近年、採用活動の一環としても開催されることが多くなったビジネスプランコンテスト。
「アイデアはあるけれど、応募する勇気がない」「もし自分のプランが否定されたらどうしよう…」といった迷いや不安を胸に、"応募する"のボタンをクリックできない人も少なくないのではないでしょうか。しかし、そのクリックの先に、これまで見たこともない景色が広がっているとしたら…?
「失敗したらどうしよう」と身動きが取れずにいるあなたに、勇気と活力を与えてくれそうなビジネスパーソンをご紹介します。
大学入学後、半年ほど休学してプロサッカー選手として海外に滞在していたという萩原雅之さん(23)は、帰国後、今年2月に株式会社LIFULLが開催したビジネスプランコンテスト『OPEN SWITCH -考えよう、これからの暮らし。-』の「次世代の子会社社長部門(学生向け)」にて最優秀賞に輝きました。
彼はなぜ、帰国後にビジネスプランコンテストへ応募することになったのでしょうか?そして、最優秀賞を受賞できた理由とは?萩原さんを取材しました。
16人のなかから選ばれた最優秀賞
このビジネスプランコンテストを主催する株式会社LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」というビジョンを掲げており、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創ることを目的として、学生の挑戦を後押ししています。
昨年9月~10月にかけて、「住まい・暮らし」「地方創生・多拠点居住・まちづくり」「働き方」など、コロナ禍で浮き彫りになった社会課題を解決する事業アイデアを募集しました。
「次世代の子会社社長部門(学生向け)」には、16人からの応募があり、そのなかから書類審査に通過した9人が、2月12日(金)のピッチ審査会に参加。
ここで萩原さんが提案した事業プランが、最優秀賞に輝きました。
日本の伝統文化をカッコよく発信していく
萩原さんは、現在大学4年生(休学中)。大学を休学して半年間オーストラリアに滞在し、プロサッカー選手活動をしていました。また、夏休みなどを利用して20カ国ほどバックパッカーでまわった経験もあるといい、「日本の外から日本をみる」機会がとても多かったといいます。
しかし、オーストラリアで所属していたサッカークラブで突然解雇宣言を受け、その後コロナ禍によりリーグ自体も中止に。止むを得ず昨年帰国した後、「何か社会のためにできることはないか」と考え、同コンテストに応募したそうです。
彼がコンテストで提案したのは「monogoto|モノゴト」という、日本の伝統文化をカッコよく発信していく、若い世代をメインターゲットとしたサービス。
中心となる柱は、日本の職人と買い手をマッチングするためのプラットフォームです。
-----「monogoto|モノゴト」のアイデアが生まれた経緯について教えてください。
萩原さん:そもそも海外で生活していた時に、日本の良さというものを再認識したということと、帰国した後、日本全国を旅してまわったのですが、各地で出会った伝統工芸品や職人の方々を見て、「こんなにカッコよくてストーリーのある物や人なのに、なぜ広く知られていないんだろう」と疑問を持つようになったということが原点としてあります。
昔から歴史やお城など、日本の文化が好きだったということも、影響していたと思います。
そこで、もっと日本の伝統を若い世代に魅力的に発信したいという想いから、「monogoto|モノゴト」の事業プランが誕生しました。
アイデアを客観的に評価してもらうために応募
友人と一緒に職人のドキュメンタリー動画を制作したり、都内のお寺で伝統工芸品のポップアップを開催する企画を進めていたりと、既に自分の想いを実現するために周囲を巻き込みながら行動に移しているという萩原さん。
-----なぜコンテストに応募しようと思われたのですか?
萩原さん:自分の想いやビジネスアイデアを発信することで、良い反応をしてくれる人はいたのですが、本当に自分の事業プランはビジネスとして成立するのかどうか、そもそも社会的意義があるのか、自分のことを全く知らない人から客観的に評価していただきたいと思ったことが理由です。
-----実際に応募・参加してみて、どんなことが得られましたか?
萩原さん:他の参加者の方の事業アイデアを聞きながら、まずは「社会にはこんなにも色々な問題があるんだなぁ」と再認識しましたね。
また、審査員の方々からフィードバックをいただいたことで、社会問題の解決と、ビジネスとして成り立たせることの双方をどう両立させるか、といった視点の学びがありました。
-----「monogoto|モノゴト」では、ビジネスとして成立させるためにどんな工夫を考えていらっしゃいますか?
萩原さん:その点は実はまだ模索中というのが正直なところです。
個人的にはお金にはあまり興味がなくて、あくまで職人ファーストのサービスで在りたいと思っているのですが、とは言え事業には資金が必要。
なので、まずは多くの人に興味を持ってもらって、パイを広げていき、需要を作り出すための施策が必要だと考えているところです。
「失敗してもなんとかなるし、生きていける」
同社の担当者によれば、彼が最優秀賞に選ばれた評価ポイントとして、「LIFULLのビジョンとの親和性」「課題解決に向けた情熱」「利他的な想い」などが挙げられるほか、「当事者意識を持って、既に周りの人を巻き込みながら行動している」という事実も大きく影響していたといいます。
-----自分の想いを実現するために具体的行動を起こし続けている背景には、どのような考え方があるのですか?
萩原さん:まず、サッカー選手としてオーストラリアに滞在していた時やバックパッカーとして世界各国をまわっていた時、自分がいかに豊かな生活を送っているかということを実感したんです。
自分は、生活に困ることなく、勉強もさせてもらっている。日本人であるだけで幸せなことなんだなと思うようになったことで、帰国後は「社会のために何かしなければ」と思い立ちました。
そして、行動を起こせば失敗なども想定されますが、「失敗してもなんとかなるし、生きていける」という気持ちでいることも、フットワークの軽さに繋がっているかもしれません。
プロサッカー選手として活動していた時に、本田圭佑選手に直接アドバイスをいただく機会があったのですが、「なんでそんなに挑戦できるんですか?」と聞いた時、彼が「失敗したって、最悪死なないじゃん」とおっしゃっていて、この言葉もずっと心に残っています。
-----その本田選手の言葉も大きく影響しているのですね。
萩原さん:そうですね。あとは、挑戦していると、同じように挑戦している人や応援してくれる人が集まってくれて、そういう人たちの存在のおかげで自分も挑戦を続けられていると思っています。
「monogoto|モノゴト」を大きくしたい
今回最優秀賞を受賞できたことで、自信にも繋がり、さらなる行動を起こすための活力にもなったと、萩原さんは語ってくれました。
-----最後に、今後の目標について教えてください。
萩原さん:やっぱり、やるからには「monogoto|モノゴト」を大きくしたいと思っています。
「大きく」というのは、お金を稼ぐということだけではなく、与えられる影響度を大きくしたいし、貢献できる人の数を増やしたいです。
「クラブチームから解雇宣言を受けたときは、本当に辛かった」と心中を明かす彼ですが、憧れの本田選手からかけてもらった言葉や、「自分は恵まれているのだから何か社会のためにしなければ」という使命感が、彼を次へ次へと突き動かしているのです。
失敗を恐れて何もできないよりも、「失敗してもいい」と潔く突き進む方が、結果的に得られるものも大きいのではないでしょうか。
これからの彼の活躍や、「monogoto|モノゴト」の行く末にも期待が高まります。
出典元:株式会社LIFULL
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