株式会社X Asiaは9月1日(火)、友人や家族と一緒に購入することで、商品をお得に入手できるシェア買いアプリ「KAUCHE(カウシェ)」をリリースした。
「この商品、どう?」「一緒に買おうよ!」といったコミュニケーションを、オンラインで実現するショッピングアプリだ。
同社代表取締役の門奈剣平(もんな けんぺい)さんによれば、このアプリリリースを目標に掲げたのは6月末だったという。
2カ月という短期間でリリースが実現できた秘訣とは?スピーディーな事業化のコツについて、門奈さんを取材した。
流通の停滞にショックを受け起業
門奈さんは、1991年生まれの28歳。日本人の父親と中国人の母親を持つ日中ハーフで、2007年まで中国・上海で生まれ育った。
2012年、慶應義塾大学在学中に、インターネット総合旅行代理店の株式会社Loco Partnersに、2人目のメンバーとしてインターン入社。シード前からM&A後のPMIまでを経験した。
宿泊予約サイト「Relux」海外事業立ち上げから責任者を務め、2017年に中国子会社を設立した際には支社長に就任。海外担当執行役員も兼任し、年間取扱高50億円の大幅な事業グロースに貢献してきたという。
コロナ禍では、仕入れを控えざるを得ない卸売市場や大量にモノが廃棄されている日本の現状を目の当たりにし、絶望感に駆られたという門奈さん。
しかし、同じくコロナ禍にある中国では状況が異なっていることに気が付いたそうだ。
世界で最もEC化が進んでいるといわれる中国では、様々な販売手段が確立していることから、休業中のお店の販売員もライブコマースで接客販売を行うなど、オフラインに代わる他の手段で販売を続けることができていたという。
このことがきっかけとなり門奈さんは、世の中に新しいショッピング体験をつくるべく今年4月に起業。中国のECプラットフォーム「拼多多(Pinduoduo)」に着想を得た「カウシェ」を開発・リリースした。
日常食品と全国の名産品をメインに販売
「拼多多」は、友人等と共同購入することによって、商品を割引価格で手に入れられる共同購入型ソーシャルEC。「シェア買い」によってお得に商品を購入できることや、ログインボーナスやミニゲームといったゲーミフィケーションによるエンタメ性が人気に拍車をかけているそうだ。
ー中国のビジネスモデルから着想を得たということですが、日本で広めるために意識されたことや敢えて変えたところなどがあれば教えていただけますでしょうか。
門奈さん:「拼多多」では低単価のトイレットペーパーなどの売れ行きが良いのですが、日本と中国では送料に大きな開きがあり、日本では小ロットの低単価商品では送料の比重が高くなってしまうため、お客さまにお得に提供することは難しいのです。
そのため、比較的大ロットでお得な日常的に消費される食品と、少し単価の高い非日常的な全国の名産品を揃えることにしました。
必要最低限のなかでも、こだわりからは手を抜かない
門奈さんは、今年6月末に仲間たちと「9月1日にサービスを出そう」と決め、実際に目標通りの日程でリリースを実現させた。
そのスピーディーな事業化の秘訣は一体どこにあったのだろうか。
門奈さん:我々が検証したいことを実現するために最低限必要な機能は何かを定義した上で、機能を徹底的に引き算して、リリースしました。
本当は追加したかった機能もたくさんありましたが、どれがマストの機能かはかなり議論をしました。
その中で、「シェア買い」という日本でも新しい買い物方法をまずは体験してもらうために最低限必要な機能に絞ってリリースしたのです。
とにかくサービスを市場に出さなければ自分たちの価値はゼロであるということを意識していたと、門奈さんは振り返る。
しかしこだわりたい部分に対しては、手を抜くことはしなかった。
シェア買い成功画面の楽しさの表現などにはこだわり、自分たちが届けたい「楽しいショッピング体験」の軸は守りつつ、開発を進めていったそうだ。
今後は営業人材も採用し総合ECを目指す
ーリリースまでに一番困難だったことは何ですか?また、それをどのようにして乗り越えましたか?
門奈さん:私と役員2人の3人体制での立ち上げだったため、シンプルに工数が足りませんでした。
一方で、とにかくサービスを市場に出さなければ我々の価値はゼロであるということを意識していたため、副業中心の組織作りに挑戦することに決めました。
結果として大企業で15年戦略営業企画をやっている方など、15人ほどの、本業でも大活躍されている超優秀な方たちがジョイン。
コロナ時代のスタートアップ組織らしく、一度も直接お会いしてたことがない方も多数いますが、チャットとテレカンでコミュニケーションを取りながら、リリースに大きく貢献していただきました。
現在「カウシェ」では食品を中心に扱っているが、将来的にはコスメや家電、アパレル等も扱う総合ECにしていきたいと門奈さんは展望を語る。
門奈さん:そのため、商品の取り扱いを考える営業メンバーも採用していきたいです。
また、「拼多多」のようなリアル還元型のゲームの導入などを検討しています。
「拼多多」では、果物を育てるゲームで遊ぶと実際に果物がもらえるというようなゲームを導入しているので、我々なりのやり方を探したいと思っています。
まずはサービスを市場に出さなければスタートラインに立つことができないという意識のもと、スピーディーに構想を実現化した同社は、今後私たちに、これからの時代に合った新しいショッピング体験を次々と届けてくれそうだ。
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