HOMEインタビュー 「誰かの記憶に残るようなクリエイションを」ANCR代表の、自分の未熟さを乗り越えて得た成長

「誰かの記憶に残るようなクリエイションを」ANCR代表の、自分の未熟さを乗り越えて得た成長

瑞姫

2021/11/28(最終更新日:2021/11/28)


このエントリーをはてなブックマークに追加

福島颯人さん/提供:株式会社ANCR

「失敗は成功のもと」というのは聞き慣れた言葉ですが、その失敗をどうやって成功に変えるのかは人それぞれです。

株式会社ANCR代表の福島颯人さん(24)は、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科の在学時に、同期とクリエイティブチームANCRを設立。最初は起業のことについては全く分からなかったといいます。

そんな中、自身で会社を経営する傍ら、新卒として会社に入社することで自分に足りなかった部分について学んだという福島さん。会社を立ち上げた1年目に経験した失敗を乗り越え、会社を大きく成長させた方法について取材しました。

多角的なアプローチをする空間を提供する「空間クリエイティブチーム」

株式会社ANCRが行う空間クリエイティブ事業は、いわゆるデザインの事業だけではなく、そこに存在する全ての事象などをテーマにしている会社。

“五感をアップデートする”を軸にして、視覚的に捉えられるものの他に、聴覚や味覚なども加えた多角的なアプローチをする空間を提供しています。

 

提供:株式会社ANCR

「右も左も分からなかった」1年目に痛感した未熟さ

-----事業を立ち上げようと思った最初のきっかけや想いを教えてください。

福島さん:僕を含む創業メンバーが武蔵野美術大学空間演出デザイン学科出身で、そこで学んでいたものが視覚的なデザインでした。

ただ、視覚だけで伝えられるものではなく、その先の香りや、光や、音なども、直接的に人の記憶に残るようなデザインに繋がっていくのではないかと思ったところから、"多角的なアプローチによるデザイン"を同期と一緒にチームとして始めることになりました。

-----チームを法人化した理由は?

福島さん:法人格を持ってないと取引できないクライアントさんが出てきたので、最終手段として法人化をしました。そのため、当時は株式会社と合同会社の違いも分からなければ、株式のもつ価値もわかりませんでした。

代表取締役というのも名ばかりで、単純に法人格を持っているただのフリーランス集団という感じでしたね。

-----チームから会社になったことでのギャップはありましたか?

福島さん:今までクリエイションをしていれば良かったのが、法人化したことによって、お金関係も見なければいけなくなった点は大きな変化でした。経理や総務といったバックオフィス業務など、今までやらなくて良かったことをやらなければいけなくなったんですよね。

今でさえ顧問税理士や顧問弁護士に色々なことをお願いしていますが、当時は「弁護士はなぜ必要なの?」というレベルだったので、クリエイターをやっていた僕らからすれば、それが法人化のタイミングでの大きなギャップになったかなと思います。

-----チームから会社になって良かったところはどう言ったところでしょうか。

福島さん:法人格をもつことによっての信憑性も違いますし、これまで個人個人に目を向けられていたのが、法人化したことによって会社としてのブランド認知も広まるようになったことですかね。

集団で動く、ということがしやすいようになりました。

-----会社を立ち上げてからこれまでで最も印象に残っていることは?

福島さん:大学時代に立ち上げていたので、当時は本当に右も左も分からないままクライアントさんとやり取りをしていたんです。

初めての仕事だったので、どういうスキームで仕事していったらよいのか、ワークフローはどうすればよいのか、何も定まっていない状態で、クライアントさんに迷惑をかけてしまうことが多かったですね。

特に、東京ガーデンテラス紀尾井町の2019年のクリスマス演出を手掛けた仕事が、一番印象に残っています。

提供:株式会社ANCR

福島さん:当時大学4年生だった僕らは施工会社を入れずに、全て自社施工だったので、納期が間に合うどうか分からないギリギリの瀬戸際で、かなり切羽詰ったスケジュールで進めることになってしまいました。

結果的にアウトプットはできましたが、ワークフローが不明瞭だったという意味では、自分たちの勉強にはなりました。ただクライアントさんには迷惑をかけてしまったので、反省の気持ちも大きく、非常に印象に残った仕事でした。

-----そこから学んだことや、今に活かせていることはありますか?

福島さん:それまで業務効率が悪いことが課題でしたが、1年目の大きなプロジェクトの失敗から「どうやって効率化していこうか」「どうやって社内でシステム化していこうか」という部分を学ぶことができました。

また、僕自身のマネジメント能力の低さを自覚できたので、まずはそれを身につけるべきだなと気付くことができました。

自分で何かを作ることや、自分でアイデアを出すことはできるけど、人を動かすことが苦手だったんです。

東京ガーデンテラス紀尾井町のクリスマス演出を手掛けた時も、4フロア分の空間演出全てを、当然自分だけでまかなえる訳ではなくて…。

提供:株式会社ANCR

他のメンバーにどう指示をすればよいのか。他のメンバーが切羽詰っている中でどうモチベーションを維持すればよいのか。このようなマネジメント能力が足りないなと気づいたんです。

そのため、一度大企業でマネジメントを学ぼうと就職しました。

新卒でリクルートに入社して得たもの

-----それで、新卒入社されたのがリクルートなんですね。ご自身の会社とは並行していたんですか?

福島さん:そうですね。新卒でリクルートに入社し、1年弱は在籍していました。業績ベースでの採用だったので、自分の会社と並行してやっていましたね。

-----最初に学びたいと思っていたマネジメントは学べたのでしょうか。

福島さん:はい。リクルートで部署を2つ跨いだことによって、伸びている要因や共通項を探ることができたので、その部分を自分の会社にも持ち帰って、実験的に落としこんでアウトプットしてみたところ、上手く回せるようになりました。

それは今でも会社として成長できた要因かなと思います。

提供:株式会社ANCR

-----会社の成長を感じた具体的な出来事はありましたか?

福島さん:それまではメンバーの入れ替わりも激しかったのですが、リクルートで色々学んだものを持ち帰ったことによって、マネジメントというか、人への教育に近いことを実践できたので、離職率が減りました。

-----具体的にはどういったことを行ったのでしょうか。

福島さん:人の成長過程やスキルに合わせた事業の振り方ができるようになったので、逆に成長曲線みたいなものをこちらが提示してあげて、それに合わせて自分自身でタスクとかを出してもらう、というやり方をとっています。

その上で、2カ月に1回のフィードバックミーティングで「自己実現できているかどうか」「足りなかった部分の修正ポイントはどこだったか」などを洗い出しながら会社をまわせています。

そのフィードバックミーティングがあることによって、メンバーのモチベーション維持に繋がったので離職率が減ったかなと。

ひとりひとりが継続的な事業の成長に携わって行けるケースが増えたので、結果的に学べることが多く、会社としても底上げになりました。

提供:株式会社ANCR

最終ゴールは「ライフスタイルのアップデート」

-----最後に、今後の展望を教えてください。

福島さん:最終的に宿泊施設を作ることが会社としての目標でもあり、僕としての最終ゴール。それは1番最初から一貫して言っている、"ライフスタイルのアップデート"のようなものなんです。

自分たちが良いと思ったものや、自分たちのライフスタイルのアップデートに繋がったものを他の人に共有していく。

それによって、少しでも「毎日つまらないな」と思って過ごしている人たちが「こうすれば人生って楽しいんだ」「こうなれば生活って豊かになるんだ」と気付けるきっかけとなる空間を作ることが目標です。

そのために、空間プロデュースという部分で内装をはじめ、宿泊事業に必要な飲食などをひとつひとつ掻い摘んで事業にしています。

ある程度長期スパンでのガントチャートを引いているので、今のANCRの最終的なゴールとして、宿泊施設が作れたらいいなと思っています。

-----ありがとうございました。

提供:株式会社ANCR

「誰かの記憶に残るようなクリエイションをしたい」という想いから、空間クリエイティブという事業を行っている福島さん。

世の中をつまらないと思っている人たちへの提案として、空間を介したコミュニケーションや記憶のデザインをすることで、ライフスタイルが少しでもアップデートしてくれればという想いも語ってくれました。

社会に出れば、誰しもが必ず多かれ少なかれ失敗を経験します。しかし、大事なのはそれをどう活かしていくか。

悩み、困難に直面し、失敗で挫けそうになることもある若手ビジネスパーソンにとって、失敗から自己分析し、成長への通過点として変えた福島さんの姿からは、勇気をもらえるのではないでしょうか。

出典元:株式会社ANCR

【関連記事】


hatenaはてブ


この記事の関連キーワード