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ポイントは、シンプルさと絞り込み!ビジネスプランコンテストにおける事業計画書の作り方 #イベントレポート

白井恵里子

2021/02/24(最終更新日:2021/02/24)


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全国各地で盛んに行われているビジネスコンテスト。「自分の力試しも兼ねて、応募してみようかな」と、日々チェックしている若手ビジネスパーソンもいるのではないでしょうか。

あたためているアイデアがあるとして、それを評価してもらうためには、一般的にまず「事業計画書」というものを作成する必要があります。

どんなアイデアなのか?どのような顧客をターゲットにしているのか?実現可能性は?といったことを一覧にまとめ、誰にでも分かるように説明するためのものです。

それでは、この事業計画書はどのような考え方に基づいて、どのようなポイントに気を付けて作成をする必要があるのでしょうか。

茨城県行方市は、3月に開催する「第3回茨城県行方市ビジネスプランコンテスト」に先立ち、応募者に向けたオンラインセミナーシリーズ「0からのビジネス構築講座」を開催。2月14日(日)に開催した同セミナーシリーズの『事業計画書のつくり方』では、具体的にどのようなことに気を付けて事業計画をつくっていけばよいかということを解説しました。

講師紹介

講師を務めたのは、株式会社あきない総合研究所の吉田雅紀代表取締役会長。

1997年よりスタートアップを専門にその成長戦略の構築・支援に携わりながら、自らもインキュベーション、ベンチャーファンドを運営。大阪産業創造館「あきない・えーど」所長を経て、「起きあがれニッポンDREAM GATE」の総合プロデューサーを歴任。2003年には起業支援家部門経済産業大臣賞を受賞しています。

自分がつくった問いに自分で答えを出す

事業計画書は、銀行からお金を借りるときに銀行向けに作成するもの、出資者に向けたものなど、いくつかの種類があり、基本の基本はどれも同じだといいますが、同セミナーでは「コンテストに出すための事業計画書の作り方」という観点から解説がありました。「"評価される"ということを意識した作成方法」ということです。

事業計画は、ビジネスのアイデアをプランにする(=計画する)こと。

「事業計画書をつくるということは、自分がつくった問いに自分で答えを出す作業です」(吉田さん)

ビジネスコンテストでは、「問いの立て方はどうなの?」「同じ問いでも、解決の方法はどうなの?」と、視野が広がる楽しみがあるといいます。そして、自分の立てた問いに、仲間が加わり、問いの答え(解決策)をマーケットに提示して、多くの人が共感してくれると、ビジネスとして成り立ちます。

事業計画書はそのための一歩だと、吉田さんは強調します。

イメージ画像/AdobeStock

評価ポイントをおさえる

まずおさえておかなければならないのが、参加するビジネスコンテストの評価ポイント。

「第3回茨城県行方市ビジネスプランコンテスト」では、以下の5つを評価ポイントとしているそう。

1.応募者の意欲・プレゼンテーション能力

意欲とビジネスの中身を表現する能力です。最近ではオンラインで伝える能力も見られています。

2.新規性・独創性

「これまでになかった!」「今まで見たことがない!」というような視点も重要。具体的には、以下3つがポイントです。

①商品・サービスそのものの新規性が高い(例:初めて開発された洗濯機)
②提供プロセスの新規性が高い(例:アマゾン、回転寿司)
③圧倒的な価格ダウン(市場価格の1/3が目安)

3.市の課題解決への貢献度

今回のビジネスプランコンテストは、「行方市の課題解決」が目的なので、地域への貢献度も当然ながら必須です。

4.市場性・成長性

「"日本全国に広めるつもりはない"という、同市のためだけのプランもOKですが、同じような課題をかかえている自治体は多数存在しているので、同市でうまくいけば横展開ができる可能性もあります」(吉田さん)

このように、日本全国、あるいは世界各国でも展開できるようなプランであれば、「市場性・成長性が高い」と評価できるということです。

5.実現可能性

計画だけではなく、いかに実現できる見込みがあるのかということ。これは実は、2つめの「新規性」と相反するといいます。

基本的に世の中で初めてのサービスは、実現可能性が低いのは当たり前。「ベンチャーの世界では失敗が法則」といわれるように、新規性が高ければ高いほど実現可能性は低くなります。

「全ての評価ポイントが相反しているとも言えますが、大切なのは、みなさんの事業計画でどこを強みにするかということです」(吉田さん)

この5つは同ビジネスプランコンテストの評価ポイントですが、このように、参加するコンテストの評価ポイントをまずは抑えておくことが大切です。

事業計画書の作り方

事業計画書のフォーマットは各コンテストによっても様々ですが、基本的事項は変わらないようです。

1.事業計画書

・プラン名

事業の名前を一言で表します。この時大切なのは、「わかりやすい」「わかりにくい」のどちらかにするということ。

「これを見て"あ、こういう事業か!"と想像できる分かりやすいプラン名を書くか、想像できず"どういうことだろう?"と好奇心をくすぐるプラン名を書くか、2つのやり方があります」(吉田さん)

事業プラン名を読まない審査員はいないので、ここでグッと興味を引くことができれば、その下の事業ビジョンを読んでくれるのだといいます。

・事業ビジョン 

ビジョンとは「夢」。あなたの世界観をここに記します。その夢の実現に向けてこの3年間は何を目標にするのか?どこまでやるのか?といったことを書いていきましょう。

ここの項目で、評価者に「なるほど!」と思わせ、次以降の項目を読みたいと思わせることが大切だそう。

・事業コンセプト

【サービス・商品内容】

提供するサービス、商品をわかりやすく記述します。ポイントは、できるだけ絞り込むこと。具体的には、そのサービス・商品にはどんな価値があり、その価値の対価=価格がいくらなのか?ということです。

【ターゲット顧客】

誰がお客様なのか?ここもできるだけ絞り込んで書くことが大切です。上段の「価値」がそのお客様にフィットしていることをここで説明します。

【サービス・商品の提供方法・仕組み】

サービス・商品・見込顧客が特定できれば、おのずから提供方法は決まってくるといいます。

・現状分析

課題、市場性(業界のトレンド・市場規模)、競合の状況などを記します。

・セールスポイント

自社の強みなどのアピールポイントを記します。

※その他、許認可法的規制に関する項目や特記事項(熱意)などを書く項目も。

2.資金計画(必要資金・調達方法)

必要な資金(設備資金・運転資金)はどれくらい?調達方法は自己資産なのか、借入なのか?借入の場合、返済方法は?といった、具体的な資金計画を書いていきます。

3.収支計画(月平均)

事業により、入ってくるお金(売上)と出ていくお金(人件費など)の計画です。

「半年間ぐらいは赤字、7~8カ月ぐらいでちょっとずつ利益がでる。でも1年目は赤字。2年目から黒字転換。1年目の赤字が2年目で黒字転換できた。さぁ、3年目からは本当に利益がでてきます」ぐらいが理想だと、吉田さんはアドバイスしてくれました。

セミナーでは、実際に吉田さんが作成した事業計画書についてプレゼンを行い、参加者が質問・評価し、双方向で進めることで理解を深めました。

イメージ画像/AdobeStock

シンプルなプランを立て、ターゲットを絞る

事業計画書を書く時の心構えについて、吉田さんはこう話していました。

「自分は当然事業プランの内容を知っているけれど、評価者やマーケットはあなたの事業を知らないんです。知らない人に分かりやすく伝えるためには、みなさんが一旦、自分の事業を知らないことにする必要があるんです」(吉田さん)

当然ながらアイデアを出したのも、計画を立てるのも自分なので、「分かっていること」を前提に事業計画書を作ってしまいがちですが、「中学校2年生ぐらいの子に聞かせて、その子が理解できるかどうか」というレベルの簡潔な内容が求められているといいます。

すると、今度は文章が長くなってしまう。長くなっていけばいくほど、分からなくってしまうー。この悪循環に陥らないためには、事業プランそのものがシンプルである必要があるようです。ビジネスそのものの組み立てがシンプルで、そして顧客の絞り込みができていればできているほど、事業化もしやすいといいます。

まずは、自分の持っているアイデアがシンプルであるか?顧客の絞り込みは十分か?といった観点から、具体的計画を立ててみてはいかがでしょうか。

※同ビジネスプランは、3月1日(月)まで応募受付中。

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