HOMEインタビュー 枯れかけた観葉植物を再生し「リボーンプランツ」として販売--老舗植物店RENに聞く、新しい発想の生み出し方

枯れかけた観葉植物を再生し「リボーンプランツ」として販売--老舗植物店RENに聞く、新しい発想の生み出し方

長澤まき

2020/09/22(最終更新日:2020/09/22)


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提供:東京生花

1919年(大正8年)創業の老舗植物店・東京生花株式会社の観葉植物専門店「REN」は9月、枯れかけた観葉植物を手間をかけて美しく再生した「リボーンプランツ」の展示販売を開始した。

元気がなくなってしまったり、不要になってしまった観葉植物は一般的に、ごみとして処分されるケースがほとんどだ。しかし、RENではそれを下取りして再生させ、新しい持ち主ににつなぐ。

観葉植物との新しい関係を提案するビジネスモデルをどのように生み出したのか?REN Manager・プランツケアマイスターの山田聖貴さんに、時代に合わせた事業展開と新しい発想の生み出し方について取材した。

提供:東京生花

下取り・再生し、新たな持ち主につなぐ

リボーンプランツは、様々な事情から不要になってしまった観葉植物を下取りし、再生させた、新しい植物との関係。再生させた植物を、新たな持ち主のもとへ繋げることで、愛着ある植物の生命を守り、美しく育む。

下取りに出した側は、新たな植物を購入する際に、その下取り額分を“買い替え割引”として購入代金の一部に充てることができる。

提供:東京生花

アフターケアの1つとして誕生

山田さんは東京都江戸川区生まれ。東京の中で最も園芸や盆栽が盛んな地域のひとつとして有名な鹿骨周辺で幼少期を過ごし、自宅や庭で様々な植物の栽培に慣れ親しんだ。

学生時代はグラフィックデザインを専門に学び、デザイン全般への造詣を深め、2012年に同社に入社し、2017年にRENの店長に着任。プランツケアのスペシャリストとして広く信頼されている存在だという。

-----「観葉植物を再生させて販売する」というアイデアは、どのように発案したのですか?

山田さん:植物とのサステナブルな暮らしをサポートする「プランツケア」という専門店ならではのアフターサービスを行っていることを起点とし、それを運用していく中で「自分ではもう育てる事ができないが、廃棄するのは忍びない」という相談をうける事が増えてきました。

なんとかその課題を解決できないか考える中で、当店で下取り再生し再販するアイデアに辿りつきました。

提供:東京生花/山田聖貴さん

既存の管理方法を全て見直し、植物を再生

再生・復活した植物たちは、時間を重ねたことで、より個性的な表情を見せてくれるという。

-----リボーンプランツを実現させるにあたり、どのように動きましたか?

山田さん:再生技術を高めるために、既存の管理方法を全て見直し改良しました。

具体的には、再生専用の温室を作ったり、薬剤や化学肥料に頼らないオーガニックな病害虫対策などの研究です。

-----大変だったことは?また、それをどのように乗り越えましたか?

山田さん:最も苦労したのは土壌改良です。数年かけて数多くの研究機関から学び、自然発酵の乳酸菌を主体とした微生物資材を植え替え時に施用する方法に辿り着きました。

多様性に富んだ土壌微生物が活性化することではじめて植物は健康に成長できます。そのため、微生物の食料となる有機物を多く含んだ栄養豊富な土を独自配合し使用しています。

巷では利便性に優れる無機物主体の人工用土が人気ですが、RENではあえて人工用土を使わないのはそのためです。

提供:東京生花

植物とのサステナブルな関係を継続させる

RENは、創業1919年の老舗植物店の新たな旗艦店として2005年に誕生。人の業が前に出すぎず、植物がより良くあるように導く「活ける」という概念を最も大切にしており、社会と寄り添う植物の最適化を追求している。

2011年には、植物店として史上初めてグッドデザイン賞を受賞した。

-----観葉植物という昔からある商材を、時代に合わせてどのように変化させて、事業を展開していますか?

山田さん:植物の受容のされ方はこの30年くらいで変化してきています。

かつてはインテリアの一部でしたが、最近は家族としての役割を期待されている場合も。愛着の湧く存在としての変化が起き、当店では“プランツケア”というアフターサービスに重点を置いたことが、植物事業のベースになっています。

具体的には、ただ売って終わりなのではなく、購入後もお客様が安心して植物とのサステナブルな関係を続けていくために、サポート体制を強化しています。

これからの植物店として、きちんとアフターケアを担うことは事業のパーパスでもあります。

提供:東京生花

業界外の流行・技術を素早く取り込み展開

-----新しい発想・展開を生み出すために、大切にしていることや心がけていることは?仕事への向き合い方・考え方を聞かせてください。

山田さん:植物は人の暮らしそのものに直結していますので、現代の人々の暮らしに寄り添い、ライフスタイルに常に敏感である必要があります。

植物業界の視点だけでなく、それ以外の流行や新しいテクノロジー、サービスをいち早く取り込むように心がけています。

山田さんは、リボーンプランツをはじめとする自分が手掛けている仕事は、RENが提案する「植物との共存」を目指す、人により良く、植物により良くある姿だと考えているという。

植物を商品としての扱うのではなく、パートナーとして啓蒙し、この考え方が未来のスタンダードになるよう植物業界を先導して行きたいと考えおります。

提供:東京生花

時代に合わせて、植物と人の関係を柔軟に進化させているREN。昔からあるアイテムでも、その時々に応じた人や社会との新しい関係性をつくり出すことで、これまでにはなかった可能性を引き出す。

東京・三田にあるREN店舗では9月17日(木)から12月22日(火)まで、リボーンプランツを一堂に集めた展示販売会「Reborn plants展-植物の持続可能性-」を開催している。

出典元:REN
出典元:REN/Reborn plants展-植物の持続可能性-

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