新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務や外出控えなど、新しい生活様式が拡大。気軽なコミュニケーションの機会が減ったことで、不安や孤独を感じるなど、ストレスを抱え込んでいるという人は多いのではないだろうか。
そんな人々の不安とストレスを解消すべく開発されたアプリが今、世界で人気を博している。
今年8月にAndroid版をリリースした株式会社bajjiの感情日記アプリ「Feelyou(フィールユー)」は、欧米を中心にユーザーを増やし、世界100カ国を超える国に拡大。リリースから3カ月で、Google Play ベストオブ 2020「ユーザー投票部門 アプリカテゴリ」にノミネートされた。
世界に必要とされるアプリをどのようにして生み出したのか?株式会社bajjiファウンダー兼代表取締役の小林慎和(こばやしのりたか)さんに、開発におけるこだわりや、サービスを見つけ出す着眼点を養うために大切にしている行動・考え方について取材した。
感情をシェア&共感しあえるアプリ
Feelyouは、同じ気持ちの人と共感しあえる機能と、自分自身のメンタルコンディションを整えるための感情日記の機能を組合わせたセルフケアアプリ。
その時々の感情をポストしシェアすることで、互いのウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に健康な状態であること)を高めていく。
利用者は、現在の感情を「AMAZING」「HAPPY」「CALM」「OKAY」「ANXIOUS」「SAD」「TERRIBLE」から選び投稿。感情の理由を一緒に投稿することもできる。
シェアされた感情には、「Feelyou=分かるよ」と共感を示すことが可能。何気ないリアクションが、誰かに力を与える。
さらに、世界中のユーザーの“いま”の感情の分布を確認できたり、アプリ上での活動(投稿・リアクション・コメント)が、実際の社会貢献活動にもつながっていく仕組みも備えている。
経験をもとに「共有・共感できれば」と発案
小林代表は、大阪大学大学院を卒業後、野村総合研究所に入社し、経営コンサルタントに従事。2011年にグリーに移り、海外事業開発を担当。2012年末にシンガポールにて起業。以来、国内外にて複数社を起業した。
現在は、同社のファウンダー兼CEO/ビジネス・ブレークスルー大学准教授/工学博士として活動。「人類2.0 アフターコロナの生き方(プレジデント社)」など多数の著書を持つ。
-----「Feelyou」を発案した経緯は?何かメンタルヘルスケアや共感の重要性・必要性を実感する、きっかけとなった出来事があったのですか?
小林代表:私はこれまでに国内外でいくつかの会社を創業してきたのですが、会社を経営する中で、ハードシングス(困難な局面)に何度もぶち当たってきました。
そんな時に、「それを共有できたり、共感されたりすれば、もっと心理的なプレッシャーが楽だったろうな」と思った経験が元になっています。
デザイン・シンプルさ・居心地にこだわり開発
同アプリは、今年7月にiOS版が、8月にAndroid版が登場。リリースからまだ数カ月しか経っていないが、現在、欧米を中心に世界100カ国を超える人々が利用しているという。
-----最初から世界を視野に開発したのですか?また、どのようにして同アプリを世界中に広めていったのですか?
小林代表:はい、始めから世界に向けて開発しました。
特にコロナ禍の中、世界中の人が「人に会えない」「ビジネスが思うように進まない」など、さまざまな環境の中で苦しんでいます。そうした人のメンタルを少しでも良い方向に進められないかと思い、世界に向けて展開しています。
-----世界の人に必要とされるアプリをどのようにして作ったのですか?開発にあたってこだわった点、またそれをどのように実現させたのかを教えてください。
小林代表:こだわった点は3つあります。「デザイン」「シンプルさ」「居心地の良さ」です。
このアプリの基本機能は「感情を吐き出す」ことと、「共感」することです。そのため、まずはメンタルケアに関して感度が高い欧米諸国をターゲットに考えており、その人たちに受け入れてもらえるようなデザインを意識して作っています。
2つ目はシンプルさ。今回のアプリは感情を吐き出して、ありのままの自分を出すことでメンタルコンディションを整えることを狙っています。感情と一言で言っても人によって様々で複雑です。それをいかにシンプルに出せるようにするか?という点に気を付けました。
最後は、居心地の良さ。窮屈と感じたり、気を使わないといけないと逆にしんどくなります。辛い時は辛い。嬉しい時は嬉しい。無理に綺麗な写真を投稿したり、カッコ良い批評を書く必要はなく、ありのままを出せる環境づくり。それにこだわってアプリを創っています。
世界中のユーザーから、さまざまな反響
-----同アプリに対する、ユーザーからの反響・感想を教えてください。
小林代表:世界100カ国にユーザーがいるため、毎日様々な国のユーザーからコメントをいただいています。その中のいくつかを紹介します。
「匿名や無名の人のサポートは、心地よい不思議な感覚を生み出します。孤独感が減り、周囲の人たちに迷惑をかけることが少なくなりました。」(フランス20代女性)
「ポジティブでもネガティブでも問題ありません。ここにはたくさんの優しい人たちがいて、ここにポストすることで自分の感情に対処でき、本当に役立っています。」(アメリカ20代女性)
「お互い助け合うのにとても良いアプリです。だれかを助けることで、自分もまた救われている感覚があります。」(イタリア20代女性)
「感情を気軽に吐き出せる場所を探していました。匿名投稿もできて、それがより気軽さを感じさせてくれます。いろんな国の人が使っていて、それを読んでいるだけでも癒されます。」(日本20代女性)
データに「思い・気持ち・気遣い」を乗せる
同社は「未来を変える出会いを増やす ブロックチェーンを通じて」をビジョンに掲げ、感情日記アプリ「Feelyou」や、自分にとってふさわしいビジネスパートナーと出会いやすくすることを目的としたアプリ「bajji(バッジ)」を運営している。
どちらも、人とより良く繋がり、自分を良い状態に持っていくサービスだ。
-----これらのサービスを作るにあたって、大切にしている考え方を教えてください。
小林代表:世界でスマホを使う人が30億人いて、いつでもどんなことも「データ」は繋がっている世の中になりました。
便利になったのですが、データだけだと冷たい側面があると思っています。
そこに人としての思い・気持ち・気遣い、そんなものを乗せることができたら、ということをサービス開発の時にはいつも大切に考えています。
多様な情報に触れ、発想の守備範囲を広げる
感情共有アプリ「feelyou」は、コミュニケーション不足が深刻化するコロナ禍において、世界中の人々が共感でつながる優しく温かい世界をつくる、まさに今の時代にぴったりのアプリだ。
世の中に必要とされるサービスをどのように見つけているのだろうか。
-----世の中に求められるサービスを見つけ出す着眼点を、どのように養っていますか?仕事をするにあたって、大切にしている考え方・行動を教えてください。
小林代表:新しい着眼点を手に入れるために、1つ大切にしている行動があります。それは、「自分の趣味や経験だけで情報を取捨選択しない」ということです。
それを実現するために、私は毎日数時間Wikipediaを読んでいます。あるニュースや、その日気になったキーワードをWikipediaで調べ、そこを出発点として、そのWikipediaのページに貼られているリンクを片っ端から開いて読んでいきます。
例えば、“選挙”というキーワードから始めても世界史のページに行ったり、SNSに行ったりと、様々な情報に飛んでいくことができます。
そうすることで、自分の発想の守備範囲を広げています。
自分の興味・関心の範囲外にあることでも遠ざけず、積極的に情報を取り入れることで、発想の幅を広げ、世界中で必要とされるサービスを生み出したbajji。
自分のありのままの感情を気軽に吐き出し、共感しあい、助け合えるプラットフォームが広がり、世の中の人々のウェルビーイングが高まることで、ビジネスのパフォーマンスや日常生活にも良い影響が及び、世界中の人々が優しく繋がる温かい世界へと変化していくのが楽しみだ。
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