株式会社SpinLifeは8月31日(月)、完全食チョコレート「andew」のノンシュガータイプを新発売した。27種類以上の栄養素をバランスよく摂取できる、砂糖不使用・人工甘味料不使用のチョコレートだという。
同社の代表取締役・中村恒星さんは現役の医学生。皮膚病により食べられるものが限られているという患者のために、医師や看護師、栄養士と共同で完全食チョコレートの開発に着手した。同社によればこの取り組みは、世界をみても初の試みだという。
医師を目指す学生でありながら、なぜ起業という道を選んだのだろうか?学生起業のメリットとは何か?中村さんを取材した。
完全食とおいしさの両立目指し
1995年生まれの中村さんは、北海道大学医学部医学科4年生。今年1月に同社を創業した。
「andew」の構想がうまれたのは2019年2月。その後、チョコレートの試作に9カ月ほど時間をかけ、パッケージ制作やECサイトの構築など販売に向けた環境整備を行い、今年5月に完全食チョコレート「andew」をリリース、このたびノンシュガータイプを新発売した。
ー企画から開発、リリースまで、一番困難だったことは何ですか?また、それをどのようにして乗り越えましたか?
中村さん:一番困難だったことは、完全食というコンセプトを維持しつつ、おいしさを追求するところです。
いくら栄養を摂ることができても、おいしくなかったら全く意味がありません。
「andew」には、カカオの他に、アーモンドやチアシード、きな粉などのたくさんの原材料が入っています。
栄養を維持しつつ、おいしいチョコレートとして食べてもらえるように味の調整を何度も繰り返しました。
開発には、札幌のチョコレート専門店「SATURDAYS CHOCOLATE」の協力を得て、何度も議論を重ね、原材料の分量や投入方法を変更しながら試行錯誤を続けた結果、今の「andew」の味に辿りついたのだという。
患者さんを苦しみから救いたいという想いで起業
ーなぜ学生のうちに起業しようと思われたのですか?
中村さん:せっかくの一度きりの人生なので、唯一無二の存在になりたい。
そんな想いがあります。
実は、北海道大学医学部は僕にとって2回目の大学生活です。1度目は薬学部を卒業しました。
2回目の大学生活をまた同じように勉強だけで過ごすのは面白くないなと思い、自分の専門性を活かした分野で積極的に活動しようと思っていました。
そんなときに、「andew」開発のきっかけとなった、表皮水疱症という皮膚難病の患者さんに出会いました。
生まれつき皮膚を保持するタンパク質がつくれないために、皮膚が地滑りのようにめくれてしまうこの病気の患者さんを目の前にして、まだ医師ではない僕は全くの無力でした。
それでも、「医師でなくてもできることはあるはず」と考え、中村さんは食の面からのアプローチを進めようと決意した。
「ポテトチップスを食べるとトゲがついた板を食べているくらい痛い。」その言葉を、その現状を解決したい。そして患者さんを笑顔にしたい。
ただそれだけでした。
そして実現するための手段として、起業を選択しました。
「andew」は5月のリリース以降、3カ月で累計600枚以上を売り上げた。
「皮膚の痛みを気にせず食べられるように」と考えてうまれた完全食チョコレートだが、実際には病気の人以外にも、バランスよく栄養を摂取したい人、スポーツをする人、食が細くなった高齢者や育ち盛りの子どもなど、幅広い人々が楽しめる製品だという。
今回ノンシュガーをリリースしたことで、罪悪感なくチョコレートを食べたいダイエット中の人も楽しむことができるようになったそうだ。
全て自分の責任だからこそ、大きく成長できる
ー学生起業のメリットは何だと思われますか?
中村さん:会社とはなにか。仕事とはなにか。資本主義とはなにか。という問いから正面からぶつかることです。
大学を卒業すれば、ほとんどの人がなにかしらの会社や組織に属して仕事をすることになります。
そして、仕事を中心に日々のスケジュールが回る生活になります。
そこで初めて会社の中で自分はどんな存在なのか、社会の中でどんな存在なのか、資本主義がどういう力学で動いているのか知ることになります。
でも、起業をすればそれに対して、真正面から考えさせられます。代表なので逃げることもできません。
商品開発、販路の設計、資金調達、PR、採用、経理、カスタマーサポートなど全てを自分の責任で決定して、進めていきます。
成功も失敗も、すべて自分の責任。その経験が、学生でありながらもひとりの大人として大きく成長させてくれるのだと中村さんは語る。
もちろん辛いこと、しんどいことも多いですが、喜びや楽しさも大きいです。20代前半でその経験を得られることこそが大きなメリットです。
"優しさの輪"を広げていきたい
中村さんは今後、「andew」を通して"優しさの輪"が広がることを願っているという。
中村さん:「andew」ご購入者のなかには、「病気で食べられない母親に贈りました」「なかなか食べ物が上手に食べられないおじいちゃんと一緒に食べます」「食が細い息子が喜んで食べていました」など大切な誰かを想って、購入してくださる方が多くいらっしゃいます。
チョコレートであることの大きなポイントは、病気を持っていなくても持っていても一緒に食べることができること。
僕たちは、チョコレートを販売しているのではなく、病気という壁によって隔たりができてしまった人と人を繋げる「きっかけ」を届けています。
僕たちが届けたきっかけによって、もっともっとたくさんの人と人が繋がり、そして社会において病気に対する理解が広まっていくお手伝いをしていきたいです。
「学生という勉強中の身であるから何もできない」のではなく、「医師でなくても、今の自分であっても、できることはある」と信じ、実際に行動に移した中村さんの姿は、多くの学生に勇気と励みを与えてくれそうだ。
出典元:andew
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