ビジネスシーンや日常生活で、自分の要求を通しやすくするための行動心理学として知られている「ドアインザフェイス」。
本記事では、ドアインザフェイスの意味や、使う際の注意点、具体例などを詳しくご紹介します。
「いつも契約を断られてしまう」「ストレートに伝えると、要求が通らないことが多い」といった人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
- ドアインザフェイスの意味とは?
- ドアインザフェイスを使う際の注意点3選
- ドアインザフェイスの活用例
ドアインザフェイスの意味とは?語源や由来も併せて確認
ドアインザフェイスとは、最初の要求を相手にわざと断らせることによって罪悪感を抱かせ、自分の本来の要求を通すテクニックのこと。
日本語では「譲歩的要請法」と呼ばれ、「返報性の原理(返報性の法則)」を利用しています。
返報性の原理とは、相手に何かをしてもらった場合、自分も何かを返さないといけないと無意識に感じてしまう心理的な現象のことをいいます。
例えば「バレンタインデーにチョコをもらったから、ホワイトデーに変えわないといけない」と思うのも、返報性の原理が働いています。
返報性の原理について詳細を知りたい人は「返報性の原理とは?交渉時に使われる心理学の種類・注意点・具体例を紹介」からご確認ください。
ドアインザフェイスでは、「相手が一度譲歩してくれたから、自分も譲歩しよう」という心理が働いています。
また、ドアインザフェイスの言葉の由来は「shut the door in the face」という英語のフレーズです。ドアの前で門前払いされて断られているシーンが思い浮かぶのではないでしょうか。
1975年に心理学者のヴィンセントやチャルディーニらによって発表された、 ドアインザフェイスに関する論文が有名です。
- 学生に「非行少年と動物園に行くために2時間予定を空けてくれない?」と頼んだ
→了承をした学生は「17%」 - ドアインザフェイスのテクニックに則って「2年間で毎日2時間非行少年のカウンセラーをやってくれないか?」という要求をした
→大きな要求を断られた後「非行少年と動物園に行くために2時間予定を空けてくれない?」と伝える
→「50%」の学生が了承
この実験では、ドアインザフェイスのテクニックによって「約3倍」も承諾率が上がっていることがわかります。
ドアインザフェイスとフットインザドア使い分け方法
ドアインザフェイスとよく比較される行動心理学のテクニックに「フットインザドア」があります。
ドアインザフェイスは、大きい要求を断ってもらってから、比較的小さい要求を伝えるテクニックです。
一方フットインザドアは、小さな要求を聞いてもらってから、大きい要求をお願いするテクニックのことをいいます。
どちらも自分の要求を通すためのテクニックですが、要求を伝える順番が違うことに注意しましょう。
フットインザドアの詳細は「【行動心理学】フットインザドアとは?営業や交渉に活用できる心理学のテクニックの具体例と注意点を紹介」を参考にしてください。
ドアインザフェイスを使う際の3つのポイント
ドアインザフェイスのテクニックを使ってみたいと思っている人も多いのではないでしょうか。
以下では、ドアインザフェイスを使う際に、成功の確率を上げるための3つのポイントを紹介します。
ポイント1.無理難題を言わない
ドアインザフェイスを使う際の1つ目のポイント、無理難題を言わないことです。
ドアインザフェイスを使うためには最初の要求を断られる必要があるからといって、ハードルがあまりにも高すぎる要求をすると「馬鹿にしている」「ふざけている」と思われてしまいます。
逆に自分の本来の要求に近すぎる要求をいってしまうと、ドアインザフェイスのテクニックが使えなくなります。
そのため、はじめに伝える欲求は低すぎず高すぎない「ちょっとそれは厳しいな」といった丁度いい要求を考えてみましょう。
ポイント2.沈黙の時間を作らない
ドアインザフェイスを使う際の2つ目のポイントは、沈黙の時間を作らないことです。
ドアインザフェイスは相手の「罪悪感」を利用したテクニックなので、二度目の欲求を伝える際に時間が空いてしまうと相手の罪悪感が薄れてしまいます。相手に「断ってしまって申し訳ないな」という気持ちが残っているうちに、素早く自分の要求を通しましょう。
「時間が空いてしまったら、もう一度初めからドアインザフェイスを使ってみればいいのではないか」と思う人もいるのではないでしょうか。
何度も断られる前提の要求を伝えると、相手は断ることに慣れてしまい罪悪感も少なくなってしまいます。また「一貫した行動を取りたいと思う心理的な現象」である一貫性の原理が働いて、断り続けられる可能性があります。
ドアインザフェイスの大きな要求を伝えるのは一度だけにして、早めに自分の本来の要求を伝えるようにしましょう。
ポイント3.同じ相手に短期間で何度も使わない
ドアインザフェイスを使う際の3つ目のポイントは、同じ相手に短期間で何度も使わないことです。
心理学のテクニックを使うと交渉がうまくいく可能性が上がるからといって、何度も使ってしまうと相手が感づいてしまいます。罪悪感に付け込まれたことを知ると不愉快になってしまう可能性が高いです。
相手と自分の心理的距離やその場の空気などを読み取って、ドアインザフェイスをタイミングにあわせて上手に使うようにすることをおすすめします。
ドアインザフェイスの活用例
ドアインザフェイスは日常生活や仕事、恋愛などで活用できます。
以下では、ドアインザフェイスの活用例をご紹介するので、ぜひ使い方の参考にしてみてください。
日常生活での使い方例
日常生活で頼みにくいお願いごとといえば、お金の貸し借りではないでしょうか。
例えば「1万円お金を借りたい」場合を考えてみましょう。ドアインザフェイスのテクニックを活用すると、まず「10万円貸してくれない?」と多めの金額を聞きます。
相手が断った後に、「じゃあ1万円だけでも貸してください」とお願いすると、最初から「1万円貸して欲しい」とお願いするときよりも承諾してくれる可能性が上がります。
ビジネスシーン・交渉での使い方例
ビジネスシーンでは、営業や交渉などでドアインザフェイスを使える機会も多いです。
例えば、「4万円で売れると利益が出る商品」を持っていたとします。
まずは「10万円でこの商品を買っていただけませんか?」と断られる前提の要求を伝えましょう。
断られた後に「では、20%の8万円...さらに、半額の5万円ではどうですか?今なら〇〇もおまけします!」と伝え、さらに断られた場合は「4万円」に値段を下げると要求が通りやすくなります。
恋愛での使い方例
「どうしても意中の人とデートしたい!」といったときにもドアインザフェイスは活用できます。
デートに誘いたい場合は「◯日旅行いかない?xx水族館に行きたいんだよね」と伝えましょう。
初デートに旅行はハードルが高く感じる人も多いので、断られてしまう可能性は高いですが、落ち込む必要はありません。
次に「じゃあ、近くの〇〇水族館はどう?」と簡単な要求を伝えましょう。
ドアインザフェイスの効果で、一度断った罪悪感からデートをしてくれる可能性は高まります。
ドアインザフェイスを駆使して自分の要求を通そう
- ドアインザフェイスは「最初の要求を断らせて罪悪感を抱かせ、自分の要求を通すこと」
- 最初の要求は、無理難題ではなく現実的な要求にする
- 同じ相手に何度もドアインザフェイスのテクニックを使わない
本記事では、ドアインザフェイスの意味や使用する際の注意点などを詳しくご紹介しました。
ドアインザフェイスは、相手の罪悪感につけ込む手法なので、相手に判明したときにはネガティブな反応になる可能性もあります。
本記事を参考に、ここぞという時にのみに使用してみてはいかがでしょうか。
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