合同会社Eiferが販売する、暮らすように使える「ゲルテント」が注目を集めている。
15分で組み立てられ、グランピングのみならず災害時の仮設住居やオフィスなど幅広い用途で利用できる、モンゴル遊牧民3000年の歴史から生まれたゲルテントだ。クラウドファンディング等で予約販売を開始したところ、2カ月で売り上げ2000万円を突破した。
同商品を販売するEiferは、日本とモンゴルのメンバー、そして多様なアンバサダーが集まる多国籍チーム。様々なバックグラウンドを持つ仲間とどのように協力し、ゲルテント事業を展開しているのか?野尻悠貴代表に話を聞いた。
組み立て15分、移動式住居ゲルがテントに
同社は、マーケットは大きくないが素晴らしい文化を持つ国で、現地の人と世界に誇れる事業を作り、世界のあらゆる人々の幸せの実現に貢献することをビジョンに事業を展開している。
暮らすように使える「ゲルテント」は、夏は涼しく冬は暖かい、ゲルの強みを兼ね備えたオールシーズン利用可能なテント。ゲルの排煙機能も備えているので、冬にはテント内で薪ストーブを使用することができる。
テント内は広さ12平方メートル・高さ2.3メートルで、最大12人収容。寝具や家具などを自由に配置して、オリジナル空間をつくることができる。
折りたたみ式で組み立ては約15分。畳むとゴルフバッグサイズの2つのバックに収まるので楽に持ち運べ、収納場所にも困らない。
「現地の人と世界に誇れる事業を」と起業
代表取締役の野尻悠貴さんは1996年生まれの24歳。
ドイツ留学を機に世界を旅する中でモンゴルに出会い、国内市場が小さく国際競争力のある産業を持たないモンゴル経済の現状を目の当たりにし、現地で出会った同い年のモンゴル人のオギさんと共に、世界に勝負できる観光産業を創出するべく、2019年7月に同社を創業。
モンゴル発遊牧民ブランド「ゲルジャパン」などを展開している。
-----起業し、ゲルテントをリリースするまでの道のりを教えてください。
野尻さん:モンゴルの遊牧民には、天候の悪化や馬の怪我などの予想もつかない事態に備えて、訪問者は誰であれ歓迎し宿泊してもらう、そうして自分が困った時に頼れる信頼関係をつくるという文化があります。
自分もゲルで歓迎してもらう体験をして、現地の文化や経済に感銘を受けました。しかし一方で、こんな素晴らしい人たちや文化が存在するにもかかわらず、マーケットの小さい国がまだまだたくさんあることを実感しました。
そんな国のみんなと一緒に、“小さいマーケットでも世界に誇れる事業を作れる”ということを証明していこうと事業を始めました。
そうして、まずはモンゴルの大草原の土地で日本人向けに遊牧民キャンプを提供するツアー事業を始めたそうだ。
野尻さん:その中で、ゲルが非常に人気だったので、「ゲルをグランピングのテントにして日本に持ってくると売れるのではないか」と考え、ゲルテント事業を開始しました。
応援してくれる人が集まり、次々メンバーに
同事業には、日本・モンゴルのチームや外部アドバイザーなど、様々なバックグラウンドを持つ人々がメンバーとして参加している。
-----メンバーをどのように見つけ、どのようにして仲間に引き入れましたか?
野尻さん:僕たちは半分がモンゴル人のメンバーです。まず、モンゴルで事業をしたいと考えていた時に、共同創業者となるオギを紹介してもらいました。
次に、彼が卒業した高校がモンゴルでもかなり日本語に力を入れている高校だったのですが、彼にその学校の先生を紹介してもらい、そこから協力してくれるインターン生を紹介してもらったり、イベントに参加して人脈を広げたりしました。
そうして事業を進めるうちに、社会性のある事業に興味を持ってくれた日本のメンバーや、「母国のために頑張りたい」というモンゴルのメンバー、また同社の事業を応援してくれる人がどんどん集まり、メンバーが増えていったという。
お客さんを仲間にして、商品を広めてもらう
-----良い物または可能性を秘めているがまだ注目されていないものを多くの人に知ってもらうために、どのような取り組みや工夫をしましたか?
野尻さん:僕は本当にゲルが大好きです。ゲルってすごくエモいんですよね。
オール自然素材だけど、自然のものとは思えないくらい暖かく、防音効果もあり、オールシーズン使えて移動もすぐできる。しかも、なぜだか分からないけれど、滞在すると自然と皆との距離が近くなって明け方まで深い話をしちゃうような、非常に良いプロダクトです。
それを世の中に広めていくためにまず行ったのは、最初のお客様を仲間にしていくこと。お客様をただのお客様ではなく、アンバサダーとして、ゲルジャパンをどう広めていくかという仲間にし、お客様がゲルテントを広めてくれる形をつくりました。
まず最初の3人のお客さんを見つけ、同事業のビジョンなどを伝えて「ぜひ一緒にブランドを育てる手伝いをしてほしい」と説得したという。
そうして一緒に企画を作ったところ、様々なアイデアが出て展開が拡大。現在、約50人ほどの顧客がアンバサダーとして同社に協力してくれているそうだ。
文化の違いは、説明して乗り越える
-----様々なバックグラウンドを持つメンバーをまとめ、事業を展開していくのは大変ではないですか?
野尻さん:困難なことは多いですね。
モンゴルには大草原で生活している人たちも多いです。朝は家畜が鳴いたら起きて、夜は暗くなったら寝て、季節の変わり目で移動するというスタイルなので、時間の感覚が違い、納期を守ってもらうことなどが大変でした。
そこで、モンゴルと日本の両方で働いた経験のあるメンバーに、モンゴルの皆に日本の文化について説明してもらいながら進めるようにしました。
絶対に守る「3か条」を全員で共有
-----ONE TEAMとして活動するために必要なことは何だと思いますか?チームマネジメントにおいて大切にしている考え方を聞かせてください。
野尻さん:僕たちは、これを満たさないと事業をやらないという「ヒーローになるための3カ条」を用意しています。
1つ目は「そこに愛はあるか?」、2つ目は「チームになれるか?」、3つめは「そこに仕組みを残せるか」です。
1つ目の「そこに愛はあるか?」は、愛を感じられない物や場所では事業は行わないということ。ただお金の臭いがするからとか、自分の役に立つからではなく、そこに“愛”が発生するかどうかを大切にしているという。
2つ目の「チームになれるか?」は、一方が援助するのではなく、互いを活かしあえるチームになれるかという点。発展途上国だから“助ける”のではなく、互いができることを合わせて作るチームを大切にしているそうだ。
3つ目「そこに仕組みを残せるか?」は、最終的に事業を現地の人々だけで運営できるように、ノウハウを全部残せるようにしたいと思っているという。
野尻さん:この3カ条を全員が納得できるかどうかを大事にしています。
3カ条を満たせる事業を選んでいくと、必然的に1つのチームになるし、目的も明確になると考えています。
同社には「ゲルテントの実物を目にしたい」という声が届いており、その声に応えるべく、神奈川県葉山町に「ゲルオフィス」を設置する予定だという。
また、今後は、テントのみならず、アメリカやヨーロッパに浸透しつつあるユルト(別荘型ゲル)や、カシミアやウールを使ったマットレスやウェア、ゲルサウナ、モンゴルのでの遊牧民キャンプ事業を進めていくそうだ。
様々なバックグラウンドを持つメンバーが同じビジョンのもとに集まり、さらに仲間を増やしながら事業を展開しているEifer。多様な考えや文化が混ざり合い、これからどのような商品やサービスを作り上げていくのか、楽しみだ。
出典元:Eifer
出典元:ゲルテント
出典元:GREEN FUNDING/ゲルテント
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