HOMEインタビュー 社長以外は全員業務委託!「いいオフィス」社長が省エネ経営を通じて目指すビジネスモデルとは

社長以外は全員業務委託!「いいオフィス」社長が省エネ経営を通じて目指すビジネスモデルとは

白井恵里子

2020/06/26(最終更新日:2020/06/26)


このエントリーをはてなブックマークに追加

龍﨑宏さん(提供:株式会社いいオフィス)

コワーキングスペース事業を運営する株式会社いいオフィスは6月18日(木)、長野県の軽井沢町に新コワーキングスペース「いいオフィス軽井沢by いこいヴィラ」をオープン。これにより、同社が運営する店舗数が延べ100店舗に達した。

同社の社員は、実は代表取締役1人のみ。メンバーのほとんどが業務委託契約という、独自の経営体制だ。100ある店舗ではそれぞれ、フランチャイズオーナーが運営を行っている。

なぜこのような経営体制なのか。「いいオフィス」が目指す先は何か。同社代表取締役の龍﨑宏さんを取材した。

「あったらいいよね」から始まった

コワーキングスペース「いいオフィス」は、東京都内を中心に、横浜・埼玉・長野・神戸・フィリピンなど、国内外で100店舗を展開している。2020年度中に、契約ベースで300店舗の展開を目指しているそうだ。

同社によれば「いいオフィス」は、フリーランスとして働く人はもちろんのこと、最近では会社員の利用者も増えているとのこと。

オープンしたての「いいオフィス軽井沢by いこいヴィラ」などは、ワーケーションの拠点としての利用も念頭に置いている。

いいオフィス軽井沢by いこいヴィラ

龍﨑さんは、現在39歳。25歳で株式会社NRCを設立し、ホテル業・イベント業・飲食業を展開した。33歳で、Web制作会社である株式会社LIGへ入社。副社長就任を経て、37歳で株式会社いいオフィスを設立した。

ー「いいオフィス」起業の背景、理由を教えてください。

株式会社LIGでの事業として始めたコワーキングスペース・シェアオフィス「いいオフィス」は、パソコンとネット環境すら整っていればいつでもどこでも仕事ができる業態であったLIGにとって最適なオフィスでした。

こんなオフィスを世界中旅する場所すべてにあったら最高だよねという、単純に「あったらいいよね」から始まった事業です。

旅をしながら働いていると、通勤ラッシュに乗るのも苦痛であったと再認識をします。

台風の際、なんで電車が遅れたりするのがわかっているのに社員を時間通りに出社もしくは自宅待機させないといけないのだろうという経営者としての悩みもうまれます。

そして、単純に自分の住まいの近くに、まるで身近なコンビニのようにオフィスがあったら最高なのではないかと考えはじめるようになりました。

現在、就職をする・転職をする際はその企業の働くオフィスのエリアにいかないといけません。

大阪に住んでいる人が東京の企業に就職する際は当然ながら東京に引っ越しをするわけです。

この当たり前のことすら疑問を抱きます。自分の住まいを、お気に入りの場所を変えないで転職することはできないのだろうか?

そのすべての解決方法が「いいオフィス」だと考えています。

ワークプレイスにこだわること、結果それはオフィスを流動化するということなのです。

自分自身の価値を常にあげていくことが重要

同社の社員は龍﨑さんのみ。他は全員、業務委託のメンバーだ。

私は社員も業務委託者も、株式会社いいオフィス(私)との信頼関係だと思っています。

私は、業務委託契約でも、仕事ができる・できないにかかわらず人間力があれば絶対に切りはしませんが、「成果もでない、努力もしない(人間力がない)人は3カ月で契約終了」と宣言しています。

従って、努力ができて人間力のある人のみ、採用しています。

この体制のメリットは、会社とメンバーそれぞれにあるという。

会社としては成果を基準に評価するため、通常の査定が非常にシンプルだ。

報酬は業務委託者からの提案によって変わる。また報酬額を公開することで、周りのメンバーからの意見も出てくるため、適正な報酬をメンバーたちが決めてくれるという仕組みになっている。

社長以外に社員がいないので、会社の業務に「総務」が必要ないことも特徴だ。バックオフィスの経費がかからないため、その分を業務委託者の報酬に上乗せできるのだという。

提供:株式会社いいオフィス

ー企業の視点からみて、フリーランス(業務委託)として働く際に特に意識してほしいことはありますか?

根底にあるのは成果主義です。

フリーランスで生きていくことは自分自身の価値を常にあげていくことが重要です。

企業も大きくなれば今の重要な業務内容と未来の重要な業務内容は変わってくるのです。

よって、柔軟性を持ちながら自分自身を律し、企業とともに成長をしていくことが私が考えるフリーランスとして働く際に意識してほしいことです。

地域間の労働格差を減らし地域活性化へ

龍﨑さんによれば、同社は3年で1000店舗、7年で10000店舗の達成を目指しているという。

ー事業を通じて実現したいミッションを教えてください。

近年、IT企業を中心に働き方、働く場所の自由度は増していますが、まだまだ社会全体がそのようにシフトしていくには時間がかかると思っていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、世界的にリモートワークの推進という流れが出来つつあります。

企業によっては比較的スムーズにリモートワークへと移行し、そして生産性については意外と下がらず、むしろ通勤時間、会議時間などが減ったことによって、効率よく働けている側面もあるのではないでしょうか。

しかし、自宅でずっと仕事をすることが現実的に出来ない、もしくは難しい人たちも確実にいるでしょう。

そういう人たちにこそ、コワーキングスペースなのです。

そういう方たちの自宅近くに「いいオフィス」があれば、そしてその方たちが都心や地方へ何かしらの用事で出かけたときにも、どこにでも利用できるオフィス空間があれば…。

そうなるともはや企業は、ごくごく限られた本社機能のみを構え、それ以外の社員は基本コワーキングを利用して各自仕事をする、という世界になると思います。このようにして、オフィスは固定費から変動費という概念に変わると考えています。

そうなった時、しっかりと数千人、数万人規模のユーザーを受け入れる事ができるオフィスネットワークを、龍﨑さんは作ろうとしているのだという。

龍﨑宏さん(提供:株式会社いいオフィス)

オフィスの在り方がアップデートされ、企業が場所に囚われない働き方を実践できるようになると、どういう事が起きるのでしょうか。

それは、地域間の労働格差が少なくなるということです。

私は株式会社LIGで地方創生事業に長らく取り組んでいたので、

「地方に住みたい人はたくさんいるが、仕事が無い、もしくは給料が安いゆえに諦める。そして地方が寂れていく。」

そんな負のスパイラルに陥っている地域をたくさん見てきました。

私たちが取り組む「いいオフィス」はとどのつまり、コワーキングスペースをつくることによって、オフィスの在り方をアップデートし、働く場所の流動性を高め、それにより結果として地域活性にも貢献できる...そんなビジネスモデルなのです。

雇用形態に捕らわれず、働く場所にも捕らわれず、自分の能力を最大限に発揮しながら自由に働くという同社のスタイルは、今後コワーキングスペースの広がりによって、「当たり前」になっていくかもしれない。

そして、それが地域間の労働格差をなくし、ひいては世界中の貧困格差もなくしていくかもしれない。

そんな世界を目指し、龍﨑さんは今日も、邁進し続けている。

【関連記事】


hatenaはてブ


この記事の関連キーワード