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ビジネスを始めるチャンスは無限…ヴィーガンフードラップ専門ブランド代表に聞く、ビジョン実現に大切な考え

長澤まき

2020/09/06(最終更新日:2020/09/06)


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提供:Classic Organics

自然食品ブランド「NATURE THINGS」を運営するClassic Organicsは8月20日(木)、100%植物性原料の食品用エコラップ専門ブランド「Earth Wrap(アースラップ)」をローンチした。

一般的なエコラップの多くが動物性原料であるミツロウを使用しているのに対し、同商品は中米に自生するキャンデリラ草が分泌するワックスをはじめ、100%植物性のものだけを使用した、ヴィーガンタイプのエコラップだ。

国内先駆けとなるエナジーバーの自然食品ブランドとして、全国100店舗以上の小売店に納入実績のあるClassic Organicsが、なぜキッチン雑貨という新たな分野に乗り出したのか?

代表の脇光範(わき みつのり)さんに、事業を次のステップに進化させた経緯や原動力、ビジョンを実現させるために大切にしている考えについて取材した。

オーストラリアで食の豊かさに衝撃を受ける

脇さんは三重県南部の紀北町で生まれ育ち、名古屋の中京大学に進学。英語系の学科に在籍し、在学中に海外短期研修や1年間のオーストラリア留学を経験した。

卒業後は、インターネット関係の会社に半年ほど勤務した後、飲食店や地元の水産加工メーカーなど、一貫して“食”に関わる仕事に従事。2016年初頭に個人事業としてClassic Organicsを立ち上げた。

-----Classic Organicsを立ち上げた経緯を教えてください。

脇さん:転機が訪れたのは、水産加工メーカーに勤めて3年が経った頃です。

ストレスが原因で体調を崩し、手術をすることになったのですが、それをきっかけに食と身体のことを学ぶようになりました。すると自然と、これまでは“商材”でしかなかった食品の、より本質的・根源的な部分に目が向くようになりました。

「どういったものが誰によってどこでどう作られて、誰の口に入るのか…」ということに向き合い始めたことで、ひたすら効率と価格を重視する国内の流通システムに違和感を覚えるようになりました。

そんな中、30歳頃に妻が突然「海外で暮らしたい」と言い始め、「じゃあ一緒に行こう」「1年間好きなことをしよう」と決め、オーストラリアに行き、念願だったバリスタの仕事を得ることができました。

この1年間の滞在を通じて自分の中に何よりもインパクトを残したものは、オーストラリアの“食の豊かさ”と“多様性”でした。

オーストラリアは、エコやオーガニックという持続可能性の実践における先進国の1つ。街中にはオーガニック食品店も多く、質の高い食に気軽にアクセスできる環境が整っており、日本では経験できなかった暮らしを味わうことができたという。

提供:Classic Organics/代表 脇光範さん

「良いものがないなら、自分で作る」と帰国

中でも脇さんが注目したのは「エナジーバー」だった。

脇さん:日本ではコンビニやドラッグストアに売っている安価な量産品がほとんどで、もちろん添加物や砂糖などがふんだんに使われています。

それに対し、オーストラリアには、同じアイテムとは思えないほどナチュラルで体にいい素材だけでできたものがたくさんあったのです。

バリスタの仕事は朝が早く、5時に起きて店に向かう途中にいつもエナジーバーを食べていた脇さんは、「この良さを日本でも伝えたい」と思うようになったそうだ。

脇さん:もともと、日本にいる頃に危機感を持ち始めたのは、食品の“超加工食品化”と“均一化”でした。大量生産と全国流通を進めていくと、必ずこの方向性に向かいます。しかし、それが食の本来の価値や土地ならではの食材などを生産・消費する多様性を奪っている…。そんな食が面白いはずがありません。

オーストラリアでの経験の中で、エナジーバーにはその課題に切り込んでいける力があると感じました。また、単純に、忙しい日本での生活において役に立てるアイテムだと思いました。

しかし、海外のエナジーバーは日本人の口には合わないものも多く、単純に輸入すれば良いというものではないと思っていたある時、「良いものがないのであれば、自分が作ればいい。日本人に受け入れられる味のエナジーバーを作れば、食の大切さを伝えることができる」と気づきました。

そうして、日本に帰ってエナジーバーのメーカーを立ち上げようと決心。

オーストラリアにいる間にできる限りのことを吸収して帰ろうと、目に付くエナジーバーを買いあさっては研究する日々を過ごしたという。

提供:Classic Organics

次世代のことを考え、新たなステップへ

2016年に帰国し、すぐに立ち上げに着手。水産加工メーカーで働いていた際の経験と知識があったため、食品の中身をつくることに関しては、さほど問題なく進めることができたという。

そうして立ち上げた「NATURE THING」は国内先駆けとなるエナジーバーブランドとして、全国100店舗以上の小売店に納入実績があるまで成長した。

そんな脇さんが次のステップとして選んだのが、ヴィーガンフードラップだ。

-----食品→キッチンアイテム(ラップ)と、事業を次のステップに進化させることを決めた経緯を教えてください。

脇さん:エナジーバーブランド「NATURE THING」を運営して4年が経ちましたが、活動の中で出会った生産者の方や他のメーカーの方々との関わりの中で視野が広がり、食について言うと「素材の生産の段階から知っていたい、関わっていたい」と思うようになりました。

すると、どうしても出てくるのは自然や環境との関わりです。また、私自身がアウトドアアクティビティが好きで、それを通じて自然の中に身を置いているうちに、現代のこの自然環境の危うさに気付かされました。そして、自分を含めて、いかにこの社会がそのことに関心を払っていないのかにも気づきました。

そんな中、2019年に子どもが生まれ、我が子が育つ環境のことを考えた時に、主に自然環境において「次の世代に責任を持って残していける社会を作りたい」と思うようになったという。

そういったことにアクションを起こしたいと思っていた中で、オーストラリアにいた時に使っていたエコラップのことを思い出しました。

そうして、「何かを起こしたい時に自分にできることは、プロダクトをツールとして物事を伝えることだ」というこれまでの経験から、「今回も、このEarth Wrapを通じて、この課題を世の中に伝えていきたい」と思い、新しくブランドを立ち上げることにしました。

ジャンルは違うが、ベースにつながり

-----全くの新ジャンルへの挑戦は大変ではなかったですか?苦労した点と、それをどう乗り越えたかを教えてください。

脇さん:今回の商品はジャンルでいうとキッチン雑貨になりますが、“食“に関わるという点では共通しています。どちらの商品も、根底にある想いというのは自分の中から生まれているものですので、思想的にも繋がっています。

ものづくりという観点で言うと、ゼロからのスタートですので、初めは全く上手くいきませんでした。

商品の構成は大きく分けると“布”と“コーティング剤”に分かれるのですが、それぞれの特性や組み合わせと言う点でもベストの配合を見つけることはとても苦労しました。それぞれの原料メーカーさんにお話を伺っても、エコラップの原料としては使用したことがない会社さんばかりで、「原料の基本的な特性はわかっても、エコラップの用途としての使い方はわからない」とみなさんに言われました。

そこはもう試行錯誤の連続で、おそらく100通り以上のレシピテストを経て、ようやくたどり着きました。

行動の原動力は、当事者意識と危機感

-----新しいジャンルに挑戦するバイタリティーの源について教えてください。何が行動を後押ししたのですか?

脇さん:行動を起こす原動力は当事者意識と危機感です。

もともとエナジーバーを始めたのも、“日本の食の質の低下を見過ごせなくて、自分にできることを始めよう”という中から生まれたものでした。また、エコラップについては、“このまま世界が同じ生活様式・生活態度を続けていくことはできないという状況を伝えたい”という想いで始めました。

自分にとって楽しさというのは行動の中で感じるものであって、純粋にそれを目的にしているわけではないのかなと思います。

-----ビジョンを実現させるためには、どのような考えや行動が大切だと思いますか?事業を展開するにあたっての考え方を聞かせてください。

脇さん:メンタル面で言うと、難しく考えないことですかね(笑)。あとは、小さくても自分にできることをやるだけで社会の役に立てるのだと言う自負ですね。

自分はテクノロジーに関する先進的な知識や、特定の学術的専門性も持ち合わせていません。でも、ことを起こす際に必ずしも新しい技術が必要になるわけではないのです。

メンタルの準備ができたら次は実行ですが、正直、自分のようなスモールビジネスを営むにあたっては、さほど大きな資本を必要としません。そもそも、投資家から億単位の資金を集めるような手法は誰にでもできることではありません。もちろん自分にとっても。

ですが、実は現代はビジネスを始めるチャンスは無限にあります。OEM先や協力企業を上手く見つければ、初期投資や固定費も最小限で済ませられます。

“起業にはお金がかかるものだ”と言う先入観をなくしてみることで、ハードルもかなり下がるのではないでしょうか。

自然や環境、未来への思いを根幹に、異なるジャンルにも積極的に事業を展開していく脇さん。

同じ思いから生まれた異なるジャンルのアイテムがそれぞれ広がっていくことで、どのような社会を作り上げていくのか、楽しみだ。

出典元:Earth Wrap

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