写真の学びサイト「CURBON」を運営する株式会社CURBONは6月22日(月)、オーダーメイドの旅を提供するトラベル・コンシェルジュ・カンパニーである株式会社旅工房による協力のもと、従来の旅行価値を「写真」の力で拡大する共同事業「CURBON TOURS(カーボンツアーズ)」をローンチした。
「旅先の思い出を写真で美しく残すための特別な撮影旅行」をテーマとし、旅好きな人や写真好きな人に向け、新しいかたちの旅を提供。新型コロナウイルスの影響で低迷する国内の旅行需要の復興および、地域再活性化も目指すという。
なぜ今、このタイミングで「旅」なのか。「CURBON TOURS」が目指すビジネスモデルとはどういったものなのか。同社の武井宏員(たけいひろかず)代表取締役CEOを取材した。
「写真が、あなたの旅をもっと豊かにする」
「CURBON TOURS」では、同社がフォトグラファー目線で旅先をプロデュース。旅工房の旅行手配ノウハウとプランニング力を掛け合わせ、写真で旅をより楽しくするための企画を実現するとしている。
キーワードは、「写真が、あなたの旅をもっと豊かにする」。
参加者は、ベストショットを狙える時間帯での撮影や、撮影を軸に計画した周辺散策などを通じ、旅先でのより充実した撮影活動が体験できる。そして、一緒に旅する写真好きな仲間と同じ時間と空間を過ごすことで、質の高い新しいつながりや出会いを創出する。
これから写真を始めたいというビギナー層から、日頃から撮影活動を楽しんでいるという人まで、広く参加を歓迎しているそうだ。
誰かの人生にスポットライトを当てるきっかけを
同社代表取締役CEOの武井さんは、幼少期よりアメリカに在住。2004年には学生でありながら起業・売却を経験し、2006年に米国内の企業に就職した。
2010年前後に開始した個人フォトグラファー活動を経て、2015年に日本に帰国。2018年にCURBONを創業し、現在に至る。
武井さん:帰国時に感じたことは、海外とは大きく異なる日本のフォトグラファー界隈の現状でした。
写真もフォトグラファーのこともとても好きだったからこそ、「写真スキルは外国のそれと遜色ないのに、自信の持ち方や発信の方法が突き抜けられていないから、実力よりも埋もれてしまっているように見える」という日本の現状がなんだか残念で悔しくて。
「自分の好きなこと=写真」を起点に、誰かの人生にスポットライトを当てるきっかけを生み出せないかと考えたことが、CURBON創業のきっかけです。
同社のコアメンバーは現在24人。そのうち、フォトグラファーの顔を持つメンバーが20人ほどで、そのほかライティングや映像、デザインや企画、エンジニアなどの専門職メンバーが在籍しているという。
また、所属というかたちではないが、プロジェクトごとに一緒に活動する関係クリエイターが約100人。彼らは、toC向けに提供している写真講座、toB向けの企業案件やPRの仕事、出張撮影など、幅広く活動しているそうだ。
1年以上あたためていた構想が実現
ー「CURBON TOURS」立ち上げの背景、経緯を教えてください。
武井さん:1年以上前からあたためていた構想で、今回念願叶って形になった企画が「CURBON TOURS」です。
CURBONは、写真の学びサイトを運営し、アーティストプリセット販売や、写真を軸とした各種toB案件が中心の企業ですが、数年以内に、「写真から始まるライフスタイルの総合提案ができる企業」になることを目指しています。
その柱の1つとして実現した企画の1つが、「CURBON TOURS」です。
写真も、旅行も、すでに確立された分野で、それぞれを楽しんでいる方が、たくさんいらっしゃいます。
「その写真と、さらに写真と非常に相性のよい領域である旅行を、今までにない形で組み合わせることができたら、新しい特別な体験・発見が提供できるのではないだろうか?」という想いが、企画の出発点です。
これは、僕をはじめ、CURBONの社員が旅先でよく写真を撮っていたことが原体験にあります。
その中で、縁あって今回パートナー企業として協業している旅工房に出会い、企画を本格的に進めていくことになったのだという。
旅工房は、オーダーメイドの旅に力を入れている「トラベル・コンシェルジュ・カンパニー」。それぞれの旅を、最大限彩るための工夫を随所に凝らす姿勢などに共感したことも、企画を進める上での大きなきっかけとなったそうだ。
事業を通じて旅行需要復興にも貢献したい
ーなぜ今、このタイミングで、コロナウイルスの影響が大きい「旅」に着目されたのでしょうか?
武井さん:もともと「CURBON TOURS」の企画ローンチを考えていた時期と、今回のコロナのタイミングが合った、というのは背景としてあります。
その中で、「撤退する」という道もあったと思います。
ですが、弊社としては、この時期にローンチできることは、チャンスだと捉えました。
なぜなら、自粛期間に、個人として強く感じたのが、「やはり人間は触れ合わなければいけないのだな」ということだったからです。
触れ合う対象は、実際の人同士はもちろん、異文化や非日常、遠い場所など、様々なことを指しますが…。
それは、当然ニーズの強さや、触れ合いたい対象は個々人によって変わると思いますが、誰しもが持つ気持ちなのではないかと。
なので、「違う世界に行きたい」「日常を抜け出したい」という気持ちは、ウィズコロナの世界でも残るなと思いました。
コロナで、旅行業界・観光業界も大きすぎる打撃を受けていると各所から聞きます。
この時期に「CURBON TOURS」を実施するためには、様々な配慮や工夫は必要になると想像しましたが、それが実現できたら、旅行需要復興への一助になることができるかもしれないし、また、弊社にとっても大きなチャレンジになると思いました。
「CURBON TOURS」第1弾として設定した旅先スポットは、クリエイターに人気の写真スポットであり、映画のロケ地としても有名な、群馬県みなかみ町の廃校活用プロジェクト「泊まれる学校 さる小」。
7月23日(木・祝日)~24日(金・祝日)の1泊2日プランだ。
ー旅先スポットはどのようにして決めているのですか?
武井さん:旅先スポットの条件は、大きく2つあると思っています。
1つ目は、「写真と組み合わせることによって、旅先スポットでの体験がより向上されるか?」。
2つ目は、「弊社ならではの旅企画を、最大限に活かせる舞台があるか?」です。
例えば第1弾で企画している群馬県のさる小。
廃校という舞台では、写真は最高に楽しい装置となりますし、例えば花火やプール、そのほかの「まるで祭りのような様々な企画」がファインダーを通じて、さらに活きるスポットだと捉えています。
そのほかにも、現在進行中の企画では、地域復興をキーとした自治体様との取り組みや、「日常を旅する」ための身近な、けれど今まで体験したことがないようなスポットも考えています。
とにかく、大切なことは、写真と組み合わせることによって、ユーザーの体験が特別なものに変わるかどうかだと思っています。
ウィズコロナの世界において、「CURBON TOURS」が少しでも貢献できる機会がありそうでしたら、その分野についても積極的に取り組んでいきたいと思っています。
「写真のあるライフスタイル」目指し
ー「CURBON TOURS」のように、新事業を立ち上げる際に重要なこと・大切にしていることは何ですか?
武井さん:まだ創業から2年ほどしか経っていないベンチャーだからこそ、スピードと柔軟性は大切にしています。
新事業立ち上げのような不透明な道のりにおいては、念入りに市場を分析しすぎて、時間をかけすぎてしまった結果、何も動けず、致命傷になってしまうこともあります。
そのため、社内のカルチャーとしては、ある程度のリスクとリターンを考慮した上で、まず仮説を試していくマインドセットを重視しています。
そのほかに挙げるとしたら、「新事業が既存ユーザーの皆さまに取って価値のあるものかどうか?」「新規ユーザー層を獲得できるポテンシャルがあるかどうか?」「以前はつながっていなかったコミュニティを、写真を通してつなげることができるか?」などでしょうか。
ー「CURBON TOURS」で目指すビジネスモデルについて教えてください。
武井さん:まだ発表できる段階に至っていない内容も多いのですが、「CURBON TOURS」は、チケット購入の時点から始まり、そこから様々な体験ができる「長い旅」だと思っていただけると良いかと思います。
たとえば、バスに乗って目的地に到着するまでに、写真の何かが体験できたり、購入できたり。
旅の最中が楽しいことはもちろん、旅をした後のプリントや、仲間との交流なども楽しむことができます。
CURBONが今後構想している、「写真のあるライフスタイル」につながっていく、1つのきっかけであると社内では考えています。
ウィズコロナ時代も残っていくだろうとされる「日常を抜け出したい」という人々の気持ちに寄り添うことで、旅行需要の復興にもつながると信じる武井さん。「写真のあるライフスタイル」の浸透に向けて、着々と、そしてスピーディーに突き進む姿が印象的だ。
同社は今後、「旅をした後」も存分に楽しめる写真の価値を伝える場として、全国各地の離島巡りなど宿泊を伴う企画以外にも、フラワーショップやカフェ等にて日常を旅する日帰り企画も継続してリリースする予定だという。
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