「なんでも聞いて」と言われてから質問したのに「そんなことは自分で考えて」と言われるなど、矛盾したメッセージのことを「ダブルバインド」といいます。
本記事では、ダブルバインドの意味や、効果、活用する際のポイント、対処法などを詳しくご紹介します。
ダブルバインドで苦しんでいる人も活用したいと思っている人もぜひ参考にしてくださいね。
- ダブルバインドとは?意味や効果、種類などを合わせて紹介
- ダブルバインドを活用する際の7つのポイント
- ダブルバインドの悪影響を受けているときの3つの対処方法
ダブルバインドとは?
ダブルバインドの意味をよく知らない人も多いのではないでしょうか。
以下では、ダブルバインドの意味・種類・起源などを詳しくご紹介します。
ダブルバインドの意味・効果
ダブルバインドとは、2つの矛盾したメッセージを伝えることによって、相手に心理的なストレスを与えたり混乱させたりすることをいいます。
ダブルバインドは、二重・2倍の意味がある「Double」と縛る・拘束するという意味の「Bind」を合わせた言葉で、日本語では「二重拘束」とも呼ばれます。
ダブルバインドと気づいていないだけで、ダブルバインドを経験した人も多いのではないでしょうか。
例えば1つ目のメッセージが「何でも聞いていいよ」2つ目のメッセージが「そんなことは自分で考えてよ」の場合、「何でも聞いていい」と言ったにも関わらず、実際に聞いたら怒られるという矛盾がはらんでいます。
ダブルバインドは、使い方を謝れば理不尽さやストレスを相手に感じさせてしまう効果があります。
否定的ダブルバインドと肯定的ダブルバインド
ダブルバインドには「否定的ダブルバインド」と「肯定的ダブルバインド」の2種類あります。
否定的ダブルバインドとは、2つのメッセージのどちらの指示に従っても、自分にとってよくない状態に陥ることをいいます。
上記の例のように「何でも聞いていい」という指示に従うと「自分で考えろ」と怒られてしまいます。逆に質問をせずに自分の考えで仕事を行うと「どうしてわからないなら聞かなかったの?」と責められてしまいます。
このような状況を否定的ダブルバインドといいます。
肯定的ダブルバインドとは、2つのメッセージのどちらに従っても、自分にとってプラスの状態になることをいいます。
簡単な例だと「ケーキ食べる?シュークリーム食べる?」も肯定的ダブルバインドです。
ダブルバインドの起源
「ダブルバインド理論」を構築したのは「グレゴリー・ベイトソン」「ジャーゲン・ロイシュ」といわれています。
1951年に書かれたベイトソン・ロイシュによる共著『精神のコミュニケーション』から、1972年ベイトソンによって執筆された『精神の生態学』の過程で「ダブルバインド理論」が構築されました。
ベイトソンは、統合失調症の患者を研究することでダブルバインドを考えついたと言われていますが、現在でもダブルバインドが統合失調症の原因であることははっきりしていません。
しかし、ダブルバインドが人間に多大な苦痛を与えてしまっているのは、その発見された過程から想像できるのではないでしょうか。
肯定的ダブルバインドの具体例
日常の中にあるダブルバインドの例をさらに知りたいと思っている人もいるのではないでしょうか。
以下では、肯定的ダブルバインドの具体例を恋愛・ビジネス・育児のシーンに分けてご紹介します。
恋愛の例
肯定的ダブルバインドは、デートのお誘いにも有効な手段であるといわれています。
「ご飯何食べたい?」という質問では、選択肢が無限にあり選びにくく感じる人もいるのではないでしょうか。
例えば「ご飯行くならイタリアンとフレンチどっちがいい?」という肯定的ダブルバインドの質問をすると、相手は選択肢が狭まりどちらかの選択肢を取ってしまう可能性が高いです。
相手の選択肢を意図的に狭めることで、結果的に相手の行動を制限できているのがわかるのではないでしょうか。
ビジネス・仕事の例
ビジネスの世界で肯定的ダブルバインドを使うと、客の購買欲を刺激できます。
例えば「もし弊社の車を買うとしたら、白い車がいいですか?黒い車がいいですか?」という肯定的ダブルバインドをすることで、客は自分が車を持っている未来を想像します。
車を買うか・買わないかではなく、何色が欲しいかを考えさせることで、車を購入してもらえる可能性が上がるでしょう。
育児・子育て・親子間の例
選択肢がありすぎても何を選べばいいのか困惑しますが、選択肢が少なすぎると強要されていると思って反発を生んでしまう可能性があります。
例えば子供に「掃除をしなさい!」と強く言っても「後でする!」と、言うことを聞いてくれないこともあるのではないでしょうか。
肯定的ダブルバインドを使うと「ご飯食べた後に掃除する?お風呂入った後に掃除する?」と選択肢を与えつつ選択肢を絞ることが可能です。
直接「掃除をしろ」と伝えるよりは、指示を聞いてくれる可能性が高くなるでしょう。
使い方に注意!ダブルバインドによる悪影響
肯定的ダブルバインドは、どちらのメッセージを選んでも相手にとってよい状況になるのでストレスを与えることはないでしょう。
しかし、否定的ダブルバインドを使ってしまうと相手に悪影響を与えてしまう可能性があります。
以下では、ダブルバインドによる悪影響・危険性について詳しくご紹介します。
ダブルバインドを仕事や日常生活で使おうと思っている人は、正確に危険性を把握しておきましょう。
使い方を誤ると、統合失調症やモラハラになる可能性がある
自分が相手に伝えたメッセージに矛盾していることに気が付かないと、相手は「自分が間違っているのかもしれない」「どうすればいいのかわからない……」と辛い状況になってしまいます。
自分が気が付かないままに相手の行動を全否定している可能性があるのです。
どのように行動すればいいのかわからなくなった相手は、無気力になったり、ひどい場合は精神病になったりすることもあるでしょう。
相手のパフォーマンスを下げる恐れがある
ダブルバインドなメッセージを受けた相手からすると「自分が何をしても怒られる」という状況にあると感じてしまいます。
何をしても叱られるのなら何もしたくない気持ちになり、自由で新しい発想・価値観を共有することもなくなるでしょう。
矛盾した発言は、相手のパフォーマンスを心理的にも行動的にも下げてしまう可能性があることを念頭に置いておくことをおすすめします。
否定的ダブルバインドの具体例
コミュニケーション相手にダブルバインドをしてしまったことがあるかもしれないと不安になっている人もいるのではないでしょうか。
以下では、否定的ダブルバインドの具体例をご紹介します。
恋愛の例
恋愛の否定的ダブルバインドのひとつに「赤と青の服どっちがいい?」という質問があります。
どちらの色を選んでも、「私は◯色がいいと思ったけどな……」「◯色??x色もいいと思うのだけど」とどっちを選んでも微妙な反応をするとダブルバインドとなります。
2つの選択肢のどちらを選ばれても、判然としない態度をとってしまう質問をする際は、相手を不快にさせないように注意しましょう。
ビジネス・仕事の例
ビジネスや仕事の否定的ダブルバインドのひとつに「逐一報告をしなさい」という指示があります。
指示に従って報告をすれば「そんなことは言わなくていい」と言われ、指示を無視すると「逐一報告してって言ったじゃないか」と怒られてしまいます。
例えば「大事なことは報告しなさい」と伝えたり、とるに足らないことを報告された場合には「〇〇に関することは報告しなくていいよ」と伝えたりして否定的ダブルバインドから抜け出す必要があるでしょう。
育児・子育て・親子間の例
子育ての否定的ダブルバインドのひとつに「何でも好きなお菓子を選んでいいよ」という優しい指示があります。
子供が自分の好きなお菓子を選んで持って行ったところ「それは体に悪いからやめておきなさい」「〇〇円もするの?」とマイナスのメッセージを送るとダブルバインドとなります。
マイナスのメッセージは、言葉だけではなく態度でも伝わってしまい、子供は「指示に従ったのに怒られた」と考えてしまい混乱するでしょう。
ダブルバインドを活用する際の7つのポイント
ダブルバインドに危険性があることを認識した上で、ダブルバインドを活用する方法をご紹介します。
ポイント1.相手に与えるメッセージをポジティブなものにする
ダブルバインドを活用する際の1つ目のポイントは、相手に与えるメッセージをポジティブなものにすることです。
すでにご紹介したように否定的ダブルバインドは、どちらを選んでも相手にとってよくない状況になるメッセージを伝えてしまっています。ネガティブなメッセージをポジティブなものに変換し、相手を萎縮させないようにすることが大切です。
例えば「何でも聞いてねって言ったけれど、当たり前のことは聞かないで」ではなく、「まずは自分で調べてみてね」「次からは自分で考らえれるようになろうね」のように矛盾しないポジティブなメッセージを送りましょう。
またメッセージは言葉だけではなく、態度でも伝わってしまいます。
質問しに来た後輩に対して「はぁ……」とため息を付いたり、いかにも面倒くさそうな対応をしたりするのも意識的にやめるようにしましょう。
ポイント2.相手に選択権を与える
ダブルバインドを活用する際の2つ目のポイントは、相手に選択権を与えることです。
選択肢が2つしか与えられなかった場合、視野が狭まって2つのメッセージしか考えられなくなってしまう人も多いのではないでしょうか。
「Aがいい?Bがいい?」と聞くのではなく、「AとBの選択肢があるけれど、〇〇はどう思う?」のように相手の自由度を広げてあげるといいでしょう。
ポイント3.選択肢に矛盾がないか考える
ダブルバインドを活用する際の3つ目のポイントは、選択肢に矛盾がないか考えることです。
否定的なダブルバインドは、意識しなければ自分が行っていることに気づかないことが多いのではないでしょうか。
選択肢に矛盾があることに気が付かなければ、否定的ダブルバインドをしない行動が取れません。
自分の与えている選択肢に矛盾がないかもう一度考えてみましょう。
ポイント4.自分の言葉に責任を持つ
ダブルバインドを活用する際の4つ目のポイントは、自分の言葉に責任を持つことです。
一度「何でも聞いてね」と伝えても、状況が変われば「それは聞かなくてもいいのでは?」となってしまう人も多いのではないでしょうか。
しかし、相手は自分の発言ありきで行動に移しているので、マイナスのメッセージを送ると落ち込んでしまったり無気力になったりしてしまいます。
自分の発言が相手に影響を与えていることを自覚し、安易に「何でも」のような発言はしないようにしましょう。
ポイント5.周りの人に自分の間違いを指摘してもらう
ダブルバインドを活用する際の5つ目のポイントは、周りの人に自分の間違いを指摘してもらうことです。
自分がダブルバインドをしていることは、なかなか自分では気づきにくいもの。
自分で気が付かない場合は、「私の発言に矛盾があれば教えてくれないか」と信頼できる人に頼むことがおすすめです。
ポイント6.信頼関係を築く
ダブルバインドを活用する際の6つ目のポイントは、信頼関係を築くことです。
上記では、周りの人に協力してもらうことをご紹介しました。しかし、周りの人に協力してもらうためには、指摘してもらえるような雰囲気を作ることも大切です。
「私の間違いがあれば指摘してくれ」と依頼したものの、いざ指摘されたら不機嫌になるというのもダブルバインドです。
指摘してくれたら、自分の非を認めて謝り行動に移すことを意識しましょう。
ポイント7.ダブルバインドを使いすぎない
ダブルバインドを活用する際の7つ目のポイントは、ダブルバインドを使いすぎないことです。
肯定的ダブルバインドでも使いすぎると相手に違和感を覚えさせ、不快に思われてしまう可能性があります。
会話の中で何度も「Aがいい?Bがいい?」と聞かれると、「決断力がない人」と思われてしまうことも。
ダブルバインドを使うときは、ここぞという時に使うようにすることをおすすめします。
ダブルバインドの悪影響を受けているときの3つの対処方法
ダブルバインドの悪影響を受けて精神的にまいっている人もいるのではないでしょうか。
以下では、ダブルバインドの悪影響を受けているときの3つの対処方法をご紹介します。
1.誰かに困っていることを相談する
ダブルバインドの悪影響を受けているときの1つ目の対処方法は、誰かに困っていることを相談することです。
「矛盾する指示をされて困っている……自分が悪いのかな」と自分を攻めてしまっている人は注意が必要です。
信頼できる人に相談をすることで、自分の置かれている状況を客観的に判断できます。
信頼できる人がいない場合は、カウンセラーや会社の相談窓口に頼るのも一案です。
「どうしても人に相談したくない……」と思っている人もいるでしょう。
人に相談したくない場合は、ノートに自分の置かれている状況・矛盾するメッセージを書いて、できるだけ自分の状況を客観的に判断してみてはいかがでしょうか。
2.自分を責めない
ダブルバインドの悪影響を受けているときの2つ目の対処方法は、自分を責めないことです。
「自分の成長を望んで厳しく接してくれているのだから」と相手の発言を受け入れ、自分を責めてしまっている人もいるでしょう。
しかし、たとえ相手が自分のために厳しくしてくれていても、自分が辛いことには変わりがありません。
相手の発言や言い方が辛い場合は、その旨を誰かに伝えたり、本人にさりげなく伝えたりすることをおすすめします。
3.相手の言動を冷静に分析する
ダブルバインドの悪影響を受けているときの3つ目の対処方法は、相手の言動を冷静に分析することです。
強い言葉で叱られてしまうと、ついつい相手が正しいと思ってしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、相手の行動を冷静に見ると矛盾があるメッセージに気がつきます。
「相手は自分の矛盾に気づいていないから、叱ってくるのだな」と冷静に分析できると、相手の未熟さを許せるようになるのではないでしょうか。
ダブルバインドの危険性を理解して、上手に活用・対処しよう
- ダブルバインドとは、矛盾したメッセージを伝えることで相手にストレスを与えること
- メッセージに矛盾していないか、相手に選択権を渡せられているのかなどを考える
- ダブルバインドで苦しんでいる人は、周りの人に相談してみよう
本記事では、ダブルバインドの意味や活用方法、対処方法などを詳しくご紹介しました。
自分のメッセージで相手を苦しめている可能性があることに注意して自分の発言には気を配りましょう。
また、ダブルバインドで苦しんでいる人は、自分を責める必要は一切ありません。
苦しんでいることを相談したり、客観的に相手を見たりして対処してみてはいかがでしょうか。
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