街に残り続ける建築物の設計・デザインを行う「建築士」。国家資格のひとつで、非常に専門性の高い職業です。社会に与える影響が大きく、建築物は長く利用されるためやりがいがあり、志す方も多いのが特徴です。
今回は、そんな建築士になるための方法をご紹介。具体的な仕事内容や年収の目安に加えて、キャリアについても解説しています。建築士という職業が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
建築士とは?
建築士とは、建物の設計や工事監理を行う建築の専門家のことです。「建築士法」に定められた資格を有しており、資格は一級・二級・木造の3種類があります。
取得している資格の種類によって、携われる業務の範囲は異なります。また、一級建築士は国土交通大臣、二級建築士と木造建築士は都道府県知事と、交付元が違うのも特徴。ただし、交付元は法的な事務所設置状況によるため、資格としての優劣や責任・義務の範囲の大きさなどに違いはありません。
参考:一般社団法人東京建築士会「建築士とは」
参考:昭和二十五年法律第二百二号「建築士法」
建築士の仕事内容
建築士の仕事は、設計業務だけではありません。設計図を作成する前には建物が建つ場所の調査や依頼主の希望を汲み取る企画業務も行います。理想的かつ安全な建築物を完成させるためには、法律に違反しないためさまざまな情報も集めなければなりません。
次からは、気になる建築士の主な仕事内容について解説します。
1.設計業務
建築士の主な仕事の1つ目は、設計業務です。
家やビル、施設などを建てる際に必要となる設計図を作ることは、建築士の重要な業務のひとつ。建築物の設計というと内装や間取り、インテリアなどをイメージすることが多いかもしれませんが、意匠の部分以上に大切なのが安全かつ法律に違反していない建物を作ることです。
設計図に付随して、仕様書や工事費積算書を作るのも設計業務に含まれています。なお、有している資格によって設計できる建物の規模は異なり、一級建築士の場合はすべての建築物の設計に携わることが可能。二級建築士の場合は比較的小規模の建築物、木造建築士の場合はさらに小規模かつ木造建築物のみ設計業務を行えます。
参考:一般社団法人東京都建築士事務所協会「建築士って何をする人?」
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「建築士の種類と業務範囲」
2.工事監理業務
建築士の主な仕事の2つ目は、工事監理業務です。
工事が始まった際、設計図通りに作業が進んでいるかを確認するのも建築士の仕事です。万が一、設計図通りに施工が行われていない場合は、施工管理者に指摘し、修正を求めます。
なお、工事監理は建築士法にて定められている建築士の独占業務です。工事監理を行う方のことを工事監理者と呼ぶこともありますが、その場合でも建築士のことを指します。
参考:公益社団法人 日本建築士会連合会「工事監理と監理は違うものです」
3.調査企画業務
建築士の主な仕事の3つ目は、調査企画業務です。
設計図を作成する前に行うのが調査企画業務。敷地を選定するための調査や建築計画を定めるための調査などを行います。例えば、住まいの設計を依頼された場合、依頼主が理想とする暮らし方や建物の大きさなど、求める条件をすり合わせるのも調査企画業務に入ります。
法律や条件を満たした設計図の作成および、建築物の工事を実施するために必要な業務です。
参考:株式会社MiHOMA一級建築士事務所「一級建築士とは」
建築士が活躍している場
建築士が活躍している場所は、建築事務所・建設会社・ハウスメーカーと大きく3つに分けられます。基本的には建築士として設計や工事監理に携わるのは変わらないものの、設計する建物の規模や担当する業務範囲が異なるため、就職先を選ぶ際には注意が必要です。
1.建築事務所
建築士が活躍している1つ目の場所は、建築事務所です。
なかでも建築事務所はアトリエ系と組織系に分類され、アトリエ系は意匠やデザインにこだわる傾向があります。有名な建築士が主宰していることが多く、その作家性が強く反映された設計が特徴です。個人の注文住宅の依頼を承るケースが多いのもポイントです。
一方、組織系と呼ばれる建築事務所は、ビルや商業施設など大きな建築物の設計を手掛けることがほとんど。依頼主は、長期的な視点でのメンテナンスのしやすさやターゲット顧客層を広く考えているため、意匠やデザインではなく設計を重視する傾向にあります。不特定多数に向けた建築物を設計したい方が多く活躍するのが組織系の建築事務所です。
2.建設会社
建築士が活躍している2つ目の場所は、建設会社です。
一般的な就職先のひとつで、大手から中小企業まで選択肢が幅広いのが特徴です。なかでも、設計・施工・研究を自社で行っているゼネコンは人気が高く、多くの建築士が活躍しています。
ただし、入社後すぐに建築士の資格を活かせる仕事を任せてもらえるかどうかはやや微妙。設計以外の業務を行う必要も出てきます。建設業界全般のことを知れるのは利点ですが、建築士として設計や意匠など、やりたいことが明確な場合はずれを感じる可能性もあることは留意しておきましょう。
3.ハウスメーカー
建築士が活躍している3つ目の場所は、ハウスメーカーです。
建設会社と同様に、建築士としての設計以外の業務も行う可能性があります。そのため、社会人としてさまざまな経験を積めるのがメリットです。
設計段階で必要な業務をほとんどひとりで担当するのも、ハウスメーカーでの建築士の働き方の特徴。建築事務所では、意匠・構造・設備と各設計はそれぞれの専門家が担うことも多くありますが、ハウスメーカーの場合は個人宅の依頼がほとんどのため、ひとりの建築士が担当する傾向にあります。設計の総合力が問われます。
建築士のやりがい
建築士は、建物の規模にかかわらずさまざまなやりがいを感じられる職業です。人や街に与える影響力は大きく、関わる人も多いため、喜びを分かち合いながら仕事ができます。建築士という職業が気になっている方に向けて、建築士のやりがいについて解説します。
1.新しいことにチャレンジし続けられる
建築士の1つ目のやりがいは、新しいことにチャレンジし続けられることです。
建築士の仕事では、毎回条件や設計、デザインなどが異なります。同じ建築物を設計することはほとんどなく、毎回新鮮な気持ちで業務に取り組めるのが特徴。また、設計やデザインの正解はないため、自身が考える適切な建築物を極限まで追求することができます。
自分の頭で考え、依頼主が理想とする建築物を提案・実現できたときには大きなやりがいを感じられるでしょう。
2.ゼロから建築を作る面白さ
建築士の2つ目のやりがいは、ゼロから建築を作る面白さです。
自身がデザインした建築物が実際に完成する過程を楽しめるのは、建築士ならではのやりがいです。土地や予算、法律などクリアしなければならない課題が多く、設計から工事までの道のりが長い分、建物が完成したときの感動はひとしお。
仕事が実際に目に見える形となり、街に残り続けるため、仕事を誇りに思う人も多いです。
また、完成後にはプロジェクトに関わったすべての人たちと達成感や喜びをわかちあえるのも魅力です。
3.建物だけでなく街の発展にも関われる
建築士の3つ目のやりがいは、建物だけでなく街の発展にも関われることです。
建築士の主な業務は建築物の設計ですが、最近では街づくりの要素も関係しています。新しい商業施設が完成すればその地域には外から人が足を運び、交流が盛んになり街が活性化します。
建物ひとつで街の空気が変わることも多く、影響力の大きい仕事です。
建築士の年収の目安
建築士の年収は、一般的なビジネスパーソンに比べてやや高めといわれています。専門性の高い職業であるため、安定した収入を得やすいのが特徴です。
厚生労働省が公開している「令和元年賃金構造基本統計調査」によれば、企業規模10人以上の就職先に務める一級建築士の平均月給は約46万円。ボーナスの平均支給額は約148万円であるため、年収にすると約700万円が目安となります。
参考:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」
建築士になるための方法
建築士になるための方法は大きく3つあります。1つ目は、もっとも最短である学歴ルート。
2つ目は建築整備士資格を取得するルート。そして3つ目は、学歴なしで実務経験を積むルートです。各ルートで建築士を目指す際の知っておきたいポイントや注意点、おすすめの方について解説します。
1.4年制大学や短期大学などで指定学科を修める
建築士になるための1つ目の方法は、4年制大学や短期大学などで指定学科を修めることです。
4年制大学・短期大学、高等専門学校・専修学校を卒業して建築士を目指す場合、指定された学科を修めれば、受験資格を得られます。
ただし、指定科目数の単位は学歴によって異なり、取得した単位数に応じて実務経験が必要になる場合もあるので注意が必要。指定科目数40を取得すれば、実務経験は不要ですが、30の場合は実務経験1年、20の場合は実務経験2年となってしまいます。
なるべく最短のルートでの取得を検討している方は、在籍中に指定科目数40単位を取れる学校で学ぶのがおすすめです。
参考:建設業トータルサポートオフィス 橋本税理士・行政書士事務所「木造建築士・二級建築士になるには」
2.建築整備士の資格を取得する
建築士になるための2つ目の方法は、建築整備士の資格を取得することです。
建築整備士とは、建築士法に基づき、建築設備に関する専門的な知識や技術を有している有資格者のことを指します。建築士に対し、建築設備の設計・工事監理に関するアドバイスを行うのが主な業務です。
建築士資格の取得を目指す際、建築整備士の資格を有している方は受験要件を満たしていることになります。
建築整備士試験の合格率は例年20〜30%台を推移。建築士試験より難易度は低いものの、簡単に取得できる資格ではないことは留意しておきましょう。なお、建築整備士試験を受けるためには学歴や実務経験などの要件が定められており、取得までにはある程度の時間を要します。
そのため、建築整備士の資格を取得してから建築士を目指すことは、やや回り道に感じる場合も少なくありません。
参考:一般社団法人 建築設備技術者協会「建築設備士とは」
参考:日建学院「2021年 建築設備士第一次試験 合格発表」
3.7年以上の実務経験を積む
建築士になるための3つ目の方法は、7年以上の実務経験を積むことです。
二級建築士もしくは木造建築士を学歴なしで目指す場合、実務経験を積むことで受験資格を得られます。建築士になるまでもっとも時間を要するルートではありますが、すでに社会人で建築現場での経験を数年積んでいる場合におすすめです。
学費が不要なので金銭的な負担がかかりにくいのがメリット。社会人として働きながら予備校に通い学習を続けることで、建築士を目指せます。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」
建築士に向いている人の特徴
建築士は、ただ設計やデザインのセンスに優れていればよいわけではありません。それでは建築士に向いているのはどんな人なのでしょうか。3つの特徴を解説します。
1.コツコツと勉強し続けられる
建築士に向いている人の1つ目の特徴は、コツコツと勉強し続けられることです。
建築士になるには、学歴ルート・建築整備士ルート・実務経験ルートと3つの方法があります。どのルートもある程度の時間を要するため、毎日少しずつでも勉強できる方でなければ、途中で躓くことも考えられます。
また、建築士の試験は難易度が高いことで有名。さらに、ストレートでの合格を目指すとなるとより努力が必要です。そのため、周囲の友人が遊んだり自分の時間を楽しんだりしているときでも、自分の勉強に集中できる方は向いているといえるでしょう。
2.デザインや設計などを考えるのが好き
建築士に向いている人の2つ目の特徴は、デザインや設計などを考えるのが好きということです。
建築士の仕事は、ゼロから建築物を作ることです。そのため、依頼主からは常に新鮮かつ依頼内容に適したアイデアを求められます。日頃から既存の建築物を見に行ったり、自分だったらどう設計するかを考えたりする習慣がある方は、必要なときにこれだというアイデアを提案することができます。
3.最後までやり抜く責任感がある
建築士に向いている人の3つ目の特徴は、最後までやり抜く責任感があることです。
建築物の設計やデザインを考える際に大切なのは、安全性です。建物には必ず建築基準法が適用され、建築士は法律に違反しないように設計を行います。人々が安全に利用したり、依頼主が安全に暮らしたりできるように配慮しなければならないため、責任は重大です。
規模にかかわらず責任感を持ち、依頼主とコミュニケーションを取りながら最後までやり抜ける方は、建築士に向いているといえます。
建築士に必要なスキル
設計やデザインを考える時間が多いため、建築に関する専門的な知識を有していれば十分かと思いきや、そうでもありません。例えば、実際にプロジェクトが動いた場合には関係者と円滑に物事を進めるためのコミュニケーション能力が求められますし、ひとつのデザインに決まるまでには、依頼主へのプレゼン能力も重要です。建築士に必要といわれている3つのスキルを解説します。
1.コミュニケーション能力
建築士に必要な1つ目のスキルは、コミュニケーション能力です。
ひとつの建物を作るのに、実は多くの人が関わっています。建築士は、建築物を完成させるのに重要な中心人物。依頼主との打ち合わせのみにとどまらず、工事の現場監督や営業担当者、インテリアを考えるインテリアデザイナーなど、さまざまな方と話し合い、意見をすり合わせながらプロジェクトを進めなければなりません。
自分が伝えたいことを伝えられ、相手の意図を正しく読み取る力がなければ、トラブルが発生しかねません。そのため、コミュニケーション能力は必須といえます。
2.プレゼン能力
建築士に必要な2つ目のスキルは、プレゼン能力です。
建築士は、自身が考えた設計内容を依頼主にプレゼンする機会が多くあります。プレゼン相手は必ずしも建築に関する知識を有しているとは限らないため、わかりやすい言葉や言い回しで相手に伝える能力が求められます。
プレゼン時のポイントは、設計のテーマやコンセプト。それに合わせて現状の課題や課題を解決する方法なども示すことで、依頼主からの理解を得やすくなります。建築学科に進学した場合、プレゼンをする機会は多いため、在学中にスキルを磨くのがおすすめです。
3.デジタルツールを使いこなせる
建築士に必要な3つ目のスキルは、デジタルツールを使いこなせることです。
設計図と聞くと紙をイメージする方もいるかもしれませんが、実務ではCAD(キャド)と呼ばれるデジタルツールを使用して設計を行うことが多いです。そのため、デジタルツールを使いこなせることは必須スキルです。
建築士に必要な資格
建築士は建築士法に定められた建築士資格を保有していなければ、設計や工事監理などの業務を行うことはできません。資格には一級・二級・木造の3種類があり、それぞれ試験難易度や受験要件が異なります。資格取得を検討している方に向けて、各資格の難易度と要件を解説します。
一級建築士
一級建築士の資格は、3種類のなかでも上級資格。建築物の規模にかかわらず設計や工事監理に携わることができるのが特徴です。
例えば、高さが13m又は軒の高さが9mを超える建築物や鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が300㎡を超える建築物は、一級建築士が設計・工事監理を行わなければならないと決められています。
参考:一般社団法人東京建築士会「建築士とは」
一級建築士の難易度
一級建築士の試験は非常に難易度が高いことで知られています。平成29〜令和3年度の合格率は10%前後〜12%前後を記録しており、国家資格のなかでも資格取得が難しいことがわかります。
- 平成29年度:10.8%
- 平成30年度:12.5%
- 令和元年度:12.0%
- 令和2年度:10.6%
- 令和3年度:9.9%
試験は一次が学科、二次が製図と分かれており、特に合格率が低いのが一次の学科試験です。平成29〜令和3年度の合格率は15〜22%台と低く、製図が35〜41%台であることを考えるとその難しさがわかります。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「試験結果」
一級建築士を取得するための要件
一級建築士を取得するためには、以下の受験要件のうち、ひとつを満たす必要があります。
- 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
- 二級建築士
- 建築設備士
- その他国土交通大臣が特に認める者
なお、令和2年以前には上記の要件に加え、2年間の実務経験が必要とされていましたが、建築士法の改正により、現在では新しい建築士制度が適用されています。
実務経験は免許登録要件に変更となり、実務経験なしで試験を受けることが可能。試験の前後にかかわらず、免許登録までに2年間の実務経験を積めば、一級建築士の資格を取得できます。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」
参考:国土交通省 住宅局建築指導課「建築士試験パンフ」
二級建築士
二級建築士は、一級建築士に比べると試験の難易度がやや低いため、建築士としての登録者の人数も約2倍。令和2年度の時点で一級建築士は約37万人ですが、二級建築士は約77万人が登録しています。
鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が30㎡を超え300㎡以内の建築物を扱う場合に、二級建築士もしくは一級建築士が設計・工事監理を行わなければならないと決められています。
参考:国土交通省「建築士登録状況(令和2年4月1日時点)」
二級建築士の難易度
二級建築士の試験は、一級建築士の試験に比べればやや難易度は低め。試験の合格率は例年20前半を推移しています。また、一級建築士の資格取得のための勉強に約20年分の過去問を解く必要があるのに対し、二級建築士の場合は約10年分程度でも合格は可能といわれています。
参考:総合資格学院「二級建築士 試験の合格率」
参考:1級建築士ネット講座「二級建築士」
二級建築士を取得するための要件
二級建築士の資格を取得するには、以下の要件のどれかひとつを満たす必要があります。
- 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者
- 建築設備士
- その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等)
- 建築に関する学歴なし
ただし、各要件によって必要とされる実務経験年数が異なるのは注意点。指定科目を修めて卒業した方と建築設備士は経験の有無は問われませんが、建築に関する学歴がない場合、7年以上の実務経験が必要とされます。
そのため、早い段階で二級建築士の資格取得を目指すことを決めた場合は、4年制大学や短期大学などで指定科目を修めるルートを選ぶのがおすすめです。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」
木造建築士
木造建築士は、3つの資格のなかでもっとも難易度が低いものの、資格保有者が少ないのが特徴。主に木造建築物のみを扱うため業務の幅が狭くなってしまうため、多くの方は一級もしくは二級建築士の資格を取得することが多いようです。
令和2年時点の登録者数は、約1万8千人。2階建までの木造建築物で延べ面積が100㎡を超え300㎡以内の建築物の設計・工事監理を行う際に、木造建築士の存在が必要となります。
参考:国土交通省「建築士登録状況(令和2年4月1日時点)」
木造建築士の難易度
木造建築士の試験難易度は、一級建築士と二級建築士の試験に比べて大幅に合格率があがります。平成29〜令和3年度の合格率は30〜40%台を推移しており、比較的取得しやすいのが特徴です。
二級建築士の受験要件同様、4年制大学や短期大学で指定科目を修めていれば試験を受けられるため、合格者の属性は学生が大半。近年は木造建築のニーズも高まっているため、まずは木造建築士の資格取得を目指すことも検討してみるとよいでしょう。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「試験結果」
参考:国土交通省「木造住宅への国民ニーズが高い」
木造建築士を取得するための要件
木造建築士の資格を取得するための要件は、二級建築士資格と同様です。
- 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者
- 建築設備士
- その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等)
- 建築に関する学歴なし
上記のいずれかの要件を満たしていれば受験が可能です。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」
建築士の将来性
建築士は将来性のある職業のひとつです。2020年はコロナによる影響で建築需要が落ち込んでいましたが、2021年には前年比7.5%増。やや上昇傾向にあります。
また、ここ10年の間で一級建築士試験の受験者数が減少していることも、建築士の将来性があるといわれている理由のひとつ。建築事務所に所属する約14万人のうち、全体の約29%が60代となっており、あと10年の間でその約29%の層が現役を引退してしまいます。
30代以下の割合は約1%と非常に少なく、設計士不足が騒がれているのが現状。そのため、現在中核となっている60代が引退したあとには、現在の20〜30代の建築士の需要が高まると考えられているのです。このことから、建築士は将来性のある職業といわれています。
参考:日経XTECH「コロナ禍で二分化する建築需要 22年も「K字形市場」で推移か」
参考:いよいよ始動する「新建築士試験」、規制緩和で受験者数はどれだけ増える?
建築士のキャリアパス
建築士のキャリアパスは人によって異なります。そもそも建築士は資格を取ってやっとスタートラインに立てるため、就職して数年は個人住宅の小さな建築物からビルや施設などの大きな建築物など、さまざまなプロジェクトに参加し経験を積むことが大切です。
それらの経験を通して、自分がどんな建築物をメインに設計していきたいのかが定まります。その後、大手建築事務所や建設会社などに転職したり、なかには人脈を活かして個人の建築事務所を設立したりと、個人によってさまざまなキャリアパスが開かれます。
まずは建築事務所や建設会社、ハウスメーカーなどに就職し、働きつつも一級建築士の資格を取得。その資格をもとにさまざまな経験を積み、一人前の建築士を目指しながらもキャリアパスを模索していくのがよいでしょう。
建築士は街に残り、社会に大きな影響を与える仕事
- 世代交代により需要が高まる職業のひとつ
- 試験の難易度は高いがその分安定性がある
- 目指すには複数のルートがあり、学歴ルートなら最短で資格取得が可能
建築士の仕事は、建築物という形で長く残り続けます。新たな建物が完成すればそこには人が集まり、街が活性化され、社会に大きな影響を与えるやりがいのある職業です。独占業務が存在する専門職であり、試験の難易度は高め。その分、将来性があり高い収入を得られます。
日々勉強を続けられ、建築物を見たりその設計を考えたりするのが好きな方は、ぜひ建築士を目指してみてください。
【関連記事】
気象予報士になるには?年収の目安や試験の難易度・就職先について解説
ニュース番組でその姿を必ず見る「気象予報士」。気象予報士試験は難易度が高いことで知られており、その合格率は一桁台が基本です。人々の生活に貢献できる職業のため、大きなやりがいを感じられるのは魅力。...
公認会計士とは?仕事内容・なり方・将来性・税理士との違いについて解説
企業の監査を主な業務としている「公認会計士」。公認会計士になるためには国家資格が必要ですが、弁護士や医師に並んで難易度が高く、3大資格のひとつといわれている職業です。業界の第一線で活躍しているこ...
税理士になるには?仕事内容・なり方・向いている人の特徴について解説
税に関する専門知識を有した「税理士」。税の専門家として、個人から企業までさまざまな場面で求められる職業です。 本記事では、税理士の資格取得を検討している方に向けて、なり方を解説。税理士にし...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう