HOMECareer Runners 全国の花屋のデジタルレスキューに立ち上がる!「with Flowers Project」発起人に聞く、即席チームワークのつくりかた

全国の花屋のデジタルレスキューに立ち上がる!「with Flowers Project」発起人に聞く、即席チームワークのつくりかた

白井恵里子

2020/08/09(最終更新日:2020/08/09)


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長井ジュンさん(提供:with Flowers Project)

花き業界は、新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受け売り上げ低迷などの悩みを抱える業界のひとつだ。そこで、深刻な現状を乗り越えるべく奮闘する花屋たちへ、「デジタルレスキュー」という救いの手を差し伸べる有志プロジェクトがある。

花き業界の活性化に向けたイベント企画・運営を行う株式会社STARMINE PLANNINGの代表・長井ジュンさんは4月、有志メンバーを集め「with Flowers Project」を立ち上げ、オンライン強化を主軸とした花屋の支援活動を開始した。

広告業界やクリエイティブ業界などで多彩に活躍する人材が有志で集結し、即席で出来上がったチームが、短期間でチームワークを育み成果を出している背景にはどのような工夫や努力があるのだろうか。発起人である長井ジュンさんに取材した。

提供:with Flowers Project

自分にできることを考えプロジェクトを発起

長井さんは兵庫県神戸市出身。2009年に入社したコンサル会社での勤務を経て、2012年にはTRANSIT GENERAL OFFICEにてアルバイトとして働き始め、レストラン「THE THEATRE TABLE」スタッフとして勤務。

2013年、STARMINE PLANNINGの屋号でフリーランスとして独立し、男性から女性に花を贈る文化の啓蒙活動「花贈り男子」をスタートした。

2020年4月に「with Flowers Project」を立ち上げ、現在に至る。

ー「with Flowers Project」立ち上げのきっかけを教えてください。

長井さん:緊急事態宣言が出て、商業施設が軒並みクローズとなり、イベントや結婚式など花の出口がなくなったことを受け、お付き合いさせて頂いている知り合いの農家さんたちや市場に現状を聞いたところ、花代が大幅に下落して廃棄が出ている農家もいるということを聞き、何か自分に出来ることはないか?と考えたのがきっかけです。

花屋のデジタル・SNS支援「デジタルレスキュー」

「with Flowers Project」第1弾は、4月に実施した、帰省できない代わりに花を贈ることで日頃の感謝を伝える「#花で帰省しよう」の展開だった。

特設サイトにてオンライン完結で花を注文・郵送できる仕組みをつくり世の中に広めることで、全国の花屋で予想を上回る売り上げに繋がり、各花屋のサイトへ延べ12万人以上の送客を実現したという。

提供:with Flowers Project

同プロジェクトは第2弾として8月6日(木)、アドビ株式会社と共同で花屋のデジタル・SNS支援「デジタルレスキュー」セミナーを無料開催。50人の定員を大幅に上回る約90人の参加者が、花の写真撮影・加工方法およびSNS活用方法を学んだ。

同プロジェクトによれば、若いオーナーは積極的にオンライン化を進める一方、多くの花屋では「小規模経営化」や「オーナー高齢化」が進んでいるケースが多く、積極的なデジタル活用になかなか踏み出せていない実情があるという。

この現状からうまれる深刻な"デジタル格差"を解消する一助として、今回セミナーの開催に至ったそうだ。

セミナーでは、プロフォトグラファー・桐生彩希氏が「簡単」「なるべくお金をかけずに」「低いハードル」を意識したわかりやすい解説を行い、素人でもきれいな花の写真を撮影・加工できるテクニックを伝授。SNSについては、エージェント株式会社の榎本真太郎氏が、「花屋さんにお勧めのSNS」として主にInstagramをとりあげ、登録手順や効果的な活用方法を具体的に説明した。

ーどのように多彩なメンバーを集めたのですか?

長井さん:まずは全国で活躍する農家さん・花の輸入商社・市場関係者・フラワーデザイナー・花屋経営者・業界紙のライターなどにZoomで集まって頂き、2度ほどヒアリングを重ね、現状を把握しました。

並行して、広告業界・クリエイティブ業界で活躍するスターたちや、いつも弊社で業務提携をしているメンバーなどに声をかけていたら、優秀な方が優秀な方をさらに呼び集めてくださり、即席チームが出来上がった、という流れです。

ーはたらく場所や作業時間などがそれぞれ異なるという状況のなかで、チームワークをどのように育んでいらっしゃるか教えてください。

長井さん:プロジェクトの企画会議から、ローンチまで、全てオンラインで行いました。

4月24日に企画が決まり、4月28日にリリースしたので、その間は一時期チャットの通知が1日に1000くらい鳴るような忙しさでした(笑)。

普段プロとして働かれている領域でプロボノとして関わっていただいていることや、実際に会ったことがない人たちの気持ちを感じ取りながらハンドリングするのは非常に難しく、経験豊富なメンバーにこっそり相談して助けてもらったり、1人1人と電話やオンライン会議をこまめに行ったりと、調整し続けました。

メンバーだけでなく、花業界関係者とも連携を取りながら進めていくのは想像以上に大変でしたが、自分にとって大きな経験を積むことが出来たと感じています。

有志メンバー(提供:with Flowers Project)

感謝の気持ちをこまめに伝え、結果や反響を常に共有

それぞれがプロジェクトに関わる理由、継続する場合どこまで動けるか、どのくらい時間を割くことが出来そうか、もし報酬が発生した場合受け取りたいと考えているのか…などといったことを、1人1人と話してクリアにしていったと長井さんは話す。

プロジェクトに何を求めているか、達成感はどこにあるのか、といったことも重要なポイントであるため、それぞれのメンバーの意見をもとに、日々彼らの気持ちを考えているという。

長井さん:通常の"仕事"では、得られることに対し、自身が提供するスキルや時間のバランス(=何のために働くか?)を、「社会的意義+報酬+経験+人」で見ていくと思いますが、プロボノでは報酬の部分がないため、善意で協力してくれているメンバーがほとんどです。

対して僕が出来るのは、「全体の流れや情報のやりとりは読んでいない前提意識を持って接する」「なるべく得意で興味がある分野に絞って依頼をし、感謝の気持ちをこまめに伝える」「提供してくれたことがいかに結果に繋がったのか、反響を常に共有する」ことなどでしょうか。

実際、優秀なメンバー達から見て、ちゃんと出来ているかは分かりませんが(笑)。

提供:with Flowers Project

ーメンバー間で目標やミッションの共有はどのように行っているのですか?

長井さん:基本はチャットでやりとりをして、溜まっていく情報はGoogleスプレッドシートに残し、煮詰まったりチャットだけだと伝わっていないなと感じたらZoomなどでテレビ会議する、という方法でした。

働き方の感覚もスピードも最先端なメンバーたちだったからこそ出来たんだと思います。

「with Flowers Project」では、コロナ感染数の再上昇により夏休みやお盆休みも世間として"帰省しない"流れがあるため、「#花で帰省しよう」も再リリースを行い、また新たに花屋さんの新規募集を開始した。

長井さん:もともと、フラワーロスや帰省難民といった社会問題に対しての意識で始まったプロジェクトなので、立ち上げる際には「課題が解決されれば解散しよう」と話していましたが、「コロナ禍で何か社会に対し良いアクションを起こしたい」「コラボレーションしたい」と声をかけてくださる企業様や、花業界・花屋さんからのご要望があれば、是非また新たな取り組みをしてみたいなと思っています。

短期間でチームワークをつくりあげ成果を出している同プロジェクトの裏には、高い意識とスキルを持つ有力メンバーの努力のみならず、彼らの気持ちをオンラインでもできる限り汲み取り、感謝の気持ちや共有意識を常に忘れずに接するという発起人の心がけがあった。

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