数えきれないほど多くの商品とサービスが溢れる現代。イノベーションを生み出していくためには、これまでになかった新しい価値観や切り口を生み出す発想力・企画力が必要となるのではないだろうか。
株式会社あきやカンパニーとYADOKARIは、全国の買い手のつかない空き家を「100均物件(100円or100万円)」として、売り手と買い手をマッチングさせるプラットフォーム「空き家ゲートウェイ」を運営している。
昨年12月からは、全国の商店街に潜む空き家になってしまった店舗物件を100円or100万円で掲載し、活用したい人を集めるPR支援をスタートした。
思わず興味を惹かれる企画をどのように生み出したのか?YADOKARI株式会社 共同代表取締役 CEO/空き家ゲートウェイプロデューサーのさわだいっせいさんに取材した。
空き家に新たな価値を与えるサービス
空き家ゲートウェイが新たに始めた「100均賃貸物件」は、全国のシャッター商店街にある空き家物件に新たな価値を与えるためのサービス。
商店街に空き店舗が増え、後継者も不在という状況の中で、商店街に潜む空き家物件を100円または100万円で掲載し、全国から活用の担い手となる後継者を募集。それにより、文化を引き継ぎながら、新たな価値を商店街にもたらすきっかけとなるプラットフォームを目指す。
第1弾として、昨年12月に、横浜市磯子区にある商店街「浜マーケット」にある元花屋の店舗物件を月100円/1年間賃貸という破格の値段で掲載した(現在、同物件の受付は終了している)。
空き家を若者と繋げる
さわだ共同代表は、コスメ会社デザイナー・ウェブ制作会社デザイナーを担当後独立。フリーランスのアートディレクター・デザイナーを経て、2012年にYADOKARIを創業した。
-----もともと企画を考えたりすることが得意だったのですか?
さわだ共同代表:世の中の常識と言われていることに疑問を持つことが多く、少し天邪鬼に物事を斜めから捉えて、「なぜ?」と面白がる癖があります。
YADOKARIではもっぱら新規事業を担当しており、世の中に無いモノを創り出すこと、わくわくする未来を構想することが自分の仕事だと思っています。
-----「100均物件」というキャッチャーなアイデアは、どのように発案しましたか?
さわだ共同代表:YADOKARI.netには、「タダでも良いから物件を引き取って欲しい」という依頼がよくやってきます。その依頼に対して、身近に沢山いる、移住や空き家再生をやりたがっている若者を繋いでみたいと思いました。
はじめは「ゼロ円物件」ではじめようと考えていましたが、0円での譲渡は手続きや税金面で手間が多いことが分かり、「1円物件」にしようとしていました。
そうして企画を進めていたところ、最後に共同運営会社あきやカンパニーのオーナー福井信行さん(株式会社ルーヴィス代表)から「100円、100均って面白いんじゃない?」という一言が飛び出し、それに賛同しました。
なので、「100均」は私のアイデアではありません(笑)。
差別化のため、空き家をポップに編集
空き家ゲートウェイには2019年7月の公開以降、200件以上の掲載依頼があり、ユーザーからの問い合わせも1000件を突破したという。
ユーザーは20~40代の感度の高い若手層が多く、問い合わせ内容も、空き家を住居として活用するだけでなく、「地域のコミュニティスペースや伝統を守るための体験施設にする」といったクリエイティビティ溢れる熱い想いを持った活用アイデアが日本全国から多数届いているそうだ。
-----人の心を掴むキャッチャーなサービスを生み出すために、どのような工夫をしましたか?
さわだ共同代表:空き家問題は、2030年には空き家率40%と深刻化するのはデータから分かっていますし、ネガティブに捉えられてしまう傾向があります。
しかし、課題解決を前面に押し出し過ぎると、暗く重いサービスにしかならず、空き家バンクとも差異が出ません。
なので、それを逆手に取って、どれだけポジティブにポップに空き家を編集できるかを考え、そこで「空き家=おもちゃ」と定義しました。
空き家をどれだけ楽しく自由に遊べるかを、デザイン・コンテンツ・サービス内容・とっつきやすさ(マッチング手数料ゼロ円)に落とし込みました。
今後の目標はDaisoで100円にて(空き)家を売ることです。
共感してくれる人の存在を信じて続ける
これまでなかったアイデアを考え出し、それをビジネスにつなげるのは大変なのではないだろうか。
-----従来にはないアイデアを考えてビジネス化するために、日頃から、どのように仕事に向き合っていますか?
さわだ共同代表:自分が良いと思うサービスやアイデアの後ろには、共感してくれる人々が「100万人」いるといつも信じています。
YADOKARIでタイニーハウスを主として、マーケットがないことを長年やって来られたのも、共感してくれるユーザーがいるからですし、また、こんなにも社会的意義があり、使ってくださるオーナー/ユーザーにも感謝されまくりで、わくわくさせるサービスが最終的にお金を生まないわけがないと信じて運営を行っています。
お金は副産物なので、徳を積めば最終的に巡り巡ってくると思っているところがあります。ただ、いつ巡ってくるかは読めないので、巡ってくるまで永続させるのは「執念」や「意地」だとも考えています。
多くの「引きだし」が、変化球を生み出す
-----「周りと違う、目を引く企画を考えて、仕事の成果に繋げたい」と考えている若手ビジネスパーソンに向けて、アドバイスをいただけいますか?
さわだ共同代表:兎に角引き出しを多く持つことでしょうか。沢山のカルチャーやクリエイティブ、サービスに触れること。
例えば、自分の好みや尺度で、現在流行っているものを「着いていけない、分からない、ダサい」とマウント取るより、素直に一旦受け入れて、咀嚼し、流行っている理由を分析したり、取り入れようとするスタンスが数年後に差異を生み、自分の世界を広げます。
引き出しを多く持つと、スタンダードや軸、中心的なものがわかり、そこを敢えて外すように変化球を投げられるようになるかと思います。
みうらじゅんさんは自分には分からないけど、世間的に流行っている物やことを体験することを「修行」と名付けてルーティンにしているといいます。
目を引くキャッチャーな企画は突然空から降ってくるわけではない。常日頃からさまざまなことに関心を持ち、取り入れ続ける地道な努力が、新しい視点のアイデアを生み出す力に繋がっていくのだという。
出典元:空き家ゲートウェイ
出典元:空き家ゲートウェイ/【受付終了】横浜のレトロな商店街にまさかの100円賃貸物件!半世紀続いたお店で花屋を始めちゃう?
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