蜂蜜の商品開発・製造を行う株式会社金市商店は6月、創業90周年を迎えた。
同社は「蜂蜜専門店ミールミィ」運営のほか、全国のスーパーや百貨店への蜂蜜製品卸売りを展開し、仕入れはすべて社長であるハニーハンター・市川拓三郎さんが行っているという。
これまで、蜂蜜酒(ミード)やリップに塗れる食べられる蜂蜜「LIP HONEY LAB.」など、蜂蜜を軸としたユニークな商品を次々と発売しており、老舗専門店とは思えないほど、新しい感動や驚きを消費者に届け続けている。
時代を超えて愛されるための秘訣について、社長の市川さんに取材した。
幼い頃から蜂蜜屋さんが夢
市川さんは1984年、同社の創業者・市川末吉さんの孫として誕生。小さい頃から蜂蜜に囲まれ育ち、幼稚園時代から夢は「蜂蜜屋さんになること」だったという。
大学時代は新聞部に所属しメディアや経済への知識を研鑽するとともに、オーストラリア・ニュージーランド・アメリカ・ブルガリア・ハンガリーなど、世界中の養蜂家を訪問した。
卒業後は輸入食品の会社に勤め、26歳で家業である同社に入社。蜂蜜の仕入れ、製造責任者、直営店舗の管理などに従事した後、2017年3月、32歳で代表取締役に就任した。
市川さん:金市商店に入社後から一貫して行っているのが、蜂蜜の仕入れと製造の責任者です。
社長になってからも、金市商店の蜂蜜は全て私が自ら仕入れており、年間の移動距離は地球1.3周分の52000キロメートルにもおよびます。
ずっと続けている理由は、「安心安全で高品質な蜂蜜」を集め販売するためには、養蜂家との信頼関係が何よりも大切だと考えているからです。
時代に合わせて「お客様に対するアプローチは変えていく」
同社は2017年、京都学園大学の篠田准教授をパートナーに、国産のオリジナル蜂蜜酒(ミード)の開発を開始。オリジナルミード第1弾「はちみつのお酒 蜜月」をはじめ、蜂蜜にこだわった蜂蜜屋のミードとして、数々のラインアップは一躍人気アイテムとなったそうだ。
2018年には、「はちみつをもっと身近に感じて欲しい」との想いから、はちみつ入りのカスタードをふんだんに使用した冷やして食べるクリームパンのお店「クリームパン専門店キンイロ三条店」を京都にオープン。同年12月には伊勢丹京都店も立ち上げた。
2019年、蜂蜜をリップグロス型の容器に入れた新スタイルの蜂蜜「LIP HONEY LAB.」を発売。 蜂蜜100%で、「食べられる持ち歩きの蜂蜜」として若い女性を中心に人気を博した。
そして2020年には、創業90周年を記念し、蜂蜜専門店ミールミィ三条本店や取り扱い蜂蜜、カフェメニューのリニューアル等を実施。蜂蜜の使い方をさらに広げるべく、様々なことにチャレンジし続けている。
商品の基盤となるアイデアは市川さんが主になって進め、デザイン決定などの最終段階では、従業員の9割を占めているという女性スタッフの意見などを取り入れながら決めていくのだという。
ー様々な商品を展開するなかでも「軸」として意識していることはありますか?
市川さん:何より「はちみつを楽しんで欲しい」と思っています。
他社がやらないことを弊社がチャレンジし、お客様に楽しんでいただけるのであれば、これからもどんどんチャレンジしていきたいと考えています。
ー時代を超えて愛されるための経営戦略とはどのようなものでしょうか?
市川さん:90年前も今も、はちみつ自体は変わっていません。
はちみつの品質を落とすことだけは絶対にないように心がけています。
反対に、お客様に対するアプローチは時代によってどんどん変えていこうと思っております。
昔は大瓶の百花蜜(ひゃっかみつ/様々な花から採れる蜂蜜)が主流でしたが、現在は手軽に持ち帰り易い小瓶のものが主流になっております。
時代と共に家族のかたちも大家族から核家族へ移り、多様なニーズに合うようなものを展開しております。
また、個々の質が重要視される昨今、百花蜜ではなく、国産の安心安全な蜂蜜を、蜜源ごとに展開することで、お客様1人1人のお好みにあった蜂蜜を提供していきたいと考えております。
誰よりも蜂蜜と触れ合うことで蜂蜜のプロに
市川さんは、今でこそ「ハニーハンター」として養蜂家からの信頼を得ながら世界中で仕入れを行っているが、初めて現場に出た頃は苦労も多かったという。
市川さん:初めて仕入れ担当として現場に出たときは、そこら中を飛び回るミツバチよりも、屈強な体格で訛りが強い養蜂家との出会いが印象に残っています。
「お前のような養蜂のことを何も知らん奴が何しに来た」とすごまれたこともあります。
しかし、一緒に採蜜作業を行ったり、蜂蜜を通じて対話したり、時には酔いつぶれるまでお酒を飲まされたり...正面からお付き合いをしていくことで少しずつ認められるようになりました。
現場に出始めて5年ほどたった時に同じ養蜂家から「ちょっとは立派になってきたな」と言われた時が、非常に嬉しかったことを覚えています。
そんな市川さんが、今でも一番緊張する仕事がある。養蜂家が汗水たらして採った蜂蜜に値段を付けるという、値段交渉の瞬間だ。
値段が折り合わなければ、養蜂家は蜂蜜を1本も分けてはくれないという。お互いの納得できる価格を提示できなければ、翌年以降の取引はなくなってしまうという、厳しい仕事だ。
この値段交渉を成功させるため、市川さんは「ある時から、蜂蜜のプロであろうと決めた」と話す。
市川さん:養蜂家がミツバチのプロであるように、私は蜂蜜のプロであろうと決めました。
国内だけでなく、世界の蜂蜜に対しても勉強し、年間300種類以上の蜂蜜を試食します。
自らの舌や鼻、目を使った官能検査だけでなく、科学的な検査も用い、蜂蜜の真贋を見極め、「安心安全で高品質な蜂蜜」を追い求めて、蜂蜜に真正面から向き合います。
そうして誰よりも蜂蜜と触れ合い、蜂蜜の深みを知ることで蜂蜜のプロになっていけると思っております。
それが、「ハニーハンター」としての在り方だと考えています。
ー今後の展望をお聞かせください。
市川さん:ハニーハンターとしての私のテーマは「蜂蜜への挑戦」です。
蜂蜜との出会いは一期一会です。今年出会った蜂蜜と、来年出会う蜂蜜は別物なのです。
その1つ1つの蜂蜜と向き合い、蜂蜜に込められたストーリーを紐解いていく。
そして、それを多くのお客様へ、お店にご来店された時や蜂蜜を食べた時に、「蜂蜜のテーマパーク」に来たようなワクワク楽しい気持ちを伝えていく。
また、日本だけでなく、世界にはまだ見ぬ蜂蜜がまだまだたくさんあります。
そうした蜂蜜を追い求めて挑戦していくことがハニーハンターの使命だと思っています。
時代を超えて愛される蜂蜜専門店・金市商店。その裏には、時代に合ったアプローチを展開するための豊富なアイデアと、蜂蜜のプロとして、蜂蜜に挑戦し続けるという社長・市川さんの尽きることない追求心があった。
同社創業90周年記念の各プロジェクトについては、同社プレスリリースから確認ができる。
出典元:ミールミィ
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