介護福祉職について知識がある方なら聞いたことがあるであろう「ケアマネジャー」という職種。身体的な介護は行わず、要介護者や要支援者に対してケアプランを作成するのが主な仕事です。
本記事では、今後の日本社会において需要が高い職種であるケアマネジャーについて、給料の目安やなる方法などを解説。併せてキャリアパスについてもご紹介しています。
ケアマネジャーとは?
「ケアマネジャー」とは、要介護者や要支援者が自立した生活を送れるように、援助に関する専門的な知識や技術を有しており、介護支援専門員証の公布を受けた人のことを指します。別名、介護支援専門員とも呼ばれています。
参考:厚生労働省「概要(介護支援専門員)」
ケアマネジャーの仕事内容
ケアマネジャーは、日々どんな業務を行っているのでしょうか。よく知られているケアプランの作成に加え、介護給付費の管理や各所との連絡調整役など、重要な業務の内容を解説します。
1.ケアプランの作成
ケアマネジャーの1つ目の仕事は、ケアプランの作成です。
ケアプランとは、提供する介護サービスの計画表のこと。利用者の相談をもとに課題を分析し、介護の方針や内容、介護の目標を決定するのはケアマネジャーの仕事のひとつです。
ケアプランを作成したあとは、その計画がきちんと実施されているか、モニタリングも行います。定期的に要介護者の自宅に足を運び、健康状態をチェックしたり、本人や家族に対して現状のケアプランに不満や不足がないかをヒアリングしたりします。
2.介護給付費の管理
ケアマネジャーの2つ目の仕事は、介護給付費の管理です。
市町村にて、要介護・要支援の認定を受けた利用者が介護サービスを利用した際、事業者に対して「介護給付費」が支払われます。介護給付費とは、利用者がサービス利用額の約1割を負担し、残りの約9割を市町村が事業所に対して、介護給付費という形で支払う仕組みのことを指します。
この介護給付費の管理も、ケアマネジャーの業務のひとつです。月単位で介護保険サービスの利用予定を作成し、サービス提供後に実施内容を確認。作った給付管理表を国民健康保険団体連合会に提出して、給付を受けるまでが一連の流れです。
参考:厚生労働省「介護報酬の仕組みについて」H18.10.5
参考:wam net「8.給付管理業務」
3.利用者と介護サービス事業との連絡調整
ケアマネジャーの3つ目の仕事は、利用者と介護サービス事業との連絡調整です。
ケアマネジャーはケアプランを作成するものの、実際に介護を行うのは介護保険サービスの事業所です。その数は多く、利用者や利用者の家族ではなかなか適した事業所を見つけるのは非常に困難。そのためケアマネジャーは、相談内容に合った事業所を探して提案し、連絡やスケジュールの調整も行います。
ケアマネジャーが活躍している場
ケアマネジャーが活躍する現場は、居宅における介護支援をメインとしているか、施設における介護支援をメインとしているかによって異なります。
居宅でのケアプランを作成する場合、多くのケアマネジャーは居宅介護支援事業所・介護予防支援事業所などに勤務しています。
一方、施設におけるケアプランを作成する場合は、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・特定施設入居者生活介護などが主な勤務先です。
参考:厚生労働省「概要(介護支援専門員)」
ケアマネジャーの需要・将来性
ケアマネジャーに限らず、介護業界全体で介護人材は不足しています。介護労働安定センターが公開した「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について」という資料によれば、回答事業者数9183のうち、全体の32.1%がケアマネジャーという職種に対して不足感を抱いていると回答。多くの事業者において、ケアマネジャーは需要があるとされています。
さらに、厚生労働省がまとめた「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2023年には約233万人、2025年には約243万人、2040年には約280万人の介護職員が必要だとしています。同時に発表した「介護職員数の推移」によると令和元年時点での介護職員数は200万人程度。
2つのデータを照らし合わせると、必要数に対して実際に働く介護職員の人数は不足気味。このことから、ケアマネジャーは将来性のある職種といえます。
参考:介護労働安定センター「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について」R3.8.23(P9)
参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
参考:厚生労働省「介護職員数の推移」
ケアマネジャーのやりがい
ケアマネジャーのやりがいは、要介護者や要支援者の悩みが解消されたり、自立した生活を送りやすいようになったりと、利用者に前向きな変化が見られたときに実感します。作成したケアプランの内容が適しており、それによる結果が反映されることにやりがいを感じられます。
利用者やその家族と心を通わせられたと感じる瞬間もやりがいのひとつ。気軽に相談してくれたり、ケアプランについて同じ目線で話し合いができたりすると、ケアマネジャーとして頑張ってきてよかったと実感できます。
ケアマネジャーの年収の目安
ケアマネジャーの年収は、介護職員のなかではやや高め。厚生労働省老健局老人保健課が公開した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、ケアマネジャーの平均給与額36万8030円というデータが出ています。年収に換算すれば400万円弱となります。
平均給与額は、勤務先ごとに異なる点には要注意。介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院・訪問介護事業所などの施設のなかでは、介護老人福祉施設が約41万円ともっとも高い平均が出ています。
年収を重視して勤務先を選ぶのであれば、サービスの種類ごとに求人を探してみるのがおすすめです。
参考:厚生労働省老健局老人保健課「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」(P128,P166)
ケアマネジャーに向いている人の特徴
ケアマネジャーを目指すにあたって気になるのが、向いている人の特徴です。どのような人がケアマネジャーとして活躍できるのでしょうか。4つの特徴を解説します。
1.フットワークが軽い
ケアマネジャーに向いている人の1つ目の特徴は、フットワークが軽いことです。
ケアマネジャーの主な業務はケアプランの作成ですが、利用者の居宅に足を運んで相談にのったり、悩みごとをヒアリングしたりするフットワークの軽さは非常に大切です。利用者を繋いでいるサービス事業者に対して利用者の症状を聞きに行ったり、サービスを提供する上での相談を受けたりと、実際に体を動かして関係者に会いにいくことで、現状の改善の糸口を見つけられます。
2.コミュニケーション力が高い
ケアマネジャーに向いている人の2つ目の特徴は、コミュニケーション力が高いことです。
ケアマネジャーは、利用者や利用者の家族、サービス事業所など、関係者を繋ぐ橋渡しの役割を担っています。中心となる存在であり、さまざまな人と関わりを持つため、やりとりを円滑に進めるコミュニケーション力が欠かせません。
きちんと話を聞いたり、相手の立場を察した上で提案をしたりと、相手から信頼されるようなふるまいも求められます。
3.複数の業務を同時並行でこなせる
ケアマネジャーに向いている人の3つ目の特徴は、複数の業務を同時並行でこなせることです。
書類作成や利用者との面談、関係各所との相談や打ち合わせなど、ひとりの利用者を担当する上で、複数の業務が同時に発生するのがケアマネジャーという仕事の特徴です。ときには、トラブル対応などの差し込み業務もあります。優先順位を付けながら、確実に業務をこなせる方はケアマネジャーに向いているといえるでしょう。
4.タフなメンタルを持っている
ケアマネジャーに向いている人の4つ目の特徴は、タフなメンタルを持っていることです。
業務の特性上、ケアマネジャーは非常に多くの人と関わりを持ちます。利用者と介護サービス事業所との橋渡しを行う役割を担っているため、トラブルが起きた場合は、そのどちらにも頭を下げ、状況の説明や改善案を提案する必要があります。大変な場面もひとつずつ確実に対応し、心を切り替えて業務を進められる方はケアマネジャーに適性があります。
ケアマネジャーに必要なスキル
ケアマネジャーに向いている人の特徴とは別に、実際の業務に携わる上で有用なスキルとはなんでしょうか。3つの必須スキルについて解説します。
1.豊富な専門知識
ケアマネジャーに必要な1つ目のスキルは、豊富な専門知識です。
ケアマネジャーの業務を行うには、専門的な知識が非常に重要。利用者の症状や生活の状況に応じて、適切なケアプランを作成する必要があるからです。介護目標を達成するために必要な介護サービスを明らかにし、目的に合った介護サービス事業所との相談や打ち合わせも実施しなければなりません。経験が豊富でなくても、専門的な知識があれば複雑な業務もわりとスムーズに進められるでしょう。
2.公正かつ中立的な判断力
ケアマネジャーに必要な2つ目のスキルは、公正かつ中立的な判断力です。
ケアマネジャーの業務は、利用者本意という基本理念に基づいて介護サービスの仕組みを確立するため、公正かつ中立に機能する必要があるとされています。つまり、利益を優先して利用者に接するのではなく、すべての利用者に対して公正に介護サービスを提供できるように業務を行わなくてはならないのです。
質の高い介護サービスの計画を考えつつも、基本理念に基づいてそれらの判断ができるスキルは非常に重要です。
参考:社会保障審議会「ケアマネジメントのあり方」H28.9.23(P2)
3.事務処理の能力
ケアマネジャーに必要な3つ目のスキルは、事務処理の能力です。
ケアマネジャーはケアプランの作成を含め、ほかにもさまざまな書類の作成業務があります。例えば、月ごとのサービス利用予定を記入する「サービス利用票」や、介護給付費を得るのに必要な「給付管理表」の作成があげられます。
利用者の居宅や介護サービス事業所に足を運びながら資料も作る必要があるため、素早く効率的に事務処理を行える能力は必須です。
ケアマネジャーに必要な資格
ケアマネジャーになるには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格して介護支援専門員証の公布を受けなくてはなりません。介護支援専門員実務研修受講試験を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 国家資格等に基づく業務に従事する者である
- 医療福祉分野で5年以上の実務経験がある
- 要援護者に対する直接的な対人援助を行った期間が5年以上
国家資格は持っておらず、相談援助業務に携わっている場合でも、以下の条件を満たせば介護支援専門員実務研修受講試験を受けられます。
- 相談援助業務に従事する者である
- 5年以上の実務経験がある
- 要援護者に対する直接的な対人援助を行った期間が5年以上
ケアマネジャーになるための方法
ケアマネジャーになるには、「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験し、合格して介護支援専門員証の公布を受ける以外に方法はありません。
2017年までは10年以上の実務経験があれば受験ができましたが、2018年以降は特定の国家資格を有しているもしくは、介護施設などで相談員・相談支援専門員として従事していることが必須条件となりました。その上で5年以上かつ900日以上の実務経験が求められます。
そのためケアマネジャーになるには、まず国家資格を取得するか、介護施設などで相談員・相談支援専門員として働くかどうかを決める必要があります。最短で取得するなら、相談員や相談支援専門員として実務を積むことがおすすめです。
ケアマネジャーのキャリアパス
ケアマネジャーには、上級資格として「主任介護支援専門員」が存在します。ケアマネジャーとしてキャリアを積んだ人は、この主任介護支援専門員を目指すのが一般的です。
主任介護⽀援専⾨員は、他職種との連絡調整スキルに加え、ほかの介護⽀援専⾨員に対する指導ができ、サービスを円滑に進行するための専門的な知識や技術を修得していると定義されています。より質の高い介護サービスを提供するため、チームの中核を担い、マネジメントも行えるのが主任介護⽀援専⾨員です。
しかし、主任介護支援専門員になるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 専任の介護⽀援専⾨員として従事した期間が通算して5年以上
- ケアマネジメントリーダー養成研修修了者または、⽇本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであり、専任の介護⽀援専⾨員として従事した期間が通算して3年以上
- 主任介護⽀援専⾨員に準ずる者として、現に地域包括⽀援センターに配置されている
- 介護⽀援専⾨員の業務に関し⼗分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認めている
厳格な要件が定められているのが留意点。ケアマネジャーを志す時点で主任介護⽀援専⾨員を目指すかどうかも検討しておくと、その目標に向かって最短でキャリアを積めます。
参考:内閣府「主任介護支援専門員の概要」
ケアマネージャーとしての働き方を検討しよう
- 介護職のなかでもケアマネジャーは年収の高い職種
- 今後も需要が高く、資格を有していると優遇されやすい
- 多くの業務を効率的にこなせる能力が求められる
今後も需要が高まり続ける介護職のひとつであるケアマネジャー。「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格して介護支援専門員証の公布を受けることでケアマネジャーになることが叶います。
ケアプランの作成や、介護給付費の管理などさまざまな業務を行うケアマネジャーは、介護職の中でも年収が高い職種でもあります。
これから介護職を目指す方は、ケアマネジャーとしての働き方も検討してみてはいかがでしょうか。
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