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キャリアを活かして社会貢献。オンライン型無料労働組合「みんなのユニオン」で活躍中弁護士が実現する本業との相乗効果

白井恵里子

2020/06/27(最終更新日:2020/06/27)


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岡野武志弁護士(提供:みんなのユニオン事務局)

誰でも無料で加入ができるオンライン型無料労働組合「みんなのユニオン」は5月より、職を失った人の電話相談を無料で受け付け、違法な解雇に対しては専門家による助言等を受けながら交渉まで行う、新たな組合活動「不当失職への団体交渉」を開始している。

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、同組合はこの2カ月間で100件以上の失職に関する電話相談を受けたといい、組合員数は500人を突破した。

弁護士の岡野武志さんはこの労働組合で、電話相談や解決のための交渉などを、ボランティアとして行っている。

弁護士という本業がありながら、この活動を続ける理由は何なのか。岡野さんに取材した。

組合員数は585人、組合費は永年無料

オンライン型無料労働組合「みんなのユニオン」は、新型コロナウイルスの影響を含め厳しい状況にある働く人を支援するために、無料オンライン型労働組合として2月に誕生した。

加入者は、ユニオン名義で職場環境の改善を求める通知書を送ることができるほか、労働に関する有益な情報を得ることができるという。

その名の通り、基本サービスはオンライン経由で利用可能。加入・脱退は自由で、弁護士等からの寄付で成り立っているため組合費は永年無料。他の労働組合との併用も可能だ。

6月24日(水)現在の組合員数は585人。これまで57の企業に、事実確認や改善を求める通知書を送付した。

「不当失職への団体交渉」では、不当解雇・雇止め・内定取り消しなどに特化。違法な解雇等に対しては、法律に基づいた通知を行うなどし、解決金支払いや復職を求める団体交渉をオンラインかつワンストップで行っているそうだ。

提携弁護士として問題解決に取り組む岡野さんは、「ユーチューバー・タケシ弁護士」として、YouTube上で法律関係の情報発信や無料相談の受付なども行っている。6月24日(水)時点でチャンネル登録数は4万8600人と、大人気のチャンネルだ。

岡野さん:Youtubeでは「働く人にとって役立つトピック」を意識して発信しています。

特に「働く人に関係する法律の改正」、「コロナ等の状況に対応するための労働法トピック」、 「パワハラ・セクハラ・未払い残業代等の対処法」など、広く働く人全般が巻き込まれる可能性がある トラブルの対処法についてですね。

YouTube活動がきっかけとなり「みんなのユニオン」設立へ

岡野さんは、18歳で大阪の高校を卒業後、アメリカに渡り2年半を過ごした。その後10年間のフリーター生活を送ったあと、司法試験に合格し、28歳で弁護士資格を得たという。

30歳で、未経験のまま法律事務所を独立開業。全国10拠点の弁護士事務所グループに育て、現在に至る。

ー「みんなのユニオン」設立の経緯・理由を教えてください。

岡野さん:「みんなのユニオン」設立の理由は、YouTube活動をしている中で非正規の問題を知ったからです。

私自身も、ロスト・ジェネレーションでフリーター生活を10年送っていました。

YouTubeでさまざまなコメントをいただき、非正規の問題を格安でサポートできないかと考えた結果、 組合費無料のオンライン労働組合を考えつきました。

2月に設立後、コロナの影響もありましたので、ソーシャルディスタンスが「オンライン」労働組合にとっての追い風になっていると思います。

提供:みんなのユニオン事務局

合同労働組合とは、さまざまな業種の人が、正規・非正規問わず、1人でも加入できる労働組合。そのため、「みんなのユニオン」には日本全国から業種・年齢・性別問わず、多種多様な人が所属しているという。

岡野さん:強いて言えば、YouTubeを視聴してくれている人が多いですね。

企業についても、大企業所属の人や中小企業、個人商店所属の人など、さまざまです。

本業との相乗効果を実感

ー「みんなのユニオン」では、これまでの経歴・キャリアをどのように活かしていらっしゃいますか?

岡野さん:私は弁護士資格を持っています。

そのため、法律に関して「違法か」、「違法でないか」をはっきり区別することができます。

一緒に活動するメンバーと法律の知識を共有しながら、組合員のお悩みを解決できるように 相談対応や団体交渉を行なっています。

また、私は経営者でもありますので、会社側の事情もよく分かります。

団体交渉をする中で相手会社の話を聞いていると、頷ける部分もあるにはあります。

しかし、違法は違法。経営者であり、法律の知識があるという点で、スムーズな団体交渉を行なえていると思います。

岡野武志弁護士(提供:みんなのユニオン事務局)

ー「みんなのユニオン」で活躍されていることが逆に本業にプラスになっているということはありますか? 

岡野さん:あります。ユニオンが着手した団体交渉が決裂した場合などは、周りの弁護士や法律事務所を紹介することがあります。

グループや友人・知人の弁護士を含めて、全体として良いサイクルが作れています。

実際、組合員の方としても、弁護士のネットワークが側にいるということで、安心される方も多いようです。 

弁護士、そして経営者としての経験やノウハウを活かし、「みんなのユニオン」で活躍する岡野さん。

その活動は、本業にもプラスになっているといい、まさに「本業との相乗効果」が現れているそうだ。

「都合がいい組合」「使いやすい組合」目指し

ー今後の展望をお聞かせください。

岡野さん:みんなのユニオンでは、「都合がいい組合」「使いやすい組合」を標榜しています。

組合員にとって「都合がいい組合」であるために、組合員に対しては、他の労働組合や専門家と併用して場面によって使い分けること、使いたい時だけ加入し不必要になったら脱退すること、より安価で便利なサービスがあればそちらを選ぶことを推奨しています。

また、組合員にとって「使いやすい組合」であるために、組合員がアクセスしたい時にアクセスでき、利用したい時に利用したい分だけ利用できる体制を整えています。

さらに、組合費や会費などの月額課金がなく、着手金などの初期費用が発生しない点も特徴です。

「都合がいい組合」「使いやすい組合」として、日本一の労働組合に育てていきたいです。

「みんなのユニオン」では今後、失職に特化している団体交渉の範囲をセクハラにも広げ、苦しむ人を救済するべく活動を続けていくという。

副業やボランティア活動に対する考え方や取り組み方は様々だが、本業とは無関係の内容に新しくチャレンジするという選択肢もあれば、岡野さんのように、本業との相乗効果が実感できる内容で社会貢献するという選択肢もある。

どちらにしても、新しい挑戦により自分の可能性を広げるという意味では同じだ。

法律や弁護士ネットワークに守られながら働く安心感を届ける岡野さんの活動は、今後どのような展開をみせてくれるのだろうか。

出典元:みんなのユニオン

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