「ゆくゆくは地元に戻って地域のために働きたい」「今は首都圏で就職して経験を積んでいる最中だけど、Uターンして起業するという夢がある」そんな地元愛溢れる若手ビジネスパーソンに活力をくれそうな、Uターン起業家がいる。
新保典司(しんぼ てんじ)さんが醸造長を務めるクラフトビール醸造所「TSUKIOKA BREWERY」と、併設ビアキッチン「キッチンGeppo」が11月13日(金)、新潟県新発田市にオープンした。
「TSUKIOKA BREWERY」では、"歩きたくなる温泉街"で親しまれる月岡温泉郷の新定番土産を目指し、エメラルドグリーン色の温泉水をイメージしたクラフトビール他、4~6種類のクラフトビールを製造していくという。
新保さんは、新発田市近くの地域で生まれ育った後、進学のため県外に出たが、家業である酒店を継ぐためにUターン。ずっと日本酒にかかわってきたという彼だが、このたび、地元で出会った2人の仲間とともにクラフトビールの製造に挑戦している。
日本酒に親しんできた彼がなぜクラフトビールを作っているのか?Uターンならではの起業メリットとは何か?新保さんを取材した。
家業である酒店を継ぐためUターン
新保さんは県外の大学を卒業後すぐに家業である酒店へ入った。
26歳で簡易郵便局を立ち上げ、酒屋と兼業。ソムリエ協会による「sakediploma」(日本酒ソムリエ)や、新潟清酒達人検定の「銀の達人」、保険募集人の資格を保有している。現在は37歳、3児の父親でもある。
ーUターンを決めた経緯について教えていただけますでしょうか。
新保さん:首都圏の大学に通っていたため、魅力ある職業が山ほどありましたが、長男ということもありましたし、家業である酒店を継ぐために帰ってきました。
大学では経済学を学んだのですが、今思うと家業を継ぐためにそれを専攻したのかもしれませんね。
市内のイベントでクラフトビールの高需要に驚愕
今回の事業立ち上げ仲間の1人は、新発田市の観光休憩所「寺町たまり駅」で店長・調理師として活躍中の三宅晴香さん、もう1人は株式会社花安で常務取締役を務める渡邉安之さんだ。
ー3人の出会いについて教えていただけますか?
新保さん:昨年の新発田市のイベント『寺ビラキ』にて、一緒にクラフトビールを販売したことがきっかけでした。
もともと、(渡邉さんが勤務する)株式会社花安さんとは取り引き業者としてお付き合いがありました。
(三宅さんが店長を務める)寺町たまり駅にて花安さんが指定管理者になり、そこの酒類販売を酒店として間借りさせていただいていたことがそもそもの始まりです。
イベントでは、クラフトビールを他から仕入れ販売したところ、物凄い売れ行きで完売し、「こんなにもクラフトビールに需要があるのか」と驚いたという新保さん。
このことがきっかけとなり、クラフトビール事業についてデータを集めはじめたという。
日本酒にかかわってきた自分だからこそ作れる"日本のビール"を
そして、「長年日本酒にかかわってきた自分だからこそつくることができる、日本のビールを生み出したい」との想いが沸き上がり、ビール醸造の修行を経験。ビールの根本的な知識から醸造スキルまでを徹底的に叩き込み、ブルワリー立ち上げの極意を学んだという。
日本全国のブルワリーに出向き各地のビールを飲み比べるなど積極的に行動し、ついにこのたび、地元・月岡温泉ならではのエメラルドグリーン色を表現したクラフトビールが完成。
今年9月から10月にかけて実施した、TSUKIOKA BREWERY立ち上げ支援を募るためのクラウドファンディングでは、スタート3日で100万円の目標を達成し、最終的には300万円の支援金が集まったそうだ。
首都圏で受けた刺激が起業メリットに
ーUターン起業のメリットとは何だと思われますか?
新保さん:首都圏には全国各地の方たちと知り合い、刺激を受け、地元・新発田にいた時とは全く違う感覚を味わうことができました。
地元では普通のことが、普通でなかったり、(首都圏では)人が多過ぎるので、他人の目をあまり気にしなくなりました(笑)。
他人の目を気にせず好きなことができる。
それは、県外での生活を経験したことが大きな要因だと考えてます。
ー今後の展望についてお聞かせください。
新保さん:まずは、第一にビール醸造にて安定した味わいを出し続けること。
それから、地元・新発田の特産物を使用したオリジナルビール造ってみたいですし、月岡で歩行者天国にしてビアフェスを企画してみたいです。
地元・新発田の魅力を微力ながら発信できればと思っています。
クラフトビールに魅了された若き3人のつくる「TSUKIOKA BREWERY」のコンセプトは、"飲む人と人が「つながる」ビールをつくること"だという。
それぞれのバックグランドは異なれど、ビールにかける情熱という絆で結ばれた3人の挑戦ストーリーはまだ始まったばかり。
これから月岡温泉の景色がどう変わり、どう広がっていくのか、非常に楽しみだ。
出典元:CAMPFIRE/
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