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「常識を疑い、本当に大切なものを考える」コルク栓再資源化プロジェクト、代表に聞く“逆転の発想”の生み出し方

長澤まき

2020/11/01(最終更新日:2020/11/01)


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日々、何気なく消費され、捨てられているさまざまなアイテム。それらのまだ気づかれていない可能性を見出して、ビジネスにつなげることができたら、どれだけ素敵だろうか。そんなプロジェクトが広がりを見せつつある。

株式会社GOOD DEAL COMPANYは、廃棄予定のコルク栓を再資源化し、新たな製品や再生素材として世の中へ発信する「TOKYO CORK PROJECT(東京コルクプロジェクト)」を主導。

このたび、再生コルクとその他の廃棄マテリアルやリサイクルマテリアルを組合わせた新ブランド「anela(アネラ)」をローンチした。

ごみとして捨てられていたコルク栓をどのように活用し、ビジネスに繫げたのか?また、逆転の発想をどうやって生み出したのか?北村真吾代表に取材した。

飲食業での、ショッキングな体験がきっかけ

TOKYO CORK PROJECTを主宰する北村代表は、1983年茨城県生まれ。大学では理工学を専攻し、卒業後は、不動産デベロッパーや外食産業に従事した。

同プロジェクトを始めたのは、約10年前、北村代表が飲食業に従事していた際に、店舗から生じる日々のフードロスや廃棄物を目の当たりにし、愕然としたことがきっかけだという。

1店舗でも毎月1000本以上のワインのコルク栓が廃棄されており、さらに調べたところ、東京では年間でボトル1億5000万本分が消費されていることが分かったそうだ。

「活かせば大切な資源になるのに…」という思いが強くなり、コルク栓を再生化するプロジェクトを2010年にスタートした。

提供:TOKYO CORK PROJECT

まずは、自分たちでプロダクトを開発し提案

-----“廃棄コルクの回収→再生”をビジネス化するために、どのような工夫をしましたか?

北村代表:プロジェクトを開始した当初は、再生したコルクの素材をモノづくりメーカーや企業に提供し、活用してもらおうと考えていました。

しかし、コルクは生活に身近な素材でありながら、世の中にコルク製品があまりなかったため、メーカー側も製品イメージを持てずに困っていました。

そこで、まず自分たちが先にコルク素材を使ったプロダクトを開発し、「コルクでこんなものが作れる」というプレゼンテーションを行うことで、提案の幅も広がっていきました。

現在、全国750店舗と連携

まずは、コルクをリサイクルできる工場探しと、コルク回収に協力してもらえる店舗の誘致を同時に進めたという。

協力店は次第に広がり、プロジェクト開始から10年を経て、現在では、東京400店舗・全国750店舗のコルク栓回収協力店舗と連携。ワイン流通業者の協力のもと、納品の帰り便を利用してコルク栓を集め、2017年11月時点で、およそ315万点・1900キロ分のコルクが集まったそうだ。

-----協力店舗を増やすために、どのような行動・工夫をしましたか?

北村代表:プロジェクトを始めて300店舗くらいまでは、プロジェクトメンバーがそれぞれ店舗を回って声をかけ、協力店舗を増やしていきました。

それ以降は、「街の店舗やHPで見たので協力したい」と、お店側から声が掛かるようになりました。

提供:TOKYO CORK PROJECT

新たに他の廃マテリアルとコラボ

今回、新たに立ち上げた新ブランド「anela(アネラ)」は、再生コルクとその他の廃棄マテリアルやリサイクルマテリアルを組み合わせた、新たなモノづくりを行うブランド。

再生コルクと廃棄デニム、再生ポリエステルを組み合わせたペット用クッションベッド「BUDDY BED」や、再生コルクと再生ポリエステルを組み合わせたワイン用キャリーバッグ「BOTTLE CARRY BAG」などのアイテムを展開している。

-----新ブランド「anela」を立ち上げた経緯を教えてください。

北村代表:きっかけは、「anela」で一緒にBUDDY BEDを作っている、リメイクデニムを展開するOVERDESIGNさんより、「残布が出るので、それをどうにかできないか」という相談があったことに始まります。

当初はデニムを溶かして紙に再生するなどのアイデアもありましたが、デニムパンツらしい名残の部分(バックポケット・コインポケット・デニムの赤み、など)を活かし、そのままの素材を使って、再生コルクとのコラボレーションの道を模索しました。

それと同時に、コロナ禍になり、世の中が沈んだ空気に包まれる中、自分たちは「消費を見直す機会になるのでは」とポジティブに受け止め、いろいろなチャレンジを始めました。

これまで再生コルクをプロダクトの素材のメインに考えていましたが、リメイクデニムも含め、他の廃マテリアルの素材にも目を向け、何かユニークな組み合わせができないか、長年の友でもあり仕事仲間でもあるプロダクトデザイナーの原田氏らと共に新ブランド「anela」を進めていきました。

「anela」シリーズの正式な発売日は11月下旬を予定。それに先駆け、10月21日(水)~11月10日(火)まで、阪急うめだ本店にてPOP UP SHOPをオープンしている。

anela/BUDDY BED

anela/BOTTLE CARRY BAG

常にアンテナを張り、ヒントを探っている

-----コルクをどのように再活用するのか、どのような製品をつくるか、といったアイデアはどのように発案していますか?

北村代表:常に「これをコルクに置き換えたらどうなるだろう」と考え、アンテナを張っています。日常生活で触れるモノ、インテリアやショップ、様々なシーンにおいてもヒントを探っています。

再生コルクのプロジェクトを進める当初から「back to tabel_またテーブルに戻ろう」というキーワードを持っていますが、これは「食のシーンから、食のシーンにポジティブに戻る」という考えで、ゴミとなるのではなく、きちんとまた役割や華のあるものに戻したいという思いで唱えています。

今回「anela」では、人間と動物の垣根を越えて一緒に使えるものや、ファンシーではなく、インテリアとしてライフスタイルに溶け込めるデザインを目指してモノづくりをしています。

anela

「本当にそれでいいの?」と常識を疑う

同プロジェクトでは、「大消費都市は、再生資源の宝庫である」と捉えなおし、“消費することで新たな資源も生まれている”と再認識することが重要だと考えているという。

-----逆転の発想・着眼点がとても素敵だと思いました。このような発想・着眼点は、どのように生み出しているのですか?

北村代表:常に“疑問”を持ち、これまで当たり前のように捨てられているものに対して「本当にそれでいいの?」「今ある仕組みは本当に合理的?」といった、常識を疑うことです。

そして、「本当に大切なものは何なのか」を常に考えています。そこから見えてきたものが、現在につながっていると思います。

NEWoMan レストスペース(2018)

-----仕事を行う上で大切にしている考え方・行動を教えてください。

北村代表:「自分が楽しく、笑顔でいること」、そして「感謝」です。

やはり、自分自身が楽しく取り組むことで、周囲にもそれが伝わり、よりよいものが生まれていくと思っています。

現状をただ受け入れるのではなく、疑問を持ち、新たなビジネスを創り出して世の中に発信していくGOOD DEAL COMPANY。

これまでの常識をもう一度考え直し、新たなビジネスにつなげていく逆転の発想・着眼点は、さまざまな領域においてアイデアや新たなサービスを生み出す参考になりそうだ。

出典元:TOKYO CORK PROJCT

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