〜300万円程度かかります。夜間部の場合も2年間通学することが多く、費用は年間80〜100万円程度。昼間部に比べて授業時間が少ない分、授業料もやや安くなっています。
専門学校に通ってトリマーを目指す場合、実習による経験を積めるのがメリット。時間や金額の問題はあるものの、プロのトリマーになるのであれば、専門学校で学ぶのがおすすめです。
参考:カコトリミングスクール「学費について」
2.通信講座を活用して短期間での資格取得を目指す
トリマーになるための2つ目の方法は、通信講座を活用して短期間での資格取得を目指すことです。
費用面や時間などで不安がある方におすすめなのが通信講座。初学者でも迷いなく学習が進められるよう、理解しやすいテキストを用意している講座が多くあります。1日の勉強時間を確保しにくい場合でも、効率的に基礎から実践までを学べるのがメリットです。
受講費用も抑えられます。10〜15万円程度でおさまる通信講座が多く、なるべく低コストでトリマーを目指す方にぴったりです。
参考:資格のキャリカレ「トリマー資格講座」
3.トリマー留学で未経験からスキルを身に付ける
トリマーになるための3つ目の方法は、トリマー留学で未経験からスキルを身に付けることです。
トリマー留学とは、海外にあるスクールで未経験からトリマーとして必要な知識と技術を身に付ける短期留学のこと。アメリカやオーストラリア、イギリスなどに、トリマー留学できる学校が開講されています。
トリマー留学の費用は50万円程度。期間は、例えば「Marumaru Dog Grooming School」の場合は3カ月〜1年間となっています。ワーキングホリデーとして留学するので、働きながらトリマーの実務経験を積めるのがメリットです。
参考:シドニー留学センター「marumaru Pet Services」
トリマーに向いている人の特徴
トリマーを目指すうえで、素質は非常に重要な要素です。技術や知識を身に付けていることはもちろん、元々の性格が向いていなければ長く続けるのは難しくなってしまいます。トリマーを目指す方に向けて、トリマーに向いている方の特徴を3点ご紹介します。
1.動物が好き
トリマーに向いている人の1つ目の特徴は、動物が好きなことです。
トリマーの仕事は必ずしもスムーズにいくことばかりではありません。動物の性格によっては威嚇されたり噛まれたりと暴れてしまい、グルーミングを終えるまでに時間がかかるケースもあります。
そんなときでも、動物が好きという気持ちがあれば最後までやり遂げられます。動物に愛を持って接することできればそれが動物にも伝わり、信頼関係も築けるでしょう。
2.効率的に作業を進められる
トリマーに向いている人の2つ目の特徴は、効率的に作業を進められることです。
依頼にもよりますが、通常グルーミングではシャンプーからカットまでを一度に行います。1時間半〜2時間程度かかる場合が多く、集中力が必要です。
2時間以上かかってしまうと動物に大きな負担がかかるため、効率的に作業を進められる方はトリマーに向いています。
3.接客が好き
トリマーに向いている人の3つ目の特徴は、接客が好きなことです。
トリマーの主な業務はグルーミングです。多くの時間を動物と向き合いますが、仕事を依頼するのは飼い主であるため、接客業としての一面も持っています。
動物と飼い主の両方とコミュニケーションを交わし、心地よく利用してもらえるよう気遣える方は、トリマーの適性があるといえます。
トリマーに求められるスキル
トリマーに求められるスキルは、トリミングの知識や技術だけではありません。健康状態をチェックするため、動物に関する幅広い知識も求められます。さらに、満足度の高いグルーミングを行うには、飼い主とスムーズなやりとりができるコミュニケーション能力も大切。それぞれのスキルが必要な理由を詳細に解説します。
1.トリミングの知識と技術
トリマーに求められる1つ目のスキルは、トリミングの知識と技術です。
トリマーのメイン業務であるトリミングは、勤務先に関係なく高いレベルで求められます。飼い主の要望にも問題なく答えられるよう、知識と技術は日々進歩することを心がけることが大切です。
2.動物に関する幅広い知識
トリマーに求められる2つ目のスキルは、動物に関する幅広い知識です。
トリマーは、単に動物を美しくするだけが仕事ではありません。グルーミングを行いながら、動物の健康状態をチェック。違和感があれば都度、飼い主にそれを伝え病気の発症などを未然に防ぎます。
そのため、動物に関する幅広い知識が必要。食事やしつけなどの日々のお世話についてはもちろん、動物の種類ごとの特徴についても理解しておくとよいでしょう。専門的な知識を有しているトリマーであれば、飼い主も安心して動物を預けられます。
3.高いコミュニケーション能力
トリマーに求められる3つ目のスキルは、高いコミュニケーション能力です。
飼い主からの依頼に応えるには、コミュニケーションスキルが必要。具体的なトリミングイメージができている飼い主であれば、要望に沿った仕上がりが叶えられますが、すべてのお客様がそうとは限りません。
なかには、なんとなくよい感じにしてほしいと思っている飼い主もいます。そんな場合でもコミュニケーション能力があれば、飼い主の好みや動物の性格などをきちんとヒアリングすることが可能。動物にとっても心地よく感じられるグルーミングが叶います。
トリマーに必要な資格
実は、トリマーになるために必要な資格というものはありません。トリマー養成校にて動物の健康について勉強したり、トリミングの知識と技術を身に付けたりすれば、トリマーになることができます。
ただし、就職や転職には資格を有していると有利。トリマー向けの資格は複数あり、例えば「JKC公認トリマー C級」「PLA公認トリマー 2級」「JCSA認定マスターライセンス ドッグトリマー」の資格は、基礎知識を付けたい初心者向け。専門学校に通わず、比較的短期間で取得を目指せるのが特徴です。
トリマーのプロとして活動できるレベルの資格としては、「JKC公認トリマー」「AAV認定トリマー検定」「JDA公認トリマー」の3つがあります。専門学校で所定のカリキュラムを修了し、試験に合格する必要があるため、やや難易度はあがります。
トリマーとしてではなく、愛犬や愛猫のために学びたい方には「JPLA公認トリマー 2級」「JCSA認定マスターライセンス ドッグトリマー」がおすすめ。通信講座と人形を用いた実技試験に合格することで、資格を取得できます。通学する必要がないため、試験にあまり時間を割けない方にも向いています。
参考:一般社団法人 ジャパンケネルクラブ「トリマーについて」
自分にあった方法でトリマーの技術や知識を身につけよう
- トリマーは資格なしでもなれる
- トリミング技術に加え、動物に関する専門的な知識が必要
- ペットサロン以外に、ペットショップや動物病院でも活躍できる
トリマーは専門的な技術が必要なことから、資格の取得が必須かのように思えますが、実は資格は必要ありません。技術や知識を学べる場所は、専門学校や通信講座に加えて留学など、多岐にわたります。
また、就職先もペットサロン、ペットショップ、動物病院など、動物に関わる様々な機関が検討できます。
トリマーの技術や知識のインプットにかけられる費用や時間などを考慮したうえで、自分に適した方法でトリマーを目指してみてください。
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