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公認会計士試験の難易度は?合格率や必要な勉強時間、独学でも合格できるのか解説

U-NOTE編集部

2022/05/20(最終更新日:2022/08/25)


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日本三大国家資格のひとつである「公認会計士」。公認会計士になるには、試験を受け合格しなくてはなりません。合格に必要な勉強時間はどの程度なのでしょうか。独学で合格するためのポイントも併せて解説します。

そのほかの国家資格との難易度や合格率も比較しているので、公認会計士の資格取得を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

 

公認会計士試験の概要と合格基準

公認会計士になるには、公認会計士試験において実施される短答式試験と論文式試験の両方に合格する必要があります。それぞれ試験範囲が異なるほか、合格基準も別々に設けられているので、受験する前は概要をきちんとチェックしておきましょう。

 

短答式試験

短答式試験とは、マークシート方式の試験のことです。年に2回開催されていますが、試験の内容には原則として違いはありません。いずれかに出願し、合格して初めて論文式試験を受けられるようになります。

短答式試験は、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法の4科目から出題。各科目の範囲は非常に広いのが特徴です。公認会計士の試験の難易度が高いといわれるのは、そのためです。

短答式試験の合格基準は、総得点の70%が基準。ただし、得点が1科目の満点である40点と、下位から33%の人数にあたる受験者と同一の得点比率を満たしていない場合は、不合格となる可能性があります。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A|短答式試験

 

論文式試験

論文式試験とは、名前の通り論文形式で回答する試験のことです。年に1回のみ開催され、合格することで公認会計士試験の合格証書を得られます。

論文式試験は、会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目の5科目から出題。選択科目は、経営学・経済学・民法・統計学で、あらかじめ1科目を選択します。

論文式試験の合格基準は、全体の得点比率52%。ただし、これはあくまでも基準で、審査会が合格相当と認めた得点比率を満たさなければ、合格とはみなされません。さらに、1科目につき得点比率40%が満たない場合も不合格となる可能性があります。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A|論文式試験

 

公認会計士試験の受験要件・受験資格

公認会計士は国家資格ながら、受験資格の制限がなく、誰でも受けることができます。

年齢・学歴は問わないのはもちろん、国籍が日本以外の方も受験可能。そのため、在学中に資格を取得する方もいますし、社会人になってから取得を目指す方もいます。

簡単に合格できる試験ではないですが、誰でも公認会計士を目指すことができます。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A|試験概要

 

公認会計士試験の合格率

公認会計士試験は、数ある国家資格のなかでも非常に難易度が高いといわれています。弁護士・医師と並んで取得が難しく、日本の三大国家資格と呼ばれることもあります。

公認会計士試験の合格率は、例年10%前後。例えば、令和元年は10.7%、令和2年は10.1%、令和3年は9.6%と、近年の数字を見ても非常に合格率が低いことがわかります。

参考:令和2年公認会計士試験の合格発表の概要について

参考:令和3年公認会計士試験の合格発表の概要について

 

公認会計士試験の合格者層

公認会計士試験の合格層は、年齢別・学歴別・職業別にデータが公開されています。

例えば、令和2年の合格者層は、年齢だと20歳以上25歳未満がもっとも多く合格しており、続いて25歳以上30歳未満、35歳以上40歳未満となっています。

学歴では、短大を含む大学在学者がもっとも合格しているのが特徴。出願者数は短大を含む大学卒業者のほうが多いものの、最終的な合格者は在学中の方が多くなっています。その次に多いのが高校生です。公認会計士試験は学習範囲が広いので、勉強の時間を確保しやすい学生が受かりやすいことがわかります。

職業で見ても、全体の合格者の半数を学生が占めています。その次に多いのが無職と答えている方で、その次が専修学校や各種学校の受験生です。このことからも、やはり合格を目指すにはある程度、時間の余裕を確保しなければならないことがわかります。

参考:令和2年公認会計士試験 合格者調

 

公認会計士と他の国家資格との難易度の比較

公認会計士は弁護士、医師と並ぶ日本の三大国家資格のひとつです。会計・法律・医療とジャンルが違い、それぞれ違った難しさがあります。また、公認会計士はよく税理士や社労士、行政書士と仕事内容や試験難易度が比べられる職業です。

これらの資格と公認会計士の資格は、どの程度難しいのでしょうか。それぞれの資格と難易度を比較してみました。

 

税理士との比較

税理士と公認会計士はどちらも会計系の資格のなかで、最難関クラスといわれています。そのため、試験の内容だけでみれば難易度は同程度。ただし、受験資格や試験制度、必要とされている勉強時間などには違いがあります。

まず受験資格です。税理士は受験資格が定められていますが、公認会計士は受験資格なしで誰でも受けられます。その点だけ見れば、公認会計士のほうが資格取得まで時間や費用などはかかりにくいといえるでしょう。

次に試験制度です。税理士は科目合格制を採用しており、一度にすべての科目を受ける必要はありません。また、合格した科目に有効期限がないため、ゆとりを持って勉強できるのが特徴です。

一方、公認会計士は全科目を一括受験するタイプ。一度で合格を目指す必要があるため、広範囲の受験科目をバランスよく効率的に学習しなければなりません。

最後に勉強時間です。合格を目指すためにはどちらの資格も最低3000時間の学習時間が必要といわれています。3000時間を最低ラインにし、より多くの時間を確保するほど合格する確率は上がります。

税理士はゆとりを持って勉強したい方向き、公認会計士は短期合格を目指す方向きの資格といえます。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A|試験概要

参考:国税審議会「第72回税理士試験受験案内」P2

 

社労士との比較

労働・社会保険・年金などの相談に応じ、労働者の福祉向上のために活動する社労士。社会保険労務士法に基づいた国家資格です。

社労士と公認会計士は、試験そのものの難易度を見ると、公認会計士のほうが難しいといえます。合格率でいえば、社労士は6〜7%程度、公認会計士は10%前後と、公認会計士のほうが高いデータが出ていますが、これは試験制度が大きく関係しています。

公認会計士は、合格した科目が2年間受験が免除されるのに対し、社労士試験には免除制度が適用されません。そのため、全科目一括合格を目指す必要があり、その結果合格率が低くなっています。

また、社労士になるのに必要な時間は最低でも1000時間。公認会計士は3000時間を最低ラインに、人によっては5000時間勉強して合格することも少なくありません。このことからも、社労士より公認会計士のほうが難易度が高いことがわかります。

参考:全国社会保険労務士会連合会「社労士とは

参考:厚生労働省「第52回社会保険労務士試験の合格者発表

参考:全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士試験とは

 

司法書士との比較

法律に関わる業務を行う司法書士。法律専門の国家資格のひとつです。

司法書士と公認会計士では、難易度は同程度といわれています。ただし、試験の合格率でいえば、司法書士は例年4〜5%、公認会計士は10%前後であるため、司法書士のほうが合格するのが難しいといえます。

勉強時間で見た場合、司法書士と公認会計士ともに最低3000時間の勉強が必須。試験範囲をすべて勉強するだけでも1〜2年ほどの時間を要します。そのため、資格取得の難易度は同程度といえるでしょう。

参考:石川県司法書士会「司法書士ってなに?

参考:法務省「令和2年度司法書士試験の最終結果について

 

弁護士・医師の三大国家資格との比較

公認会計士は、弁護士や医師と並んで難易度の高い、日本の三大国家資格のひとつです。難易度順に並べるとすれば、弁護士・医師・公認会計士の順番になります。

弁護士になるための司法試験は、総合的な難易度が高いのが特徴です。まず、受験資格のハードルが非常に高く、法科⼤学院に通って2〜3年学ぶことが求められます。そして試験範囲も広く、記述式の論文式試験が特典の8割を占めるのもポイント。合格率は20%台の年が多く見られます。

これらのことから、司法書士は日本の資格のなかでもっとも難易度が高いといわれているのです。

医師国家試験は、合格率だけで見れば例年90%以上と非常に高いのが特徴。一見難関資格には見えませんが、受験資格を得るまでが長く、学校教育法に基づく大学において6年間学ぶ必要があります。

そもそも大学医学部に進学すること自体が難しいため、そのことからも医師の資格取得は難易度が高いといわれているのです。

弁護士・医師の試験に比べると、公認会計士は受験資格がない分、受けやすい資格ではあります。ただし、独学で合格するのは難しく、ある程度の勉強時間も確保しなければならないことは留意しておきましょう。


参考:日本弁護士連合会「弁護士になるには

参考:日本弁護士連合会「弁護士白書」P62

参考:厚生労働省「医師国家試験の施行について

参考:TECOM「第115回医師国家試験合格状況

 

TACの資格難易度ランキングとの比較

資格取得の専門学校であるTACでは、人気資格のランキングを毎年公開しています。

例えば、2022年度のランキングでは、1位の簿記検定に続き、公認会計士が2位にランクイン。3位が宅地建物取引士、4位が社会保険労務士と、専門性が高く、さまざまな仕事に活かせる資格が人気であることがわかります。

公認会計士は難易度が高いけれど、会計系の最高峰の資格として取得する価値があるとして認識されているようです。

参考:資格の学校TAC「人気資格ランキング|2022年ver

 

公認会計士試験の合格までに必要な勉強時間

公認会計士試験の合格までに必要な勉強時間は、最低でも3000時間といわれています。ただし、これはもっとも最短の1年で受かることを考えた際の勉強時間です。

2年かけて合格する場合の勉強時間は最低4000時間。時間をかける分、1日の勉強時間が短く、1年目は1500時間、2年目は2500時間などの配分が可能です。社会人として働きながら目指す場合は確保できる時間がより少なくなり、合格までの年数もかかります。人によっては、総勉強時間が5000時間以上になるケースもあります。

合格までの平均年数は2〜4年程度。公認会計士試験を受ける方の多くは知識がゼロの状態から取得を目指すため、基本的には2年かかると覚えておくのがおすすめです。

 

公認会計士の試験は独学でも合格できる?

公認会計士の試験は、独学で合格を目指すのは難しいといわれています。しかし、可能性はゼロでありません。金銭面や時間面の事情で独学で公認会計士試験を受ける場合、意識したい5つのポイントについて解説します。

 

独学で合格するポイント1.過去問を繰り返し解く

独学で合格する1つ目のポイントは、過去問を繰り返し解くことです。

独学で試験対策を行う場合、まずは問題の傾向を自身で把握しなくてはなりません。それには、過去問を繰り返し解くことが重要です。

その際はなるべく、解説量が多く内容が丁寧な問題集を選びましょう。また、答えだけを覚えるのではなく、答えを導き出すまでの過程を理解することも大切です。

 

独学で合格するポイント2.模試を受験する

独学で合格する2つ目のポイントは、模試を受験することです。

公認会計士を目指すために多くの方が通う予備校では、定期的に模試が実施されます。独学で進めた学習の内容をどれくらい理解しているか、実力を客観的に知れるよい機会です。

勉強が足りていない箇所や苦手とする科目などがわかり、効率的な学習計画を立てる際の参考にもなります。

 

独学で合格するポイント3.勉強をルーティン化する

独学で合格する3つ目のポイントは、勉強をルーティン化することです。

公認会計士の資格を取得するには、最低でも3000時間、年数にすると約2年ほどの時間がかかります。予備校や専門学校に通う場合は、ライバルの存在を意識しながら学習に臨めたり、講師からのフィードバックを受けて高いモチベーションを保ちながら勉強を効率的に進めたりしますが、独学の場合はそれがありません。

モチベーションを維持するためには、勉強をルーティン化させてしまうのがおすすめ。出勤や通学前の朝の時間など、1日のスケジュールのなかに組み込み、毎日少しずつ学習を進めることで、結果も出しやすくなります。

過去問を解くうえで理解できている科目が増えたと実感できれば、モチベーションを維持しながら合格を目指せます。

 

独学で合格するポイント4.予備校の教材を購入する

独学で合格する4つ目のポイントは、予備校の教材を購入することです。

独学で公認会計士を目指す際に受験者が不安に感じるのは、学習する範囲が漏れていることと、わからない箇所があった場合に質問する相手がいないことです。そのために大切なのが教材選び。この教材に書いてある内容さえ理解すれば、合格の可能性があると実感できるテキストが重要です。

予備校の教材は、予備校に通う方以外も購入可能。購入前には必ず内容を確認し、総合的に学べるテキストと短答式試験向けのテキスト、論文式試験向けのテキストの3つを揃えましょう。

 

独学で合格するポイント5.徹底してインプットを行う

独学で合格する5つ目のポイントは、徹底してインプットを行うことです。

公認会計士試験を受験する方の多くは、会計の知識を一から学びます。インプットとアウトプットを繰り返すことはもちろん大切ですが、インプットされている知識がなければ、上手なアウトプットができません。

そのためまずは、インプットを徹底的に行い基礎を身に付けることが大切。知識が定着しているかどうかは、週末にまとめて学習内容を振り返るなどして確認しましょう。

 

公認会計士の将来性はある?これから資格を取得するメリットは?

公認会計士は将来性のある仕事だといわれています。資格取得の難易度は高いですが、その分さまざまなメリットがあるのが特徴です。なかでも公認会計士ならではの3つのメリットをご紹介します。

 

メリット1.場所を問わず働ける

公認会計士の資格を取得する1つ目のメリットは、場所を問わず働けることです。

公認会計士には独占業務が存在します。企業・学校・公益法人など、幅広い組織を対象とした監査業務です。ほかの職種の方はできない仕事のため、非常に需要があります。日本全国どこでも働くことができ、仕事して安定性が高いのが特徴です。

参考:日本公認会計士協会「公認会計士の仕事内容

 

メリット2.税理士や行政書士としても活躍できる

公認会計士の資格を取得する2つ目のメリットは、税理士や行政書士としても活躍できることです。

公認会計士試験に合格した方は、税理士と行政書士の試験が免除され、同時にこの2つの資格も取得することが可能。税理士には3つの独占業務が、行政書士には1つの独占業務が存在するため、3つの資格を組み合わせることでより広範な業務を行えるようになります。

 

メリット3.複数のキャリアパスがある

公認会計士の資格を取得する3つ目のメリットは、複数のキャリアパスがあることです。

公認会計士の主な業務は監査ですが、ほかに税務やコンサルティングの業務なども行います。監査・会計の専門家であるため応用範囲が広く、さまざまな場所で活躍できるのが特徴です。

監査法人でキャリアを積むほか、一般企業に勤めて組織内会計士として働くことも可能。なかには独立開業し、個人事務所で会計・税務・コンサルティングと、すべての業務を行いながら、会計のプロフェッショナルとしてさまざまな経験を積み、自身でキャリアを開拓する方もいます。

公認会計士という資格を軸に、会計に関する知識を活かした多くの仕事に就けるのは、もっとも大きなメリットといえるでしょう。

参考:日本公認会計士協会「公認会計士の活躍の場

 

公認会計士は勉強量が必要なことから難易度が高い試験

本記事のまとめ
  • 公認会計士は会計系資格のなかでもっとも難しい
  • 独学でも合格を目指すことは可能
  • 短答式試験・論文式試験それぞれに対応した対策が重要

公認会計士試験に合格するには最低3000時間、2〜4年ほどの年月がかかり、相当な勉強量が必要です。そのため難易度の高い試験といわれています。

しかし、公認会計士は魅力的な職業です。さまざまなキャリアパスが拓かれていることに加え、税理士や行政書士として働くことも可能。なにより、監査という業務を通して企業の健全な経営をサポートすることで、よりよい社会を目指すことに貢献できます。勉強は大変ですが、合格後は仕事面・生活面ともに高い満足度を得られることは間違いないでしょう。

公認会計士を目指す方は、ぜひ本日から勉強計画を立て、挑戦してみてはいかがでしょうか。


 

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