企業の監査を主な業務としている「公認会計士」。公認会計士になるためには国家資格が必要ですが、弁護士や医師に並んで難易度が高く、3大資格のひとつといわれている職業です。業界の第一線で活躍していることが多いため、さまざまなやりがいを感じられるのが特徴です。
本記事では、手に職をつけたいと考える方に向けて、公認会計士のなり方を解説。具体的な仕事内容や税理士との違い、将来性なども併せてご紹介しています。
公認会計士を目指すためにまず何をすればよいのか、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
公認会計士とは?
公認会計士は、監査・会計の専門家として企業の公正な経済活動をサポートするための重要な役割を持つ職業です。国家資格のひとつで、公認会計士試験に合格した方のみが公認会計士を名乗ることができます。
公認会計士と税理士との違い
公認会計士とよく間違えられる職業として、税理士があげられます。2つの職業は、主に業務内容に違いがあります。
公認会計士が監査・税務・コンサルティングに加え、M&Aや上場支援などを行えるのに対し、税理士は会計業務や税務相談など、税務に関わる業務のみを行います。税理士に比べて公認会計士のほうが業務の幅は広いのです。
公認会計士の資格を有している方であれば、税理士登録を済ませることで税理士として税務を行えるのも特徴です。
なお、2018年2月末時点で登録されている公認会計士の数は3万347名。税理士の数が7万7174名であることを考えると、公認会計士は重宝される職業であるといえます。
参考:日本公認会計士協会「公認会計士よくある質問Q&A|公認会計士と税理士の違いは何ですか?」
公認会計士と会計士との違い
公認会計士と会計士は、同じ職業を示すため違いはありません。会計士という呼ばれ方をする場合、それは公認会計士のことを指しています。
公認会計士の仕事内容
公認会計士の仕事は、大きく監査・税務・コンサルティングの3つに分けられます。公認会計士の業務領域は年々拡大しているので、どの業務を中心に行いたいかをあらかじめ考えておくと、就職後のギャップが少ないでしょう。
1.監査
公認会計士の1つ目の業務は、監査です。監査とは、公認会計士のみが行える独占業務のこと。主に法定監査が中心ですが、法定監査以外の監査も存在します。
監査業務では、企業が作成した決算書や損益計算書、貸借対照表などの財務諸表を第三者の立場で確認。会社の財務状況が適正であるか不適正であるか監査意見を表明することで、情報の信頼性を確保します。監査後の監査報告書は、企業の利害関係者に公開されます。
2.税務
公認会計士の2つ目の業務は、税務です。税務は税理士だけに許された独占業務のため、公認会計士が税務を行う場合は、まず税理士としての登録が必須です。
税務には、税務代理や税務書類の作成、税務相談などの業務があります。税のスペシャリストとして、企業や個人事業主、一般生活者の税に関する作業をサポートします。
3.コンサルティング
公認会計士の3つ目の業務は、コンサルティングです。培った専門知識を駆使して経営戦略や組織再編、情報システムの開発や導入など、経営全般にまつわる助言を行います。
リスク管理や内部統制などに関する知識を活かした、コーポレート・ガバナンスの支援もコンサルティング業務のひとつ。監査や税務ではなく、コンサルティングとして活躍する公認会計士もいるほど、その能力は高く評価されています。
参考:日本公認会計士協会「公認会計士の仕事内容」
参考:日本公認会計士協会「監査意見の種類」
公認会計士が活躍している場
監査法人の活躍の場は大きく3つに分けられます。主な就職先は監査法人ですが、なかには会計事務所や一般企業で活躍している方も存在します。それぞれメインとなる業務が違う点はおさえておきましょう。
1.監査法人
1つ目は監査法人です。多くの公認会計士は監査法人に勤めており、名前の通り、主に監査に関する業務を行います。
なかでも、BIG4と呼ばれる監査法人(EY新日本有限責任監査法人・有限責任あずさ監査法人・有限責任監査法人トーマツ・PwCあらた有限責任監査法人)は就職先として人気。ほかにも、準大手監査法人や中小監査法人など規模ごとに監査法人は分かれています。
2.会計事務所
2つ目は会計事務所です。主に税務に関する業務を行うのが特徴。契約している企業の巡回監査も実施することが多いため、監査の業務が全くないというわけではありません。
近年、公認会計士の活躍の幅が拡大していることを受け、会計事務所によってはコンサルティング業務を行うこともあります。
3.一般企業
3つ目は一般企業です。元々、監査法人で経験を積んだ方が一般企業に転職し、組織内会計士として活躍するパターンが多く見られます。
日本公認会計士協会が設立した「組織内会計ネットワーク」の全会員は2014年には1292名でしたが、2021年には2740人に増加。公認会計士の新たなキャリアとして確立されつつある勤務先です。
組織内会計士の場合、監査に関する業務はほとんどないのが特徴。主な業務としては、財務諸表の作成やM&Aなどの経理、財務方針や戦略策定などの財務に加え、経営情報を管理するIRや内部統制の構築があげられます。
参考:日本公認会計士協会「公認会計士の仕事内容」
参考:日本公認会計士協会「組織内会計士として活躍」
参考:日本公認会計士協会 組織内会計ウェブサイト「組織内会計士ネットワーク」
公認会計士の年収の目安
公認会計士は専門性の高い職業なので、一般企業に勤めるサラリーマンと比較して年収は高い傾向にあります。
例えば、公認会計士1年目の年収は500万円程度。令和2年度の「民間給与実態統計調査」の結果、平均給与額が433万円となっていることから、公認会計士の年収は比較的高いことがわかります。
参考:日本公認会計士協会「公認会計士よくある質問Q&A|公認会計士の給与水準を教えてください」
参考:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」
公認会計士のやりがい
公認会計士を目指すうえで知りたいのは、職業としてのやりがいです。働くなかでどんなことを得られるのか、どんなキャリアを描けるのかなど、公認会計士としてのやりがいを4つ解説します。
1.活躍の幅が広い
公認会計士のやりがい1つ目は、活躍の幅が広いことです。公認会計士は会計のプロであり、専門的な知識を有しているためさまざまなシーンで重宝されます。監査業務はもちろんのこと、ビジネスアドバイザリーやコンサルティングなど、多くの業務を任されることが多いのが特徴です。
その分責任感や大きいものの、縁の下の力持ちとして会社の成長をサポートするための活動ができることはやりがいに繋がるでしょう。
2.第一線で活躍できる
公認会計士のやりがい2つ目は、第一線で活躍できることです。公認会計士の資格を取得すると、20代の若手であっても会計に関する専門知識を有したスペシャリストとしてみなされます。
そのため、年齢に関係なく企業の経営者と対等な立場でやりとりをすることも少なくありません。会社経営について助言を行い、企業が公正な経済活動を行えるよう、常に第一線で活躍するのが公認会計士です。
3.会計という専門性を追求できる
公認会計士のやりがい3つ目は、会計という専門性を追求できることです。公認会計士が所属する監査法人には、会計に関する豊富な情報が集まっています。さらに、同じ公認会計士と仕事を通して会計に関する知識を共有できるほか、エキスパートと呼ばれる方とも交流の機会を持つことが可能です。
会計の専門的な知識は独学でもある程度学べるものの、公認会計士となり監査法人や会計事務所などに勤めるからこそ得られる知識も多くあります。監査や税務などの業務を通じて会計という専門性を追求できるのは、公認会計士のやりがいのひとつといえるでしょう。
4.主体的にキャリアを開拓できる
公認会計士のやりがい4つ目は、主体的にキャリアを開拓できることです。公認会計士は監査法人や会計事務所に勤めるほか、独立開業したり、コンサルティング会社で活躍したりと、多くのキャリア選択肢を持つことができます。
グローバルでの活躍の機会も多く、日本以外の場所でキャリアを構築したいと考える方にも適した職業です。公認会計士という資格を元にさまざまな挑戦ができることは、公認会計士のやりがいといえます。
公認会計士に向いている人の特徴
難しい職業というイメージの強い公認会計士ですが、公認会計士に向いているのは一体どんな人なのでしょうか。公認会計士に向いている人の3つの特徴について解説します。
1.正義感・責任感が強い
公認会計士に向いている人の1つ目の特徴は、正義感・責任感が強いことです。
公認会計士の主な業務である法定監査は、企業が作成した財務諸表を客観的な視点で確認し、監査意見を表明します。そのため不正や誤りを見逃さず、厳しく評価する姿勢が求められるのです。
気になる点があれば疑問を投げかけ、企業の財務状況を正しく確認し意見する正義感や責任感が強い方は、公認会計士に向いているといえるでしょう。
2.勉強が好き
公認会計士に向いている人の2つ目の特徴は、勉強が好きであることです。
公認会計士として活躍するには、国家資格である公認会計士の資格取得が必須。公認会計士試験は、弁護士や医師の試験と並んで難易度が高い、3大資格のひとつといわれています。
合格するために膨大な学習時間が必要。粘り強く勉強できる方でないと公認会計士を目指すことは難しいでしょう。
3.会計・経営に興味がある
公認会計士に向いている人の3つ目の特徴は、会計・経営に興味があることです。
公認会計士の業務は会社経営に関わることが多いのが特徴。コンサルティング業務を請け負う場合は、より専門的な経営知識が必要になります。
なかでも、もっとも重要なのは会計知識といわれています。計算書や貸借対照表などの見方が不十分だと、企業が健全な経営を行えているのか判断ができないからです。会計・経営に関する知識を自ら学び、業務に活かす姿勢を持つ方は公認会計士に向いているといえるでしょう。
公認会計士に必要な資格とは?
公認会計士に必要なのは、「公認会計士」という国家資格です。学生・社会人を問わず資格を取得する方が多く、合格率は例年10%前後。司法試験は30〜40%、医師国家試験が90%前後であることを考えると、試験難易度が非常に高いことがわかります。
公認会計士になるために必要な学習時間は、最低でも3000時間といわれています。期間にすると2年間。ただし、これは比較的勉強時間の確保ができている方の場合で、社会人として働きながら資格取得を目指す方の場合は、3〜4年かかることもあります。
会計分野はほとんどの方が事前知識を持ち合わせていないため、学習はゼロからのスタートです。そのため、独学で学ぶには時間がかかりすぎることもあり、多くの場合予備校や専門学校に通いながら、知識を身に付けます。
公認会計士を目指す場合、独学という選択肢はあまり考えず予備校や専門学校で学習を進めることを念頭においておくのがよいでしょう。
参考:CPA会計学院「公認会計士試験合格までの勉強時間は?何年かかる?」
公認会計士の資格については、「公認会計士試験の難易度は?合格率や必要な勉強時間、独学でも合格できるのか解説」からご確認ください。
公認会計士になるための方法
公認会計士になるには、公認会計士試験に合格するだけでなく、2年間の実務経験が必要です。さらに、会計・監査・経営に関する理論が理解できているかどうかを確認するため、最終関門として修了考査があり、合格する必要があります。
どんなステップを踏めばよいのか、公認会計士になるための方法を解説します。
STEP1.公認会計士試験に合格する
公認会計士になるにはまず、公認会計士試験に合格しなければなりません。公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験の2つに分かれており、それぞれの試験に受かる必要があります。
短答式試験は年に2回開催。合格者はその後2年間、短答式試験が免除されます。一方、論文試験は年に1回開催。科目ごとに合格を得られ、該当する科目はその後2年間試験が免除されます。多少の猶予が設けられている分、1回で両方に合格しなければならないというプレッシャーを感じにくいのがポイントです。
参考:日本公認会計士協会「公認会計士試験について」
参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A|試験概要」
STEP2.実務や業務補助を2年間行う
短答式試験と論文式試験に合格した後は、実務試験を受けます。試験といっても、必要単位数を取得するための実務補修です。常勤・非常勤と雇用形態を問わず、また実務経験の時期は試験の前後どちらも問題ないとされています。
参考:金融庁「公認会計士の資格取得に関するQ&A|実務経験の概要について教えてください。」
STEP3.実務補習の後、修了考査に合格する
2年の実務を積んだ後は、修了考査が行われます。この試験に合格し、公認会計士として登録されることで、初めて公認会計士の資格を得ることができます。
修了考査で見られるのは、会計・監査・経営に関する理論を理解しているかどうかです。合格率は50〜60%台と、公認会計士試験と比較すれば高いデータが出ています。とはいえ、公認会計士試験合格に気を緩めず、最後までしっかりと試験対策を行うことは重要です。
参考:日本公認会計士協会「令和3年度修了考査の出題趣旨について」
公認会計士に必要なスキル
公認会計士には必要なスキルが3つあります。1つ目は正確に数字を読み解くスキル、2つ目はITスキル、そして3つ目はコミュニケーションスキルです。それぞれのスキルがどのような場面で役に立つのかを解説します。
1.数字を正確に読み解くスキル
公認会計士に必要なスキル1つ目は、数字を正確に読み解くスキルです。公認会計士を目指す場合に必要不可欠なスキルといえるでしょう。
公認会計士は職業柄、数字をチェックする機会が非常に多くあります。単純なミスが少なかったり、計算が得意だったりすると小さなミスにも気付きやすく、企業が法律に違反してしまうなどのトラブルも未然に防止することが可能です。
2.ITスキル
公認会計士に必要なスキル2つ目は、ITスキルです。多くの企業では業務効率化のため、さまざまなツールを導入しています。領収書を電子化するシステムを活用していたり、クラウドの経理システムを使用していたりと、監査対象の企業によって使っているツールは異なります。
そのため、公認会計士は企業が導入しているツールの動向を掴み、スムーズに使用・閲覧ができるようにITスキルを高めておくことが必要です。
3. コミュニケーションスキル
公認会計士に必要なスキル3つ目は、コミュニケーションスキルです。公認会計士が監査や税務業務などでやりとりを行う企業担当者は、公認会計士と同程度の会計スキルや知識を持っていることはほとんどありません。
監査に慣れていない現場担当者に不明点を質問したり、判断に必要な資料を用意してもらったりするには、難解な会計用語ではなくわかりやすい言葉選びを意識することも重要です。スムーズかつ互いに快適に監査を終了させるには、高いコミュニケーションスキルも求められます。
公認会計士の将来性やキャリアパス
公認会計士は将来性のある職業のひとつです。大企業では監査が義務付けられているほか、それ以外の企業でも監査を受けることが可能で、健全な財務状況を示すため多くの企業で監査が行われています。
監査は、公認会計士の独占業務。非常に専門性が高いうえにニーズもあるため、公認会計士は市場価値の高い職業といわれています。
キャリアパスの幅が広いのもポイント。監査法人に勤め続けて会計の専門性を磨くことはもちろん、独立開業したり、企業の経営アドバイザーとして活躍したりも可能です。
近年では、一般企業の組織内会計士として働く方も増えてきているのが現状。企業のグローバル化に伴い、出向する形で海外で公認会計士として活躍する方もいます。その専門性の高さから、さまざまなキャリアパスが開かれているのが公認会計士という職業の魅力的なところです。
公認会計士は難易度は高いが手に職をつけたい人におすすめの職業
- 公認会計士は社会人になってからでも目指せる
- 市場価値が高く、キャリアの選択肢が広がる
- 社会に貢献している実感が得られるのがやりがい
公認会計士は、手に職をつけたいと考える方におすすめの職業。公認会計士試験は非常に難易度が高いですが、取得後はキャリアの選択肢が広がります。学習時間を確保できれば、社会人でも目指すことは可能です。
会計や経営などの分野に興味がある方は、公認会計士を目指してみてはいかがでしょうか。
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