法律の専門家である「弁護士」。高額な年収、社会的地位が高いなどのイメージがあり、憧れる人も多いのではないでしょうか。
弁護士になるためには、司法書士試験に合格し、その後も研修に進む必要があります。
本記事では、弁護士になるための方法や、合格率、勉強時間などを詳しくご紹介します。弁護士になりたい人はぜひ参考にしてください。
弁護士になるには?一般的な流れを紹介
弁護士になろうと決意した瞬間は、中学生、高校生、大学生、社会人など人によってまちまちでしょう。
以下では、一般的な弁護士になるための方法をステップに分けてご紹介します。
一般的な流れに添える人は、以下の方法で弁護士になることをおすすめします。学歴や年齢などの要素によって、以下の流れに添えない人は本記事下部の「社会人が弁護士になる方法」「中卒・高卒から弁護士になる方法」などを参考にしてくださいね。
STEP1.司法試験予備試験に合格するか、法科大学院を卒業する
弁護士になるための1つ目のステップは、司法試験予備試験に合格するか、法科大学院を卒業することです。
弁護士になるには「司法試験」と呼ばれる試験に合格しなければなりません。
司法試験を受けるためには、「司法試験予備試験」に合格するか「法科大学院」を卒業しなければいけません。
司法試験予備試験
司法試験予備試験には、受験資格や受験期間がないため誰でも受験することが可能です。
司法試験予備試験は、短答式試験・論文式試験・口述試験の3つの試験が行われます。
短答式試験では、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法および刑事訴訟法などの法律基本科目と一般教養の知識が必要です。
論文式試験では、法律基本科目に加えて、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)および国際関係法(私法系)から1科目選択して受験します。また、民事・刑事の法律実務基礎の知識も必要です。
口述試験では、民事・刑事の法律実務基礎科目について出題されます。
令和3年司法試験予備試験の受験者は「11,717人」最終的な合格者は「467人」というデータがあります。つまり、合格率は約「4%」と非常に狭き門です。
法科大学院
法科大学院は大学を卒業した人のみが入学試験を受けられます。
法学未習者の場合、小論文と面接で合否が決まります。法学既習者の場合、小論文と面接に加えて、法律に関する知識などが問われることに注意しておきましょう。
法学未習者は法科大学院で「3年間」、法学既習者の場合は「2年間」勉強しなければいけません。
合格率が4%の司法試験予備試験に合格する必要はありませんが、長い間勉強する必要があることを押さえておきましょう。
STEP2.司法試験に合格する
弁護士になるための2つ目のステップは、司法試験に合格することです。
以下では、司法試験の内容や合格率を詳しくご紹介します。
司法試験
司法試験は「短答式試験」「論文式試験」の2つの試験が行われます。
短答式試験は、憲法・民法・刑法の3科目の知識が問われ、論文式試験では、以下の4科目が出題されます。
- 公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目)
- 民事系科目(民法、商法及び民事訴訟法に関する分野の科目)
- 刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目)
- 選択科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法〔公法系〕、国際関係法〔私法系〕のうち受験者のあらかじめ選択する1科目)
引用:法務省「令和4年司法試験に関するQ&A」
令和3年度の司法試験の受験者は「3,424人」合格者は「1,421人 」とのデータが発表されました。司法試験の合格率は約「41.5%」、司法試験予備試験と比べると高い合格率です。
また、司法試験予備試験合格者の司法試験受験者は「412人」合格者は「374人」で、合格率は約「90%」です。司法試験予備試験に合格できるほどの知識を持っていれば、司法試験に合格できることを表しています。
STEP3.司法修習を修了して司法修習生考試に合格する
弁護士になるための3つ目のステップは、司法修習を修了して司法修習生考試に合格することです。
司法試験に合格した後は、司法修習生として約1年間の司法修習を受ける必要があります。
司法修習が終わると「司法修習生考試」を受けられます。司法修習生考試の合格率は約98%と、真面目に司法修習生として勉強しておけば落ちることはほぼありません。
STEP4.弁護士会に登録する
弁護士になるための4つ目のステップは、弁護士会に登録することです。
司法修習生考試に合格した後は、弁護士会に登録し正式に「弁護士」になれます。
弁護士法人に勤務したり、個人事務所を立ち上げたりと好きな働き方を選んで、弁護士としての輝かしい人生を過ごしましょう。
社会人が弁護士になる方法
大卒の社会人が弁護士になるための方法は2通りあります。
「法科大学院」を受験する方法と「司法試験予備試験」に合格する方法です。
法科大学院の中には、夜間や土日に通える大学院もあります。社会人を続けながら大学院に通う選択もあるので、仕事を辞めるか否かは考え直すことをおすすめします。
また、自力で司法試験予備試験に合格するのもいいでしょう。どちらの方法を選ぶかは自由なので、どちらか好きな方法を選んでみてはいかがでしょうか。
中卒・高卒から弁護士になる方法
中卒・高卒から弁護士になる方法は「大学を卒業した後法科大学院に入学する」「司法試験予備試験を受ける」の2つの選択肢があります。
中卒・高卒の場合は、「法科大学院」にそのままでは入学できません。そのため、「大学院で勉強してみたい」という熱い気持ちがある人は、大学に入学することから始めましょう。
また、中卒や高卒であっても、司法試験予備試験は受けられます。アルバイトや仕事をしながら独学で勉強することも可能なので、どちらかの方法を選んで弁護士になりましょう。
弁護士になるには年齢制限がある?司法試験の受験資格は?
「定年後だけど司法試験を受けてみたい」「まだ中学生だけど弁護士になりたい」と年齢に対して不安になっている人もいるのではないでしょうか。
司法試験に年齢制限はないため、どのような年齢でも受けることは可能です。
司法試験法の第4条第1項によると、司法試験の受験資格は以下のとおりです。
第四条 司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において受けることができる。
一 法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)の課程(次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間
二 司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間引用:司法試験法の第4条第1項
つまり、法科大学院を卒業した人や司法試験予備試験に合格した人は、5年間の間に司法試験に合格する必要があることを覚えておきましょう。
弁護士になるにはどの程度の学力や勉強時間が必要?
弁護士になるための司法試験予備試験に合格するためには「2,000〜3,000時間」程度必要だと言われています。
司法試験予備試験合格から司法試験合格するためには「1,000時間」ほど必要です。
つまり、弁護士になるためには「3,000〜4,000時間」は勉強する必要があると言えます。
1年で3,000時間勉強しようとすれば、1日8時間は勉強しなければいけません。社会人で仕事をしながら司法試験合格を目指す人は、2〜3年かけてじっくり勉強することをおすすめします。
弁護士の年収
「弁護士は年収が高い」というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。
令和3年賃金構造基本統計調査によると、弁護士の平均年収は「945.4万円」と、年収はかなり高額です。国税庁によると、日本人の平均給与額が「461万円」のため、平均よりも二倍以上給料がもらえます。
給料が高い分、弁護士になるためには多くの学習が必要であり、専門性が高い職業だとわかります。
参考:国税庁「II 1年を通じて勤務した給与所得者」
弁護士に向いている人の3つの特徴
「自分は弁護士に向いているのかな」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
以下では、弁護士に向いている人の特徴を3つご紹介します。自分が弁護士に向いている素質を持っているか確かめてみてはいかがでしょうか。
1.論理的思考能力がある人
弁護士に向いている人の1つ目の特徴は、論理的思考能力がある人です。
弁護士は裁判官が納得できるように、論理的かつ合理的な説明をする必要があります。
たとえ回答を練っていないことでも矛盾なく答える必要があるので、常に思考を巡らせながら話す力が必要です。状況を正確に捉え、物事を論理的に考えられる思考力がある人は、弁護士として活躍しやすいといえるでしょう。
2.柔軟な思考ができる人
弁護士に向いている人の2つ目の特徴は、柔軟な思考ができる人です。
弁護士は、相手の弁護士や検察官と論理を展開し、裁判で勝たなければいけません。どうすれば相手の論理的説明の隅をつつけるのか、矛盾点がないかなど、相手の話に惑わされず、柔軟に考えられることが重要です。
日常生活でも「他の方法がないか」「別の視点から考えるとどうなるのか」と考える癖をつけておくと、柔軟な発想ができるようになるでしょう。
3.責任感が強い人
弁護士に向いている人の3つ目の特徴は、責任感が強い人です。
弁護士は依頼人にとっては自分の将来を大きく変える存在です。クライアント一人ひとりをただの仕事と考えるのではなく、相手の人生に責任を持つ仕事だと「責任感」を覚えながら仕事ができる人が向いているといえます。
司法試験予備試験か法科大学院のどちらを選択するか考えよう
- 司法試験を合格するためには「司法試験予備試験合格」「法科大学院卒業」が必須
- 司法試験予備試験合格の合格率は「4%」司法試験合格率は「40%」
- 弁護士の平均年収は「945.4万円」
本記事では、弁護士になるための方法や試験についてご紹介しました。
弁護士になるためには、合格率が4%の司法試験予備試験に合格するか、法科大学院を卒業した上で司法試験に合格しなければなりません。司法試験に合格した後も司法修習生考試に合格する必要があるため、勉強をし続けなければならない仕事だと言えます。
平均年収と比較すると、高額を得られる仕事ですが、高い壁と継続的な努力が求められる仕事だともいえるでしょう。
本記事を参考に、弁護士になる方法を選んで、勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
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