新型コロナウイルスの影響で、新卒として入社後すぐにテレワークとなってしまい、そのまま在宅での仕事が中心という働き方が定着したという新入社員にとって、すぐ近くに疑問点や不明点を相談できる先輩や上司がいないという状況は、精神的にも不安であるうえに、生産性を妨げている可能性もあるだろう。
PCで仕事をしている後ろから先輩が「その操作、こうしたほうが便利だよ」などと教えてくれる職場を想像していたのに…と、いまだに慣れないPC操作に苦戦している人も多いのではないだろうか。
株式会社リベンリは10月19日(月)、パソコン業務を行うユーザーのログを分析して、リアルタイムに操作アドバイスを行うサービス「Litera App(リテラアップ)」をリリース。
非効率な操作を行ったユーザーに、その場でショートカットキーの使用などをアドバイスしてくれる機能だ。様々な作業の効率化を積み重ねることで、大きな生産性向上に繋げることができるという。
発案者は、ベンチャー企業へ新卒入社後、2018年に同社を設立したという代表取締役の倉橋康友さん。
「リテラアップ」はどのようにして生まれたのか?自由な発想を生み出すために、大切なこととは何か?倉橋さんを取材した。
自発的に仕事をする社内カルチャーに感化され起業
倉橋さんは、23歳でベンチャー企業である株式会社ショーケースに新卒1期生として入社。中核サービスとなるフォームアシスト(入力フォームの最適化サービス)を企画した。
31歳の時にショーケースが東証マザーズへ上場、32歳の時に東証一部市場変更。経営企画室長としてIPOプロジェクトに携わり、内部統制やコーポレートファイナンスについて学ぶ機会を得たという。
その後、34歳で退職し、株式会社リベンリを設立した。
ーなぜ起業しようと思われたのですか?きっかけなどがあれば教えてください。
倉橋さん:ショーケース入社当初から、いつかは起業しようと考えていました。
十数名の小さな会社に入社するところからスタートして、会社がどんどん大きくなっていく過程で、自分の業務も営業・マーケティング・経営企画・IRと、常にやりたい事にチャレンジすることが続き、気づけば11年も経っていたという感じです。
倉橋さんはショーケースでの最後の1年、事業部の部門長を担当。そのなかで、メンバーがそれぞれ自発的にサービスの企画を立てたり、売上向上の施策を行ったりしている状況を間近で見ているうちに、「このまま管理職を続けるのもいいけれど、自分がやりたいことをやろう」と、退職と起業を決めたという。
MacBookに替えた時の衝撃から生まれたアイデア
リテラアップでは、ユーザーはいつものように操作を行うなかで、より効率的なアドバイスをデスクトップに表示することができる。
その他、リテラアップの使用前後でどの程度作業時間を減らす事ができたか、レポート画面において確認することができる「レポート機能」も付いているため、具体的にどのような操作に時間がかかっているのか、その傾向を把握することも可能だ。
「eラーニングや参考書などの学習では、自身の業務では使わないものも多く含まれる」「一度覚えた操作も、その後しばらく使わない間に忘れてしまう」などといった無駄や負担を軽減することができるとしている。
ーリテラアップ開発の経緯を教えていただけますでしょうか?
倉橋さん:形から入る私は、"若手起業家たるもの、MacBookを持って、スタバのテラス席でコーヒーを飲みながら仕事をするんだ!"とイメージしていました。
コーヒーは苦手で飲めないので、MacBookだけ購入して、仕事を始めました。
そして、あるときChrome(ブラウザ)で 「Command + H」とキー押したときに、「あれ?」となりました。
Windowsでは「Ctrl + H」でWebサイトの閲覧履歴が見れるはずでした。
しかし、調べてみると、Macでは「Command + Y 」だと!
"そこは、HistoryのHでいいだろう!"と怒りを覚えて、一人ワナワナしてしまいました。
WindowsからMacに替えたことで、「また、最初からショートカットキーを覚え直すのか」と落胆している時に、倉橋さんは閃いたという。
ユーザーの動きを見て、「それはこのショートカットを使いましょう」と、アドバイスを表示させることができないか?と考えました。
これを思いついたときに、前職で他の人の操作を見て「それはこの設定を変えた方がいいよ」とか、「こっちの方が早く動かせるよ」とかお互いにアドバイスしあっていたのを思い出しました。
起業して1人になった私は、こういう状況はめっきり無くなっていたのです。
だから、誰かが後ろでパソコン操作をしているところを見ながら、その場でアドバイスしてくれるような仕組みを作りたい!と考えたことがきっかけです。
何か1つ思いついたら、組み合わせや応用を考える
そもそも同社の社名「リベンリ」には、「自由な発想と行動で、世の中に便利なものを届けたい。」との想いが込められているという。
ー自由な発想を生み出すために意識していること・大切にしていることはありますか?発想のコツなどもありましたら教えてください。
倉橋さん:これまで、企画書止まりやお蔵入りになってしまったものもありますが、いくつかサービスを企画してきました。
そのほとんどは、これまでに触れてきたものの組み合わせや応用です。
例えば、今回のリテラアップも、前職で企画したフォームアシストが根底にあります。
フォームアシストは企業のWebサイトの入力フォームにおいて、ユーザーの入力内容を判別して、その場で間違いをお知らせします。
そうする事で、あとでエラーがズラッと並んで、「もう入力が面倒」と思われることを防ぎます。
リテラアップも、「ユーザーのその操作内容を見てその場でお知らせする」という点では、フォームアシストがアドバイスとその対象を変えた"応用"と言える。
フォームアシストを思いついた時も、前職で提供していた、「ユーザーの行動によってバナーが自動で切り替わるサービス」を応用できないかと考えました。
あとは、これをどの程度、自由に発想できるかということで、同じ仕組みでも、違う業界向けのものにしてみたり、他の仕組みと組み合わせてみたりと。
何か1つ思いついたら、それとは全く別のものを考えるより先に、「これをどのように発展させられるか」「応用できるか」ということを、とことん考えるように意識しているそうだ。
今後は、リテラアップの応用もすでに検討しているという。サービスをより進化させ、企業の生産性向上に寄与していきたいと、倉橋さんは展望を語る。
全く異なるプロダクトであっても、元となる出発点は同じだという「応用による新たな発想」は、さまざまなビジネスシーンにおいて参考にできそうだ。
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