HOMEインタビュー 遠回り?最短ルート?それは自分次第。マンガ家志望の学生が、あえて"就職"の道を選んだからこそ広がった世界

遠回り?最短ルート?それは自分次第。マンガ家志望の学生が、あえて"就職"の道を選んだからこそ広がった世界

白井恵里子

2022/05/24(最終更新日:2022/05/24)


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川崎雄基さん/提供:株式会社トレンド・プロ

夢を追う若手ビジネスパーソンなら誰もが「夢を叶えるための最短ルートは何だろう」と考えるでしょう。しかし、実は"遠回り"と感じる道でも、歩み方や捉え方次第では"最短ルート"になり得るかもしれません。

株式会社トレンド・プロの川崎雄基さん(25)は、子ども時代からマンガ家を志望。現在もその気持ちは変わらず持ち続けていますが、大学卒業後は"就職"の道を選びました。

一時は就職をせずマンガの勉強をしていこうと考えた川崎さんですが、なぜ一般企業へ就職したのでしょうか?詳しく話を聞くと、妥協でもない、諦めでもない、強い覚悟が垣間見えました。

マンガのトータルプロデュース企業「トレンド・プロ」

株式会社トレンド・プロは、「マンガコンテンツで感情と行動を変える」を企業理念に掲げる、マンガのトータルプロデュース企業。

広告・採用・社内マニュアル・ビジネス書籍などのマンガ制作を幅広く手掛け、これまでの制作実績は約2000社、1万件にのぼります。

提供:株式会社トレンド・プロ

「就職はしない」と決めていた学生時代に、前社長と出会う

川崎さんは、幼い頃から絵を描くことが好きで、独学で絵を学んでいるうちに、自然とマンガ家を志望するようになったといいます。

大学卒業後はアルバイトをしながらマンガ家になるため勉強を続けようと思っていましたが、ある人との出会いがきっかけでトレンド・プロでインターンを始めることになり、2021年4月に新卒入社。現在は広告マンガの編集者として、日々奮闘しています。

-----就職という選択肢は、もともとお持ちではなかったんですね。

川崎さん:そうですね。流されやすい性格だという自覚があるので、就職して満足してしまうとマンガ家になれないのでは…という懸念があったんです。

-----そんな中、何がきっかけで就職を考え始めたのですか?

川崎さん:大学時代にアルバイトをしていた居酒屋によく来てくださる常連客の方との出会いがきっかけですね。

何度も接客を担当したので、その方とは自然と色々なお話をさせていただける関係になり、私自身がマンガ家を目指していることや、就職は考えていないことなど、全てお話していました。

すると大学3年のある日、その方が「知り合いにマンガ会社の社長がいるから、会ってみないか」「就職する気がないのは知っているけれど、マンガを作っている現場を見るのもよい経験になるんじゃないか」と声をかけてくださったんです。

-----それで、その社長に会うことになったんですね。

川崎さん:はい。そうしてお会いしたのが、トレンド・プロの前社長でした。

前社長とは色々な話をしましたが、中でも「君は自分のことを天才だと思う?」と聞かれ、「天才ではないと思います」と即答したことを今でもよく覚えています。

何度も週刊誌に持ち込みもして、マンガ家になれるチャンスを掴もうとし、実際に週刊誌の担当が付いたこともありましたが、現時点で芽が出ていないということは「自分は努力が必要なタイプ」ということ。そう理解していましたし、今でもそう思っています。

-----その質問の意図は何だったのでしょう?

川崎さん:前社長が、私の力になれるのか、なれないのか、それを判断するためだったそうです。

「天才ではない」と答えた私には「だったら、力になれると思う。経験を積む場として、トレンド・プロを使ってみないか?」と言ってくれました。

提供:株式会社トレンド・プロ

"引き出し"を増やすことを目的に、入社を決意

こうして、まずは長期インターンとしてトレンド・プロに入社した川崎さん。卒業後はそのまま正式入社する道を選びました。

-----何が就職の決め手になったのでしょうか?

川崎さん:決め手のひとつは、親の言葉でした。

私は幼い頃から絵が好きでマンガ家を目指していたので、例えば芸術を学ぶ専門学校などに通う選択肢もあったのですが、中高一貫の進学校に通い、明治大学に入学しました。

その理由は、「若いうちに色々な人と会える環境に身を置いたほうが可能性が広がる」と母親に教えてもらっていたからです。

そのため、大学卒業後の進路についても「さまざまな業界や職種の人と関わることで、マンガを描く時の"引き出し"を増やすことができるだろう」と考えるようになりました。描けるイラストのジャンルを増やすためにも、まずは社会人経験を積もうと思ったんです。

-----なるほど。実際に入社してみて、いかがでしたか?マンガを描く作業と、編集の仕事は、全く異なる要素がありそうですよね。

川崎さん:そうですね。一人で進める仕事ではないので、「今、この時点ですべきことは何か」を自分で導き出せないことが今感じている課題のひとつです。

一緒にお仕事させていただいている他の人は「全体」を見たうえで「今」を決めています。でも私はなかなか全体像がつかめず、「今」をなかなか捉えられなくて…。俯瞰的な視点がまだ足りないな…と、力不足を感じる日々です。

-----そのような時は、どう改善を試みているのでしょうか?

川崎さん:先輩方に相談したうえで「今日の〇時までに何をする」「明日の〇時にこれをする」と宣言し、タスクを精密化するようにしました。そうすることで、まずは案件を潤滑にまわせるようにする。これがまさに今取り組んでいることですね。

-----タスクの精密化、大事ですよね。実際に"引き出し"を増やせていると感じる瞬間はありますか?

川崎さん:ありますね。どんなに優秀なビジネスパーソンでも、例えば帰宅後はのんびり好きなようにゲームを楽しんでいる…とか、一人ひとり人間性としての内面があることに、改めて面白みを感じます。

学生時代に持っていた「ビジネスパーソン」のイメージは本当に限定的で固定概念の塊でしたが、今はそれもぐっと広がっている気がします。マンガでキャラクターを描く時にも、こういった感覚は必ず活きると思いますね。

もちろんマンガ家としての"引き出し"以外にも社会人経験を通して、ビジネスマナーや、先ほどの「全体を俯瞰してみることの大切さ」など、日々学ぶことが多いです。

提供:株式会社トレンド・プロ

「理解」以外の感情も生み出せるマンガを作りたい

-----川崎さんが、仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?

川崎さん:ベンチマークとしている先輩に教えてもらったことでもあるのですが、読者の「読後感」を大切にしたいと思っています。

マンガなので、「わかりやすい」だけではなく、やっぱり「面白い」を追求したいですね。そのため、「理解」以外の感情も生み出せるマンガを作りたいなと思います。

個人的にも、最近は「エモさ」を感じられるマンガを描きたいなという気持ちが強いです。誰かが、人やモノに出会うことで"変わる"瞬間を描けたらワクワクするな…と。そういった作品を作るためには、やっぱり自分自身の経験や引き出しを少しでも増やしていかないといけないですね。

-----最後に、今後の展望についてお聞かせください。

川崎さん:編集者としては、ベンチマークとしている先輩のようになりたいし、超えたいと思っています。周りを否定しないのに、自分の中には一貫性がある人で、出来上がった作品もすごく魅力的。面白いだけではなく、ちゃんとクライアントのご要望にも応えているんです。

私もそんな作品を作れるようになりたいですし、マンガ家としても活躍できる日を夢見ています!

-----ありがとうございました。

提供:株式会社トレンド・プロ

プロのマンガ家になるための手段として「就職」の道を選んだ川崎さん。夢が明確だからこそ、目の前の仕事にも誠心誠意、向き合っている姿が印象的でした。

トレンド・プロでの経験や学びは、きっと彼のマンガにも表現されていくでしょう。川崎さんが選んだ「就職」という道は、長い目で見ればゴールにたどり着くための"最短ルート"となるかもしませんね。

出典元:株式会社トレンド・プロ

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