HOMECareer Runners すべてのビジネスパーソンに贈りたい!アート×寿司「すし玲」オーナーに学ぶ、「恩送り」という考え方

すべてのビジネスパーソンに贈りたい!アート×寿司「すし玲」オーナーに学ぶ、「恩送り」という考え方

白井恵里子

2020/12/13(最終更新日:2020/12/13)


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諏訪秀一さん/提供:ご本人

人は誰でも一人では生きていけない。特に仕事という観点においては、仕事のやりかたや、仕事への向き合い方を教えてくれる先輩や上司、仕事仲間などといった人の存在がとても重要ではないだろうか。

「お世話になったあの人に、恩返しをしたい」そんな風に思うことはごく自然なことかもしれないが、「恩返し」ではなく「恩送り」という考え方をベースに日々仕事へ向き合っている事業家がいる。

12月1日(火)、「寿司と文化を世界に」をテーマに、寿司と日本酒、作家物の器や現代アートを融合させた寿司屋「すし玲」が東京都港区にグランドオープンした。

同店のオーナーを務める諏訪秀一さん(36)は、会計事務所、飲食店、美容室の経営をしながら、日本ビアポン協会の理事長という肩書も持つ。

「すし玲」が寿司文化とアートを融合させた空間となっている背景には、諏訪さんの「恩送り」という考え方がある。「恩送り」とは何だろうか?彼の仕事への向き合い方について取材した。

起業を志し会計事務所の門を叩く

諏訪さんは、当時通信販売の大手であった株式会社ニッセンに22歳で新卒入社。VIP客に高価な商品を販売する部署に配属され、営業パーソンとしての経験を積んだ。

仕事は厳しくきつかったが、「逃げたら負けだと思い、社内表彰台に立つまでは辞めないぞと踏ん張った」と諏訪さんは当時を振り返る。努力の結果、入社1年後に新入社員として表彰台に立つことができ、それを機に退職。

培った営業スキルを活かし会社をつくろうと考え、まずは経営を学ぶためにと、23歳で会計事務所の門戸を叩いた。

-----そこからどのようにして独立に至ったのですか?

諏訪さん:会計事務所で勉強させてもらう傍ら、会計を勉強するために大学院に入り直し、2年間通いました。ここでアカデミックなことをしっかり学び、また、会計事務所で色々な経営者の方の苦悩を共有できたことで、経営のノウハウを得ることができたと思っています。

余談ですが、将来起業したいと思っている学生には、大企業でのインターンもいいですが、会計事務所でインターンの経験を積むことをお勧めします。

会計事務所で1年間の業務を1~2周できれば、かなりの強みができると思いますし、就活にも断然有利になると思いますよ。

そうして数字や経営といった知識・経験を身に着けた諏訪さんは29歳で独立、起業。飲食店、美容室などを順々に手掛けるようになっていった。

恩人である人から教わった「恩送り」という考え方

諏訪さんは昔、会計事務所でお世話になった恩人から、こんな言葉をかけてもらったことがあるという。

俺はそれを恩とも思っていない、お前が恩に感じるなら、それを俺の息子や後輩たちにしてやれ、そうやって繋がりが続いていくこと、俺も先輩たちにしてもらったからな。

この言葉からもわかるように、「恩送り」とは、誰かから受けた「恩」をその人に返すのではなく、その「恩」を別の人に送るという考え方だ。

-----諏訪さんは、誰から受けた「恩」が印象に残っていますか?

諏訪さん:私の人生において欠かせない恩人の一人に、「井上修一」という男性がいます。

彼はイベント等で"ケータリング寿司職人"として活動する傍ら、「海外で寿司文化を広げたい」という思いから海外に渡り、"英語が喋れる寿司職人"として、キャリアを重ねていきました。

当時ミシュラン1つ星の「ザ・リッツ・カールトン京都」の「鮨 水暉(みずき)」料理長に就任し、世界中の著名人が登壇する「TEDxKyoto」のスピーカーとしても登壇したという実力の持ち主だった井上さんは、志半ばにして、突然の事故により人生に終止符を打つこととなってしまったという。

-----今は亡き恩人の井上先輩からは、具体的にどのようなことを学ばれましたか?

諏訪さん:自分のためではなく、人のために働いているような人でした。

でもそれが結局、かたちをかえて自分に返ってきて、自分にもプラスになるような、そういう働き方は僕の憧れでもありましたね。

ドバイなど海外で寿司を伝える活動も、お金目的ではなかったけれど、そのような行動が世界の人の目にとまり、押し上げられていった人だったので、「やりたいことを突き詰める」姿勢がカッコいいなと思っていましたし、自分もそうありたいなと思うようになりました。

井上修一さん/提供:諏訪さん

「日本文化や寿司文化といったものを大切にしていた井上さんの遺志を継ぎたい」「井上さんからもらった恩を他の人に送ろう」といった想いで、「すし玲」をオープンしました。

スキルも掛けないと意味がない

高級寿司屋が多数存在する日本国内で寿司屋を経営しようと思った時、寿司職人の技術のみを売りにしたのでは他店に勝てないと、諏訪さんは考えた。

そこで、ギャラリー要素をもった空間で、若者にも手が届くような価格設定で寿司を楽しんでもらうという「すし玲」のコンセプトが生まれたそうだ。

諏訪さん:ビジネスでは、何か得意な分野やスキルがあったとして、それ一本で勝つのはとても大変ですが、何かと掛け合わせることで勝率が上がるんです。

単なる「寿司屋」ではなく、「アート×寿司屋」にした背景にはそういった考え方もあります。

スキルも掛けないと意味がないと思っています。

「すし玲」では、日本の職人が手仕事でつくっているお皿などをギャラリー展示しており、客は作品をここで買うこともできる。(HPでも購入可・現在準備中)

「すし玲」で使用しているお皿も同様に職人さんが作ってくださった「すし玲」のための作品です。

作品を目にしたお客様が「やっぱりかっこいいお皿っていいよね」と思ってくださること、そしてそういう場を作り続けることが、持続可能性のある「文化の継承」だと考えています。

「損して得取れ」

-----最後に、先輩や上司から日々学び続けている若手ビジネスパーソンにアドバイスやメッセージ等がありましたらお願いします。

諏訪さん:「損して得取れ」という言葉がありますが、人が嫌がるようなことを率先してやったり、人のために動いたりできる人は、自分がいざ困ったときに周りが助けてくれるようになると思います。

また、何か仕事を与えられた時、最終目的として何があるのかを意識・理解してその仕事に取り組むことが大切だと考えています。

自分がやりたいことと、今やっていることがどうリンクしているのか、ということを常に考えるといいと思います。

自分のビジネスを通して、お店のスタッフや、職人、そして日本で寿司を学びたいという外国の人たちへ「恩送り」をしたいと、諏訪さんは今日も仕事に臨んでいる。

日々、いろいろな人と関わりながら仕事をしているビジネスパーソンなら、誰にでも「恩人」がいるのではないだろうか。自分が受けた「恩」を他の人に返していくことで、今度は自分が誰かの「恩人」になっていく。この好循環は、自分の成長のみならず、ビジネスの発展にもつながっていくことだろう。

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