一人では難しいことでも、チームで取り組むことによって実現できたり、より良い成果が生まれたりすることが多々ある。しかし、同じ目標に向かって協力できる仲間を、どうすれば得ることができるのだろうか。
日本の工芸品通販サイト「OMOISHOP」を運営する合同会社KASASAGIは、平均年齢20.4歳(2021年1月時点)の若手ベンチャー企業。
カリフォルニアへの留学経験がある塚原大代表と、本場シリコンバレー仕込みのプログラマー、アメリカ生まれのデザイナー、工芸品のスペシャリスト、Makers University Under 18にも選ばれた起業経験者の、計5人のメンバーにて運営している。
さまざまなバッググラウンドを持つメンバーから成るチームを、どのように作り上げたのか?塚原代表に取材した。
“経年美化”という価値観を世界に伝える
「OMOISHOP」は、“経年美化”の価値観を日本の手仕事を通して体現するための工芸品通販サイト。
経年美化の消費を促すために、全ての商品に対して、作り手の想いや商品に対するこだわりを掲載。また、日本全国の職人・事業所と提携を結ぶことで、柔軟なオーダーメイド対応や修理も受け付けている。
同サイトを運営するKASASAGIは、消費活動を通して価値が上がる、心に豊かさをもたらす“本物志向”を提唱。
世界の消費の在り方を変えることをミッションに掲げており、海外からのサイトアクセスの利便性を考慮して、日本だけでなく、アメリカにもサーバーを設置。今後の展望として、OMOISHOPを本物志向のカリフォルニア市場にフィットさせていくことを目指している。
「新しい価値観を広めたい」と起業
塚原代表は2000年6月生まれ、現在20歳。高校を卒業後、アメリカの大学に進学し、2020年3月に同社を設立した。
大学ではアントレプレーナーシップという企業家(起業家)精神を学ぶ学部に所属しているが、同学部を選んだのは教授に惹かれたことが理由で、もともとは起業したいという思いはそれほど持っていなかったそうだ。
-----起業した経緯を教えてください。
塚原代表:僕は10年間程、同じ財布を使っているのですが、使い込むほどに光沢が出る経年変化に日々高揚感を覚え、“使っていくたびに愛着が湧く・モノに思いが蓄積されるという価値観”が自分の中で大きくなっていきました。
ある時、大学でビジネスピッチをする機会があり、実体験をもとにした経年美化の価値観・日本の工芸の可能性をSDGsや環境問題も交えてプレゼンしたところ、大きな反響を得て手ごたえを感じました。
また、コロナ禍によりZoomなどの新しいサービスが世界に急拡大したのを肌で感じ、「自分も新しい価値観をアメリカで広めたい・広がる可能性があるのではないか」と考えたのもきっかけとなりました。
会社を設立したのは、取り引きなどの面で、個人よりも法人として活動する方がメリットが大きいと考えたからです。
人の心を動かすには、まず「WHY」を説明
同社を運営するのは、“ホンモノ”に惚れ込んだ平均年齢20.4歳の5人のメンバー。
副社長を務めているのは、塚原代表の高校時代からの友人。大学はそれぞれアメリカの別の大学に進学したが、連絡を取り合い、一緒にビジネスに挑戦することになったという。
伝統工芸品業界での実務経験が豊富なメンバーは、工芸の知識を深めるために訪れた伝統工芸品ギャラリーで出会い、その工芸への知識と情熱に惹かれたことがきっかけで声をかけ、メンバーに加わったそうだ。
塚原代表は「自分は人に恵まれた」と話すが、いったいどのようにして出会いを出会いで終わらせず、同じミッションに向かって協力する仲間・チームにまで発展させることができたのだろうか。
-----なにか「人を巻き込むコツ」があるのですか?
塚原代表:アップルのスピーチでも使われている「WHY?HOW?WHAT?の順に話す」ということを、無意識に行っていたためかもしれません。
人の心を動かすためには、まず「WHY(なぜ、それをしているのか)」を伝え、それから「HOW(どのように行うのか)」「WHAT(何をするのか)」と段階を踏んで説明することが重要だと言われています。
今回メンバーを集める際にも、まず「WHY(なぜ自分はそれをしているのか)」=「工芸は消費の在り方を変えて、人の心を幸せにすると思っている」ということをしっかりと伝え、次に「どうやって行うのか」を説明し、ECサイト運営に協力してもらえないか呼びかけました。
“何を考えているか”を日頃から伝える
事業が忙しくなってきたこともあり、新たに2人のメンバーがアルバイトとして加入。
これからは計7人のメンバーで、日本全国の職人、日本を含む世界6カ国にあるパートナーシップ契約を結んでいる業務提携先と共に、世界の消費の在り方を変えていくという。
-----チームで仕事をするにあたって、コミュニケーションで大切にしていることはありますか?
塚原代表:事業に対しての意見が衝突した際は、時間をかけて議論を重ね、建設的な会話をするようにしています。
どうやってうまく付き合っていくかという人間性の観点では、相互理解を深めるために、社内限定ブログを立ち上げて、プライベートな面や普段考えていることをオープンにするようにしました。それにより、ビジネスの根本にもなっている考えが伝わったのか、結果的に生産性アップにつながりました。
価値観は場所やタイミングで変わる
-----これまでのどのような経験が、現在ビジネスを展開する上で役立っていますか?
塚原代表:いろいろな知識や経験が繋がって、今のビジネスが成り立っています。
例えば、高校を卒業した多感なタイミングで渡米し、国をまたぐだけで価値観がガラリと変わることを体感した経験から、物事の良し悪しを見るにあたって、その時の状況やタイミング、価値観を考慮するようになりました。
また、「今は埋もれている価値観も、時代や場所などが変わることで、いつか価値が見いだされるかもしれない」と考えるようになり、それがOMOISHOPでの商品開発や事業展開の発想につながっています。
大切なのは、自分の役割を全うすること
-----最後に、若手ビジネスパーソンに何かアドバイスをいただけますか?
塚原代表:まだそんなに社会経験がなく、皆さんの役に立つことが言えるか心配なのですが……。
一般的に評価されている役職やスキルを無理して獲得するのではなく、「自分がこれをすると幸せ」「これこそが自分がやるべきことだ」と思ったことに取り組めばいいのではないかと思います。
突出した能力を持つ社長や起業家は目立ちますが、全てを一人でできるわけではありません。それぞれが自分の役割を果たすことで歯車が回り、1つの会社が動いているのです。
僕も、特にプログラミングやデザイン、マネジメント等のスキルを持っているわけではありません。人に支えられて、できないことを補ってもらうことで事業を進めています。
それぞれが無理せず自分の役割を全うすることこそが、大切なのではないでしょうか。
自分の思い・ビジョンを効果的に伝えることで、互いを補い合える仲間を得て、「世界の消費の在り方を変える」という壮大なミッションに挑戦している塚原代表。
「それぞれが自分の役割を果たし、皆で協力してビジネスを実現する」「同じ目標に向かって進む仲間を得るためには、まず“WHY”から説明して協力を求める」という塚原代表の考え方・ビジネスの進め方は、イノベーション創出が求められている現代の若手ビジネスパーソンにとっても参考になりそうだ。
出典元:OMOISHOP
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