介護福祉の専門家として唯一の国家資格である「介護福祉士」。介護利用者が増加傾向にある日本社会で、需要が高い職種のひとつです。
本記事では介護福祉士を目指す方に向けて、仕事内容や将来性などを解説。向いている人の特徴やスキルなどもご紹介していきます。
介護福祉士とは?介護士との違いとは?
「介護福祉士」は、介護に関する国家資格のことです。介護に関する専門的な知識と技術を有しており、介護が必要な方々の生活行為・生活動作を支援したり、指導したりする人のことを指します。
介護福祉士と介護士は、仕事内容や資格の有無が異なります。介護福祉士を名乗るには、介護福祉士国家試験に合格しなければならないのに対し、介護士は介護に従事するすべての人のことであり、無資格の人も含まれています。
仕事内容に関しては、介護福祉士も介護士も身体的・精神的な介護支援を行うことが可能。ただし、介護の専門的な指導については、介護福祉士しか行えません。資格を有していることで、活躍できる領域が広がるのが介護福祉士です。
参考:全国社会福祉協議会「介護福祉士」
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
介護福祉士の仕事内容
介護福祉士の業務は主に3つです。介護・指導に加え、医師や看護師など他職種との連携も行います。ベテランの介護福祉士であれば、これらの基本的な業務だけでなく、リーダーとしてのマネジメント業務も必要です。それぞれの仕事内容について概要をご紹介します。
1.介護業務
介護福祉士の仕事1つ目は、介護業務です。国家資格を有している介護福祉士といえど、介護業務は必ず行います。身体介助・排泄介助・食事介助・生活援助などさまざま。介護が必要な方の体調や身体症状に合わせて介護業務にあたります。
2.指導業務
介護福祉士の仕事2つ目は、指導業務です。介護を受ける方や、家族の介護を行っている方に対し、よりよい形で日常生活を送るにはどうしたらよいかを助言したり、指導したりします。介護福祉士が有している専門的な知識を元にしたアドバイスが求められます。
3.他職種との連携
介護福祉士の仕事3つ目は、他職種との連携です。介護が必要な高齢者の増加に伴い、より質の高い介護を提供するための動きが重要となってきています。医療・保険・福祉の包括的なケアを行うためには、各所との連絡・調整としての機能を介護福祉士が担う必要があるのです。
4.マネジメント業務
介護福祉士の仕事4つ目は、マネジメント業務です。介護福祉士として経験を積みベテランになると、若いスタッフの共育を行ったり、業務を管理したりとチームをまとめる職務を任されます。介護サービスの質の向上を目指しつつ、スタッフ全員が働きやすい環境を作るなどが主な業務内容です。
介護福祉士が活躍している場
介護福祉士は活躍の場が広い職種です。介護の現場はもちろん、障害者福祉関係の施設や、なかには病院や診療所に勤務している介護福祉士もいます。就職先による業務の違いも含めて、どんな場所で活躍しているのかをご紹介します。
1.高齢者福祉関係の施設
介護福祉士が活躍している1つ目の就職先は、高齢者福祉関係の施設です。そこからさらに入居型の介護施設と居宅型の介護サービス事業所に分けられ、入居型には特別養護老人ホームや、介護老人保健施設などがあげられます。
それぞれ施設によって利用者の目的は異なりますが、業務としては身体介助が主です。入居型は24時間体制がほとんどのため、早朝・日勤・夜勤を含むシフト制で勤務にあたります。
2.障害者福祉関係の施設
介護福祉士が活躍している2つ目の就職先は、障害者福祉関係の施設です。障害者支援施設・相談支援事業所・就労支援事業所・基幹相談支援センターなどがあげられます。
身体介護や生活援助に加え、就労に関する相談を受け、自立するためのサポートを行うのが特徴です。
3.医療関係の施設
介護福祉士が活躍している3つ目の就職先は、医療関係の施設です。介護施設や福祉施設以外に、病院や診療所で活躍する介護福祉士もいます。
入院患者の生活支援に加え、看護師の補助を行うのが主な業務。医師や看護師がスムーズに治療や診察ができるようサポートするため、看護補助と呼ばれている介護福祉士の方もいます。
参考:日本福祉教育専門学校「介護福祉士の就職先」
参考:日本福祉士協会「社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果」(速報版)」P2,P4
介護福祉士の需要や将来性
超高齢者社会を迎える現代の日本において、介護福祉士を含めた介護の担い手はますます需要が高まっています。2012年には必要な介護人材が149万人だったのに対し、2025年までには237〜249万人の人材確保が必要だと発表されています。
訪問介護・施設介護のどちらにおいても人手不足を感じている施設や事業所は多く、特に採用で困難を感じているというデータも公開されています。そもそも介護人材が少ないのに対し、同業他社との競争が厳しいことが主な理由。介護福祉士だけでなく、介護士自体の需要が高まっているのです。
参考:厚生労働省「介護人材の確保について」H26.6.4(P16)
介護福祉士のやりがい
介護福祉士のやりがいは、介護を受ける方からの感謝の言葉だといえるでしょう。
施設での介護にしろ、居宅への訪問介護にしろ、介護福祉士は要介護者と日々向き合います。要介護者からはもちろん、要介護者の家族から感謝を伝えられることも。体力が必要で大変なことも多い職種ですが、そうした一言はやりがいに感じられるでしょう。
介護福祉士の年収の目安
業務に対する賃金の低さが話題になる介護職ですが、介護福祉士の月額平均給与額に関しては、年々少しずつ増加しています。
例えば、平成31年2月には31万9950円だったのに対し、令和2年2月には33万8340円に平均給与額が変化。1万8390円の増額となっています。勤続年数10年以上の介護福祉士ほど、増加している差額は大きい傾向にあるのが特徴。年収としては400万円前後が目安です。
また、令和4年2月〜9月まで、月額9000円程度の引き上げ措置が実施されています。この措置自体は期間限定ですが、10月以降は介護報酬に組み込まれるため、平均給与額および年収がより増加することがわかっています。ただし、対象は「介護職員処遇改善加算」のI・II・Ⅲのいずれかを取得している事業所に勤める介護職員のみ。自身の勤務先が対象施設かどうかは確認が必要です。
参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」(P15)
参考:厚生労働省「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」
参考:厚生労働省「【リーフレット】福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金のご案内」(P1)
介護福祉士に向いている人の特徴
介護福祉士を目指す上で知りたいのが、向いている人の特徴です。職種の特性上、体力はもちろんのこと、要介護者の体調や求めていることを汲み取れる観察力も必要。さまざまな方と触れ合う機会が多いため、起こり得るさまざまな出来事をポジティブに考えられることも介護福祉士に必要な要素です。これら3つの特徴について解説します。
1.観察力がある
介護福祉士に向いている人の1つ目の特徴は、観察力があることです。要介護者ひとりひとり、体調や症状は異なるため、体調や様子を観察し、求めているサービスを提供することが求められます。
2.体力がある
介護福祉士に向いている人の2つ目の特徴は、体力があることです。介護福祉士は身体介護が基本的な業務です。お風呂や排泄、着替えなど要介護者がひとりではできない生活行為をサポートします。1日に複数人の介護を行うこともあるので、滞りなく業務をこなすには体力は必須です。
3.物事をポジティブに考えられる
介護福祉士に向いている人の3つ目の特徴は、物事をポジティブに考えられることです。介護福祉士は、要介護者や施設のスタッフなど、常に人と接しながら業務を行います。
離職の理由のひとつに職場の人間関係があげられているように、大小にかかわらずさまざまなトラブルが起こり得ます。そのためひとつひとつを深刻にとらえすぎず、よい意味で鈍感で物事をポジティブに考えられる人は介護福祉士に向いているといえるでしょう。
参考:厚生労働省「介護人材の確保について」H26.6.4(P21)
介護福祉士に必要なスキル
介護福祉士になるには、介護に関する専門的な知識や技術が必須です。それに加え、その場での対応能力や高いコミュニケーション能力も必要です。
次に、介護福祉士に求められるスキルについて紹介していきます。
1.状況を冷静に判断し臨機応変に対応できる
介護福祉士に必要な1つ目のスキルは、状況を冷静に判断し臨機応変に対応できることです。
介護が必要な方は、日によって体調やコンディションが大きく異なります。全員が自身の体調を正確に捉えられるわけでもありません。介護福祉士は症状や身体の状態を冷静に見極め、その時々に適した対応が求められます。
人を相手にする仕事のため、マニュアル通りに進まないことも多いですが、状況にあわせて臨機応変に対応できると介護福祉士としての活躍しやすいでしょう。
2.利用者と良好な関係を築くコミュニケーション力
介護福祉士に必要な2つ目のスキルは、利用者と良好な関係を築くコミュニケーション力です。
介護福祉士は身体介助に加え、要介護者が自立した生活を送れるようにするための相談を受け、提供する支援内容などを考えます。介護を受けている方の家族に対しては指導を行います。適切な介護計画を立て、家族の協力も受けて実施していくためには、良好な関係を構築するコミュニケーション能力が必要です。
介護福祉士に必要な資格
介護福祉士は名称独占資格であるため、名乗るには「介護福祉士」の国家資格が必要です。介護福祉に関する資格のなかで唯一の国家資格であり、1987年に「社会福祉士および介護福祉士法」に基づいて制定されました。
介護福祉士として登録している人数は、令和3年9月末の時点で181万3113名。資格を有していることで、介護福祉に関する専門知識の客観的な証明となるため、さまざまな職場で活躍できます。
介護福祉士の国家資格は、取得する難易度が高いといわれています。介護福祉士国家試験の詳細は、こちらの記事にて解説しています。
参考:厚生労働省「介護福祉士の登録者数の推移」
介護福祉士になるための方法
介護福祉士になるには、介護福祉士国家試験を受けて合格しなければなりません。試験は年に1度、筆記と実技を別日に設定して実施。受験資格を満たした方のみ受けることができます。
受験資格は4つのルートに分かれています。養成施設ルート・実務経験ルート・福祉系高校ルート・経済連携協定ルートです。日本国籍を持つ方は、このうち経済連携協定ルート以外から介護福祉士を目指せます。
ルートによっては、実技試験が免除され、筆記試験の合格のみで資格を取得できることも。年齢制限は設けられていないため、いつからでも目指すことができます。
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
介護福祉士のキャリアパス
2012年まで介護職のキャリアパスは非常に複雑でした。厚生労働省は2013年に介護福祉士までの研修を1本化。それに伴い、介護福祉士のキャリアパスも明確になりました。
介護福祉士の国家資格を取得したあとは、「認定介護福祉士」にキャリアアップすることが考えられます。認定介護福祉士とは、より質の高い介護サービスを提供するためのマネジメントや、他職種とのスムーズかつ高度な連携を行う職種です。
利用者の増加に伴い、現場のスタッフを教育・指導するマネージャーに必要なスキルは変化。より幅広い役割を担える認定介護福祉士が求められています。介護福祉士のキャリアパスも考慮しながら、国家資格の取得を検討してみてください。
参考:認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士とは」
国家資格を取って需要の高い介護福祉士になろう
- 介護福祉士の年収は増加傾向にある
- 利用者増加が見込まれる日本社会での需要は非常に高い
- 厚生労働省により、キャリアパスも明確化されている
介護福祉の専門家として唯一の国家資格である介護福祉士。高齢化社会が進む中、必要とする人も年々増加しており、需要も高まっている職業です。
介護職に就くことを検討している方は、国家資格であり介護の専門家として活躍できる、介護福祉士に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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