「最短で成長したい」「なるべく早く経営層にタッチしたい」…起業を志す人や、成長意欲の高い人は、このような気持ちで日々仕事に取り組んでいるのではないだろうか。
2016年にバレットグループ株式会社へ新卒入社した桜井悠二朗さんも、そのうちの一人だ。彼は今年7月、入社5年目にして、同社の執行役員兼人事部長に就任した。
同社は、2020年の目標に「売上約160億円の達成」を掲げるITベンチャー企業。平均年齢30歳の約175人が所属し、広告・人材・EC・システムインテグレーションといった事業を展開している。
彼はこれまで20人以上のチームを牽引した経験を有するが、さらにこれからは組織全体のマネジメントに携わることになる。
新しく担う執行役員という役職の仕事を、彼はどのようにして乗り越えていくのだろうか。今後の展望も含め、桜井さんを取材した。
素直な心のうちを話せた面接で入社を決意
桜井さんは大学卒業後の2016年、新卒第一期生として同社に入社。
広告事業部にて営業・広告制作・運用など幅広い領域を学んだ後、広告運用のコンサルティングを行う新チームを発足し、20人以上の組織を牽引した。その後、仙台支社の立ち上げを経て、最年少ゼネラルマネジャーへ就任。
今年7月、執行役員兼人事部長となった。
ー入社を決めた理由を教えてください。
入社を決めた理由としては、「この経営陣のもとで勉強したい・一緒に働きたい」という思いが最も強く持てたのが、バレットグループだったからでした。
当時の自分は、「最短で成長したい、市場価値を高めたい」という思いで就職活動をしていました。
と言っても、その背景にあったのは「格好つけたい・モテたい」といった不純とも言えるシンプルな動機でしたが。
興味があった業界や業種があったわけでもなく、特にやりたいことが明確にあったわけでもありませんでしたが、唯一あったのは「経営者って格好いい」という漠然とした思いと、20代最短でその領域を目指したいという目標だけした。
自分の胸の内にある漠然とした想いをストレートに表現しても就職活動は上手くいかないと想い、桜井さんは、取ってつけたような知識やイメージでその業界・企業への志望動機を何とか捻出するという面接を繰り返していたという。
そのため、いくらそれで評価していただけようともモヤモヤが消えない、という就活になってしまっていました。こんな状況や思いに共感してくれる学生は、きっと今もたくさんいるのではないでしょうか?
このままでは内定はもらえても入社後に後悔する、という思いが心の中にずっとありました。
そんな自分が、初めて胸の内を正直に打ち明けられたのが同社の面接だったと、桜井さんは振り返る。
「この人たちだったら全て曝け出しても大丈夫」「会社の風土・マインド・人間性がマッチするってこういうことなんだな」という正体不明の、しかし確実な安心感があったそうだ。
偽りなく素直な胸中を話せた上で、それを認め評価してもらえたことで、業界や事業内容で志望する会社を決める以前に、「誰とやるか」が最重要なのだと確信した瞬間でもあったという。
桜井さん(右)/提供:バレットグループ株式会社
素直さ・胆力・自走力がキーワード
ー入社以降、意識していること・大切にしていることは何ですか?
「素直さ・胆力・自走力」というキーワードです。
当社の採用基準は今でもこの言葉がベースになっています。
当社に限らずだと思いますが、我々のようなベンチャー企業に入社したからといって、魔法のように華麗に成長していくなんてことはあり得ません。
誰しも泥臭く歯を食いしばって、色んなものを必死に乗り越えて成長していきます。
ベンチャーのような環境が整っていない状況では、失敗を外部要因に他責してしまいがちではありますが、自分の非力さを認められる「素直さ」を持って成長できること、壁に当たっても可能性を追求し乗り越えられる「胆力」を持つことは、日々大切にしてきました。
桜井さんによれば、同社は「機会・経験が人を育てる」という考え方を持っているという。
実力のある人にトップダウンで何かを任せるのではなく、手を挙げた人・情熱がある人に任せるという社風のため、受け身で待つのではなく自らチャンスを獲りにいく「自走力」がとても重要となるそうだ。
ここの貪欲さは入社以前のインターン生の時代から意識し続けてきました。
新卒入社から半年後に地方拠点の立ち上げ責任者を任せていただけたのは、臆せずに手を挙げ続けられたからこそだと思います。
当時の経験が今の自分の礎になっていますので、あの状況で自分に任せてくれた会社には感謝しかありません。
一方で、その貪欲さと同じくらい「誠実であれ、謙虚であれ」という精神も大切にしているのが当社の強みだと思っています。
どんなに実績を出そうが役職が上がろうが、この原点を忘れないようにするのも常に意識しています。
自らが望む経験だからこそ乗り越えられた
桜井さんは入社後間もなく、20人以上のチームを牽引する仕事に従事。マネジメント初心者として複数人を引っ張る仕事を、どのようにして乗り越えていったのだろうか。
ー未経験でありながら20人以上を牽引する仕事に困難はありませんでしたか?
マネジメント初心者の自分が組織を立ち上げて人を牽引していくのはもちろん困難だらけでした。
皆が本気で会社に向き合っているからこそですが、人と人が集まっていれば予期せぬトラブルが毎週のように起こります。
日々刻々と変わる状況にマニュアルなんてないですし、メンバーそれぞれが違う人生を歩んで集まってきている以上、マネジメントの最適解はメンバーの数だけ存在します。
困難かつ「面倒」な役回りだったと当時を振り返る桜井さんに、なぜこの仕事を乗り越えられたのかを問うと、それは自らが望んだ機会であり、経験だったからだという。
20代最短で経営層にタッチすることが自分の本心から出た目標であり、そこに至るための「機会・経験」を自らが望んでいたからです。
困難な状況であるが故にその先には大きな果実が待っており、そこに向けて突き進むことは自分にとって大いにわくわくするものでした。
そのポジションを自分が望んでいなかったとすると、決して乗り越えられなかったと思います。
「努力は夢中に勝てない」という言葉は社内でも役員がよく話してくれるのですが、まさにその言葉の通りだと思っています。
努力にはモチベーションが必要ですが、夢中になっていればモチベーションに左右されることもなく突き進むことができます。
社会には様々な形の困難がありますが、自分が今何を求めているのか本心を整理して、その上で自分がエネルギーを向けるべき困難を見定め選択することが鍵なのかなと思っています。
会社の「らしさ」を死守・追及していきたい
今回の執行役員兼人事部長就任については、プレッシャーはありつつも、「これまで目指してきた道の途中に立てていると思うと、それよりも感謝の気持ちの方が強い」と話す桜井さん。ここまで育ててもらったことへの恩返しをしなければという責任も強く感じているという。
ー今後はどのようなことに挑戦したいと思われますか?目標、展望をお聞かせください。
経営戦略、とりわけ「数字」にコミットできる人事部を目指していきます。
当社の成長性を支えているのは、持っているプロダクトや事業内容それ自体の優位性以上に、それをリードしている「人」の強さが根底にあると思っています。
不確実性の高い世界の中で、時代の変化を捉え新しい価値を生み出し続けられる人財です。
そういったコアメンバーをいかに戦略的に輩出していけるか、それが当社の経営戦略に対して我々がコミットできる領域、しなければいけない領域だと考えています。
これだけ申し上げると合理的で無機質な人事施策をイメージされてしまうかもしれませんが、目指すのはむしろ逆です。一見非合理的で無駄に感じる部分にこそ宿る「バレットらしさ」を、今後も死守・追求していくのも人事のミッションです。
与えられた仕事をこなすのではなく、自らが手を挙げることでその先の困難も乗り越えられるという桜井さんの前向きな姿勢は、執行役員としての重責を乗り越えていくなかでも役立つことだろう。
彼の今後の活躍から、目が離せない。
【関連記事】
700人の村がひとつのホテルに。山梨県の分散型ホテルを手掛ける代表から学ぶコミュニティ・ビジネスの極意とは
古民家再生による地方創生を手掛ける株式会社EDGEは8月7日(金)、「700人の村がひとつのホテルに。」をコンセプトにした山梨県小菅村(こすげむら)の分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の...
全国の花屋のデジタルレスキューに立ち上がる!「with Flowers Project」発起人に聞く、即席チームワークのつくりかた
花き業界は、新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受け売り上げ低迷などの悩みを抱える業界のひとつだ。そこで、深刻な現状を乗り越えるべく奮闘する花屋たちへ、「デジタルレスキュー」という救いの手を差し伸...
前職の経験を活かし新規広告サービス事業で活躍する若手社員に聞く、新規事業の営業において大切なこと
一口で「営業」と言っても、色々なかたちがある。顧客と対面しての営業、昨今急増しているというインサイドセールス、そして長年愛されている商品・サービスを営業する仕事もあれば、新しく生まれた商品・サー...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう