HOMEインタビュー 「企画を出しては、失敗の連続」雨と東京と株式会社・代表に学ぶ、リスクを背負わずに起業するという選択肢

「企画を出しては、失敗の連続」雨と東京と株式会社・代表に学ぶ、リスクを背負わずに起業するという選択肢

白井恵里子

2021/12/10(最終更新日:2021/12/10)


このエントリーをはてなブックマークに追加

イナバカツヒロさん/提供:雨と東京と株式会社

「起業したいけれど、リスクを負うのが怖い」「新しいビジネスを立ち上げたいけれど、失敗した時のことを考えると二の足を踏んでしまう」このように、起業に対して少なからず恐怖心を抱いている若手ビジネスパーソンもいるのではないでしょうか。

雨と東京と株式会社の代表取締役・イナバカツヒロさん(26)は、会社員として働きながら、コンテンツ企画の仕事を業務委託で受け続け、スキルを伸ばした後に起業しました。

「失敗は必要だけれど、起業のためにリスクを背負う必要はない」と話すイナバさんに、その真意について取材しました。

日程調整を瞬時に完了させる「timeshot」

雨と東京と株式会社は、「目の前の人や仕事を大切にする」をビジョンに掲げ、2020年12月に設立。マーケティング支援、デザイン支援、コンテンツ制作などの事業を展開しています。

今年11月には、日程調整を瞬時に完了させる新サービス「timeshot」をリリースしました。

利用者は「日程調整をするためにカレンダーを見る」「相手の空いている日時を確認する」という作業から解放され、自動提案された日時をクリックして選ぶだけ。確定後は、両者のカレンダーに予定が自動追加される仕組みになっています。

共同オーナー・若月さんとの出会い

イナバさんはこれまで、会社員として働きながら、企画出し~コンテンツ制作までを行う仕事を副業として受けていました。

「幼い頃から、企画作りやアイデアを出すことが好きだった」と話すイナバさん。徐々に業務委託の仕事のみで生計が立てられるようになり、昨年12月に雨と東京と株式会社を創設しました。

-----「timeshot」が生まれた一番のきっかけは何だったのでしょう?

イナバさん:共同オーナーである若月さんとの出会いです。

私が務めていた会社で偶然出会ったことがきっかけで、その後SNSで連絡を取り合う仲になり、昨年9月頃に私から「一緒にプロダクトをつくろう」と声をかけました。

若月さんは、事業づくりからプロダクト開発まで手掛けることができる、貴重な高スキルエンジニア。有能で優秀な方だからこそ、正社員として入社してもらうことは難しいだろうと判断し、「サイドプロジェクトとして参加してほしい」と提案したところ、快諾してくれたんです。

-----そこから、色々なビジネスアイデアが生まれていったのですか?

イナバ​​​​​​​さん:そうですね、2人で週に1回ミーティングを行い、ブレストを始めました。

ベースにあるのは「日本初で世界的サービスを作りたい」という気持ち。特に"インターネットサービス×便利"の分野が強いと分かっていたので、そこから「こういう時の、この作業って面倒だよね」「ここをこうしたら、もっと便利になるだろう」といった意見を出し合って生まれたのがtimeshotです。

実際の開発は若月さん一人で行い、開発期間は2カ月間というスピード感でした。

若月寛明さん(右)/提供:雨と東京と株式会社

数々の失敗から学んだこと

このように、イナバさんは今、"インターネットサービス×便利"を軸に様々な企画を出している最中なのだそう。

-----"インターネットサービス×便利"の分野が強い、と確信できたのはなぜですか?

イナバ​​​​​​​さん:これまで年間10個ぐらい企画を出しては失敗…を繰り返してきました。その中で、徐々に得意分野が見えてきたと思っています。

-----そんなに次々と企画出しと失敗を…?

イナバ​​​​​​​さん:以前は、「良いものをつくったら、ヒットするだろう」と単純に思っていて、「年間10~20個もアイデアを出していけば、ひとつぐらいは当たるだろう」「ヒットするものがあれば、それに注力していけばよいだろう」と考えていたんです。

これは正しくもありますが、実際には「ヒットする」「うまくいく」なんて、そう簡単には生まれないことも分かってきました。「数打てば当たる」は、甘いなと。

そのため、「ヒット」まではいかなくても、少しでも手応えが感じられたら、それを育てていくという方法にシフトしました。今は、これがtimeshotにあたるわけですが。

数々の失敗がなかったら、ずっと甘い考えで続けていたかもしれませんね。

-----新しいサービスを生み出すにあたって、心がけていることはありますか?

イナバ​​​​​​​さん:ゼロから自分の頭でアイデアを生み出すのではなく、"選定"の部分に頭を使うことです。

確かに「ゼロベースで革新的なアイデアを生み出し、世の中をあっと言わせたい!」という気持ちはありますが、現実的には、うまくいっている事例をトレースすることから始めた方が効率的だと思っています。

これは、既存の事例をそのまま真似するということではなく、例えば既存サービスに対する「ここが不便」「この機能を広げた方がいい」などのニーズを形にしていくという方法。そのうえで、本当に必要な機能だけを残すべく、引き算思考で余計なものはそぎ落としていく。

これも失敗経験から徐々に学んだことですが、「選定する能力」を磨くことが何より大切だと思います。

提供:雨と東京と株式会社

必ずしも起業でリスクを負う必要はない

-----timeshotの利用は無料ですよね。今後マネタイズについても検討されているのでしょうか?

イナバ​​​​​​​さん:実はまだ、まったく考えていません(笑)。とにかく色々なサービスを世に出して、少しでも感触の良いものがあったらそれを育てていこう、といった考え方で進めているので、今はマネタイズよりもサービス自体をより多くの人に利用してもらって、本当に必要とされるサービスに育てていくことに注力したいと考えています。

こうして、ある意味伸び伸びとサービスを育てることができるのも、二人が別に収入源を持っているから。必ずしも起業でリスクを負う必要はないと思っているので、今のやり方が私たちには合っていますね。

-----起業=リスクではない、と。

イナバ​​​​​​​さん:やりたいことを実現するために起業するなら、リスクを背負わないことに越したことはありません。リスクを負っていると、戦い方がしんどくなりますから。

「人生をかけた勝負」もカッコいいけれど、僕みたいに得意分野を伸ばしながら、苦手分野は信頼できるパートナーに任せ、別の収入源を確保しながら新しいことに挑戦していく方法もあるんだということを、もっと多くの人に伝えたいです。

何かを成し遂げるためにはやはり失敗が必要なので、伸び伸び失敗できるようにするためにも、リスクはないほうがいいですよね。

-----timeshotは、今後どういった形で進化させていくのですか?イナバ​​​​​​​さんご自身の今後の展望についても教えてください。

イナバ​​​​​​​さん:最終的には、「勝手に日程調整がされている」状態を作り出すことを目標としています。

そして、意思決定する回数を極限まで減らし、仕事や人との予定のみならず、何時に起きるとか、何時にお風呂に入るとか、スケジュール管理すべてが自動化される仕組みをつくりたいです。

個人的には、若月さんと2人1組でこれからも色々なサービスを生み出していき、「あの2人、常に面白いサービスをつくっているよね」と言われる存在を目指したいです。

提供:雨と東京と株式会社

数々の失敗から学び、それを次に活かしていくことで、一歩一歩前に進み続けているイナバさん。"伸び伸びと"失敗するためにも、リスクを負わずに起業するという選択肢もあるのだと、教えてくれました。

今、あなたは失敗を怖れて立ち止まっていませんか?本当に実現したい目標や夢があるのなら、失敗を怖れず挑戦できる環境を自ら作り上げることから始めてみてはいかがでしょうか。

出典元:雨と東京と株式会社
出典元:timeshot

【関連記事】


hatenaはてブ


この記事の関連キーワード