フードシェアリングサービス「TABETE」を展開する株式会社コークッキングは8月、JR東日本スタートアップなどを引受先とした資金調達を実施した。
「TABETE」は、閉店間際など、まだ美味しく食べられるのに廃棄の危機に面している食事を“食べ手”とつなぎ、最後まで売り切ることを応援する社会派のプラットフォーム。
食品ロス削減に向けた協定を日本各地の自治体と続々と締結しており、また、今年7月には内閣府主催の「日本オープンイノベーション大賞」で環境大臣賞を受賞するなど、大きな注目を集めている。
今回の資金調達により、サービス開発の強化やTABETE展開エリアを拡大へ。また、駅ナカをはじめとする商業施設において展開している、閉店までに販売しきれなかった食品を同社が買い取りその施設の従業員に向けて代行販売する「TABETEレスキューデリ」を拡大させていくという。
なぜ食品ロス発生を水際で防ぐ事業を始め、どのようにして事業を急成長させているのか?川越一磨代表取締役CEOに取材した。
料理人修行→飲食店運営→起業
川越代表は1991年生まれの、現在29歳。
大学在学中に和食料理店で料理人の修行をし、卒業後は飲食店の店舗運営などの経験を経て、2015年に富士吉田に移住して同社を創業。2017年より、フードロスに特化したシェアリングサービス「TABETE」の事業化に着手した。
-----最初から起業を目指して、飲食店でキャリアを積んできたのですか?
川越代表:最初から起業を目指していたかと言われれば、
決してそんなことはありません。
自分でいつか事業をやるかもしれないとは思っていましたが、 明確なキャリアプランを考えた上で、 ファーストキャリアを選択したということではありません。
-----起業を志した経緯は?また、これまでのキャリアをどのように活かして起業しましたか?
川越代表:料理の可能性を最大化していくことにとてもワクワクを覚え、
多くの人にその価値を広めていきたいという想いがありました。
共同創業者の伊作と様々なディスカッションをしていく中で、 ビジネスとして成立するかもしれないと感じ、 山梨のビジネスプランコンテストに参加して4位入賞。応援してくれる様々な方のおかげで起業に至りました。
デンマークのサービスにヒントを得る
-----「TABETE」事業を始めるにあたり、どのように動きましたか?事業化までの道のりを教えてください。
川越代表:デンマークに「Too Good To Go」
というフードシェアリングサービスがあるということを知りまし た。 飲食店でまだ食べられる食事を大量に捨てた経験がフラッシュバッ
クし、 日本でもこのようなサービスを立ち上げようと、国内における類似サ ービスのリサーチを始めました。 そして企画書をまとめ、
TABETEのアイデアを様々な場でプレゼンテーションしまし た。 日本に類似サービスがほぼ存在していなかったので、
まずはスモールビジネスとしてデットで資金調達をして、 徐々にエクイティでの資金調達を始め、スタートアップのモデル に変更していきました。
事業拡大は、仮説検証の連続
「TABETE」は2017年に事業を開始して以降、金沢市や横浜市、大阪市、福岡市など、複数の地方自治体と続々と連携を締結。また様々な企業や個人投資家から資金調達を実施し、急成長・拡大している。
-----どのようにして事業を拡大させてきたのですか?
川越代表:正直に言うと、ひたすら仮説検証の連続です。
未だにそのフェーズを抜けられていませんが、 日本はまだまだESG投資やSDGsの取組への理解が低い分、 食品ロスを必要悪と捉えている方が多いです。
環境配慮や持続可能な社会とビジネスを一体のものとして考える風 潮が強くなればなるほど、 我々の拡大スピードがさらに上がってくると思っています。
資金調達が上手くいかず、給与ストップも
-----「TABETE」事業を展開するにあたって、困難はありましたか?また、それをどのように乗り越えましたか?
川越代表:たくさんありますが、資金調達がうまくいかずに社員の給与を止めざるを得なかった時期は、本当に辛かったです。
社員メンバーの理解もあり、なんとか支え合って生き延びてきましたが、チームのメンバーやステークホルダーの皆さんのお力添えがなければ、今の僕たちは存在していないと思います。
誰も損をしない“フェアな関係”を築く
-----急成長するスタートアップに必要なものは、何だと思いますか?
川越代表:我々のケースが急成長かはわかりませんが、
スタートアップや起業家に必要なものは、「 最後の最後まで自分を信じてあげること」と「 絶対に諦めない圧倒的パッション」だと思っています。
会社や事業の終焉は、 経営者が「もうやめる」と意思決定しない限りは訪れません。
粘り強く諦めず、自分を信じて、 熱い気持ちに薪を焚べ続けることができるか、 これがとても大切なことだと考えています。
-----仕事をするにあたって大切にしている考え方を教えてください。
川越代表:「誰も損しない」ということを心がけています。これは、
仕事をする相手も、チームメンバーも、サービスも、 すべてについてです。 自分が良かれと思ってやっていることが、
相手にとって得とは限らないので、 相手の目線に立ってフェアな関係を築けていなければその話はうま くいきません。 誰かに何かを押し付けることなく、
コラボレーションを意識して誰も損しない世界をなるべく築けるよ うに、日々努力しているつもりです。
年間約612万トンの食品ロスが発生している日本において、誰もが損をしないフードロス削減ビジネスを、自分を信じ、諦めない情熱を持ち続けて展開するコークッキング。
同社のサービスを様々な地域や自治体が活用することで、食品ロスの削減はもちろん、社会やコミュニティがどのように変わっていくのか、楽しみだ。
出典元:CoCooking
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