HOMEインタビュー 防災カタログギフト事業化に挑むスタートアップ代表が、問題意識をかたちにするために大切にしていること

防災カタログギフト事業化に挑むスタートアップ代表が、問題意識をかたちにするために大切にしていること

白井恵里子

2020/09/10(最終更新日:2020/09/10)


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疋田さん(左)泉さん(右)/提供:KOKUA

防災と社会をつなぐハブとして活動するKOKUAは7月~9月にかけ、クラウドファンディングサービス「READYFOR」にて、日本初の防災グッズ専門カタログギフト「LIFE GIFT」の実現に向けたクラウドファンディングを実施した。

当初掲げていた150万円という目標を、プロジェクト公開後24時間で達成。次のステップとして掲げた300万円という目標も達成し、最終的には350万円以上の支援金が集まりプロジェクト成立に至った。

個人の防災意識を高めるということと、それをビジネスとして成り立たせるということを、同時に実現できる新しい発想は、どのようにしてうまれたのだろうか?

学生時代に災害ボランティアで出会い共同創業したという、KOKUA代表取締役の泉 勇作さんと疋田 裕二さんを取材した。

機会・明確化・費用に重点

KOKUAは、個人の防災意識を高める要素を「検討機会の提供」「分かりやすい情報提供」「費用の軽減」の3つと定義。

カタログギフト「LIFE GIFT」では、ギフトを贈る行為が防災に向き合う「機会」を作り出し、防災グッズのみ掲載された紙面により必要情報を「明確化」するとともに、貰い手は自分で「費用」をかけず防災へ取り組むことができるという。

カタログ掲載商品はインテリアにも馴染むデザイン性の高いものにこだわったうえで、突発的な災害の発生時にも瞬時に利用ができる環境づくりに貢献するとしている。

「あなたの幸せがずっと続きますように」という気持ちが、大切な人の防災対策につながる…KOKUAはそんな世界の実現を目指している。

災害ボランティアで出会った2人

泉さんと疋田さんは28歳。2人は大学時代に所属していたNPOのボランティア団体で出会い、東日本大震災の災害救助活動をはじめ、全国各地において最前線で災害ボランティアに取り組んできた。

大学卒業後、それぞれ異なる企業に入社し仕事をしていたが、「もっと社会のためにできることはないか」「防災について前向きに取り組む社会が作れないだろうか」といった想いから、ともに防災カタログギフトのプロジェクトに着手することにしたそうだ。

ー「LIFE GIFT」プロジェクトの構想からクラウドファンディング実施までの道のりを、簡単にご説明いただけますでしょうか?

泉さん:2018年に防災を広めるための事業を立ち上げようと考え、いろいろな事業案を検討していました。

防災×研修、防災×介護、防災×メディアなど、何ができるのか、何が必要なのかを、検討しては調査を行い、また次を考えるなど、紆余曲折してきました。

その途中、「防災を広げる」ことよりも「いかに事業として成り立たせるか」に着目しすぎてしまい、軸がぶれてしまった時期もあったという。

そんな時、大切な人の誕生日を祝う機会があり、自然と防災グッズを選んでお渡ししたところ、すごく喜んでくださったんです。

これってすごく素敵なことだなと思いましたし、「この文化を生み出すことができれば防災が広がる」と思ったことが、今の事業構想のスタートでした。

しかし、泉さんたちは、すべて自分たちの持ち出し資金で運営していたため、プロジェクトの実現に必要な資金が足りないという壁に直面。資金調達の方法を考えた結果、「そもそもこの商品が共感してもらえるのかを知るためにも、クラウドファンディングで募集しよう」という結論に至り、実施に踏み切ったという。

KOKUAメンバー

社会課題をいかにポジティブに転換するか

KOKUAでは、泉さんは事業責任者として全体進捗管理・方針策定・意思決定を行い、疋田さんはサービス設計や技術系全般を担当。それぞれ得意分野を活かしながら、他のメンバーも巻き込みプロジェクトを推進し、9月には法人化を予定しているという。

ーボランティア活動などで抱いた問題意識を、事業(ビジネス)としてかたちにするため、意識してきたことや大切にしていることはありますか?

泉さん:防災という社会課題を、いかにポジティブに転換するかということを、常に考えてきました。

防災はもちろん大切なことですが、大切だと思っていてもすぐに行動に起こしづらいという現状もあります。

それは、とっつきにくさや、ネガティブなことを考えたくない、何をしていいかわからないなどの、マイナスイメージが大きな要因としてあると考えています。

そのため、防災や災害という概念を、いかにしてポジティブに捉えられる仕組みやモデル、デザインを生み出すのかを考えて進めてきました。

提供:KOKUA

疋田さん:関わる人すべてが心地よくなれる設計をすることが重要だと考えています。

私たちの商品を買った人やプレゼントをもらった人が心地よくなれることは前提として、メーカーさんや卸売業者さん、また共感してくださっているスポンサーさんや、我々メンバーも含めて、心地よくこの事業に携われることが重要だと考えています。

それはボランティア活動でも同じで、誰かが我慢や損をする仕組みになっていると、その活動はいずれ継続ができなくなります。

私たちはそんな活動を見てきたからこそ、関わるすべての人が心地よくなれる仕組みを設計していきたいと思っています。

足を運びヒントを得る、挫折や失敗も正しいと信じる

ー「漠然とした問題意識があっても、なかなか具体的な行動に移せない」といった葛藤を抱くビジネスパーソンに、アドバイスがあればお願いします。

泉さん:そもそも、私たちは、まだ何も成していないというのが前提にはありますが、行動を起こすという意味ですと、まずは足を運んでみる、当事者に聞いてみるということが重要だと考えています。

実際に話を聞いたり、構想中のサービスのフィードバックをもらったりすると、具現化するまでのイメージがグッと湧いてきたり、何らかのヒントを得られると思っています。

実際に泉さんも、今回の事業に関して様々なモデルを構想していくなかで、関連する人や当事者に何度も話を聞きに行ったという。

彼は、その体験や経験があったからこそ、今の事業にたどり着くことができたと振り返る。

疋田さん:自分の選んだ道が最適だと思うことが大切だと考えています。

時間を戻すことはできませんので、過去の自分の選択が正しかったのかどうかなんて考えても仕方がないですし、これからどの道を選択すれば正しいかなんて、答えは誰も分かるはずがありません。

私もまだまだ努力中ですが、小さいことでも正しいと思って行動していれば、後から振り返った時に、正しい道になっていると思っています。

疋田さんは、例え途中で大きな挫折や失敗をすることになっても、「時間が経てばそれさえも正しかったと思える時が来る」と思うようにしているそうだ。

防災をポジティブに進めることができる仕組みや空間

ギフトを通して「生活に溶け込むようなオシャレな防災」と「相手への想いが防災対策にリンクする仕組み」を両立することで、これまでの防災のイメージを変えていきたいとするKOKUAの取り組みは、今回のクラウドファンディングプロジェクトで多くの賛同者を得た。

「LIFE GIFT」は10月~11月に発売予定となっており、価格は1万3000円程度を予定。掲載商品数は15~20商品だという。

今後は「LIFE GIFT」を1人でも多くの人に届けるために注力すると同時に、防災をポジティブに進めることができる仕組みや空間をどんどんリリースしていきたいと、2人は展望を語る。

感染症の拡大や自然災害の多発などで日常生活に不安を抱える人が多いなか、「備えあれば憂いなし」を気軽にポジティブに、そして心地よく実践できるKOKUAによる仕組みづくりは、私たちの社会を少しずつ、しかし確実に変えていってくれるのではないだろうか。

出典元:KOKUA
出典元:READYFOR/「 防災をギフトで広めたい」カタログギフトで防災を身近に

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