就職や転職など、長いキャリアの中では決断を迫られるシーンが多々あります。自分らしいキャリアを柔軟に切り拓いている若手ビジネスパーソンは、進む道をどのように決めているのでしょうか。
キャディ株式会社の前田利基さん(24)は昨年、新卒入社した大手企業からスタートアップに転職しました。その決断の背景には、「自分の心に正直に行動したい」「自分自身に力をつけたい」という想いがあったといいます。
転職をどのように決断したのでしょうか。また、自身のキャリアにおいて何を大切にしているのでしょうか。取材しました。
モノづくり産業のポテンシャルを解放する
キャディ株式会社は、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げる、2017年設立のスタートアップ企業です。
多重下請けピラミッド構造から加工会社の“強み”をベースにフラットにつながる構造へと変革する製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」の開発運営を展開。
全国のパートナー加工会社を集約し、板金・切削・製缶・樹脂類などの各種加工品を製造・提供しています。
日本の製造業を支えたい
前田さんは2020年に大手自動車メーカーに新卒入社し、電装部品の調達業務を担当。
2021年5月にキャディ株式会社に入社し、生産管理・技術営業を経て、現在は製造支援本部のチーフとして新規加工領域の立ち上げ推進に携わり、新たな領域の加工を担う全国のパートナー会社(町工場)の開拓などを手がけています。
-----調達に興味を持った経緯は?
前田さん:幼少期を海外で過ごし、日本の“ものづくり”に憧れや尊敬の念を抱いていたのですが、帰国して目の当たりにしたのは、衰退産業というイメージが強くなった“ものづくり”の現状でした。
それがとても悔しく、就職にあたっては「日本の製造業を支えていきたい」という想いを軸に活動しました。
その中でも、担当サプライヤー(仕入れ先)の競争力ナンバーワンをプロデュースしていく仕事に魅力を感じたのが、調達を志望した動機です。
-----転職の経緯を聞かせてください。
前田さん:「よりフラットに全体最適を図っていく仕事をしたい」という想いを実現するためです。
前職で仕事をする中で、親企業とサプライヤーの間に存在する明確な力関係を実感するとともに、そのような非対称的な関係の中で全体最適を図ることの難しさを感じ、その状況を変えたいと強く想いました。
そう思い悩む中で、日本の多重下請け構造に真正面から向き合って解決してくことをミッションに掲げるキャディの存在を知って感動し、転職を決断しました。
打席に立つ経験を積んで、自分の力を高める
-----新卒数年での大手からスタートアップへの転職は、勇気がいる決断ではありませんでしたか?
前田さん:雇用の安定性など大きなメリットのある大企業からの転職に、崖から飛び降りるような感覚を覚えましたが、「若いうちから現場に出て、打席に立つ経験を積みたい」という想いを優先しました。
現場に出て責任のある仕事を任せてもらえる、いわゆる“打席に立つ回数”は圧倒的にスタートアップの方が多いです。
雇用の安定が必ずしもキャリアの安定につながるわけではないので、現場に出て自分の能力や専門性を高めていくことが、結果的に生涯を通じた自分自身のキャリアの安定につながるのではないかと考えました。
-----キャリアを考えるにあたって「これだけは譲れない」とこだわったことは?
前田さん:自分自身の力をつけていくことです。
どのような環境の変化が起きても、少なくとも生活に困らない力をつけておくことが、キャリアの安定にも自分の精神的な安定にも寄与すると思っています。
自分の目で見て、現状の解像度を上げる
初めて経験することやわからないこと、慣れないことも多い中で、どのように仕事に向き合っているのでしょうか。
-----仕事をするにあたって心がけていること・大切にしていることは?
前田さん:2つあります。
一つ目は、事象を構造として捉えることです。
初めて直面する事象でも、それを構造として捉えると自分や会社が過去に経験した問題との類似性が見つかり、解決策を見出せる場合があるからです。
二つ目は、現状を捉える解像度を上げることです。
問題を解決するためには"理想と現状の差分を埋めること”が必要となりますが、現状を正しく認識できていなければ向かう方向性が大きくずれてしまいます。
そのため、まずはひたすら現地(パートナー加工会社)に足を運んで自分の目で確かめて解像度を上げるよう心がけています。
-----仕事で大変さや困難を感じたことは?
前田さん:最も困難を感じたのは、あるパートナー加工会社の立ち上げが大幅に遅れたときです。お客様の品質監査が迫る中、短期間でパートナー加工会社が抱えている課題を解決する必要に迫られました。
約2カ月間その会社に常駐して現場の方々と膝を突き合わせて問題を把握し、大きな問題を自分が扱える粒度に分解して一つ一つ解決することで乗り越えることができました。
-----とても誠実に仕事に向き合っておられるのですね。仕事のモチベーションは?
前田さん:日本の製造業の底上げを実現して、三方良しのビジネスをつくりたいという想いです。
業界の構造のせいでポテンシャルをしっかり発揮できていない加工会社が"ものづくり”に集中して向き合える環境を用意することは、日本の製造業の底上げにつながります。
それを仕事を通して実現し、最終的にはパートナー加工会社だけでなくお客様にもしっかりと価値提供できる三方良しのビジネスをつくりあげたいです。
行動しなかった後悔をしない
-----これまでを振り返って「これをやって良かった」と思うことは?
前田さん:考え込まず、まず行動してきたことです。
経験上、行動する選択をとったことで後悔したことはほとんどありません。違和感を覚えることがあればまず行動し、そこで見た景色をもとに自分で判断することが今後につながっていくと思っています。
悩む時間を無駄につくるのではなく、とにかく行動し、その後でチェックしたりアクションプランを考えたりする方が、ビジネス環境が激しく変化する中では有効だと実感しています。
-----行動するにあたって、心をどうやって奮い立たせていますか。
前田さん:私は「後悔しないこと」をモットーにしているのですが、これまでに後悔した経験を振り返ると、行動しなかったことに起因する場合が多いです。
そのため、「行動しないことによる後悔を繰り返してもいいのか」と自分に問いただすことで心を奮い立たせています。
心に正直に行動することで本気になれる
-----挑戦したいこと・実現させたいことなど、これからのビジョンを聞かせてください。
前田さん:いま担当している新規領域の立ち上げを成就させてビジネスとして大きく成長させることが今後2~3年の目標です。
私は現在、まさに前職で担当し業界全体の課題を痛感していた領域を新規加工領域として担当しています。
自分が前職で感じていた課題をキャディでビジネスとして解決できれば、転職した甲斐があったと思えるでしょうし、社会に貢献できている実感も得ることができると思います。
-----「自分らしく仕事を楽しみたい」と考えている同世代に向けて、メッセージをお願いします。
前田さん:周りと比べず、心の動くままに正直に行動することが重要だと思います。
例えば、私が今キャディで後悔もなく刺激的な日々を過ごせているのは、「楽しそう」「面白そう」という直感に正直に従う選択をしたからこそなのではないでしょうか。
自分が本当にやりたいことは何なのか。自分の心にしっかり向き合うことが物事に純粋に向き合うことにつながり、また、やりたいことに対して本気になれるのではないかと思います。
そのことを私自身も大切にしたいと思っていますし、同世代の方々にも大切にしてほしいと思っています。
「日本の製造業を支えたい」という想いのもと、自分の想いに正直に柔軟にキャリアを切り拓いている前田さん。日本のものづくりをこれからどのように変えていくのか期待が高まります。
変化の激しい時代だからこそ、“自分軸”を持つことの重要性が高まっているのかもしれませんね。
何かしらの決断に迫られたときは、「自分が本当にしたいことは何か」「ワクワクを感じるのはどっちか」など、自分の正直な気持ちと向き合ってみてはいかがでしょうか。
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